※この作品はR-18です。

東京都高度育成高等学校・北郷伝   作:山上真

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予約投稿するつもりが、操作を誤ってしまいました。


北郷伝:41

「はぁ……。あとで神室さんからもサインをもらわないと……」

 

 どうにか持ち直したらしい知恵は、深々と溜息を吐いてそう零した。

 

「ここまで見れば分かる通り、この家が恵さんとのプレイを考慮した上で理事長が用意・提供する場所になるわ。――ただ、いくら理事長でも、何の理由も無しにポンと物件を渡すことはできないのよ。

 そのため、以前に一刀くんから提案があり、結果的にはストーカー問題の発生により中々状況が進展していない創部の件に絡めた形になるわ。

 提案された部活名は『高度育成高等学校スクールアイドル部(仮)』だったけど、活動内容的にはアイドル的な要素を取っ払えばすぐにも許可できそうではあったからね。

 平たく言えば、例の書類に軽井沢さんのみならず佐藤さんの名前も載ったことで、理事長も危機感を強めたのよ。昨日の今日で即時実行に移したことからもそれが分かるわ。神室さんの名前も載れば、更に強めるでしょうね。

 だから、こっちとしては一刀くんにはどうにかこの形での創部に頷いてほしいわけ。そのために、わざわざここまで同行してもらって、理事長の本気振りを実際に見てもらったわけだしね。……これだけのグッズを揃えるのには、理事長も中々に苦労してたのよ?

 一刀くんが頷けば、創部が許可され次第、すぐにでもこの家は部室として提供されることになるわ。学校からは距離があるから立地的には若干不便だけど、だからこそ『理事長肝いり』っていう特別扱いが通用するとも言えるわね。

 基本的には寮生活を送ってもらうことになるけど、最悪はこっちに泊まることもできるし、どう? これでオッケーしてくれない?」

「そうですね……。基本的にはオーケーなんですけど、まだざっと内装を目にしただけですし、もっとじっくり確認してから意見を詰めさせてもらってもいいですか?」

 

 知恵の言葉に、俺はそう返した。

 建物を用意してもらえただけで十分と言えば十分ではあるが、本当に目にしただけで使い心地なども確認してはいないのだ。低リスクで上乗せできるなら、上乗せしたいと考えるのが人間というものだろう。

 

「ま、当然と言えば当然だね。んじゃ、この部屋から見ていく? 

 まあ、見ての通りSMルームだけどね。ただ、別にSM専用ってわけでもないから、そこは勘違いしないでね? ぶっちゃけ、三角木馬が据え付けてあるし、目立つ形で鞭とか縄とかが置かれているから、そう認識するのも仕方ないのは分かるけどね。

 基本的にアダルトグッズはこの部屋に置いといてもらうことになるよ。一応は『部室』と言う態で提供するわけだから、その手の道具をあまり堂々と目に見えるところに置いとくのはどうなのか? って話になるからさ。

 例外的に、モールで買えるような『コンドーム』=『ジャングル水筒』とか、『首輪』=『チョーカー』とか、『ローター』=『卵型マッサージ器』とかなら、持ち出してもらっても構わないけどね」

 

 説明しつつ、知恵は部屋の中を進む。入った時点では分からなかったが、歩いてみれば中々に広い。もしかしたら、遊戯部屋よりも広いかもしれない。

 

「ベッドもあるし、小型のバスルームとトイレも備え付けられてるよ。行為の最中に催すこともあるだろうし、場合によってはアブノーマルなプレイに必要になる可能性も考えられたからね。可能な限り、そういった行為はこの部屋だけで完結できるようになってるんだ。

 あと、こんな外れの場所を提供したのには、丁度建設中の家があったから都合が良かったってのもあるけど、野外プレイも考慮してのことでもあるね。実際、軽井沢さんの過去が過去で状態が状態だからね。どこまで気を回せばいいのか判断が付かなかった、ってのが正直なところなんだよね。ここであれば、日中はともかく夜になれば人気も無くなるから」

 

 説明を聞くだけでも、理事長の生徒に対する本気振りが窺える。道義的に『良い』か『悪い』かではない。手段がどうあれ、『救える』か『救えない』かなのだ。

 その点において、恵や有栖という実績がある分、理事長の俺に対する信用は強まったのだろう。

 

「ああ、そうそう。この部屋のロックを外せるのは、基本的に限られた人員になるね。部活の顧問である理事長と、副顧問である私、あとは例の書類にサインを入れてもらった生徒だけ。専用のシステムを組んで、それぞれの端末と紐づけたの。だから、一刀くんの端末でもロックを外すことができるよ。

 逆に言えば、たとえ部員であっても、教員であっても、例の書類にサインを入れていない人物は入れない。サインを入れた人物が自発的に連れ込むことは可能だけどね。

 ハッキリ言って『グレー』も『グレー』、ともすれば『ブラック』に突入しているかもしれないけど、綺麗事だけで生徒が救えるんなら苦労はないからね。……試験の結果次第では、生徒に容赦なく退学を突き付けている私たちだけど、別に生徒のことを想ってないわけじゃないんだよ?」

 

 それは分かる。

 そうでなければ、こんな場所を用意・提供したりはすまい。

 周りがどう思おうと、それで本人が納得しているのなら、それはそれで正解。……理事長は、ただそれを忠実に実行しているだけなのだろう。

 綺麗に言えば『個人の尊重』であり、悪く言えば『究極の放任主義』だ。まさしく、この学校のルールである。

 その上で、手を貸せる場所に手を貸せる範囲で手を貸しているだけ。……理事長に言わせれば、そういうことになるのだろう。

 

「あと、ここのトイレとバスルームには、一つ面白い仕掛けも施されていてね。入り口の反対側に、同じく端末を翳せる場所があるんだ。そこに登録された人物の端末を翳すと――」

 

 知恵の言う通り、中に入らずグルリとトイレの反対側に回ると、確かにそんな装置があった。中々に分かりづらい配置だ。

 説明しつつ、知恵が己の端末を翳す。ピッと音がした次の瞬間、驚くことにトイレの内部が丸見えとなった。内部は手洗いの兼ね合いもあってか、入り口を背にして便座に座る形になっていた。つまり、これを使用すれば、相手が用を足している場面を、気付かれないまま真正面から堂々と見ることができるのだ。

 

「これ、マジックミラーですか?」

「うん、そう。ぶっちゃけ、私もこれを説明された時にはドン引いたけどね。一応、理事長なりにその手の専門家とかにも相談して用意したらしいよ。しかもこれ、内部にも同じのがあるんだよね。もちろん、バスルームの方にもあるよ」

「つまり、内部で起動すれば、中から外が丸見えになる……と?」

「そう。自主的にこの部屋に入れる人自体が限られているとはいえ、自分以外がいる可能性はあるわけだしね。自分が用を足しているところをその人たちに見られている、そんな錯覚ができるわけ。まあ、外からも起動すれば実際に見られてることになるんだけど、倒錯感MAXの軽井沢さんにとっては御馳走になるんじゃないかな?

 もっとも、それは他の子たちも同じかもしれないけど……。佐藤さんはメス犬で神室さんはマゾ豚って、ほんと、今年の新入生って一体どうなってるのよ?」 

 

 恵のみならず、麻耶と真澄のことまで思い浮かべてか、知恵は頭を押さえて深々と溜息を吐くのだった。

 しかし、専門家に相談したとのことだが、一体どんな専門家なんだか……。個人的には嬉しい限りだが、正直に言って首を傾げざるを得ない。

 部屋の一角にはドレッサーがあり、その中にはボンテージスーツを始め一通りのコスプレ衣装が収まっていた。婦警、ナース、メイドにバニーガール、どれもモールで買える物だが、持ち運びの手間が減るのは素直にありがたい。

 備え付けのタンスの中には各種アダルトグッズ。プレイに使うためだろう。中には手錠なんかもある。また、グッズの中にはモールで販売されてない物もあった。

 俺の疑問を悟ったのだろう。こちらが何かを言う前に知恵が口を開く。

 

「モールで販売されてない物は、言ってくれれば私の方で買ってくるから。もちろん、応じてポイントはもらうけどね。

 学生がメインではあるけど、敷地内には大人も相当数が暮らしているわけだしね。そっち向けに、本格的なアダルトショップとか水商売の店もあるのよ。もちろんのこと、大人以外は立ち入り禁止だけどね」

 

 知恵の説明は、当然と言えば当然の内容だった。

 話に挙がったモールを始め、それこそ敷地内には数多の施設があり、多数のスタッフが働いているのだ。彼ら彼女らとて人間なのだから、性的欲求を抑え込んでおけるわけもない。必然、その解消を視野に入れないわけにはいかない。

 だが、ここで問題になるのは、『生徒』と『スタッフ』――『子供』と『大人』の違いである。

 一言にアダルトグッズと言っても幅広い。ここが『実力至上主義』を掲げる学校だからこそ、物によっては何だかんだと理由をつけて『教材』として生徒にも販売可能だろうが、『黙認』や『暗黙の了解』で済ますにも限度というものがあるのは当然だ。

 しかし、それを大人にまで押し付けるわけにはいかない。である以上、その両立を果たそうとすれば、専門施設を切り離すのは妥当な手だ。

 個人的には、コスプレ衣装などはともかく、それ以外であまりグッズに頼りたくはないのが本音だ。何故かと言えば、性技の技量が下がりそうだからである。

 だが、如何せんそうも言っていられないのが実情だ。それに、何事も考え方次第であるのも間違いではない。道具を使いこなすのも、それはそれで技術なのだから。

 要は、必要に応じて使い分けられるようになればいいだけのことだ。……女の子相手の態度はそれができているのだから、決して不可能ということもないだろう。

 

「取り敢えず、この部屋はこんなものでいいかな?」

「そうですね」

 

 知恵に促され、俺たちはSMルームを後にした。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 そうして、家の中を一通り見て回り、実際に使い心地を試し、取り敢えずは問題が無いと判断した俺たちは、再び地下のSMルームへと戻ってきていた。何故ならば、そもそもの本題をまだ満たしていないからである。

 本来、知恵が希望していたのは、俺の『特性バナナミルク』の提供である。それも、当初は昼休みの予定だった。しかし、急遽として、教師としての知恵に仕事が入ったため、そちらを先に片付けなければならなくなったのだ。

 である以上、それが片付いた――片付く目途が立ったのであれば、本来予定していたそれを果たしても問題はあるまい。……というのが、俺と知恵の共通見解だった。

 そして、それを行うに当たって打ってつけの場所があるのなら、利用しない道理はない。

 そういうわけで、俺たちはこの淫靡な空間へと戻ってきたのだ。

 なお、部活名は『実力向上探究部』とした。ホームルームの際に考えた『研究部』から『探究部』に変えたのは、実技を含めるなら『研究』より『探究』の方がらしくない? という、知恵の意見によるものだ。俺自身、素直に同意できたので、そのようにした次第である。確かに、個人的には『研究』よりは『探究』の方が動いているイメージがある。

 掃除に関しては基本的に自分たちでやることになるが、機材のメンテなどもあるため、定期的に業者さんが訪れるらしい。それに関してはこの部屋も同様である。その際、生徒である俺たちは部室であるこの家自体に入ることができなくなるそうだ。

 そのため、事前に連絡を入れるし、長引くようであればその時も連絡を入れるとのこと。……まあ、基本的には俺たちが学校に通っている間に行われるそうだが。

 

「……で、知恵の方はプレイに関して何か希望はあるか?」

 

 ここからは教師と生徒ではなく、一人の男と女の時間である。そのため、俺は敢えて知恵の名前を呼び捨てで呼んだし、言葉遣いも普段のものに改めた。

 

「って、言われてもねぇ? 漠然としてるようで悪いけど、私自身、心まで満たしてほしい、くらいしか要望がないのよね。……まあ、それが何よりも難しいんだろうけど。

 道中で語った通り、私は過去が過去だからね。それが変にトラウマと化しちゃって、男性関係を素直に受け入れられなくなっちゃってるみたいなのよ。

 それでも、昨日は凄く心が満たされたし、だからこそ自分でも驚いたし、こうして連日で求めちゃってるわけなんだけど……。

 心のどこかで、昨日のは何かの間違いだったんじゃないか? って疑ってる自分がいるのも確かなのよ」

 

 俺の言葉に対し、知恵は困ったような顔を浮かべてそう答えた。

 そう言われれば否定もできない。

 聞いた話、知恵は結構な男性遍歴を持っている。それでも、一度として心が満たされることはなかったというのだから、中々に根深い問題だ。ちょっとやそっとで解決する道理がないのは当然である。

 だからこそ、心が満たされたとて、所詮は場当たり的なこと。今までの経験も合わされば、時間が経って冷静になってから疑ってしまうのも無理はない。こればかりは、時間をかけて根気よく付き合っていくしかないだろう。

 

「そんなだから、心が満たされるのであれば、行為自体に特に希望は求めないわ。一刀くんに任せる。ちょっと怖いけど、アブノーマルなプレイでも引き受けるつもり。

 認めたくはないけど、これで私も結構な齢だからねぇ……。偶に親と顔を合わせれば、良い相手はいるのか? ってお決まりの言葉は飛んでくるし、子供が欲しいっていう焦りもあるし……。

 だから、プレイ内容に関してじゃないけど、敢えて希望を述べるのであれば、妊娠させてほしい、ってことになるかな?

 それと、もしできるのであれば佐枝ちゃんも。……佐枝ちゃんを怒っているのは本当だけど、やっぱり親友だからね。彼女にも『女の幸せ』ってやつを思い出してほしい部分があるのよ。正直、過去に縛られている今の佐枝ちゃんは見てられない。見ていてツライものがある。

 まあ、それも今すぐでなくていいわ。今はまだ一刀くんも一年生だしね。一刀くんが卒業する直前にでも妊娠させてくれたら、それで構わない。

 子供ができたからって、結婚を迫らないことも約束する。仮に問題として取り沙汰されても、一刀くんがハーレム志望だから、それに託けて焦ったイタい女が迫っただけ。世間はそれで納得するだろうし、そうなるようにする」

 

 それは知恵なりの、『教師』としての最後の責任の取り方なのだろう。――だから、それを素直に受け入れるわけにはいかなかった。

 

「約束するよ。世の中に絶対はないけど、俺が卒業するまでの間に、絶対に知恵を妊娠させる。

 そして、知恵の望み通りに茶柱先生も妊娠させる。そういう事情があるのなら、茶柱先生のことも放ってはおけないからね。

 女性は須らく幸せになっていいし、世の中はそうあるべきだ。そうでない世の中の方が間違っている。

 ただ、そのときは知恵にも協力してもらうから、よろしく頼む。俺と茶柱先生の関係は、担任とその生徒、ってだけでしかないからな。個人でも頑張るつもりではあるが、手伝ってもらった方が効率的なのは間違いない。

 あと、最後のはいらないよ。知恵なりの責任の取り方なんだろうが、知恵もまた俺のハーレムメンバーなんだからな。結婚はできないし、そこについては諦めてもらうことになるが、幸せにすることは約束する。それが、ハーレムを希望する者の覚悟であり、責任の取り方ってやつだ」

「一刀くん……。まったく、本当に君って子は……」

 

 俺の言葉に、知恵は苦笑とも微笑とも言い切れぬ笑みを浮かべるのであった。




理事長が本気を出しました。
原作は一般レーベルだけど、Rー18なゲームだったら、このくらいはありそうな気がします。

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