重力の底で雛鳥は哭く 作:星乃海(十両)
──私は恵まれている。私は幸運だった。
苦しくなったとき、辛くなったとき、私は心の中でそう唱える。空虚な慰めでなく、事実として。
数年前、この世界で起きた「一年戦争」と言われる戦争──その戦いで、人類は人口の半分を失った。いわば、私たちはその1/2の生き残りのクジ引きに当たった存在だ。
ただ、それで生き残ったこと自体が幸運だったかと聞かれれば即答はできないだろう。むしろ、死後に向かう地獄の方が現実の
「よい……しょ」
清潔なシーツを銀の台車に乗せ、それを押す。屋敷の窓からは爽やかな朝日が差し込み、金糸で飾られた赤絨毯を華やかに照らしている。
「気持ちの良い朝」本来ならばそう呼ぶべきなのだろう。
「んっ……」
ちょっと一度に載せすぎたかもしれない。少し後悔しつつ、私は最初の部屋を目指す。
──あの日、空から巨大なコロニーが落ちてきた日から全てが変わってしまった。見たこともない
逃げて、逃げて、知ってる人が沢山死んで、両親ともはぐれて、それでも夢中で逃げて。
連邦だジオンだ、どちらが優勢でどちらが劣勢なのかなど民間人である私たちにはどうでもよかった。連邦の徽章を付けた将校も、ジオンの軍服を着崩した兵士も、私たちを守る対象などではなく搾取する対象として扱った。
そして戦争が終わり──私の周りには何も無くなっていた。家族も、友も、知っていた何もかもが。
軋み音ひとつ立てずに台車が止まる。私は眼前の豪奢な扉をノックし、声をかけた。
「お姉さま、お目覚めですか? シーツの交換に伺いました」
『……おはよう、カンチャナ。鍵はかかってないわ』
扉越しに優し気な女性の声が届く。シーツを腕にかけ、私の手にはやや大きいノブを回す。
「失礼しま……っ!?」
「ありがとう。今、降りるわね」
部屋に入って一礼しようとした私は言葉を失った。部屋の主である褐色の肌の少女、ララァ・スンが一糸纏わぬ姿だったからだ。
「し、失礼しました、お姉さま! 着替えるまでお待ちしてますので……」
「ふふっ、気にしないで」
慌てて退出しようとした私をお姉さまは柔らかく引き止め、ふわりとベッドから身を起こした。無駄な肉の一切付いてない、しかし痩せている訳でもない、均整の取れたしなやかな肢体は同じ女性の私が見てもため息が出そうな程に美しい。
首筋に張り付く乱れた黒髪をかき上げつつ、お姉さまは言った。
「シャワーを浴びてくるわ。その間にお願いね」
「お姉さま、昨晩もお疲れ様でした」
「ええ……少し疲れたわ。あの将校さん、一分も無駄にしたくなかったんでしょうね。結局、夜明けまで放してくれなくて」
昨夜の「来客」の、類人猿めいた筋骨隆々の姿を思い出す。あれの相手を一晩中務めるのは確かに骨が折れたろう。並の女性なら今日は起き上がれないかもしれない。しかしお姉さまはそんな疲れを「少し」で済ませ、私に微笑みかけると浴室へ向かう。
「……お疲れ様でした」
深々と頭を下げ、彼女の整った背中からベッドに視線を戻し、清潔なシーツを一旦横に置く。
「………」
無数の皺と染み、そしてむせ返るような汗と精液と愛液の匂いに塗れたシーツが、昨晩の
私は無言でそのシーツを丸め、交換を始めた。
日常的に「お姉さま」と呼んでいるがララァ・スンと私、カンチャナは血縁がある訳ではない。彼女は「カバスの館」と呼ばれるこの高級娼館で暮らす女性たちの中で最も優れた存在であり、皆にとっての「お姉さま」だ。
お金のことは深くは知らないが「高級」と呼ばれるのは伊達ではなく、街のそういった、いわゆる一般的な娼館とここは別格なのだと以前にお姉さまが教えてくれた。相手を務める女性のランクにも依るが、例えばお姉さまと一夜を共にする場合、庶民なら数か月ほどは遊んで暮らせる程の金を積む必要があるそうだ。
もちろん、それだけの金を積むだけの価値が「商品」には求められる。この館に住む女性たち──素質を見込まれ、諸々の事情で囲われ、買われ、連れてこられた者たち──は、ただ優雅に暮らしてセックスをしていれば良いという訳ではない。単純な性のテクニックだけでなく上級軍人や富裕層の話題に合わせられるだけの教養と知識、淑女としてのマナーや礼儀も必要とされる。それらを満足に修められなかった者は「商品の価値なし」と見做され他の場所、少なくともこの館よりは過酷な場所へと送られることになる。輝きの弱い宝石は、宝石箱から外されるのだ。
「ここはそういう場所……でも、貴女たちが素質を見込まれ、ここに来れた事は幸運なこと。それだけは覚えておいて」
そう言いつつ私の頭を撫でてくれたお姉さまの手の感触は、今でも覚えている。
今の私の立場はいわゆる小間使いだ。
──いや、「なかった」と言うべきか、
「もう終わったの? ふふっ、手際が良くなったわね」
ベッド周囲に散乱していたゴミを拾い、枕と布団を整えたところでお姉さまが戻ってきた。湯を弾くぼどに瑞々しい褐色の肌が火照っている様が艶めかしい。私が同じようにシャワーを浴びたとしても、お姉さまの様にはならないだろう。
彼女の賞賛に面映ゆさを覚えつつ、私は一礼した。
「いえ、まだまだ叱られてばかりで……それではお姉さま、お邪魔しました。ゆっくりお休みくださ……」
「あ……カンチャナ、ちょっといいかしら?」
しかしお姉さまはバスタオル姿のまま私を呼び止め、シーツを張りなおしたベッドに腰かけた。普段なら労いの言葉と共に私を見送るところで、こうやって呼び止められるのは珍しい。
「……はい、お姉さま」
自分でも表情が硬くなってゆくのが分かる。
促されるままにベッド横の椅子に座り、私はお姉さまの言葉を待った。
「カンチャナ、何日か前に貴女にお茶を淹れて貰った中将さん、覚えているかしら?」
「えっと……確かご年配の、恰幅の良い……」
言葉を選びつつ記憶を探る。連邦の制服を腹の部分だけパンパンに張らせ、無数の徽章を胸に付けていた初老の軍人。私の答えにお姉さまは頷き、言葉を続けた。
「ええ、その方。この店を懇意にしていただいていて、私も何度も
「………」
あの老人に組み敷かれ、犯されるお姉さまの姿を幻視する。「ここはそのための場所だ」それは分かっているが抵抗感を拭うことは出来ない。
僅かにお姉さまの表情が曇る。数秒の間を置き、彼女は言った。
「それで……その中将さんが、次の来訪の際のお相手として貴女を希望されてきたの」
「……!」
やっぱり、そういうお話ですか。
喉元まで出かけた言葉を飲み込む。
本来、この館で小間使いで働く「候補生」たちに客を取る権利は無い。高級娼館として看板を掲げている以上は未熟な奉仕でお客を満足させられないままお帰りいただく訳にはいかないし、私くらいの──世間的には「幼い」と呼ばれる年齢の──少女を商品として扱わない程度の、最低限の倫理観はこの館にも存在しているからだ。
ただ、この店の「上客」として扱われる程の人間が、相応の金額を提示してきたならば話は違う。立場と財力は、言外のルールや倫理観を容易に踏み倒す。
「勿論、貴女がそういった事にまだ慣れていなくて、満足させられないかもしれないとはお伝えしたわ。『初めてのお客』でない事も」
「それでも、私を?」
「ええ」
少なくとも「処女目当ての変態」ではないという事か。
紅茶のカップを差し出した時のあの男の様子を思い出す。表情こそ好々爺めいた笑みを浮かべていたが、私に向けられた視線は確かに商品を値踏みするそれだった。あの時から目を付けていたのだろうか。
「カンチャナ……このお話だけど、『彼女がこの話を嫌だと言うなら、無理強いはしない』と言っていただいているわ」
「……そうですか」
その言葉に嘘は無いだろう。この店に
「どうかしら? 遠慮せずに言って貰えれば……」
「いいえ、お受けします」
更に気遣いを見せてくれるお姉さまに、私はきっぱりと答えた。
彼女の言葉通り、ここで私が断っても中将はそれ以上は踏み込まないだろうし、
しかしそこで叱責されるのは他でもないお姉さま、ララァ・スンだ。この館のトップである彼女に肉体的な罰が与えられることは無いが、それでも、私が原因でお姉さまが責められるのは耐えられなかった。
私の答えにお姉さまは申し訳なさそうに、同時に気遣うように言った。
「ありがとう、カンチャナ……何度もお相手しているけど、良い方よ。乱暴なこともしてこないし、朝まで求めてきたりもしない。数時間だけお付き合いすれば、後はぐっすり眠れるわ」
「……はい、ありがとうございます。満足していただけるよう、私も努めさせていただきます」
「あまり気を張らなくて良いわ。着替えなども必要だから、当日になったら改めて呼ぶのでよろしく頼みます……ごめんなさいね、忙しいのに足止めしてしまって」
「いいえ……では、失礼致します」
労いの言葉がこの場での用件の終わりを告げる。
心の内側から湧き出てくる不安感と嫌悪感。それを抑え込みつつ、私は部屋を退出した。
そこからの数日、何をしていたか私自身も覚えていない。
いつも通りにお屋敷の仕事をして、お姉さま方のお世話をしていたのは何となく記憶にあるが──常に、頭の大半は今日のことで占められていた。
「……うん、いいね。やっぱ素材がいいから似合うわ」
私の服の襟を整えつつ、着付け担当の女性が言う。今の私は給仕服からフリル付きの白のブラウスに葡萄酒色のスカート、黒のロングソックスに赤いエナメルの靴といった姿に変わっている。
これが何処かへのお出かけの恰好であれば私も笑みのひとつも浮かべたろうが、これから行うのは父親どころか祖父ほどに年の離れた男との性交だ。
加えて──服こそ着せられたが、下着は履かされていない。服装も含めて、これはその中将からの「注文」だ。お姉さまは「良い方」と言っていたが、なかなかに
「さ、行ってきな。ベタな言い方だあけど、天井のシミでも数えてりゃすぐ終わるさ」
「……いってきます」
ポンと背中を押され、私は着付け室から出て客間──客間という名目だが、ダブルベッドも浴室もある──へ向かった。
既に外は暗く、見上げてみれば窓越しに大きな半月が浮かんでいるのが見える。
──大丈夫。私は恵まれた、幸運な環境にいる。
一年戦争から数年、この館のあるインド周辺もようやく復興の槌音が聞こえるようになったが、今もなお人々の暮らしは過酷だ。特に戦争で親や身寄りを失った孤児たちの運命は悲惨と言っていい。
孤児院や教会が無償で匿うには孤児の数は余りに多い。市街地の道々には腕や足を失った物乞いの少年少女が座り込み、疲れ切った瞳で恵みを求めているし、農場では粗末な器具と安い賃金で児童労働に従事させられている子供も多い。あくまで噂の域を出ないが、軍の人体実験や犯罪組織の臓器売買などで消耗品扱いされる孤児も居るという。
だから──それらに比べれば、私は遥かに幸運なのだ。
そんな事を思いつつ、私は客間の前に立った。
「スゥ……ふぅ……」
大きく息を吸い、吐く。手を掲げ、三回のノック。
『どうぞ』
「失礼いたします」
返事を待ち、扉を開ける。
「やあ、よく来てくれたね」
接客用の大型のソファ。そこにみっちり詰め込まれるように座っていた男性が私に言った。記憶通りに年は初老で、白い口髭に柔和な笑みを浮かべている。連邦の制服の無数の徽章や、金糸で飾られた中将を示す肩章が天井のシャンデリアの光を反射させ、ギラギラと輝いているのが悪趣味を通り越して体にミラーボールを付けているかのようだ。
無意識に緊張し、体が強張ってゆくのが自分でも分かる。私は努めて平静を装い、男に礼をした。
「いいえ……こちらこそ不慣れで不作法もあるかと思いますが、よろしくお願い致します」
スカートの裾を持ちあげ、教わった口上を述べる。男は手のひらを挙げて言った。
「いやいや、無理を言ったのは私の方だからね。以前に見たときに、君に興味を持ったものだから」
「はあ……それは、どういう」
「まあまあ、立ったまま話すのも何だ。まずは座り給え」
私の問いへの答えを濁し、男は私を促す。
「恐れ入ります。では、失礼いたし……」
「ああ、いや、そっちではなくて」
「……?」
テーブルを挟んだ真向かいのソファに座ろうとした私を男は押し留めた。掲げていた手のひらを、自分の腿へと向ける。
「
「……承知しました」
成程、そういう事か。
内心の軽蔑を顔に出さないよう意識しつつ、私はテーブルを回り込み、男の上に座った。やはり軍人ということなのだろうか、中将の身体は大きく、140㎝ほどの私の身体はすっぽりと男の肉に包まれる格好になった。生暖かい熱量とじわっとした湿気が気持ち悪い。
中将は私を乗せたまま、見下ろすように声をかけてきた。
「そういえば名前も聞いていなかったね」
「はい……カンチャナ、です」
「良い名前だね。訛りからすると、パキスタンの辺りに住んでいたのかい? あの辺りはコロニーの破片でも大きいのが落下して、大変だったろう」
「い、いえっ……」
声と共に首筋に息がかかる。耐え難い悪寒と共に身を縮めようとした私の腕を中将の手が掴む。
「ッ! あの、お客様……」
「カンチャナ、もう一つお願いがあるんだ。私のことなのだが……」
決して痛みを与えない程度の、しかし有無を言わせない力で私を掴みつつ中将は語りかける。
「……!」
彼の要望を聞いた私は一瞬、言葉を失い──首を曲げて男の顔を見上げ──口を開いた。流石に今の軽蔑の感情は隠せなかったかもしれない。
「分かりました……お、
どくん、と私のお尻の辺りが脈動し、熱を帯びたのが分かる。今の言葉だけで興奮したらしい。この服装といい、本当に
「……いいね、実にいい。慣れないと思うが、そう呼んでくれ給え」
「ンッ……!」
腕を掴んでいた手がお腹のあたりに移動してゆく。抱きかかえられるような恰好のまま、私は反射的に身を捩ってしまう。
「おと、お父様、少し、待って……」
「大丈夫……痛くはしないよ。もっと全身の力を抜いて、身体を預けるんだ」
中将の吐息が近い。熱を増す息が耳朶をくすぐり、同時に太い指がブラウスのボタンを外してゆく。開放された私の褐色の肌は緊張と恐怖でじっとりと汗が滲んでいた。
「……ッ!」
差し込まれた中将の手が膨らみ始めの私の胸へ伸びる。抵抗できない以上、せめて刺激を堪えようと息を呑んで身構える。
「………」
「………」
「……?」
刺激が──来ない。
「……お父様?」
さわっ
「んあぁっ!?」
不意の刺激に声が漏れる。乳首の先端、そこを触れるか触れないかの絶妙さで指の腹が柔らかく撫でたのだ。
「うん、感度もいい」
「ンッ、は、あぁっ……!」
警戒心が高まると人は様々な刺激に敏感になる。それは周囲の状況に素早く反応し、身を守るための防衛的反応だ。
しかし、今はそれが私を逆に苦しめている。貪欲に求めてくる訳ではなく、あくまで両の乳首だけを柔らかく、不規則に刺激してくる指。私の意識は自然とそこに集中し、更に刺激への感度を上げてしまう。
中将からの「要望」だけは頭の片隅に残しつつ、私は制止を求めた。
「お、お父様っ……そんな、胸、苛めないでっ……」
「何を言ってるんだい、カンチャナ? 私が
「く、ひっ!」
いつの間にか摘まめる程度まで尖り、固くなっていた私の乳首。それを中将の指は太さからは想像できない繊細さで挟み、柔らかく扱いてきた。ビクンと体が跳ね、宙に浮いた足が震える。
「ほら、お前の乳首もこんなに固くなっている。下着も着けずに、いやらしい娘だ」
「ふあぁ、あぁ……そっ、それは、お父様がっ……!」
「ははっ、そうだったな……私の我が侭を素直に聞いてくれる。本当に良い子だ。カンチャナ」
「あぁっ!」
腰の脈動と熱がさらに激しくなっている。おそらくは今すぐにでも私を犯したい筈なのに、
それこそ有無を言わせずこちらを押し倒し、肉棒を挿入してくるというのであれば私の方も心を殺し、天井の模様でも眺めながら耐えるつもりだった。しかし、これは──
「……だいぶ解れてきたね。こちらはどうかな?」
「えっ……あっ……!」
葡萄酒色のスカートが捲り上げられた。左手は乳首を弄るのを止めぬまま、中将の右手は捲り上げた裾から鼠径部へと伸びてゆく。ショーツを履いていない私の秘所は阻むものも無く、あっさりと男の指の侵入を許した。
「おとっ、お父様っ、そこ、触らない、でっ……!」
「ふむ……」
「あぁんっ!」
「ほう……剃っている訳ではないね。まだ生えそろっていないのか」
「……ッ!」
羞恥で顔に血が集まってゆくのが分かる。おそらく彼からは、私の顔が真っ赤に見えているだろう。
乳首と同様。いや、それ以上に丁寧に中将の指は私の秘所を弄る。まだ未熟な陰唇を撫で、ぴたりと閉じた関門を少しずつ広げてゆく。
「濡れてきているね。ちゃんとお前が感じてくれて嬉しいよ」
「そっ、そんな、ことはっ……」
「そうかな?」
「んあぁっ!」
つぷり、と中将の指が私の中に挿入されてゆく。膣壁を柔らかく撫で、こちらの反応を伺ってくる。
反応を抑えられない。胸と股間の両方からの刺激で自分の身体が昂ってしまっている。
「まっ、待って、おとう、さまっ!」
「そろそろ、強くするよ」
「あ、あ、あぁっ!」
もう一本指が増え、私の
その反応は彼を満足させるものだったのだろう。中将は今度はスカートの後ろを捲り上げ、私のお尻を剥き出しにすると右手を股間から離し、自身のスラックスのジッパーを開けた。
「ととっ……カンチャナ、お前がいやらしいから私もすっかり興奮してしまったよ。いつもより大きくなってるから、どうも出しにくい」
「は、はぁっ、はぁっ……!」
返事をすることもままならない。ようやく訪れた一瞬の自由に、荒い呼吸で酸素を補給する。
「……えっ?」
直後、私の足の間に焼けた鉄の棒が出現した。それが初老のそれとは思えない、熱く、固い肉棒であると気付いたのは数秒後のことだ。
左手が乳房から離れ、両の手が私の太腿を抱えた。小柄な私の身体は簡単に持ち上げられ、屹立した肉棒が秘所に押し当てられる。
「大きく息を吐くんだ。いくよ、カンチャナ」
「そん、な……お父様、せめて、ベッドでっ……」
「安心してくれ。もちろんこの後、ベッドでもお前を味わうよ……だが、私も限界が近くてね、んっ……!」
「おとっ……ん、く、うあぁっ!?」
ゆっくりと、しかし制止することなく逞しい肉棒が私の中に挿入されてゆく。強い圧迫感に身体が浮きそうになるが、がっちりと太腿を掴む手が逃げることを許さない。
「あっ……かっ……あぁ……!」
「我慢するんだ。あと、少しだから……!」
過呼吸を起こしたように口がパクパクと開閉する。声を出すこともできない。苦しむ私の様子に中将は動きを止めず、それでいて優しく語り掛ける。
「乱暴なことはしない」というお姉さまの言葉は本当だった。しかしこの、相手に侵食するかのような犯し方はある意味、暴力よりも暴力的だ。
やがて無限に思える数秒が過ぎ、驚いたことに私の身体は中将の肉棒を全て受け入れてしまっていた。
「あ、はっ、ふぁ……」
後ろで括っていた髪が解かれた。栗色の髪がうなじに触れ、汗で貼りつく。
ふとその時、大きな手がぽんと頭に置かれた。子供を褒めるように私の頭を撫でつつ中将は言う。
「……全部入ったよ、カンチャナ。お前は偉い子だ」
「あ……お、お父様……」
「ここからは、お前も気持ちよくしてやるからね」
「おと……んっ、んあっ!?」
頭に置かれた右手が離れ、再び太腿を掴む。体が持ち上げられ、熱い肉棒が抜ける寸前まで引き出されたところで力が緩む。私の自重で肉棒はまた奥まで突き入れられるが、当たって痛くなる手前でまた力が戻り、痛みに達しないまま再度持ち上げられる。
「あ、あっ、あぁんっ!」
「ぐうっ、い、いいぞ、カンチャナ……私のものを、狭いお前の膣内が締め付けてくるっ……!」
「そんなっ、し、知らないっ、しら、ないっ!」
幼児が「いやいや」をするように首を左右に振りつつ、私は中将の言葉を否定する。自分の身体がいうことを聞かない。私を愛娘扱いしながら変態の上で腰を振る私は、本当に私なのか。そんな疑問と理性すら快感が押し流そうとしてくるのだ。
「うっ、ぐっ……カンチャナ、顔をこちらに向けるんだ」
「ふあぁ、あ、お、お父様……」
「あぁ、素晴らしいよ、カンチャナ……ンッ……」
「ンッ……お父様、お父様ぁ……!」
嫌悪感しかない男の顔。その押し当てられる唇に私は唇を重ね、吐息を交換する。
「んっあぁっ! おとっ、お父様っ、わたっ、わたしっ、おか、しくっ!」
「もう少し、もう少し、だっ……私も、もうっ……!」
次第に激しくなる動きの中、肉棒の脈動が断続的になってきた。絶頂が近づいているのだ。
「お、おおっ! 出すぞ、カンチャナ、お前の、中にっ!」
「はっ、あ、はいっ、くだっ、くださいっ! お父様、お父様ぁっ!」
「……っ!」
「あ、あ、あああぁぁっ!」
熱い奔流が下から上へと膣内に叩きつけられる。年齢からは想像できないほどの勢いの射精と共に、私も絶頂に押し上げられた。
「くうっ……お、おぉ……」
「あっ、あぁ……!」
中将が大きく息を吐き、全身の力を抜く。私はその身体の上に人形のようにぐったりと身を横たえた。油と汗と精液の臭いのする肉のベッドに、不快な心地よさを覚えつつ。
「おやおや……まだ寝ては駄目だよ、カンチャナ。夜は長い。もっと、楽しもうじゃないか」
「……はい、
──結局、その後はベッドの上で更に数回犯された。
「本当に『お疲れ様』。カンチャナ、大丈夫……ではなかったようね」
「あっ……いえ、これも務めだと分かってますから」
翌日、私の顔を見て全てを察したララァお姉さまはそう言うと申し訳なさそうに言った。力なくそれに応え、頭を下げる。
これは決して気を悪くしているからではない。まだ全身の力が入らず、ヒョコヒョコ歩きになってる程の状態だからだ。
むしろ、逆に私はお姉さまに対して尊敬の念が強まっていた。あんなお客様を、お姉さまはどうやって相手しているのだろう。
「わたし? わたしは……そうね、なんと言うか……相手の望むことが分かるの」
「分かる?」
「他の人に比べて勘が良いのかもしれないわね。それで、お客様の先を読むことが出来る。あらかじめ何が来るか分かっていれば、それに準備が出来るでしょう?」
「……私には、真似できなさそうです」
やはりお姉さまは色々と違う。早々に参考にすることを諦めた私にお姉さまは言った。
「それとカンチャナ。貴女に伝えておく事があって……新しい娘が明日来ます。貴女には、先輩としてその子の指導役をお願いしたいの」
「指導役……私と年の近い子なのですか?」
「ええ。貴女と同じか、ひとつ下だったかしら」
そう言うとお姉さまは一枚の書類をテーブルに置いた。簡素な履歴書のようなそれには、無邪気そうな満面の笑みを浮かべた黒い癖っ毛の少女の写真が貼られている。
「……『ヴァーニ』」
果たしてこの娘は、この場所がどんな所か知って来るのだろうか。
そんな事を思いつつ、私は記入欄に書かれた名前を呟いた。