※この作品はR-18です。

東京都高度育成高等学校・北郷伝   作:山上真

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北郷伝:05

 会議室に入った俺たちは、四人の先生と向き合う形で席に着いた。

 元から備え付けられている物だろうか。机の上には一台のノートパソコンと小型のプリンタが置かれている。

 

「さて、本題に入る前に、改めて自己紹介から行おう。人生の先達としてこちらから名乗らせてもらうが、私と茶柱先生は既に行っているので、残りの二名だけとなるな」

「は~い。私は一年Bクラスの担任で星之宮知恵といいます」

「私は一年Cクラスの担任で坂上数馬と申します」

 

 学年主任ということもあるんだろうが、真島先生が率先して指揮を執り、応じてB、Cクラスの担任である星之宮先生と坂上先生が名乗りを上げた。簡素極まりないが、取り敢えずは十分だ。何かしらの不足が出たら、後々調べればいい。

 

「では、次はそちらが頼む」

 

 真嶋先生の言葉に、俺たちは顔を見合わせた。元々の質問者ということで俺を中央に据えているが、自然、男子は男子、女子は女子で固まってしまったので、人数差もあり些か不格好な形になっている。また、この状況で俺から名乗りを上げるのは変則的に過ぎる。順当に端から名乗っていくのが妥当だろう。

 その結論に達したのは俺以外も同じようで、無言の眼差しが右端に座る綾小路へと突き刺さった。ちなみに席順を言うと、右から綾小路、幸村、俺、軽井沢さん、櫛田さん、佐倉さん、松下さん、王さんとなっている。自然と五十音順になってしまったのは、ある種の性質と言えるだろう。

 

「えー、綾小路清隆です。北郷に声をかけられたこともあり、同席させてもらいました。今まで友だちができたこともないくらい、人付き合いが不慣れなものでして……。

 こんなんでいいでしょうか?」

「ああ。それでは次の生徒、頼む」

 

 こんな感じで、綾小路を皮切りに順次自己紹介を行っていった。

 

「ありがとう。……では、本題に入るとしよう。

 朝のHR時、北郷より茶柱先生へと質問があった。その内容は『一年全生徒の入試成績は幾らで購入できるのか?』というもの。これに間違いはないだろうか?」

「ええ、間違いありません。また、単に情報収集の一環として質問したわけではなく、購入する意思はあります。まあ、値段次第にもなりますが……」

「……ふむ。では結論を述べよう。私たち教師陣で相談し合った結果、一クラス一万ポイントが妥当だろう、ということになった。A~Dクラスの全てを購入しようとすると四万ポイントになるな。また、あくまでもクラス単位での販売となる」

「買います」

 

 真嶋先生の言葉に俺は即答した。安いと言えば安く、高いと言えば高い。だが、いずれにせよ手元に余裕があるうちでないと買えないのは確かであり、買うことで効果を発揮するのは早いうちだけだ。時間が経てば経つほど、効果は薄くなる。

 

「即答か。……良いだろう。では、こちらに四万ポイントの送金を頼む。確認でき次第データを渡す」

「あ、すみません。割り勘って可能ですか?」

 

 真嶋先生の言葉に俺が行動を起こす前に、松下さんが質問をした。

 

「別に構わないが、質問時にも危惧の声があったように、これは個人情報でもある。割り勘を行うのであれば、否応なくこの場にいる諸君ら全員に支払ってもらうことになる。

 また、原則として第三者への提示は許可できない。破った場合は相応のペナルティを背負ってもらう。まあ、発覚した時点での諸君が所有するポイントの全没収が妥当なところか」

 

 松下さんの質問に真嶋先生が答える。確かに、妥当と言えば妥当なところだろう。連帯責任にして一蓮托生。それでいて、各自が気を付けていれば防げることでもある。

 だが、一つばかりもの申したい部分がある。

 

「まさかとは思いますが、ずっと、なんてことはないですよね? こうして入学を果たした時点で、本来なら入試の成績など意味の薄いものです。この学校で、このタイミングだからこそ、確かな効力を発揮するに過ぎません。それを踏まえると、秘匿期間は一ヶ月が妥当なところじゃないですか?」

 

 ここは譲れない。三年間も後生大事に秘匿するなど、割に合わなさすぎる。

 

「一理ある。……が、なぜ一ヶ月間が妥当だと?」

「今朝のHR。この学校で生活していくに当たっての説明を茶柱先生から受けましたが、迂遠で婉曲的に過ぎました。監視カメラの存在や、学生証アプリのcl表示についてなど、敢えて口にしないこともあれば、まるで誤解させるような言い回しも目立ちましたし。

 そこから考えると、それへの対応で生徒の実力を測っているのだと思います。

 深く考えもせず、十万という学生にとっての大金に溺れた生活を送るのか。それとも、疑問を抱き、それを解消するために動くのか、或いは、疑問を疑問のままで終わらせるのか。……と言った具合に。

 ですが、それは俺たち一年生がこの学校のシステムについてよく分かっていないから通用することです。言うなれば、期間限定のトラップですか。学生相手に悪辣ではありますが、ここが『今後の日本を牽引する人材を育成するために政府が設立した学校』であることを鑑みれば、一概に否定もできないでしょう。学校名からして『高度育成高等学校』ですしね。そのカリキュラムが普通の学校と同じであるわけがありません」

 

 俺の言葉は、確かに先生方の琴線に触れたらしい。或いは感心したように頷き、或いは警戒するように顔を顰める。

 

「トラップときたか。では訊こう。学校は諸君に対し、どのようなトラップを仕掛けたのか? ……ああ、答えるのは北郷以外で頼む。このやり取りだけで、北郷が並みならぬ実力を有していることは分かったのでな。

 その北郷が同行を許可したメンバーだ。興味を惹かれても不思議はあるまい? まあ、人には向き不向きがあることも事実ではあるが、まさか全員が全員、この手の方向に弱いわけではないだろう?」

 

 やや本題から脱線してはいるが、叶うのならローリスク・ハイリターンが最上だ。それを思えば、無駄な回り道でもない。

 

「まず、茶柱先生は朝の説明で『三年間クラス替えはない』と言いましたが、これは正確ではありません」

「ほう?」

「学生証アプリのclという表示。おそらくこれは『class』の略です。prは『private』の略ですね。

 入学を果たした実績と可能性を評価し、共通して十万ポイントの配布。それに間違いはないのでしょうが、あくまでもクラスの評価ポイント――CPを基準としたものであり、それが個人的なポイント――PPとして配布されていることになります。

 一見して平等ですが、その裏で、既に俺たちは何らかの基準によってランク分けされたと判断しました。文字通り、Aから順に優等生判断を受けた生徒ということであり、Dクラスの俺たちは劣等生や問題児ということですね。……まあ、個人的にはこの推測に思うところがありますが、一概に否定しきれないのが痛いところです」

「これは先輩方の教室と、ここにいる一部メンバーの過去から確信を抱きました。

 中学時、北郷くんは不可抗力とはいえ二年間の間意識不明に陥り、多方面に多大な迷惑をかけた。それに伴って出席日数も少ない。

 幸村くんは学力を重視するあまり、運動能力を育むのを怠った。

 軽井沢さんはイジメを受け、入院する事態にまで発展。それにより問題は表面化すると同時、唯々諾々とイジメを受け続けた精神性が疑問視された。

 佐倉さんは、本人によると『頭も悪く、運動もできず、人付き合いは苦手』だそうですが、アイドル『雫』として、それを補って余りあるほどの人気と知名度があります。佐倉さんと雫が=で結ばれてないだけで、発覚すれば一騒動起こっても不思議はありません。

 私は問題といった問題を起こしたわけではありませんが、出る杭となって打たれることを忌避し、実力を隠して生活していました。『慎重』と言えば聞こえは良いですが、『臆病』と言われればそれまでです。

 王さんは留学生ということもあり、言語学に偏重して取り組んでいたそうです。今でこそ学力面で不足はないとのことですが、日本に来て暫くの間は日本語の読解や認識不足によるミスが目立っていたようです。また、運動は苦手との自己申告もあります。

 話を移しますが、先輩方の教室は一年生よりも席数が少なかったです。それもクラスで差があり、Dクラスが一番少なかったです。これを単純に考えると、退学者が出たということでしょう」

「えー、この事実とそれぞれの過去を照らし合わせると、Dクラスは『低レベルで能力が均一してる生徒』、『一能突出型の生徒』、『優秀ではあっても、それを打ち消して余りあるほどの欠点を抱えているか、問題を起こした生徒』がメインで配属されていると考えるのが妥当です」

「この配属傾向から考えると、Dクラスほど何らかのチェック項目に引っ掛かる生徒が多いと思います。廊下を走るな、が代表例ですかね? 気を付けていてもついつい走りがちですから……。

 誰かが引っ掛かる毎にクラス評価が下がり、その分だけ翌月の支給ポイントもまた下がり、最悪は0ポイントの支給だってあり得ると思います。食堂には無料の山菜定食、自販機でも水は無料、購買でも基本的な勉強道具や一部の飲食物が無料で売られてましたから、嫌でもそう考えざるを得ません。

 それに気付くなり危惧を抱くなりして事前に対処しようとしても、そうそう上手くはいきません。世の中、痛い目に遭うまで学習しない人間もおり、劣等生や問題児ほどそれは顕著でしょう。結果、翌月も学校での事前評価通りに落ち着くという流れですかね?」

「でも、世の中に絶対が無いのも事実ですから、時と場合によっては事前評価を覆すことだってあると思います。テレビで見るスポーツの逆転試合がいい例ですが、学校側としてはその事実を認めざるを得ません。

 結果、クラス評価が覆ると、クラスそのものが替わることになるわけです。DクラスがCPでCクラスを上回った場合、今度は私たちがCクラスになるといった感じです」

「そう考えれば、clや監視カメラについて言及しないのも納得です。学校側は、言わずとも生徒が気付き、疑問を抱き、どのように動くかで実力を測っているんですから。

 10万PPについては説明しても、その上に表示されているclについては何の説明もしない。監視カメラはあってもおかしくないですが、その数が異常。……わざわざ説明せずとも、疑問を抱くに足るだけの情報は与えているのが秀逸ですね」

「そして、この学校の謳い文句である推薦の確約についてだけど、条件付きなのが正確なところじゃないですか? 本人の能力が足りなければ、受かったところでついていけるわけがないんだし。そんな生徒を推薦して途中で辞められようものなら、推薦した側もダメージを免れないだろうし。つまり、所属クラスのランクに応じて推薦先のランクも下がる。Aクラスでの卒業でないと希望する進路への推薦は確約できない。……違いますか?」

 

 俺以外が次々と畳み掛ける。

 果たして、それに対する先生方の反応は拍手であった。

 

「いやはや、実に見事だ。毎年、入学当月に絡繰りに気付く生徒は何名かいるものだが、入学初日に、しかもそれがDクラスというのは諸君が初めてだ。

 一つ惜しいところがあるとすれば、推薦についてだな。卒業特典が適応されるのはAクラスのみとなっている。

 我々はこの事実を認め、諸君の実力を高く評価すると共に、褒美としてPPを支給する用意がある。……受け取るかね? まあ、こちらとしてもこの絡繰りを声高に叫ばれるのは困るので、受け取るのであれば契約書に同意してもらう必要はあるが。

 もっとも、褒美を受け取らないにせよ、五月に入るまでは絡繰りの口外に関して制限を受けることに同意してもらう形にはなるのだがね」

「それ、褒美を受け取らない理由ってあります?」

「端的に言って無いな。だが、受ける制限の度合いが異なるのも事実だ。褒美を受け取らないのであれば、周りに気付かせやすくはなる」

「気付かせたところで、それがプラスに働かないんなら意味が無いですよ。……先に契約内容を確認しても?」

「当然だな。……星之宮」

「ちょっと待って。今印刷する」

 

 真嶋先生の言葉に、ノートパソコンを弄っていた星之宮先生が答えると、程なくしてプリンタからA4サイズの用紙が排出された。

 眼を通すと、『契約書』というタイトルに始まり、今日の日付、甲乙間での契約内容、サイン欄が記載されている。

 褒美としてもらえるのは、一人当たり百万PP。一般学生にとっては破格である。

 俺たちに求められるのは、五月一日までこの学校の特色である『Sシステム』に関する内容を一年生に対して黙秘すること。先輩方はSシステムの内容を知っているので、話題に挙げても問題はない。

 破った場合は、発覚時点でのPPの全没収。これは契約書に同意したメンバー全員に効果を発揮する一方で、効果範囲は契約書単位に限られる。

 つまり、俺たちの誰かが絡繰りをばらし、それが発覚すれば、俺たち全員がその時点でのPPを全部没収されることになる。その一方、他の誰かが同様の契約を結び、そちらが原因の場合は、俺たちがPPを没収されることはない。

 まあ、ペナルティとしては妥当なところだろう。実力者を輩出するのがこの学校の目的である以上、ポンポンと退学者を出していては道理に沿わない。それを思えば、この手の契約違反ペナルティで退学とするのは重すぎる。

 だが、一切の退学者が出ないのでは、それはそれで差し障りがあるのも間違いない。本当に高度な育成を行っているのか? と周りから疑問を抱かれることになるからだ。である以上、テストで一定科目以上の赤点を取れば退学、などといったルールが存在している可能性は否めないだろう。

 

「どうする? 俺は契約した方が良いと思うけど……」

「異議なし」

 

 真っ先に賛同したのは、なんと櫛田さんだった。

 

「おや、良いのかい?」

「別に良いわよ、もう。先生たちには既に私の過去が知られているみたいだし、何より中学時代と同じ失敗をするつもりはないの。

 不特定多数に優しくすることで、信頼を集め、称賛を集め、秘密を集める。それは確かに魅力的で誘惑的だけど、有象無象に親身に接するのは精神的負担が大きいのも確かなのよ。

 中学時代の私は、結果的にそれがストレスとなり、その原因ともなる他者への不満を匿名ブログに投稿することで発散していたんだけど、それがクラスメイトにバレちゃってね。瞬く間にブログは拡散。秘密に関する内容であるが故にそれを知る者自体が限られており、それが不特定多数に及ぶともなれば、容疑者は自然と私に絞られた。

 待っていたのは、なぜ? どうして? という詰問の嵐。その反応に理解はできるし、私の行いを悪いと思わないでもないけど、私の優しさに甘えるだけの連中に言われたくないとも思った。平たく言えば、負担との釣り合いが取れてなかったのよ。取れていれば、そもそもそんなことはしなかったわけだしね。

 結果、責められることに耐えられなくなった私は、ブログにも投稿していなかった秘密をぶちまけることで矛先をズラし、学級崩壊を引き起こした。私がDクラスに配属されたのは、十中八九これが原因でしょ。

 けど、そうと分かっていても、禁断の蜜を味わってしまった私は、行動を変えられそうにない。止められそうにない。

 ならどうするか? 私の負担が和らげばいい。そして、ストレスの発散法を変えればいい。……私はこのメンバーの前でのみ不満を漏らす。そうすれば私の本性が外部にバレる可能性は格段に低くなるし、そっちもそっちで情報を得られるからマイナスばかりじゃない。それに、このメンバーなら私のストレスも無駄に溜まることはないだろうし。

 そう、このメンバーは一蓮托生。これなら持ちつ持たれつだし、良い方法だと思わない?」

 

 櫛田さんの過去には驚きだが、その提案を否定はしきれない。

 

「何と言うか……軽井沢といい、櫛田といい、佐倉といい、不発弾的な女子が多くないか?」

 

 頭を押さえながら幸村が言った。それも否定はしきれないが、男子にも綾小路という特大の不発弾が存在しているので、女子ばかりを如何こうは言えない。

 ともあれ、一番の壁だった櫛田さんが同意したことをきっかけに、契約は無事に締結された。 

 そして、話は本題に戻る。……そう、入試問題の購入についてだ。

 臨時収入が入ったこともあれば、契約違反をした際のペナルティも同一である。これでは割り勘をしない理由がない。

 

「では、一人頭五千ポイントですね」

 

 男子三人、女子五人で計八人。ピッタリだ。

 先生方からやり方を教わりつつ、送金=譲渡を済ます。

 

「確認した。では、これよりデータを送るが、先述した通り、くれぐれも取り扱いには注意するように」

 

 真嶋先生の言葉からそう言ってから程なくして、端末にメールが四通届く。

 それぞれにファイルが添付されており、試しにDクラスのを確認すると、真っ先に目に付いたのは綾小路の名前。その成績は、全科目オール50点だった。

 

「綾小路……お前、これ誤魔化す気があるのか?」

「うん? どういうことだ? これ以上なく平均的な点数だが?」

「まあ、確かに100点満点のテストの場合、50点が平均なのは間違いない。……けどな? 人には得意不得意があるものだし、全教科を50点で揃えるなんて、逆に難しいんだよ。それこそ、故意に狙いでもしない限りはな」

「偶然だよ、偶然」

「いや、流石にそれは無理があるぞ、綾小路。

 まあ、この面子のそれぞれから色々と重い過去を聞いたばかりだからな。きっと、お前も何かしら背負ってるんだろう。だから、何でこんな真似をしたのかいちいち訊いたりはしないが、よっぽどの馬鹿でもない限りは怪しむぞ。

 それだけは言っておく」

 

 幸村の言葉に綾小路以外の全員が頷いた。

 

「むう……」

 

 それを受け、綾小路は唸った。

 

「和気藹々としているところすまないが、他に何か訊きたいことはあるか? ないなら退室してもらいたいのだが……」

「じゃあ、二つ。……一つ目ですけど、寮に個室が用意されてるとのことですが、多人数で一緒に生活するための部屋とか一軒家とかってありますか?」

「ああ、存在する。流石に一軒家はないが、学生寮は主に下層部が男子、中層部が女子となっており、上層部はパーティールームとなっている。規模によって設備や収容人数は様々だが、規定ポイントを支払うことでレンタルや購入が可能だ」

 

 これを確認したのは、やはり独り暮らしだと色々と手間だからだ。他の生徒と一緒に生活することで食費を折半し役割を分担すれば、その分だけ余裕が生まれる。……まあ、共同生活のストレスで問題が起こる可能性も否定はできないが。

 

「ありがとうございます。二つ目ですが、部活の創部はどうすればいいですか?」

「創部? 規定以上の人数を揃えた上で監督する教師を用意すれば、余程でない限りは許可が下りるが……。試しに訊くがどんな部活を創るつもりだ?」

「仮名としては『高度育成高等学校スクールアイドル部』とでも。佐倉さんを始め、せっかくこれだけの人員が揃ってますからね。有効活用しないのは損ってものです。

 モール内のファッションショップなどと契約しモデルを務め、それを写真に収め、活動日誌に載せて有料販売する。或いはポスターにでも加工してもらって店内に展示する。そうして得た売り上げの一部をモデル代として貰う。……こんな感じです。

 世の中、個人の才覚だけではどうしようもありません。どうしたって資本力と人脈がモノを言う部分はあるんです。それを構築する方法の一例ですね。その折衝を学校側にやってもらえればと思っています。

 御覧の通り、メンバーの中には人気アイドルの雫がいますからね。本名で活動してもらうにしても、敷地内にストーカーがいないとも限りません。あくまでも部活の態を取り、学校側が折衝を行うことで、予防や防犯にも繋がりますし、何だったら学校の広報誌に載せる手もあります。

 あとは他の部活と契約することでの助っ人活動も考慮に入れてます。例えばですが、写真部と契約し被写体を務めることにし、そこに先のファッションショップを巻き込めば、どこもWin-Winです。俺たちはポイントを稼ぐことができる。写真部は合法的に美男美女の写真を撮ることができる。店側は人気アイドルを安く起用することができる。雫として活動するなら所属事務所を通さなければならないでしょうが、本名で活動し、尚且つ敷地内で完結するのなら、その必要もないでしょうからね。……良い手だと思いませんか?」

 

 これは佐倉さんを誘ったときから考えていたことだ。お金代わりとなるPPを稼ぐ手段は、いくらあっても困ることはない。

 

「ふむ。些か以上に興味深い話だ。しかし、やはりこの場で判断を下せる内容ではないな。後日、職員会議で提示し、その結果を知らせることを約束しよう」

「お願いします。……それじゃ、帰ろうか」

「それはいいんですが、創部の件とか聞いてないんですけど?」

「そりゃあ、言ってないからね。……ただ、損はないと思うよ。特に俺たちはDクラスだからね。月毎の支給ポイントに頼らぬ稼ぎ口を確保するのは急務と言える」

 

 俺の言葉を否定はできないのだろう。それぞれが釈然としないながらも頷くのが印象的だった。 




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