「ちょ!? 一刀くん! 速い!? 速いです!? 今回の戦術意図は分かりますが、せめて道走りましょうよ!?」
俺に背負われた有栖が悲鳴を上げる。
まあ、俺は地面を走るのではなく、忍者ばりに木から木へと飛び移って移動をしているのだ。俺のジャージを使って結んでいるとはいえ、背負われた有栖にとっては如何ともしがたく、余計に恐怖心が刺激されるのであろう。
その悲鳴が、俺の嗜虐心を刺激するのは内緒だ。
「道を走るより、こっちの方が時間的に早いもんでな! と、早速着いたぞ。一つ目のスポットだ」
樹上からスポットを発見し、三角飛びの要領で地面に降りる。周囲に人気が無いことを確認し、そのままスポットを占有した。
「ハーッ、ハーッ、一刀くんは、どこで、こんなのを、学んだんですか?」
俺に背負われたまま、息荒く有栖が訊ねてくる。
「ん? 孫呉で明命――主に斥候役を担っている子に付き合っている内に自然と? 一通りのアウトドア・サバイバル術は叩き込まれたよ。教わった内容の全部が全部こっちで通用するわけじゃあないけど、大部分は応用が利くな」
そう。俺の動きは周泰こと明命直伝である。教わりたての頃は俺もサッパリだったが、生涯を通して付き合っていれば否が応でも研鑽されるというものだ。
とはいえ、こちらでは初めてに等しいので技術的にはだいぶ錆び付いている部分も多いが、そこは爆上げされた肉体的スペックを使ってフォローしている。
都市部でも使えないわけではないが、あの時代と違って監視カメラが所々に存在するのが現代だ。下手にこんな真似をしてしまえば、途端に泥棒と間違えられて御用である。
「ああ、例の『胡蝶の夢』的な何かですか……。正直、信じ難いのですが否定する要素の方が日増しに少なくなっていくんですよね……」
背負っているため表情は見えないが、おそらくはゲンナリとした様子で有栖が言う。
気功治療の恩恵を受けた有栖としては、尚更に否定しがたいだろう。気功もまた、現代科学では証明が難しいのだから。
要は定義の問題でもあるため、公に認められてしまいさえすればカテゴライズもされるのだろうが……。
「さ、次に行くぞ」
「ええ」
有栖の息が落ち着いたのを見計らって、再度の移動。
「ふむ。所々に食用植物も生ってますね。学校側のテコ入れでしょうか?」
「そりゃあな。試験で餓死なんてされたら堪ったもんじゃないだろうし。だからこそ、所々に救済処置は用意されている筈だ。スポットの占有はそれを得るための手段でもあるんだろうな」
「ですが、そういうのは往々にしてイレギュラーに弱いのが常です。よもや学校側も、『リーダーがバレるのを一切気にせず、最初から多くのスポット占有に動く』クラスが出るとは思わないでしょう。
いえ、ある程度は想定しているかもしれませんが、『それが馬鹿げた身体能力の持ち主で、他クラスにも協力を要請する』という事態は想定外の筈です。
この島はそう広い方ではありませんが、それでも人が動き回るには広大です。その中で手近なスポットから占有してしまえば、他クラスがスポットを占有して効果的なベースキャンプを構えるには、必然として奥へ奥へと向かわなければなりません。
それも、この炎天下の中、初期配布されたテントなどの荷物を持って、です。果たしてそれは、どれほどの苦行でしょうかね?」
「蓮華や龍園であれば柔軟な手も取れるだろうが、葛城は見るからに頭が固そうだったからな。決して柔軟な思考ができないわけではないんだろうが、それはあくまでも『己の想定出来得る範囲』に限られるだろう。『試験』という名前に囚われてしまえば、結果を出す前に敗北が確定する」
「何せ、この『試験』のテーマは『自由』ですからね。一通りの制限が課せられているとはいえ、それ以外は『何でもあり』です。正確に言えば、ルールに抵触する行為を行ったとしても、発覚・証明ができなければお咎めは無しの筈です。
いやはや、葛城くんにとっては初手から厳しい内容の試験となりましたね」
最初こそ俺の行動に驚き、恐怖に悲鳴を上げた有栖だったが、早くも慣れたらしく、このように移動しながら雑談を交わす余裕もあった。
スポットを占有するに当たり、大雑把に島の右半分はDクラス、左半分はBクラスということで星とは手分けをしている。『意義ある景色』を見ていたとしても、スポットの位置全てを把握できる筈もない。自然と洩れも出てくるだろうが、それならそれで構わない。そこに他クラスを縫い留めることが可能になるからだ。
ルールの一つにより、他クラスの占有スポットエリアに許可なく侵入を果たしてはならないことになっている。である以上、侵入の許可をしなければいいだけのことだ。最初の一度目には情状酌量の余地があったとしても、二度目はない。こちらが許可をしない以上、侵入して見付かれば問答無用でペナルティを食らう。
ルールの穴を突き、それでいて定められたルールを上手く利用すれば、Dクラスの大勝利も十分に可能となる。
クラスの統制が利かなければ元より不可能な作戦ではあったが、こういう事態も想定した上で俺は日頃からリーダーアピールをしてきたし、過日の期末試験では有栖や帆波の協力もあり男子の心をガッチリと掴むことに成功した。
留守役にも信用の置ける人材を配しているため、憂いは少ない。他クラスから何かしらの取引が持ちかけられたとしても、情と合理、両者を秤に掛けた上で冷静に判断してくれるだろう。
右回りに島を半周した俺と有栖は、島の北側で星と合流した。
「どうだった?」
「まあ、少なからず洩れはあるでしょうが、大部分は占有できたのではありませんかな? 道に沿って進めば漏れの出る確率も減りましょうが、それでは時間が掛かりすぎる。時間の短縮を狙えば、どうしても木から木へと飛び移らざるを得ず、そこに関しては如何ともしがたい。まさに痛し痒しですな」
俺の質問に対し、星はカンラと笑ってそう答えた。それに関しては同感である。
「だがまあ、それでも大部分のスポットは俺たちで占有できた筈だ。なら、あとはゆっくりと穴埋めをしていけばいい。占有の洩れがあったとしても、それが飛び地であるのなら、他のクラスはどの道占有できやしないんだからな」
「おお! それは確かに。いやはや、そこまで考えた上でのことでございましたか……。
向こうの経験や体験、スペックやポテンシャルがフィードバックされている、という点に限って言えば我らも主と同じですが、唯一にして最大の違いが、その所属勢力の多さですな。
世の中、三国志を題材にした作品は数多く、ゲームであれば自由度が高く所属勢力に縛られない物もありますが、それでも大半は『正史』や『演義』の影響を強く受けると同時に縛られています。
私たちがかつて存在した世界もまた然り。一部は例外的に異様に発達していましたが、それでも大半は語られる歴史背景そのままです。
何が言いたいかというと、私は趙雲であるからして、公孫瓚――白蓮殿の元から劉備――桃香殿の元に移り、大部分でそれは変わりありませんでした。
そんな中において、主はさながら『エディット武将』の立ち位置ですな。魏・呉・蜀を始め、その時々において転々と所属を変え、指導を受ける人物もまた然り。それが積もりに積み重なれば、まさに『万能の人』になられたとしてもおかしくはありますまい」
かつての世界とは違う、俺の決定的なまでの能力の高さに対し、星は納得したように頷いた。
しかし、星の口から『エディット武将』なんて言葉が出るとはな。こういう部分を見る度に、向こうの世界の星と同一ではないことを実感させられる。それでも、結局は誤差の範囲だし、星であることに違いはないのだが。
「まあ、そんな感じだな。船の中で貂蝉に聞いたんだが、俺はそれが更に強化されているらしい」
「ほう? と言うと?」
「ほら、俺、向こうにいた頃、野郎どもを引き連れて龍を退治したことがあっただろ?」
「……ああ! ありましたな。マイナー過ぎてよく覚えておりませんが、それでもご主人様が龍退治をなさったことは覚えておりますぞ。ああ、段々と思い出してきました。理由は……たしか水着の素材にするためでしたかな?」
「たしかそんな理由だったと思う。俺自身、野郎どもを引き連れて龍を退治したことは覚えてるんだが、理由とかはうろ覚えなんだよな……。何度となく向こうの世界を経験したが、それが起こった確率自体が低いし……。
とはいえ、だ。俺が龍を退治したことは事実であるし、貂蝉曰く、龍退治は英雄の中の英雄の証、であるらしい。んで、龍を退治した者は、洩れなく『祝福』と『呪縛』を受けるそうだ。そして、それは俺も例外ではない。
それすらもがフィードバックされているから、今の俺は尚更にスペックとポテンシャルが上がっているんだとさ」
「……なるほど。竜の返り血を浴びたジークフリートが頑健になったのは有名ですからね。その英雄譚の詳細までは知らずとも、その下りのみは覚えている人も多い筈です」
俺の言葉に答えたのは、背負われている有栖だった。……やっぱ、有栖でも竜退治で真っ先に思い浮かべるのはジークフリートなんだな。
「んで、その影響なんだが、単にスペックとポテンシャルが上がっただけではないようでな。
ドラゴンってのは生物の頂点として描かれるが故に、傲岸不遜な面と、気高く誇り高い面が強調されがちだ。自身が認めた相手に助力する、なんてのはゲームなんかでもよく取られているし、実際に盛り上がる手法だろ?
いい意味でも悪い意味でも、俺はその影響下にあるんだと。簡単に言えば、独占欲や支配欲求、反骨心の肥大化。自身が認めた相手には寛容だが、それでも冷徹・冷酷な面が強く出るらしい。認めていない相手には、それが尚更強く出る。
元々俺は包容力が高い方であるらしいが、それで相殺しきれないほどに高まっているそうだ。……そしてそう言われると、実際にその心当たりはあるんだ」
「……ああ。確かに、真澄さんを相手にした時は、初めてだというのに結構鬼畜でしたからね。イラマチオからの強制飲尿、そのあとはバックで犯しながらの赤くなるまで尻叩きです。直前の美紀さんに対してはむしろ正統派だったため、余計に際立って見えました。
また、私は話に聞いただけでしかありませんが、山内くんを退学に追い込んだ際の手法も、普段の一刀くんらしからぬ面はありますね。まあ、誤差の範囲ではありますが……」
俺の言葉に納得を示したのは、やはり有栖だった。……まあ、うん。真澄相手はね。あと山内に関しても。
「他にもあって、俺の意思で中出しした相手に妊娠させるかどうかが選べるんだと。まあ、こっちには当人の自覚が必要らしいけど、貂蝉から教えられたからその点はクリアしてるな」
「ほう!?」
「何ですと!?」
俺の言葉に、二人の美少女は目の色を変えて驚いた。
「長い目で見れば、優性遺伝子による塗り替えによって、支配圏の拡大と確立に繋がるからな。そう言われれば、理解と納得もできなくはない。
そして最も重要なのが、ドラゴンならそのくらいできてもおかしくはないだろう、っていう説得力があることだ。オリジナルのドラゴンにそれができるのであれば、その影響を受けた俺にも同じことができてもおかしくはないだろう。
むしろ、他の部分で影響を受けている実感があるために、これを否定するのも逆に難しい。原理を訊かれても分からんものは分からんし、それは気功についても同じことが言える。早い話、受け入れた方が楽ってことだ」
「俄かには信じ難いですが、でも、たしかにドラゴンですからね……。そのくらいできても不思議はないだろうと言われればそんな気もしてきますし、否定もしきれません」
「ふ~む。向こうにいた頃は生が基本でしたからな。だからこそ、規制の厳しいこちらでは逆に主の相手をするのを敬遠していましたが……。
つまり、もはやその必要もないということですな!? 他の女子たちが抱かれているのが分かっていても、我慢をし続ける必要はないということですな!?」
有栖は悩み、星はアッサリと食いついてきた。むしろ、食いつきが良すぎる。
しかしそうか。そういう理由があったのか。
確かに、向こうではコンドームなんて無かったからな。それもあって基本的には生だった。だからこそ、それに慣れているのなら、それが常態化しているのなら、コンドームを着けてのプレイなんて御免だろう。最初の一回は生の中出しをしているとはいえ、一回だけだと逆に生殺しと言えなくもないのは事実だ。
それに比べると、俺自身は根っこがこの世界の住人だからな。だいぶ向こうに染まりはしたが、それでも『常識』や何かの根本はこちらだ。それもあって、コンドームを着けてのプレイも許容範囲だ。それでも、生の方に惹かれるのは事実だが。
「なるほど。知らずのうちに、だいぶ我慢をさせていたみたいだな。……じゃあ、ヤるか。ここでも周囲にひとけはないが、もっと北に向かえば尚更見られる心配はないだろう」
「それは良いですな! 桃香様と白蓮殿には申し訳ない気もしますが、これも役得というものでありましょう。それに、早いか遅いかの違いでしかありませんからな」
「あ、セックスするんですか。じゃあ、私も参加させてもらいますね。高校の敷地内では難しいですから、青姦というのもそれはそれで興味がありますし、バッチこいです!」
乗り気も乗り気の星と有栖を連れ、俺はよりひとけのない北側へと向かうのだった。
手分けによるスポット大量占有と、一刀からの情報開示、そこからズッコンバッコンへ行く流れです。
それと同時、恋姫たちとのシーンが少ない理由について簡単に説明しました。
簡単に言えば、考え方の違いですね。
一刀の場合、だいぶ三国時代に染まりはしましたが、それでも意識の根幹は現代日本に根付いています。
だから、コンドームの装着も許容範囲です。
言ってしまえば、ヤれないよりはマシ、というやつです。
一方の恋姫ですが、如何に服飾技術が異様に発達している恋姫世界でも、三国時代にコンドームなんて物がある筈もないので、向こうでは基本的に生でした。
だからこそ、恋姫たちはコンドームの装着が勧められるこちらでのセックスには忌避感を示しています。
ヤるなら生が一番でしょ! というのが恋姫たちのスタンスです。
ただ、生で繰り返すことによる妊娠→退学の流れにも危機感は持っています。それぞれに立場がありますから。
だからこそ、一刀のハーレムメンバーが増えていくのを羨ましく思いつつ、生が一回だけだと逆に辛いので、必死に我慢していたわけです。
ですので、一刀が妊娠のオンオフを選択できるようになったことは、在学中の妊娠があり得なくなったことを意味し、積極的になるのはむしろ自然でしょう。
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