いざ事に及んでしまえば、芝居だの茶番だのといった考えは俺たちの中から消えていた。それも当然というもので、俺も桂花も役者というわけではない。結果的に役者じみた振る舞いをすることはあっても、あくまでも結果論でしかない。見栄えだの何だのと、そういうものを気にしながら行為に没頭するなど、元よりできるタイプではないのである。
だからそう。頭にあるのは、どうすれば燃え上がるか、昂るか、相手をより快楽へ叩き込めるか、それらに関わる駆け引きのみ。
愛を伴った行為であることを否定はしないが、それと同時に勝敗を分かつ大人のゲームでもある。何故ならば、俺と桂花はクラスが違うからだ。その時点で、こういった行為が『ハニートラップ』や『色仕掛け』の側面を持つのは、間違いのない事実なのだ。
学力でもない。スポーツでもない。愛と快楽の競い合い。より相手へと快楽を与えた方が、より相手を愛した方が、勝利するという単純にして危険な勝負。
「んちゅ……ちゅろ……」
そして、流石は桂花と言うべきだろう。俺と同様に魂からのフィードバックがあるからか、或いはそれにプラスしてこの世界で培った経験があるからか、その技量と耐久性は高い。……普通に考えれば、桂花が華琳とやっていない筈がない。
俺は桂花にキスをする傍らで、片手を制服の内側へと潜り込ませて胸を揉み、もう片手は秘所へと運んでショーツの上から擦っている。だというのに、一向に堪えた様子がないのだ。
いや、昂っているのは間違いないが、決して腰砕けにはなっていないのだ。それだけで、他の女子とは偉い違いである。
ばかりか、桂花も桂花で俺の胸へと片手を這わせ、もう片手はズボンのチャックを開けて侵入を果たしている。下着越しに齎されるその手技の、何と見事なことか。堪えきれず、瞬く間に俺のジュニアは屹立した。桂花の手に導かれ、チャックの隙間から外へと顔を出す。
瞬間、ザワつく室内の空気。チラリと見やれば、風と稟を除く面々が驚愕の表情を迎えていた。
「チッ、負けたぜ。経験は分からねえが、ムスコの大きさじゃあ俺の完敗だ。ってか、純日本人でこれってありなのかよ……」
そんな、龍園の呟きも聞こえてくる。……なるほど。龍園の言葉から察するに、どうやら俺のジュニアは相当に大きいらしい。いやまあ、俺以外のだと清隆のしか知らないからな。輝彦と一緒に風呂に入ることもないし。
「まったく……。こんなに簡単に大きくするなんて、本当に駄犬ね。ああ、失礼。駄犬じゃなくて種馬だったわね」
言葉で俺を攻めてくる桂花だが、言葉とは裏腹に昂っていること、そして俺を侮っていないことは丸分かりだった。
でなければ、俺を駄犬と罵りながら、直後には種馬へと訂正したりはしない。桂花自身が真に俺の節操のなさを見下しているのなら、駄犬扱いのままで十分なのだ。
しかし、彼女は訂正した。その事実こそが、彼女が俺の精力を侮っていないこと。同時に、独力では受け止めきれないと理解していることを如実に表している。
早い話、精一杯の虚勢である。言葉で俺を攻めることで、少しでも自分が優位に立とうとするなけなしの努力だ。
「なら、今一度味わうといいよ、桂花。種馬の精力というものを……!」
折角ジュニアが外に出たのだから、今度は指ではなくジュニアで桂花の秘所を攻める。スカートとショーツ、着衣状態ならばこその感触が、余計に俺を昂らせる。
「あうっ! ……んくっ……しくった……! やば……まさか……素股で……ここまでなんて……!?」
同時、桂花を快感が襲っているのは丸分かりだった。洩れ出る嬌声と呟きが、桂花の余裕のなさを如実に表している。
いや、違う! そもそもが桂花はツンデレ気質なのだ。追い詰められたからといって、素直に俺に弱みを晒す筈がない。つまり、これはポーズに過ぎないと見るべきだ。俺が優位を確信した途端、逆撃を食らわせてくるに違いない。
その証拠に、桂花の瞳には未だ余裕がある。冷静さを保っている。虎視眈々と逆撃のタイミングを計っている。
「フッ。危うく騙されるところだったよ、桂花。流石は魏の誇る猫耳軍師だ。だが、気付いた以上、油断はしない。俺の優勢のまま――うぐっ!?」
俺は勝ち誇って指摘したが、それは悪手に他ならなかった。……分かっていたが、止められなかったのだ。彼女たちを相手にして俺が優勢を取れることなど、そうはないのだから。
そして、その隙を突かれた。桂花のフトモモが、より強くジュニアを圧迫してきたのだ。
「あら? 罠を見抜いたのは褒めてあげるけど、勝ち誇るには早かったようね?」
ジュニアは桂花の秘所から洩れ出た愛液で濡れているし、何なら先走り汁だって出ている。だから、フトモモを締められようと、割り進めないわけではない。……わけではないが、その快感はダイレクトに俺のジュニアへと齎される。
桂花にも快感は齎されるだろうが、ジュニアとフトモモでは、どちらのダメージが大きいかなど改めて考えるまでもない。
「とはいえ、キスだとアンタに分があるのは確かだし、少し逃げさせてもらうわね」
言って、桂花は俺の胸元へと顔をうずめた。……やられた! 男女の身長差を活かしたテクニックである。こうなると、キスで主導権を奪い返すのも難しい。
そのくせして、桂花の方でフトモモを小刻みに動かしている。これでは一時休戦もままならない。
鼻腔を擽る桂花の香り、制服を着たままでの着衣プレイ、ジュニアに齎される小気味いい快感……目下、俺に不利な要素が揃い踏みだ。
そして――
「くうっ……もう、ダメだ……!」
この学校に入学して以降、俺は性技において初めての敗北を喫した。抑えきれぬ熱情が、桂花のスカートの中へと放出されたのだ。
「私の勝ちね?」
「ああ、俺の敗北だ」
何ということだろうか。言い訳のしようもない、紛うことなき完敗である。
「クク……。その様子だと、どうやら負けちまったようだなあ、北郷。……あと、サッサとそれをしまえや」
ニヤニヤとした笑みを浮かべて話しかけてきたのは龍園だ。
指摘されたこともあり、俺はジュニアをズボンの中へとしまった。当然、しまう前に軽くウェットティッシュで拭いている。
「ま、女にも侮れねえ奴がいるってのを改めて思い知るには、いいタイミングだったんじゃねえか?」
「……そうだな。確かにお前の言う通りだ。どうやら俺は、知らぬ間に驕り高ぶっていたらしい……」
そもそもの話。確かに俺は百戦錬磨の自負があるが、その相手は彼女たちなのだ。その分だけ彼女たちの弱点を知っているが、それは向こうも同じである。また、相手を裸にできないのなら、俺の攻め手は限られる。
振り返ってみれば、物の見事に桂花に翻弄された形だ。
「さておき、ご苦労だったな。餌には食いついてくれたようだ。テメエのムスコが引っ張り出された時には驚いたが、扉越しじゃあ角度的にも見えやしねえし、その後もスカートの中だったからな。この点で攻められても十分に躱せるだろう。
その一方で、俺の姿はもちろん、テメエらのキスや乳揉みを確認することは十分にできた筈だ。写真や動画にも残してあるだろう。一般的に考えれば、見事なまでに不純異性交遊の現場で、弱みとするには十分だからな。向こうもそう判断したからこそ、アッサリと引いたんだろうよ。まあ、俺たちに気取られねえようにってのもあるだろうがな」
龍園の言うことは尤もだ。普通に考えれば、俺、龍園、桂花の弱点となり得るのは間違いない。
しかし、あくまでも『普通』に考えればのこと。この学校で通用しきることはない――筈だ。
多分に限定的なところはあるが、『ハニートラップ』、『色仕掛け』、『枕営業』などが罷り通っているのが現代社会なのである。疑惑だけでダメージになることもあるが、それも場合によりけりだ。むしろ、疑惑こそがプラスを運ぶこともある。
確かに、俺と桂花はキスをしている。乳も揉んでいる。だが、その場所は人気もなく、カメラもない場所だ。周囲に対して『十分に配慮している』と捉えることもできるのだ。
まして、同じ場所に龍園がいる。俺と龍園がそれぞれのクラスの有力者というのは、もはや周知の事実である。だからこそ、『契約下の勝負だった』と言い張ることは十分に可能なのだ。
実力者である以上、社会に出れば先のハニートラップなどと無縁でいられる可能性は低く、それ故の予行演習という強弁も成り立つ。……まあ、それが通用するのは実力者の輩出を目的とするこの学校くらいだろうが。
「って、コラ! アンタら!?」
言葉を交わす俺と龍園の許に、焦ったような桂花の声が届く。
「おお!?」
見やると、風と稟が桂花のスカートの中へと頭を突っ込んでいた。
「まあまあ。桂花ちゃんは実際にお兄さんと楽しんだのですから、この程度は我慢してください」
「幸せのおすそ分け、というやつです。まあ、実際には一刀殿の精液なわけですが……」
「だから! ちょ! やめ!」
結果的には俺に圧勝した桂花も、風と稟の二人がかりには手も足も出ないらしい。
「ひよりちゃんと澪ちゃんもいかがですか? 伊達や酔狂で種馬呼ばわりされているわけではありませんからね。お兄さんのは濃厚ですよ」
「いらんわ!」
「あの、じゃあ、少しだけ……」
何のつもりか、風は伊吹さんと椎名さんに、俺の精液のおすそ分けを申し出た。残念ながら、或いは当然と言うべきか、伊吹さんには素気無く断られてしまったが、何と椎名さんが受け入れたではないか!? これには俺もビックリである。文学少女の興味というのは、ここまで大胆なものなのか……。
桂花の下半身から掬い出された俺の精液が、風の指から椎名さんの指へと移り、ついにはその口元へと運ばれた。クチュリ、クチュリと、椎名さんの口の中で俺の精液が躍っているのが分かる。
「本によって表現が異なるから気になっていたんですが、あまり美味しいわけではないんですね……。ただ、これはこれでクセになるような気がしなくもありませんね」
などとコメントまで残された日には、もはやこれだけで俺のジュニアはギンギンである。原液がここにあるぞ! と高らかに吠え猛っている。
ズボンの中で、行き場を求めて苦しんでいるのが嫌でも分かった。
「ッ~~~~!? アンタは! また節操なく硬くして!」
「うおっ!? ちょ、止めろよ桂花! 潰れたらどうすんだ!?」
「アンタのがこの程度で潰れるわけないでしょうが! くぉの! くぉの!」
そして、それに目敏く気付いた桂花が、ジュニア目掛けてゲシゲシと蹴りを繰り出してくる。
当然、俺は逃げながら文句を言ったのだが、それに対する反論が、何とも悩ましいものだった。これは信頼と諦観、どちらによるものなのだろうか?
「じゃれ合いはともかく、このあとのことです。優位を確信した彼らは、十中八九、お兄さん、桂花ちゃん、龍園くんのいずれかに接触を図るでしょう。
その中で最も狙い目なのは桂花ちゃんです。桂花ちゃんが唯一の女子ということもありますが、それぞれの直接のターゲットでないことも大きいです。その頭脳の良さも相俟って、お兄さんと龍園くんに一泡吹かせるための協力を持ちかけてくるに違いありません。
まあ、弱みを握ってからなので脅迫に外なりませんがね。そのことに本人たちが気付いているかはともかくとして」
「実際に誰がターゲットになったにせよ、素気無く断ってください。その時点で彼らの思惑は外れます。そうなれば、彼らに残された手は不純異性交遊を学校に訴えるくらいしかありません。一般的な学生にできることなど、その程度が関の山です。
まあ、桂花がターゲットの場合、断られた彼らが逆上する可能性が無きにしも非ずですので、伊吹さんが護衛に就いてください。無論、私たちも遠目に監視はしますが……」
「ああ、そういうこと。だから私もこの場に同席させられたわけね……」
風と稟の説明に、伊吹さんが溜め息を吐きつつ理解を示した。
伊吹さんに何らかの武術の心得があるだろうことは、見ていて分かった。下手に近付けば、容赦なく反撃の一撃が飛んできたことだろう。……まあ裏を返せば、それだけ警戒心が強く出ているということでもあるのだが、同性ということも相俟って桂花の護衛役には打ってつけだろう。
「無いとは思うが、裏をかかれた場合は? 如何せん、俺はその時任って奴を知らないんでな」
「尤もな危惧ね。まあ、その時は素直に敗北を認めるわよ。第一、その危惧があるから、矢面に立つのを私、アンタ、龍園の三人に留めたんでしょうが……。
学力や運動能力はどうあれ、私たちは時任や池たちを『普通の学生』と判断して策を練った。反感を加味すれば、普通の学生なら間違いなく引っ掛かる。そういう策をね」
「やれやれ、知らない間にリスキーな橋を渡らされたもんだ。……まあいいさ。いずれ、池のことはどうにかしなくちゃいけなかったからな。最後まで蚊帳の外にいるよりはよっぽどマシだ。その代わり――」
「皆まで言わずとも問題ねえよ。こっちだって、不必要にダメージを受けるのは御免なんでな。やり方次第で退学に持っていくことはできるだろうが、そうすると俺たちもCPにマイナスを食らう。中間における山内の退学時、テメエのクラスが負ったダメージは-300CP。流石に今の状況でそれは避けたい。それで得をするのはAとBだけだからな。
今回の目的は、あくまでもアイツ等に首輪を着けることだ。俺は別に着けなくても構わねえんだが、それでこの三人を敵に回すのも馬鹿らしい。なら、迷うまでもねえよ」
「そういうことなら、首輪を着けるにも条件を付けましょうか。私たちとしては、私たちの策が邪魔されなければそれでいい。その条件を満たすなら、アンタが反逆されようが知ったこっちゃないからね」
「なるほど、落としどころはあるか……。時任としても、丸々牙を抜かれるよりはマシだろうしな……」
「だったら、こっちもダメ元で学校側に掛け合ってみようかな? 普通に考えればダメだろうが、罰則としてなら適用される可能性はある」
「あん? テメエ、いったい何を考えた?」
「簡単なことだ。池と時任のトレードだよ。クラスという意味でなら差はあるが、生徒という意味でなら公平だからな。
これが叶った場合、池だけは『クラスの上昇』という旨味があるが、あくまでも見た目だけだ。ただでさえ底辺筆頭Dクラスの底辺なのに、いきなり格上のクラスに上げられたところでついていける筈もないからな」
「ふむ……。『引き抜き』、『トレード』、『部署移動』……そういう風に捉えれば、筋が通らねえわけでもねえか。探りを入れるだけの価値はあるな」
その後も、俺と龍園たちはこの後の展開について何やかやと意見を交わすのであった。
性技による一刀の敗北回でもあります。
その精力で着実に勝利を積み重ねている一刀ですが、状況や条件、相手次第では普通に負けることもある、というのを示しておきたかったのです。
まだ少し先ですが、無人島試験編では暴れさせるつもりです。恋姫名物とも言える『青(姦の)森』要素があって暴れさせないなど、一刀を主人公に起用した意味がありませんからね。
その下準備も兼ねてですが、現状の予定では無人島編突入前に星之宮知恵と白波千尋のお相手をするつもりです。場合によっては神室真澄も。
と言うか、星之宮先生を相手にした桃色伝は既に書きました。白波と神室はまだですが。
今後とも応援を頂ければ幸いです。
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