※この作品はR-18です。

東京都高度育成高等学校・北郷伝   作:山上真

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北郷伝:29

 休日が休日としての態を成していない感はあったが、あれ以降は特に問題らしい問題が起こることはなく日々は過ぎ去り――と言うと語弊があるか。

 テスト範囲の変更が伝えられた際のDクラスは、五月一日と同様に阿鼻叫喚の地獄絵図の如き様相を呈していたからな。

 ただでさえ学力不振な連中が、それでも赤点退学を回避しようと必死に勉強していたら、範囲の変更によりその努力が無に帰したのである。それも当然というものだろう。

 その状態から言葉だけでやる気を引き出すのはそう簡単なことじゃない。結果として、俺たちの勉強会に参加していた連中と平田に対し、過去問(解答抜き)を配布。ひたすらにそれを解いてもらうことで対応した。『実際に先輩――それも生徒会長が受けた』という事実は、追い詰められた者たちを惹き付けるには十分過ぎる効果を持っていたのである。

 最後の最後、テスト数日前には解答も配布したので、まさしく打てるだけの手は打ったと言えるだろう。

 平田に渡したことで彼の勉強会に参加している女子にも届くだろうし、平田であれば池や山内も見捨てまいという打算もあった。ぶっちゃけ、重要視したのは平田グループの女子だけで、池と山内に関しては退学しようが残留しようがどうでもよかったが。

 そんなこんなで迎えたテスト当日。

 社会、国語、理科、数学とテストを終え、昼休みを過ごしてから最後の科目である英語も終えた。特に問題はない。手応えはバッチリだ。

 問題があるとすれば――

 

「愛里、顔が暗いがどうした?」

 

 それは愛里に他ならなかった。見兼ねた清隆が問いかけるほどには、愛里の顔色は真っ青だった。

 

「うん。実はね――」

 

 詳しく話を聞くと、今回の中間試験、愛里は過去問を使わずに臨んだらしい。いや、問題集としては大いに利用したが、解答の方は利用しなかったらしい。

 それを聞き、俺たちグループメンバーは妙に納得してしまった。これで愛里はクソ度胸があるというか、時と場合によっては感情最優先で動いてしまう傾向があるのだ。一種の暴走と言ってもいい。

 大方、今までに勉強を見てもらった成果を見せるんだ! とか、解答を利用せずにテストを乗り越えることで成長の実感を得たかった、とか、そういう気持ちが働いたのだろう。それを否定することはできない。

 だが、気持ち一つで通用するほど現実は甘いものじゃなかった。……言ってしまえばそういうことである。

 特に、今回のテストに限っては、クラスメイトの大半は過去問の解答を十分に利用した筈だ。それで満点に繋がるとは限らないが、平均点が跳ね上がる可能性は否めない。元々、愛里の学力はクラスでも最底辺だ。早くから勉強に取り組んでいたとはいえ、身一つで裏技を跳ね返せるほどにまで成長したかとなれば疑問が残る。

 

「だから、もしかしたら私は今回のテストで退学になるかもしれない。でも、私が選んだ結果だからキチンと受け止められる。まあ、だからって後悔が無いわけじゃないんだけどね……」

 

 そう言って愛里は、顔を強張らせたままにテヘヘと笑った。既に己の退学を既定のものとして受け入れているのだろう。顔色が真っ青なのは、後悔が無いわけではないからか。それでもジタバタしない分、本当にクソ度胸である。

 それからの愛里は、できるだけ悔いを残さないようにするためだろう。ストーカー犯が捕まったこともあり、思いっ切り学校生活を楽しんでいた。清隆とのデートを満喫する一方で、グループ内で唯一のフリー女子である千秋に自分が退学になった後の清隆を頼んでいたりもした。……まあ、未だ結果は出ていないから、と千秋は断っていたが。

 というより、愛里は自分のことを過小評価し過ぎである。愛里が退学を受け入れていようが、俺が――俺たちがそれを受け入れる道理などないのだ。敷地内においてはポイントで買えないモノがない以上、ポイントさえあればどうとでも対処は可能なのだから。

 いざともなれば、俺たちのテストの点数を移す権利でも買えばいい。安くはないだろうが、移す側の学力評価のマイナスに繋がる分、ただテストの点数を買うよりは安く済ませることが可能な筈だ。

 もちろん、千秋だって似たようなことは考えている筈だ。俺たちの過ごした日々はそれほど軽くはない。共同生活で深まった関係性は、とっくのとうに『ただのクラスメイト』を超えているのだ。……そこに気付かない辺り、やはり愛里はまだまだである。

 そうして六月に入り、ストーカー確保の功績によりCPにプラスを受けたりしながら迎えたテスト結果の発表日。

 朝のホームルームにおいて、五月冒頭と同じように、クラスメイト全員の点数が記載されたポスターが茶柱先生に手によって黒板に張り出されていく。

 結果を見ると、やはり全体的に点数が上がっている。それは愛里も例外ではない。――だが、時に現実は無情だ。

 

「よく頑張ったな、お前たち。正直に言って感心しているぞ。クラス全体がこうも得点を上げるとは思ってもみなかった。各科目において満点を取った者も少なくはない。入試や小テストの散々な成績からは信じられんほどだ」

 

 茶柱先生はわざとらしく口を開く。絡繰りを知らないのであれば尤もらしい感想だが、生憎とそうではない。この絡繰りを茶柱先生が知っている以上、先のセリフは茶番以外の何でもなかった。

 

「しかし、残念だよ佐倉。お前はここで退学だ」

 

 そう言って、数学における愛里の名前の上、山内の名前の下に、茶柱先生は赤いマーカーで線を引いた。

 今更改めて言うまでもないことだが、うちのクラスは元々学力不振な連中が多い。教科に関係なく、如何に解答を見たところで、全部を全部覚えられる筈もない。元が不出来なら尚更だ。

 選択問題が多いなら、それでもまだ高得点を叩き出せる見込みはあっただろうが、途中の計算式とセットとなる数学はそういうわけにもいかない。公式を覚え、公式に当て嵌め、それでいて計算ミスを起こさない。この三ステップが必要となる。解答の暗記だけだと不十分なのだ。

 その点において、数学の最下層は団子状だ。解答を利用しただろう山内がワースト2、池がワースト3、少し離して須藤がワースト4となっており、それ以外にもチラホラと固まっている。そして、解答を利用しなかった愛里がワースト1となってしまった。

 素で勝負していたのなら、愛里の成績は池や山内以上だったに違いない。実際、点数だけなら五点と離れていないのだ。愛里と山内が一点差、山内と池が三点差だ。自然、愛里と池は四点差となる。

 ほんの僅か。本当に些細な差だ。だが、解答の利用によるブーストが池と山内の背中を押し、明暗を分けることになってしまった。

 

「佐倉。赤点を取ってしまい退学となるお前には、当日中に退学届けを出してもらう必要がある。……が、その際には保護者の同伴も必要となるのでな。これから私の方で連絡しておくが、そういった事情もあり、実際に処理をするのは恐らく放課後となるだろう」

「分かりました」

 

 茶柱先生の言葉を受けても、愛里は一切狼狽えなかった。やはり覚悟がガン決まっているのだろう。あくまでも泰然自若と受け止めている。

 とはいえ、それを見過ごすわけにいかない。俺か、清隆か、それともグループの誰かか。それぞれが愛里の退学を防ぐべく手を挙げようとしたところで――

 

「ハッ! いい気味だぜ! ファンの純情を弄んだビッチアイドルには似合いの末路だな、佐倉! いや、雫!」

 

 そんな、聞くに堪えない山内の声が、教室内に響き渡った。

 その瞬間、ブチリ、と。

 最後の一線で掛けていた温情が、音を立てて引き千切れたのを自覚した。いや、もしかしたら自分の手で引き千切ったのかもしれない。……まあ、どちらでも構わないが。

 そんな、俺の変化を目敏く察したのだろう。

 

「あ~、山内くん? クラスメイトとして最後の警告。今すぐ愛里ちゃんに対して誠心誠意謝った方が良いよ? きみ、自殺届に自らサインを入れて提出したも同然だから」

「そうそう。普通に考えて、ただでさえ女好きの一刀が、自分のグループの女子が退学になるってのを黙って見ているわけがないじゃない? おまけに、一刀だけじゃなく清隆もいるし、何ならグループメンバーのあたしたちだっているしね」

 

 俺が行動を起こすよりも先に、麻耶と恵が山内に対して警告を下した。

 それを見て、俺は一時的に様子見に回ることにした。怒り心頭なのは本当だが、己が女たちの行動を阻害するほどではない。山内と俺の女たちでは、後者に軍配が上がって然りである。

 

「そうだぜ、春樹。流石に今のは言いすぎだ。そりゃ、彼女とイチャコラしている綾小路が許せねえのは同意だが、その憤りを佐倉に向けんのは間違ってんだろ」

「俺も同意見だ。『可愛さ余って憎さ百倍』にしても、言っていいことと悪いことがあんだろ」

 

 三馬鹿として一括りにされている池と須藤も、友人として山内を窘めていた。……須藤、成長したな。まさか、お前の口からそんな言葉が聞こえてこようとは。まあ、普段のの短気と暴言を鑑みると、山内のことを偉そうに注意できるものではないのだが。

 

「へっ! たとえお前らに言われても俺の意見は変わらねえよ! 俺の想いを裏切った佐倉は、雫は、紛れもないビッチアイドルだ!」

 

 だが、駄目。山内が己の態度を省みることはなかった。

 

「あ~、お前らが盛り上がるのは勝手だがな? それはこちらの話が終わってからにしてもらおうか」

 

 そこで、茶柱先生が割って入った。担任から冷たい視線を向けられつつ冷たい口調でそう言われれば、大半の生徒は黙るしかない。教室内が静かになったのを認め、改めて茶柱先生は口を開く。

 

「時に山内。お前は今、興味深いことを口にしたな? 佐倉に対し、アイドルの雫であると?」

「へ? ええ、うちのクラスの奴なら全員が知ってますよ」

「なるほど。では、佐倉愛里=雫であるという認識を、クラス全員が持っていると考えて構わんな? 他ならぬ佐倉自身もそれを認めていると」

 

 睥睨しながら投げかけられる茶柱先生の言葉に、Dクラスの生徒全員がそれぞれに頷いた。

 

「で、あるならば、佐倉には退学回避の道がある。……我々がお前たちの実力を最重要視しているのは周知の通りだ。そしてその実力には、実績と可能性が多分に含まれていることも。

 以前にも言ったと思うが、既に佐倉は社会的な成功を得ている。我が校の設立目的から考えて、そんな実力者を優遇しない道理はない。……が、あまりにも堂々と贔屓し過ぎれば、それはそれで問題がある。

 故に、優遇措置――特典を与えられている生徒がいるのは確かだが、それは当人には知らされていないし、その内容もそれぞれに違う。そして特典を実行するには、それぞれに定められた条件をクリアする必要がある。

 ここまで言えば分かるだろう? 佐倉は特典保持者の一人だ。そして、その使用条件も既に満たされている。

 特典名:ファンの献身。佐倉と生徒の双方で、佐倉愛里がアイドルの雫だという事実を受け入れることで初めて使用可能となる。

 ファンの応援によって力を発揮するのがアイドルだ。その一方で、ファンがいなくてはどれだけ能力があってもアイドル足り得ない。良くも悪くもファン次第。その事実を加味した特典内容となっている。

 今回で言えば、ファンが己の点数を佐倉に譲渡することが可能となる。自らの成績を削ってまで、己がアイドルを救おうとするんだ。文字通りの献身だな。全教科満点の綾小路なり北郷なりがこれを使えば、佐倉の退学回避は実に容易いだろう。なお、点数譲渡の権利を購入するわけではないので、ポイントの負担はない」

 

 茶柱先生の言葉を受け、驚きの視線が愛里へと向けられる。

 当の愛里自身も目を丸くして驚いている。……当然だ。特典なんてものの存在、いま初めて知らされたのだから。

 まあ、この学校を鑑みると、確かにあっておかしなシステムでもない。

 

「で、どうだ? 誰か、佐倉に己が点数を譲渡しようというファンの鑑はいるか?」

「それに答える前に、先生に一つ確認しておきたいことがあります。……仮に、テストの点数を購入しようとした場合、一点当たり何ポイントが必要となりますか?」

 

 茶柱先生の言葉に誰かが答える前に、俺は一つの問いを投げかけた。

 

「ほう? この状況で、敢えてその質問をするか、北郷。お前の怒りは相当のもののようだな。……一点につき10万ポイントだ。びた一文として負けられん」

 

 俺の言葉を受け即座にそんな言葉を返してくる辺り、茶柱先生は俺の意図などお見通しらしい。

 

「では、愛里の数学の点数を五点分売って下さい」

 

 俺の言葉に、驚愕の視線が俺へと集中する。ポイントを使わずに済む救済処置があるというのに、なぜ? どうして? と。

 決して安くはないポイントを使ってまで愛里の点数を買うことに何の意味がある? と。

 

「ッ……!? 待ってくれ、北郷くん! お願いだからそれだけは止めてくれ!」

 

 その理由に、真っ先に気づいたのは平田だった。俺に対し、必死に懇願してくる。これを見過ごした場合、その末路がどうなるかを察すれば、平田が動かない筈がないのだ。

 正直、平田のそんな態度には胸を打たれるものがある。

 だが、それはそれだ。俺は平田の懇願を真っ向から切り捨てた。

 

「悪いな、平田。その言葉は受け入れられない。クラス全員が笑顔で、というお前の志は立派だと思うし、それが叶うのなら俺だって嬉しい。だが、それを叶えるためには、全員がそのために頑張る必要があるんだよ。

 池や山内に限らず、クラスの男連中が俺に怒りを向ける分には構わないんだ。俺が四六時中いろんな女の子と一緒にいるのは事実だしな。モテない男からすれば嫉妬の的だろう。だから、そこについては受け入れている。

 しかしな? さっきの山内の言葉は受け入れられない。いや、さっきだけじゃない。池と山内のデリカシーのなさと須藤の粗暴さには何度となく辟易されてきたし、それによって傷ついてきた女子も少なくはない。

 これで愛の鞭だってんなら、まだ情状酌量の余地はあったろうさ。けど、徹頭徹尾そんなことはなく、ただ己の欲望と不満を垂れ流しにしているだけだ。

 これで何を期待する? 何を期待できる? 

 さっき山内を窘めた池には、まだ辛うじて温情を向ける余地がある。須藤だって同様だ。部活を休んでまで必死にテストに向けて勉強してきたのは事実だし、元より運動能力は優秀だ。それを踏まえれば、むしろ池よりも将来性と有用性は高い。

 だが、友人から窘められても反省する様子すら見せなかった山内に対し、これ以上向ける温情はない。たとえ退学者発生のペナルティによりCPがゼロになったとしても、今後とも足を引っ張られ続ける可能性を考慮すれば安いものだ。クラスの皆だって、心底からの納得はできないにせよ理解は示してくれるだろうさ」

 

 俺の言葉に、平田が焦った様子でクラスメイト達をグルリと見回す。……いや、平田だけじゃない。池と須藤もだ。

 クラスメイトに必死に声をかける三人だが、手持ちに余裕のない生徒たちにはどうすることもできない。必死に見ないふり、気付かないふりでやり過ごそうとしている。

 手持ちに余裕のありそうな生徒は、大半が俺のグループメンバーだし、それを除けば高円寺くらいだろう。必然的に、助力は期待できない。

 その一方、一転して自らが退学の危機に陥っている山内は、それに気付いた様子もなく不思議そうな表情を浮かべたままだ。

 一度平均点が算出されようと、その後にテストの点数に変動が起こったのなら、平均点もまた変動が起こって然り。……分かり切った事実だ。

 点数の変動が一点だけならば、平均点の変化も微少だ。目に見える影響がなくても不思議はない。だが、数点もの変動が起こったとすれば、平均点に明らかな変動が起こってもおかしくはないのだ。

 そして今回、俺は愛里の点数を五点分購入し、上乗せした。そう、点数の譲渡ではなく、購入による引き上げだ。自然、平均点の変動も底上げ以外にはあり得ない。

 するとどうなるか? 数学の点数ワーストに変化が起こり、同時に足切りラインも上方向に変動する。池の上に愛里の名前が移り、最低点数が山内となり、その上に新たに赤いマーカーでラインが引かれた。

 

「……え?」

 

 ここまでされて、漸く山内は現実を認識したらしい。自らに訪れた退学の危機に、一転して顔色を真っ青にする。

 

「とまあ、私がポイントを受け取れば、こうなるわけだ」

 

 譲渡処理がまだ完了していない己が端末の画面を示しつつ、茶柱先生が偽悪的な表情を浮かべて言った。

 

「すみませんでした! 勘弁してください! 許してください! 俺はまだ退学になりたくないです!」

 

 ペコペコ、ペコペコ。まるで米つきバッタの如く、山内は必死に頭を下げる。諦めの悪さは買うが、同時に見苦しい。

 

「ここは皆の意見を集約しよう。山内のこれまでの実績とこれからの可能性を考慮して、彼を残すべきか残さないべきか決めようじゃないか。

 順番に一人ずつ、意見と理由を述べていってくれ。それによって、クラスメイトからの印象という点における山内の実力が、否が応でもハッキリとする。……そう。学力を差し引いても救うだけの価値が山内にあるか否かが。

 実力を評価するこの学校では、ピッタリの裁定方法だと思わないか?」

 

 俺はクラスを見渡しながら言った。それは、逃げるな、という命令であり、逃がさない、という宣告である。いい機会だから、クラスメイト達には、ヒト一人の進退に関わるという自覚と覚悟をこの機会に持ってもらう。

 そして、前から順番に一人ずつ、或いは流暢に、或いは言葉少なに意見を述べていく。

 結果は無情だ。山内を擁護したのは僅かに三人。平田と、池と、須藤だけだ。残りは全員、たとえ退学によるペナルティが発生するとしても、男同士の友情を感じていたとしても、山内の退学に賛同した。

 

「……結果は出たな。この学校は何よりも生徒を実力で評価する。

 学力も低く、運動能力も低く、それでいながら、クラスメイトに対して、クラスの実力者に対して、好印象を与える努力を怠った。……この退学は、お前の自業自得だよ、山内」

 

 茶柱先生の宣告と共に、その端末のボタンが押され、ポイント譲渡処理が完了した。

 この瞬間、山内の赤点退学は確定となった。

 実力者を敵に回すとどうなるか。実力者を味方につけるとどうなるか。成長する努力を怠ればどうなるか。……そういった諸々を、山内は身を以てクラスメイトに示すこととなった。その点において、山内の退学は決して無価値ではない。

 だが、退学する本人にとってはどうでもいいことなのだろう。

 山内の慟哭が、教室内に響き渡るのだった。




あからさまに特典という独自要素を意識させておいて、結局は使わないという……。
おかしいな、どうしてこうなったんだろう? 少なくとも、最初は使わせる気だったのに、気付いたら特典を使わず、原作より早く山内が退学となってました。

まあ、個人的には納得のいく流れだと思ってます。山内の言いそうなセリフだと思いますし、池と須藤の反応もあんなもんかな……と。
ただでさえ一刀目線だと山内を残しておく理由がないというのに、あんなセリフまで言われてしまったら尚更です。プッツンしたことも相俟って、ジワリジワリと追い詰めるような手法を取りました。
それが、多数決というクラスの総意を盾にしての決定です。賛成否定だけではなく、意見まで述べさせるオマケ付きです。
そのように流れを持っていきながら、責任は全員に分散させる、ある意味ではゲスくてセコくて卑劣な手です。
まあ、そうでもしないと成長に期待できないのがDクラスでもあるんですが。
対象となる山内を除き、36:3では、平田も不満を表すことができません。
平田の心情とは裏腹に、山内がいない方がクラスは幸せである、というのがDクラスの総意なわけですから。
むしろ、平田を抑え付けるために、一刀は各自に意見を述べさせました。

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