※この作品はR-18です。

東京都高度育成高等学校・北郷伝   作:山上真

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北郷伝:63

「龍園、提案がある」

「どうしたよ? かつてないほどにマジな眼をしてるじゃねえか?」

 

 意思を新たにした俺は、真っ直ぐに龍園の許を訪れていた。どのタイミングでCクラスが集団リタイアを実行するか分からず、一度実行されれば龍園を見付けるのが面倒になるからだ。

 この試験でならともかく、先々を考えた場合、龍園の協力は必要不可欠である。まあ、それは龍園以外にも言えることではあるが、現状で最も協力を得られやすく、協力をした場合のメリットがあるのも龍園なのだ。

 

「取り敢えず、点呼まで時間がないから、終わったらまた来る。悪いが、それまで行方をくらまさずに待っててほしい」

「へぇ~、面白いことを言うじゃねえか。

 まあ、いいぜ。元より日中はクラスの奴らにも遊ばせるつもりだったしな。船は確かに快適だが、ここにはここで船では味わえねえ楽しさがあるのも事実だ」

「助かる。……じゃあ、また後でな」

「応よ。どんな提案を持ってくるのか、楽しみに待たせてもらうぜ」

 

 そうして龍園との約束を取り付けた俺は、大急ぎでベースキャンプへと戻る。点呼まであと10分もないのだ。有栖も俺と一緒に行動しているので、遅刻はそれだけで10ポイントのマイナスとなる。重要度から龍園と約束を取り付けるのを優先したが、防げるものなら防ぎたいのは事実だ。

 そんなわけで、ショートカットを駆使してベースキャンプへと急いだ結果、どうにか点呼には間に合った。

 点呼を済ませたら、再び龍園の許へとトンボ返りだ。なお、スポット更新ではないため、今回は有栖を置いていった。

 

「待たせたな」

「……そんなに待ってねえよ。んで、提案ってのはなんだ?」

「その前に場所を移そう。どうせ、お前はリーダー当てを狙うんだろ? いい住処を提供してやるよ」

 

 言うだけ言って、俺は颯爽と踵を返した。目指すはペンションだ。

 

「あん? ――って、おいコラ! 待ちやがれ!」

 

 加減をしているとはいえ、龍園は問題なく俺についてくる。それだけで、気功の習熟訓練を怠っていないのが分かる。

 

「こいつは……ペンションか? よくもまあ見つけたもんだなあ、おい?」

 

 辿り着いた先に鎮座していたペンションを見れば、龍園も呆気に取られた様だった。

 

「スポットの更新がてら、マップの穴埋めに勤しんだ結果だ。まあ、見つけたはいいが、正直に言うと俺たちにとっては役立ちそうにないんでな」

「だろうな。どう見たって一クラス分の生徒を収容できるようなキャパを持ってるようには見えねえ。オマケに距離がありすぎて、普通に歩いたんじゃあここまで来るのも一苦労だ。まともに試験に臨んでたんじゃあ、見つけたところで活かしようがねえだろ」

「今は俺たちのクラスが占有しているが、ここをお前に提供してやるよ」

「……ありがたいのは確かだが、解せねえな。北郷、お前、何を考えてやがる?」

 

 龍園が俺を睨みつける。俺はそれを真っ向から受け止めた。

 

「端的に言えば協力要請の対価だ」

「協力要請だあ?」

「ああ。俺は学校の改革に着手するつもりだ。実力向上の手段として、エロをもっとオープンにする。

 だが、言うだけなら絵に描いた餅。大々的に行うには、やはりある程度の実績が必要となるのは否めない。そのための第一歩として、俺は次学期からうちのクラスに『ペナルティ制度』を導入するつもりだ。

 内容としては、クラス内でワースト評価の高い生徒に、男女問わず性教育の教材になってもらう。そして、段階的にその内容もランクアップしていく予定だ。最初は全裸での部位説明。その次はオナニー実習といった感じにな」

「……続けろ」

「当然、下準備として学校には『ペナルティ制度』の導入について予め報告を入れるし、佐枝の協力も取り付ける。その上でクラスメイトから同意書にサインをもらえば、クラスメイトも避けることはできない」

「サインをしない奴はどうする? 全員がサインをするとは限らねえだろ?」

「当然、『ペナルティ制度』の対象にはならない。……が、クラスの実力を上げることに非協力的な奴に、必要以上に気を配る理由もない。

 テストで赤点を取ろうが、手を差し伸べることもない。CPのマイナスは痛いが、素直に退学してもらうさ。

 その反対に優秀な生徒であったとしても、サインを入れないのであればその方面で優遇を受けることはない」

「……なるほど。学力不振のクラスだからこそ、通用する手だな。同時、サインを拒んだ奴には孤立を促すことに繋がり、サインを入れた奴には連帯感を与えることに繋がる。

 その一方で、お前のハーレムメンバーはサインを入れねえわけか! そうすることで、必然的に他の野郎共からの対象にはなり得なくなる。

 実力不足のメンバーへのフォローも問題はねえ。たとえクラスには貢献できてなくとも、クラスの実力者に貢献できているのなら、転じてそれはクラスに貢献していることになるからな。リーダーとして手を差し伸べなくとも、個人として手を差し伸べる理由としては十分だ。

 何とも詐欺じみたやり方だが、他が文句を言える筋合いじゃねえ」

 

 そう言って、愉快そうに龍園は嗤った。

 

「それで、俺にもその『ペナルティ制度』を実行しろって話だな?  

 参加しない奴は、必然的にいくつかのタイプに分けられる。一に自信に反しねえ実力者、二に自信過剰の馬鹿、三に実力者の庇護下にある存在……単純に考えればこんなところか? まあ、複合的に絡んでいる奴もいるだろうが。

 例えば桂花たち、アイツ等はこと頭脳面においては学年でもトップクラスだろう。同時に、お前のハーレムメンバーだってのはうちのクラスでも有名だ。参加しなくても不思議はねえし、周りも納得するだろう。

 伊吹も同様だ。俺がアイツを贔屓してるのは事実だが、身体能力が優秀なのも間違いはねえ。椎名も然り。アイツに関しては別段贔屓してるつもりはねえが、俺がその頭脳を買ってるのは事実だ。

 今挙げた奴らは、一と三の複合的存在だな。

 じゃあ、そういった『分かりやすい理由』もなしにサインを入れない奴は? 一か? 二か? 三か? ……クク、考えると愉快だな。スパイの炙り出しにも繋がる。

 その上で、俺は堂々と言ってやるわけだ。『正直に言え。対象次第ではお咎めなしにしてやる』……ってな。俺が綾小路を警戒対象に指定していることは、うちのクラスじゃあ周知の事実だ。それを知るからこそ、そいつは確実に関係を自白する。その事実を以てペナルティから逃れようとする。

 そして俺は、それを認めてやるわけだ。するとどうなる? 俺に反感を持ち、それでいて自分の実力に自信がない奴ほど、他のクラスの実力者に庇護を求めようとするだろう。十中八九は、実績のあるお前か綾小路になるだろうな。

 一方、お前たちのクラスにだって、似たような奴らは現れるだろう。ペナルティの内容を知らずとも、受けたくない、と考える奴はいて当然だからな。じゃあ、そいつはどこに、誰に庇護を求める?」

「第一に学校だろう。だが、『実力者の輩出』には確たる方法があるわけじゃない。分野を限定すればまた別だろうが、そういうわけじゃないからな。一定の道理があって、制度の実行に関して届け出がされており、馬鹿正直な表現がされていない限りは学校側も制度の実行を認めるだろうさ。

 そうでないと、掲げるお題目が偽りになってしまう。綺麗事だけで実力者と言えるか? 言えないだろう?」

「そして、『やってはいけません』と言われていることが堂々と行われており、それには学校側も認可を下しているその状態で、実態を知った学校側がどんな手を講じてくるか。

 それを知るためにも――言い換えれば、学校側を逆に測るために俺にも手を貸せって話だろう? ……面白れえじゃねえか。

 まあ、それはそれとして。Aクラスに庇護を求めたとしても無駄だろう。蓮華の統制能力は大したものだが、今のところ、アイツは『学校生活』に重きを置いている。本腰を入れてクラスを統制してるわけじゃねえ。そんな状況じゃあ、他のクラスの奴に助力する余裕なんざねえだろう。その義理もねえだろうしな」

「Bクラスはうちのクラスと同盟を結んでいる。それも、向こうが『下』になる形でだ。それでは、『上』のトップが下した方針に異議を唱えるにも限度がある。およそ役には立たないだろう」

「つまり、Dクラスの奴らが頼れるとしたら、必然的にうちのクラスしかねえわけだ。まあ、受け入れる分には構わねえし、お前に口を利いてやることも可能だが、当然として対価は頂く。そういう話になるのは自然だな。

 対価がねえなら手を貸す筋合いはねえし、どうにか対価を払ったとしても、その実やってることはテメエのクラスと変わりがねえ。早い話、逃げ道なんかなかったことを知り、それにより絶望感が増すだけだ。

 結果、心がイカレたそいつは、必然的にテメエの創った部活行きになり、結局はテメエに抱かれるわけだ。……何ともタチの悪いマッチポンプだなぁ、おい!?

 心がイカレなかった奴は、その状況から抜け出そうと必死になってあがくわけだ。それは実力の向上に繋がる。状況に溺れちまっても、退学になっちまえば味わえなくなるのが確定している以上、それだけは阻止しようと頑張るだろう。

 つまり、どう転んでも損はねえわけだ。……いやはや、優しい顔をして何ともエゲツねえことを考えやがる」

 

 そう言って、龍園はゲラゲラと嗤った。これで嗤えるのだから、やはり龍園もイカレている。

 だがまあ、つまりはそういうことだ。俺と龍園が組むことで逃げ道を塞ぐ。事前の準備をシッカリとすことで学校側の介入を最大限に減らす。そうすることにより、どう転んでも得が出るようにする。それが俺の狙いである。

 

「ハッ、気に入ったぜ。特に、学校側を測る、ってのがいい。一方的に測られるのなんざつまらねえし、気に食わねえのも事実だ。学校側が俺を測るに相応しいのか、逆にこっちが測ってやるのも一興だ。

 だがまあ、そんなのに俺を――俺たちのクラスを巻き込もうってんだ。俺のクラスメイトに対するアフターフォローはシッカリとやってもらうぜ? なあ、『三國』の『次期トップ』さんよ?」

「今の俺に確約はできないが、尽くせるだけの手は尽くす」

「取り敢えずはその言葉だけで十分だ。クラス全員をAクラスに移籍させるだけのPPを稼ぐのとどっちが現実的かって言えば、間違いなくテメエの口利きの方だからな。『三國』ほど手広くやってる所なら、うちのクラスの生徒を受け入れるくれえはわけねえだろうし、場所によってはこの学校以上に融通を利かせられる大学だってあるだろう。十分に勝ちの目はある」

 

 龍園がニヤリと笑む。

 

「つーか、クラスメイト全員をAクラスに移籍させるって……。お前、そんな無謀なことを考えてたのか?」

「その方が面白れえだろう? そもそも、簡単に達成できる目標を掲げて何が愉しいんだって話だ。俺がこの学校に来たのだって、『実力者の輩出』って謳い文句に惹かれたからだぜ?」

 

 龍園が掲げていた目標に対し、呆れを隠さずに俺が突っ込めば、返ってきたのはそんな返答。まあ、龍園らしいと言えば龍園らしいが。

 

「とはいえ、俺の嗜好と『王』としての責任の両立を果たすべく掲げた目標だが、流石に現実味がねえのも事実だからな。やれねえとは言わねえが、時間を考えるとまず無理だ。そこにより良い提案をされたんなら、転がっても無理はねえってもんだ。

 だが、勘違いすんなよ? それはあくまでもサブプランだ。保険の意味合いが強い。普通にCPでのAクラス上昇を目指すつもりではあるから、潰せる時には容赦なく潰すぜ?」

「当然だな。切磋琢磨もまた、実力の向上には必要不可欠だ。ここをおざなりにするようじゃあ、学校側からの優遇も受けられなくなるだろうしな。前提として、無理難題を通し続けるには相応の実力を示し続ける必要がある」

 

 俺と龍園の視線がぶつかり合う。

 

「まあそれはそれとして、リタイア戦術を実行した場合、坂上先生ってどうするんだ?」

「あん? 坂上? ……確かにどうするんだろうな? ルール上、担任は担当するクラスと最後まで一緒に行動しなくちゃならねえが……」

「その担当するクラスの大多数がリタイアするわけだからな……。試験を継続する生徒に付き合うのか、数の多いリタイアした側を監督するのか、どっちの可能性もあり得るぞ?」

「不味ったな、そこについては全然考えてなかった。これで、リーダーに付き添う、ってパターンだったら最悪だ。俺は試験終了まで坂上とここに二人きりかよ……」

「お前、今サラリと自分がリーダーだと自白したな」

「今更だろうが。つーか、俺をリーダーだと断定しているからこそ、テメエは俺だけをここに連れてきたんだろうがよ。違うか?」

 

 まあ、そう言われたのなら――

 

「違わない」

 

 と答えるより他にないのだが。

 当然、そんなのはリップサービスでしかない。龍園がリーダーの可能性が高いのは事実だが、側近に任せている可能性だって捨ててはいない。

 

「元々、現実的な狙い目は葛城以外に無かったからな。

 リーダー当てを度外視して堅実的にポイントを稼ごうと思ったら、どうしたってバレる確率は高まるし、クラス内の不和も然りだ。

 同時、一度『リーダーのリタイア』という可能性に気付いてしまえば、途端に勝ちの目は薄くなる。負けの目も低くなるが、そのためには試験ポイントを犠牲にしなくちゃならねえ。

 よっぽど幸運に恵まれねえ限り、『試験ポイントの温存』と『リーダー当ての恩恵』は両立しねえようになってやがるのがこの試験の特徴だ。実際、リーダーを当てられた瞬間にスポットで稼いだポイントも無に帰すからな。

 試験結果でCPにマイナスが起こらねえ以上、より現実的なのは後者の方だ。なら、最初から後者に狙いを絞った方が良い」

「羨ましいことだよ。そう考えて、それを実行できるんだからな。元からCPに余裕のないこっちとしては、否応なく二兎を追うしかない」

 

 それが、100前後のCPしかない学年最下位のDクラスと、500前後のCPを保有する学年三位のCクラスの差でもあった。

 そして、1ポイントも利用することなく試験を乗り切ったとして、それで得られるのは300CPだ。その時点では未だCクラスにも及ばないのだ。

 つまり、一気に躍進しようと思えば、試験ポイントを温存し、スポット占有によるボーナスポイントを大量に稼ぎ、他クラスのリーダーを当て、他クラスにリーダーを当てられない……という、何とも難易度の高い条件をクリアしなくてはならないのだ。

 それでいて、それに挑まざるを得ないのが実情だ。何故なら、旅行期間を考えると合宿の帰りにも何か試験が待ち受けている可能性が高く、その結果次第では一気にCPが減る可能性も否めないからだ。場合によっては、再びCPがゼロになりかねない。

 今回の特別試験の結果が反映されるのは来学期からとのことなので、その点では保険になるが、だからこそ、積めるだけ積んでおきたいのが実情だ。

 

「一ついいことを教えてやる。Aクラスのリーダーは葛城の腰巾着――戸塚弥彦だ」

「……その証拠は?」

「これじゃあ不服か?」

 

 龍園はポケットから一枚の紙を取り出して俺に寄越してきた。

 内容を確認すると、それは龍園と葛城の間で結ばれた契約書の控えだった。

 葛城派の生徒は、これから毎月、各自が龍園に二万五千PPを支払うこと。

 その代価として、龍園は葛城に対して150試験ポイント相当分の物資を提供すること。

 この試験における互いのリーダーである龍園翔と戸塚弥彦は、互いにリーダーを指名しないことなどが記載されている。

 

「お前、相当にぼったくったな……」

 

 内容を確認しての、俺の第一声がそれだった。

 蓮華だって俺たちにPPを支払うが、それにはキチンと期限を設けている。だが、龍園と葛城との契約にはそれがない。卒業か退学をするまで、延々と龍園にPPを支払うことになる。ご丁寧なことに、派閥で一括りにするのではなく、一名一名の署名をもらっているので、派閥から抜けようと関係がないわけだ。

 ついでに言えば、この記載内容だと、龍園が試験のリーダーから外れた時点で、リーダー当てに関しては機能しなくなる。

 

「流石に焦りが大きかったんじゃねえか? この内容には葛城も目を通した上で締結したわけだし、いつものアイツならこの程度は気付くだろ。なのに気付かなかった。ってことは、アイツが本調子じゃねえか、俺がアイツを買い被っていたかのどっちかだ。この二択なら、後者とは思いたくねえな。

 まあ、弱ってるところを叩かねえ理由もねえから、お前がリーダーだと蓮華の派閥から葛城の派閥に伝わる手筈だ。素直には信じられなかろうと、そんなのは洞窟に手勢を一人紛れ込ませれば済む話だ。派閥としては敵対していようと、同じAクラス同士だ。リーダー当てのためと言えば、協力しねえ道理はねえ。

 まあ、実際にはそれこそがトラップなわけだが。さしもの葛城も、自派閥員が己が目で確認したことを信じねえわけにはいかねえだろうさ。

 Bクラスに関しちゃあ、わざわざそんな面倒な手間を踏む必要もなく、リーダーは明らかだからな」

 

 なんとまあ。龍園の奴、葛城派閥にリーダー当てにチャレンジさせるための土台を作ってやがった。

 いくらAクラスが龍園からの物資提供でポイントを温存しようと、他の三クラスから当てられ、二クラスのチャレンジに失敗すれば、残る試験ポイントは僅かに50しかない。

 だが、それすらもどうなるかは分からないのが実情だ。占有スポットの不利は、それだけ葛城派の心を蝕むだろう。そんな状況で、果たして葛城の統制がどこまで機能するかは疑問が残る。

 

「ああ、そうだ。全員がリタイアしちまったら、俺のリタイアも成り立たなくなっちまうからな。必然的に『海の家』には何人かを残すつもりだ。テメエのハーレムメンバーである三軍師は必須として、他に希望はあるか?」

「いいのか? じゃあ、伊吹さんと椎名さんと真鍋さんを頼む」

「あん? 伊吹と椎名は分からんでもないが、真鍋もか?」

「彼女は清隆が手を出してるからな」

「……なるほど。綾小路の駒は真鍋だったわけか」

「ってか、伊吹さんを残すことに抵抗はないのか? お前のお気に入りなんだろ?」

「それは事実だが、単に勝ち気な奴や反発心の強え奴が好きなだけだ。いや、確かに反抗的な奴を力づくで屈服させるのは性癖にド直球でクるんだが、同じクラスということもあってか、伊吹の奴は何だかんだで指示には従うからな。その点で言えば、セックス相手として考えるなら少々不足だ。むしろ、一昔前の鈴音の方がよっぽどいい」

「鈴音は譲らないからな!」

「慌てんなよ。一昔前の、ってちゃんと前置きしただろうが。手強さで言えば今の方が上がってるんだろうが、それに比例して人間が丸くなっているのも否定できねえからな。前ほどにはソソられねえよ」

 

 肩をすくめて龍園は言う。一安心ではあるが、中々に難儀な奴である。コイツを満足させられる奴なんているんだろうか?

 

「ただまあ、Aクラスに一人、目を付けてる奴がいる。そいつは俺の獲物だから、邪魔するんじゃねえぞ。綾小路と神崎にも言っとけ」

「ちなみにだれか訊いても? 俺も今朝方、Aクラスの女の子を一人、新しくハーレムメンバーに加えちゃったからさ。森下藍って子なんだけど……」

「……そいつじゃねえな。俺が狙ってんのは――――って奴だ。俺の勘が正しければ、その見た目とは裏腹に、アイツは相当の『闇』を抱えてやがる。それだけの念を向けられるなんざ、誰かは知らねえが羨ましい限りだ。だからこそ、横から掻っ攫うだけの価値があるってもんだ」

 

 実に愉しそうな表情を浮かべて龍園は言う。

 しかしまあ、その言い分も分からないではない。憎悪もまた強い感情だ。である以上、それを向けられる人物は『それだけ強く想われている』のも確かだ。好きだから憎い、好きだから許せない、なんて言葉もあるし、『好悪』とは決して両立しないわけではないのだ。

 ならば、その矛先を自分に向けられるならば、その想いを独占できるようになるのであれば、それは確かに昂るだろう。言ってしまえば『寝取り』である。

 

「まあ、分かった。龍園のターゲットについては二人にも伝えておく」

「おう。伊吹と椎名に関しては喰うなりハーレムに加えるなり好きにしな。今後もクラスの『駒』として機能するようなら問題はねえからよ」

「お言葉に甘えさせてもらうよ。……あ~、二人とはどんなプレイを愉しもうかな? 考えるだけで夢が膨らんでくるわ」

 

 龍園との話し合いを終えた俺は、不埒な妄想をしつつペンションから立ち去るのだった。




Cクラスがリタイア戦術を取った後、Cクラスの担任である坂上先生がどうしていたのか分からないんですよね……。
海に行ったらCクラスはいなくなっていた、的な描写がされているだけで、坂上先生が築いたであろう先生用のキャンプには触れられてもいません。
それでいて、試験のルール上、担任は自分のクラスの生徒と試験終了まで一緒にいる必要があります。
DクラスとBクラスの世話になっていた伊吹と金田のところに行ってないのは明らかなので、考えられるとすれば龍園と行動を共にしていたか、数の多いリタイアした側と一緒にいたかなんですが、どっちもあり得るから判断に迷います。

『ペナルティ制度』を実行した場合、効果が一目で判断しやすいのはCクラスとDクラスしかないため、一刀が龍園に協力を持ちかけるのは必須です。
現状、『必要悪』の部分を嬉々として行えるリーダーは龍園しかいないのも一因ですが。
エロの普及に関し、最初は『クラス内でのペナルティ』という形で始め、効果のほどを証明できたら、やがては『学校公認のペナルティ』にすることを一刀は目論んでいます。
生徒たちは、退学かエロかを突き付けられるわけですね。
その二択ならエロを選択する生徒もいるでしょうし、学校側も『退学者の削減』に繋がるメリットがありますので検討の余地はあります。

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