※この作品はR-18です。

東京都高度育成高等学校・北郷伝   作:山上真

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2025/07/13:知恵の激昂場面にちょっと加筆しました。


北郷伝:40

 朝に茶柱先生から通達のあった『昨日の件の補足』というのは、茶柱先生と坂上先生以外への――理事長を始めとする高度育成高等学校上層部への証拠の提示だった。

 まあ、考えてみれば当然である。口頭だけで納得できる筈がないのは、何も池たちだけに限ったことでもない。こちらで提案した『トレード』のことを鑑みれば、学校側がそれを認めるに足る証拠の提示が必要になるのは当然のことだ。

 言ってみれば、茶柱先生も坂上先生も末端の教師に過ぎないのだから尚更である。

 

「いやはや、今年の一年生は飛ばしてるねえ……。北郷くんは以前からだったが、他にもそういう子がいるのは非常に頭が痛い反面、実に喜ばしい限りだ。言うなれば『嬉しい悲鳴』というやつだね。

 そちらはたしか、1ーCの龍園翔くんと旬桂花さんだったね。三國の御三家の一角、曹家の重鎮家系ということを鑑みれば旬さんには自然と納得できるけど、だからこそ、特にそういうバックボーンのない龍園くんには素直に驚きだ。

 トレードの件は了解したよ。すぐにとはいかないけど、僕の権限において実行・実現を約束しよう。実験的な要素が強いのは確かだけど、だからこそ試してみるだけの価値があるのは間違いないからね。

 弱みを晒すようだけど、正直なところ、せっつかれている面があるのも否定できないんだ。どんな組織も一枚岩ではなく、それは日本政府も例外ではないからね。

 確かに、当校の卒業生の中には世界的に活躍している人材がいるのは事実だ。けどその一方で、些か『お行儀がいい』人材に偏っているのも事実なんだよ。そして日本政府は、出資しているスポンサーは、必ずしもそんな人材を求めているわけではない。……声高には言えないけどね。君たちも、ここだけの話にしておいてほしい。

 そんなわけだから、君たちには期待しているよ。君たちが実力を示し続ける限りにおいては、僕たちも可能な限りの支援をすることを約束しよう。

 では、今日はありがとう。実に有意義な時間だったよ。もう下がってくれて構いません。……ああ、北郷くんはこの後、星之宮先生とお話をお願いします。僕がやれればよかったんだけど、如何せん多忙の身でね。早速、トレードの件について話を詰める必要もあるからね」

 

 そんな感じで、割とアッサリ話は終わったのだった。

 そして俺は今、知恵の後をついて只管に歩いている。とっくの昔に校舎からは外に出ており、それでも足を止めず、夏真っ盛りの炎天下の日差しの下を延々とだ。

 なお、長くなるかもしれないから、ということでキチンと荷物は持ってきている。

 学生寮のある方向とは真逆ということもあって、こっちの方には来たことがなかった。

 しばらく歩いていると、広大な範囲の中に建造途中と思しき建物の群れがあった。

 

「これは……?」

「驚いた? 説明すると、現在建設途中の新校舎とかその他諸々になるよ。

 やっぱほら、昨今って技術の進歩が速いじゃない? それこそ目覚ましいほどに。この学校の場合、掲げるお題目がお題目だからね。それに乗り遅れないためにするには、設備やら何やらと定期的な更新が否めないわけ。

 ただ、物によりけりではあるけど、一度できあがった物に後から手を加えるのって中々に難しいところがあるからね。家電の修理であれば、内容次第では素人修理でもどうにかなったりするけど、それが無理なら本格的な修理か買い替えを検討するでしょ? 

 んで、そういう場合って、往々にして買い替えの方が安かったりするわけじゃない? 基礎技術の進化によって性能自体が向上しているのに、敢えて高いお金を出して一昔前のそれに留める理由も早々ないでしょ?

 これもそれに同じ。とはいえ、流石に校舎とかになると、一朝一夕でできあがる物でもないしね。今のうちから着手しているわけ。……如何に技術が進化したところで、端から見れば大差のないように感じる物もある。そりゃあ実際には劇的な進化を遂げているのかもしれないけど、門外漢には理解しきれない部分だよね」

 

 俺が思わず足を止めると、知恵もまた足を止めて説明してくれた。

 そう聞けば、なるほど、納得ではある。

 知恵は再度歩を進めながら口を開いた。

 

「これは話したかどうか忘れたけど、私と佐枝ちゃんと真嶋くんって、この学校の卒業生にして同級生なのよ。

 んで、生徒が寮生活を義務付けられていたのは今と同じなんだけど、当時は個室ではなくてシェアハウス制だったのよ。つまり、退学者の出る在学中はともかく、入学時は必ず誰かとルームメイトになるってわけ。そして、私は佐枝ちゃんとルームメイトだった。

 仲は良かったよ。入学時から一緒に生活してクラスも一緒となれば、仲良くならない理由がないよね。親友であると同時にライバルでもあった。――ただ、それもあの日に壊れてしまった」

 

 そこで、知恵は一旦言葉を止めた。おそらくは、この後に語られることが本題なんだろう。

 

「ここの教師としては、君相手に今の段階でこの件について言及するのは問題なんだろうけどね。――でも、これは教師としてじゃない。私の、星之宮知恵個人の事情であり、未だに囚われているトラウマだから……」

 

 その言葉からは、知恵の葛藤が窺える。話すかどうか、散々に悩んだのだろう。その上での、精一杯の理論武装なのだ。

 

「今から十一年前、高校三年生の三月時点で、私と佐枝ちゃんはBクラスだった。ただ、四クラス全部が僅差でね。『特別試験』と言われる、CPが大きく変動する試験の結果次第で容易に序列が入れ替わる状況だった。そう、タイミング的にAクラスでの卒業も夢じゃなかったんだよ。

 そんな中、卒業試験を目前にして、『満場一致試験』と言われる特別試験が行われた。これは、クラス全員の意見が一致するまで投票を繰り返すというものでね。その時の内容は『クラスメイトが一人退学になる代わりに、100CPを得る』というものだった。

 当然、議論は紛糾したよ。だけど、Aクラスでの卒業を諦めるのは誰もが惜しく、制限時間が押していたこともあって、賛成で満場一致になった。

 そうなると、次に決めなきゃならないのは、誰を退学にするか、ということ。これまた紛糾したけど、その状況下、一人の生徒が声を上げた。それは、当時の私たちのクラスのリーダーにして、佐枝ちゃんの恋人だった。彼が、自分が退学になる、と立候補したんだよ。

 ここまで話せばもう分かるよね? 佐枝ちゃんが反対に入れ続けたんだよ。結局、満場一致になることなく試験は制限時間で終わりを迎え、タイムアウトのペナルティとして300CPを失った私たちは一気にDクラスへと転落、時期的に逆転は絶対に不可能となり、クラスは崩壊した」

 

 知恵は静かに語り、口を閉じた。

 ポンポンと新情報が出てきた。確かに、これならば語るかどうかを葛藤するのも頷ける。

 同時、中々に壮絶な過去だった。これならば、確かにトラウマになってもおかしくはない。

 

「確かに辛くて悲しい記憶だけど、それだけなら、私もこれほどのトラウマにはならなかったのかもしれない」

 

 知恵が再び口を開いたのは、そう俺が思った瞬間だった。どうやら、話にはまだ続きがあるらしい。

 

「最悪なのはその後でね。あんなに散々とこっちを巻き込んでおいて、結局佐枝ちゃんはその恋人と破局したんだよ。

 ふざけんな! その程度で自然消滅するくらいなら、最初から退学を受け入れろよ! Aクラスでの卒業も! クラスメイトとの友情も! それら全てと引き換えにしても恋人と一緒にいたいから反対し続けたんじゃないのかよ!? だったら、せめてその想いは貫けよ! それが、巻き添えになった私たちに対するせめてもの礼儀だろうが!

 そもそも! この学校において付き合うってのは――異性同性問わず一定以上の関係を維持し続けるのなら、『不意の別れ』ぐらい織り込み済みな筈だろうが!? こっちは入学したての新入生ってわけじゃない。卒業間近の三年生だったんだぞ! 同級生との別れぐらい経験してただろうが! だからこそ! その上で付き合い続けるんなら、その分だけ強固な関係じゃなきゃおかしいだろうが!?」

 

 それまで淡々と語っていた知恵は、突如豹変したように叫んだ。

 激昂。まさにそう表すのに相応しいだろう。

 だが、確かにその言い分には同意できるものがある。巻き込まれた被害者としては堪ったものじゃないだろう。

 せめて茶柱先生とその恋人が関係を維持したままであれば、たとえ全員ではなくとも、『せめてもの救い』として自分を納得させることができた者はいた筈だ。……実際、知恵はそう言っている。

 

「ただ、そうは言っても当時の私たちは高校生。世間一般で見ればまだまだ未熟な子供に過ぎないからね。私自身、未だに感情では納得できてないけど、時間が経つにつれて理性的に考えることもできるようになった。……何だかんだ、佐枝ちゃんを親友と思ってるのは同じだからね。

 だから、私なりに佐枝ちゃんを理解できるように頑張ってみた。だけど駄目だった。盛大な破局を目の当たりにしてるからね。どれだけいろんな男の人と付き合ってみても、心から燃え上がることはできなかった。肉体的な快感を得ることはできたけど、結局はそれ止まり。心のどこかは常に冷めていた。その結果、お酒に逃避することも増えていった。

 そんな時に、佐枝ちゃんがこの学校に赴任したことを知った。より詳しく調べてみれば、教師になって教え子をAクラスに導くことで、自身の過去も清算しようとしているらしかった。

 佐枝ちゃんが前向きになったのを喜ぶ反面、怒りが再燃したよ。立ち直ったんなら、まずは親友の私に『迷惑をかけた』と一報を寄越すのが筋でしょうが! それが無いのが許せなかったから、一言文句を言ってやろうと私も後を追ってきた。そして実際に顔を合わせたら、更に怒りが高まった。

 佐枝ちゃんは、全然前向きになんかなってなかったんだよ。あの結果を、未だに自分のミスだと責め続けている。確かにミスなのは認めるよ。結果的には、佐枝ちゃんが反対し続けたことで転落したんだからね。

 だけど、私が求めてるのはそんなんじゃない。人間、自分を最優先に考えて何が悪いっていうのさ? だから、ミスだと責めるんならその後なんだよ。あれだけやっといて、恋人と破局したことこそを責めるべきだ。別れるんなら、せめて卒業後――私たちの知らないところで別れろってのさ。

 第一、試験を無事に乗り越えたとて、Aクラスでの卒業が叶うと決まっていたわけじゃない。可能性だけなら、それこそ卒業試験で転落する可能性だってあった。過程がどうあれ、Aクラスでの卒業が叶わないなら、どのクラスでの卒業だろうと変わらないんだよ。

 てっきり、スッパリと失恋を受け入れて、その上で自分の果たせなかったAクラスでの卒業を生徒に託しているのかと思いきや、実際は全然そんなこともなかった。

 私が怒るのも無理はないと思わない? だから、ひたすらに佐枝ちゃんの邪魔をすることにした。その思い違いが是正されるまでね」

 

 知恵がそこまで語ると同時、一つの建物の前に到着した。他の建物と違い、この建物だけは完成していた。見た感じだと大きめの一軒家といった感じだ。

 

「はい、到着。お疲れ~。……一応この建物の説明をすると、赴任時点で結婚相手がいる、もしくは赴任中に結婚した教師に貸与される家のモデルケースだよ。まあ、この家に関してのみは、途中から追加で手を加えているらしいけどね。

 やっぱりね、理事長を始めとして結婚している教師にとって、現在の状況は辛いらしくて。全員が全員ってわけじゃないけど、こっちもあっちも、会えないからこそ浮気を思い浮かべることもあるらしいし。そうじゃなくたって、家族と気軽に会えないのは単純に寂しいしね。生徒なら最長でも三年の区切りがあるけど、教師にはそんな区切りもないわけだし。

 幼い子供がいたりすると、それはそれでまた別種の問題を生んでしまうけど、それでも働き手に配慮する必要はあるからね」

 

 家を指し示して、知恵は説明をした。

 その説明には納得せざるを得ない。理事長も長らく奥さんに会えてないのを寂しがっていたしな。

 大々的に表に出せない情報が満載なことを鑑みれば、誰でも彼でも受け入れるわけにはいかないが、結局のところ『陸の孤島』であることに違いはないしな。一度懐に入れてしまえば、外部にバレるリスクが少ないのは確かだ。

 なら、教師の結婚相手を招くのも、教員寮以外で生活させるのも、道理と言えば道理だろう。敷地内に存在する施設的に、生活に困ることはないわけだしな。言う通り、子供の問題はあるだろうが。

 

「この程度、って言い方もアレだけど、校舎に比べれば建築するのも遥かに手早く済むのは間違いないしね。……んじゃ、入ろっか」

 

 知恵はそう言ってカードキーを翳す。ピッと音がしてロックが外れるのが分かった。 

 家の中はひんやりとしていた。予め冷房を利かせていたのだろう。

 玄関を上がって正面に廊下があり、その片脇には階段がある。珍しいことに、上階だけでなく地下へと続く物もある。

 

「まあ、一軒家なんて部屋の配置が違うだけで、中身は大概同じだしね。覚えてしまえば、意外とすんなりだと思うよ」

 

 知恵の先導で家の中を見ていくが、確かにそのようだった。リビングを始め、一階には共同で利用する部屋が固まっているらしい。バスルームは意外と広かった。浴槽も、ホテルや旅館の大浴場まではいかないが、大人が複数人一度に入れる程度の大きさはある。その分、掃除は大変そうだが……。

 

「二階と三階の方は、個室とか客間とか書斎とかが固まってるね」

 

 基本的には夫婦での生活になるとはいえ、同僚を招くことを想定しているからだろうか? 個室と客間の数は意外と多かった。その分だけ客間は狭めだが、ベッドもあるし、単純に寝泊りする分には問題もないだろう。

 

「それで地下だけど、基本的には幅を取る部屋が置かれてるよ。見れば早いね」

 

 後をついて行くと、板張りの格技場と思しき部屋やカラオケルーム、ビリヤードにダーツ、カード台などが配置された遊戯部屋があった。特に、遊戯部屋に大半のスペースが割かれている。

 

「最後にこの部屋が、今日、一刀くんを連れてきた本題」

 

 そう言って案内されたのは、地下の一角にある部屋の前だ。ここだけは、他の部屋と違って鍵がなければ入れないようだ。

 知恵は、カードキーを取り出すではなく、己の端末を翳した。すると、玄関同様にピッと音がしてロックが外れた。

 

「ここはカードキーじゃないんですね?」

「そう。この部屋はカードキーじゃ開かない。開けることができるのは、限られた人物の端末だけ」

 

 知恵がそう言った理由は、部屋の中を見れば一目瞭然だった。そこには、堂々と三角木馬が鎮座しており、鞭や縄なんかも置かれていたからだ。文字通りのSMルームである。

 

「良いんですか、これ? いや、この部屋だけじゃなくて、建築法とかそんなのも」

「良いか悪いかで言えば、決して良くはないでしょうね。ただ、そんな道理で解決できるのなら、元より何の苦労もないからね。何せ、事は当校の生徒に関わる問題なわけだし。

 しかも、軽井沢恵さん一人だけかと思いきや、問題の種類は異なれ、他に佐藤麻耶さんという生徒もいた。一年生160人の中で二人、それも揃ってDクラスよ? それも、一学期の間に見つかっている。この事実を鑑みると、私たちが気付いてないだけで、他にもこんな問題を抱えた生徒がいてもおかしくはないわ。

 まあ、実際にいたら頭が痛いどころじゃないけども」

「知恵。残念ながら……」

「え?」

 

 頭を押さえて語る知恵に、俺は残酷な事実を告げざるを得なかった。

 俺の言い出しを聞いた時点で、分かりやすいほどに知恵の表情が歪む。聞きたくない! とその表情が語っている。

 

「1ーAの神室真澄。彼女は軽度ではあるが破滅願望持ちだ。……どうやら、親から満足な愛情が与えられなかったようでな。

 それに対する反発と愛情の飢えから万引き行為に手を染めている。それも結構な常習犯だ。入学早々、この学校でもやらかしたらしい。幸いと言うべきか、有栖がその場面を目撃して、その後は統制していたようだが……。実際、有栖に言わせると『手慣れているように見えた』そうだ」

「それでもAクラスに配属されてるってことは、問題として取り沙汰されていないということ……。オマケに、一刀くんがそう言うってことは、既にその証拠もないんでしょうね」

「その通り。ただ、万引き行為に罪悪感を覚えない割に、一般常識や良識は持ち合わせているし、当人は犯罪行為と認識しているのが難点でな。

 愛情の飢えからくる行為だから、真澄自身が『誰かに必要とされている』と認識している限りは抑えることもできるようなんだが、それがなくなれば、自分では止められないらしい。……まあ、だから『軽度の破滅願望』と評したわけだが。

 その状況で、今月から有栖はDクラスへと移籍になった。当然、今までのように統制ができるわけがない。有栖自身、真澄に情が湧いて今では親友認定もしているから放置もできない。

 苦肉の策として、有栖は真澄を俺に差し出した。俺に抱かせることで、愛を満たそうと考えたわけだ。

 結果的には上手くいったが、付け足すなら、ただ愛されるだけじゃあ真澄にとっては足りないんだ。万引きを犯罪行為と認識してる割に、罪悪感がマヒするほどに繰り返した真澄は、自分が罰されることも求めてるのさ。言ってしまえば、限定的なマゾヒストと化している。心は愛を求め、肉体は罰を求めてるんだ。

 実際、昨日相手をしたわけだが、結構鬼畜なことも行った。敢えて説明するなら、イラマチオから始まって、飲尿させて、最後はバックから犯しつつ、臀部が赤くなるまでのスパンキングだ。そこまでして漸く罪悪感が復活したらしいが、所詮は一時的なものに過ぎないだろうな……。

 おそらくは、これからも何度と似たようなことをすることになる。少なくとも、真澄の罪悪感が安定して回復するまでは……」

 

 俺の言葉を受け、知恵はガックリと項垂れた。

 

「ねえ、一刀くん。一刀くんは、私に何か恨みでもあるのかな? かな?」

 

 そして、壊れたような表情で知恵は俺に問いかけてくるのだった。




無論のこと、新校舎云々のくだりは本作の独自設定です。
都合の良い場所を提供するための理由付けとして捻り出しました。

本作では、知恵と佐枝は同じ出来事に起因してトラウマを負ってます。そして、それは両者で微妙に違います。
佐枝の方はまあ原作通りですが、知恵の方は試験での転落はきっかけに過ぎず、最大の原因は佐枝とその恋人が破局を迎えたことです。

知恵は原作において、『酒癖が悪く、二日酔いでくることもしばしば』、『男性関係が奔放』といった描写がされてます。
そして、佐枝とは当時のルームメイトであり、友人であり、ライバルであるとも。

普通に考えて、佐枝が件の試験でトラウマを抱えたのであれば、一緒に参加していた知恵も抱えていておかしくはないんですよね。
結果、『恋人を見捨てたくないがために反対し続け、それでDクラスに転落までしたのに、想いを貫き続けるどころかアッサリと破局した』親友の有り様にトラウマを負ってます。
普通に考えて、巻き込まれた側としては堪ったものじゃありません。

当時の知恵に恋人がいたかは分かりませんが、本作では『いない』と定義しています。
そんな状況で親友にしてライバルの恋愛事情の顛末を目の当たりにすれば、少なくないダメージを負ってもおかしくはありません。特別試験が絡んでいるんですから尚更です。
男漁りは、『結局は破局してしまったけど、当時の親友の心情を理解しようとした』結果です。
自分も燃え上がるような相手ができれば、理解できるかもしれない。……そう考えても不思議はないと思います。
ですが、何人と付き合ってみても結局は上手くいかないため、酒への逃避が増える。結果として二日酔いで学校に行く。

本作では、そのような解釈のもとに知恵を描写しています。

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