重力の底で雛鳥は哭く 作:星乃海(十両)
「……だから、この館はあくまで『恋人たちが出会い、愛し合う場所』という名目で存在しているの。お姉さま方が来訪者のことを『お客様』って呼ばないのはそのため。でも、私たちは使用人だからちゃんと『お客様』って呼ばないといけない。そこは気をつけて」
「へえ~……流石は『カバスの館』だね。あたしの知ってるのと全然違うや」
昼下がりの館の廊下。下ろし立ての給仕服を着た少女を連れて、私は各部屋を案内しつつこの「カバスの館」についてのルールを説明していた。黒の癖っ毛を揺らしつつ、興味深そうに彼女は頷く。見るもの全てが珍しいのか、小鼻をひくつかせてキョロキョロと周囲を見回っているのが何とも子犬っぽい。
「この辺りは私たち小間使いの部屋。基本的には相部屋だけど、いずれ……その、お客を取るようになったら、個室を与えられる。物を盗まれたりとかの心配は無いわ。どの道、この館からは許可無しには出られない」
「凄い厳重な警備だよね。警備員さんが持ってるの、アレって実弾?」
「……実弾よ」
彼女の名はヴァーニ。今日来たばかりのこの館の新たな使用人であり「候補生」だ。私にとっては初めての「後輩」でもある。この館に来る新人は館の主人であるカバス、及び彼の人脈による身請けに限られる。故にその数は決して多くはない。
それにしても──
「ねえ、カンチャナはどこからこの館に来たの?」
──このヴァーニという娘、妙に距離感が近い。
私が初めてこの屋敷に連れて来られた時には大きさと荘厳さに圧倒されてまともに話すことすら出来なかったが、彼女は初対面の私にも遠慮なく様々な質問を投げかけてくる。あと、気付いたら普通に呼び捨てになっている。
彼女の問いかけに私は努めて無表情に答えた。
「別に……言うほどの話は無いわ。何となく貴女が想像したら、たぶんそれが正解」
「えっ!? じゃあ、何処かの貴族の娘だったの!?」
「………」
どういう想像をしているのか。
このままだと本当に没落貴族の娘にされそうなので、私はヴァーニに言った。
「普通の戦災孤児よ。両親とも音信不通になって、運良く孤児院に拾われて……それで、ここの主人に身請けされたの。えっと、ヴァーニさん」
「ヴァーニでいいよ。こんなトコでせっかく同じくらいの人と会えたのに、先輩後輩とかって感じになるのも嫌だし」
「……分かったわ。ヴァーニ、貴女は?」
明るい笑みと共に言ってくるヴァーニに私は小さくため息をつき、彼女の言葉に従った。確かにあの戦争で多くの人を失って以来、私自身も同世代の友達など居なかった。その気持ちは分かる。
「あたし? あたしは、ここの前はニューデリーにあった
なるほど、同じような仕事を経験済みということか。それなら場所慣れしている反応にも頷ける。
ただ、それを差し引いても「この館」で務めるにしては余りにあっけらかんとした態度だ。私はヴァーニに尋ねた。
「その……貴女は、それでいいの? ここで働くってことは……」
「うん、それはまあ、分かってるつもり」
私の問いかけにヴァーニは少し照れつつ答えた。薄褐色の肌に朱が差す。
「でもあたし、戦争になってから学校にも行けてなかったし、出来ることって言ったら小間使いみたいな事しか無いしさー。それにほら! まだ
「………」
「カンチャナ?」
「……何でもないわ。次の場所を案内するわね」
──別に彼女は変なことは言っていない。この場所が異常なだけなのだ。
私は彼女を連れて裏庭の丘へと向かった。都市郊外の海の近い高地にこの「カバスの館」は存在しており、その敷地は広大だ。「裏庭」といってもそこはちょっとした公園ほどの広さがあり、簡単ではあるがベンチや遊具なども設置されている。
「ここが裏庭。休憩時や非番の時はここには自由に来ていいことになっているわ。ただ、表と同様に柵を超えようとはしないで」
視線を遥か先の金属柵へと向ける。銃火器を携帯した警備兵が複数巡回しており、中への無断の侵入も、また内部からの脱出も許さないこの館の姿勢を伝えていた。
「ほんとに厳重だねー……あれ?」
ふと、ヴァーニが視線を移動させた。その先を追ってみると、樹木の枝に括られた簡素なブランコに誰かが腰かけている。白のワンピースと褐色のうなじのコントラスト、左右に丸く括られた黒髪。
「……ララァお姉さま?」
彼女の姿を認め、私は挨拶に行くべきか考えた。こちらに気付いていたなら挨拶しないのは失礼だが、お声をかけたら逆に寛ぎを邪魔してしまうかもしれない。
「あの人だよね、この館の姉さんでいちばん偉い人って。あのー!」
「ちょっ……!?」
しかし、横にいたヴァーニは私が判断する前にブランコに向かって小走りに駆け出し、手を振りながら向かってゆく。流石に一人で行かせる訳にもいかず、私は彼女を追いかけた。
「あら……」
ブランコに腰かけつつ空を見上げていたお姉さまは、ヴァーニの声で初めてこちらに気付いたように振り向いた。ヴァーニは歩調を緩めるとお姉さまの前に立ち、緊張混じりに頭を下げた。
「は、初めまして! あたし、今日からこちらでお世話になります……」
「ヴァーニさん、ね。話は聞いているわ……私はララァ・スン。こちらこそ初めまして」
「……はい!」
突然の挨拶にお姉さまは柔らかな微笑みと共に答えた。にこやかな対応にヴァーニはぱっと表情を明るくさせ、元気な声を返す。アルカイック・スマイルとはこんな感じなのだろうか。お姉さまの笑顔にはこちらの警戒心や緊張感を解く「何か」がある。
二人に追いついた私は改めてお姉さまに挨拶した。
「すみません、ララァお姉さま。彼女の案内をしていたところだったんですが、お寛ぎ中に邪魔をしてしまって」
「ふふっ、気にしないで」
「あの、何をしてたんですか?」
ヴァーニが尋ねる。
お姉さまはブランコに座ったまま空を見上げ、視線を遥か先、海の方へと向けた。
「……鳥?」
何十羽か分からない程の渡り鳥の群れ、それが海へと向かってゆく。
視線をそちらに向けたままお姉さまは言った。
「3万Km……休み休み、でも止まることなく、あの鳥たちはそれだけの距離を飛ぶそうよ。凄いわよね」
「………」
そう語るお姉さまの瞳には、憧れにも似た光が見える。
──この館には貧しい者たちが望んでも手に入らない衣・食・住の全てがある。綺麗なドレスに身を包み、栄養価のある豪華な食事に舌鼓を打ち、羽毛の詰まった柔らかなベッドで眠ることが出来る。手に入らないものはただひとつ、自由だけ。
ここから出る方法は三つ。一つは客に身請けされること(当然だが一夜の恋人となる数十倍の金が要る)。一つはこの館で務める資格なしと判断されて別の
「この季節は、今みたいな群れが北に飛んでゆくのが見れるの。面白いのよ? 全く同じに見えて一羽ごとに違ってるの。リーダーに率先してついてゆく子、遅れてくる子、別のところに行こうか迷っている子……じっと見てると、それが分かってくる」
「へぇ~」
素直にヴァーニが感心する。
話の切り替えどころとしてはここか。私はヴァーニの肩を叩くと彼女を促した。
「さ、そろそろ行くわよ。次は……」
その時、お姉さまが私に視線を向けた。
「……!」
「え? あ、ごめんカンチャナ。どうすればいい?」
「少し、お姉さまと話があるわ。貴女はさっき教えた自分の部屋に戻ってて」
「わかった! えと、ララァお姉さま! これからよろしくお願いしまーす!」
私の言葉にヴァーニは素直に従い、お姉さまに再度お辞儀をすると屋敷へと駆けてゆく。
彼女が十分離れたのを確認し、私は改めてブランコに向き直った。
「……何でしょうか、お姉さま?」
今のお姉さまからの視線は「引き止め」。ヴァーニが視線を私に向けたタイミングに合わせたのは、私だけに用があるという事だ。
そして、私だけに用があるということは──
「悪いわね、カンチャナ」
「また……私への『指名』ですか?」
仕方ない事なのだ。分かっていても陰鬱な気持ちが湧いてくる。
しかしお姉さまは私のそんな反応に申し訳なさそうにしつつ、どう説明したものか少し困っているようだった。
「なんと言ったら良いかしら……今回は貴女への指名という訳ではないわ」
「違う?」
「今夜、私がお迎えする『恋人』なのだけど、ちょっと
何とも珍しい話だ。ララァお姉さまは超能力めいた勘の良さで相手の希望を言われる前に察知して満点の奉仕を行える。しかしそれでもアシストが必要とは。
「その、そんなに気難しい方なのですか?」
「いいえ、性格も凄く良い方」
「では……私は、何をすれば良いのでしょうか?」
そう尋ねると、お姉さまは一瞬の躊躇の後に私の眼を見て言った。
「具体的に言うと……
「……は!?」
思わず素の態度を出してしまった事にも気付かず、私は硬直した。
数時間後。
私は給仕服のままお姉さまと並び、屋敷のとある部屋の扉の前に立っていた。お姉さまは普段の白のワンピース姿だ。
「失礼します」
澄んだ声でお姉さまは扉をノックして返事を待つ。
『どうぞ』
落ち着いた男性の声。お姉さまが扉を開け、私がそれに続く。
「やあララァ、久しぶりだね」
「……!」
中で出迎えた相手の姿に私は言葉を失った。歳のほどは30~40代、髪こそ完全に白髪だが、顔だちはまだ若さを残している精悍なジオン軍人。
そこまでは驚くことではない。問題は彼が車椅子に座っており、更に下半身が少なからず欠損してるのが傍目からでも分かったからだ。右足はズボンの付け根近くから無くなっており、左足も完全という訳ではないようだ。
私の驚きを他所にお姉さまは男にゆったりと近づくと唇を重ね、微笑んだ。
「ンッ……お会いしたかったです、大尉。もう何ヶ月も来られていませんでしたから心配していました」
「はは、そう簡単に言わないでくれよララァ。本国も相当に懐具合が苦しいのか、傷痍軍人への手当は減る一方だ」
男性──大尉はそう笑って答えると、ふと目を閉じた。
「……?」
何をしているのだろうか。私がそう思っていると、彼の前に立つお姉さまも瞳を閉じた。
「………」
「………」
無言の時間が過ぎる。そのまま数十秒が経過し、私が声をかけようか迷いだしたところで二人は目を開け、視線を交わした。
「……流石だね、ララァ。君は更に優れた存在になったようだ」
「大尉こそ……変わっていない、優しい方ですね」
──なんだか良く分からないが、今のが二人の相互理解の手段なのだろうか。
何となく蚊帳の外に置かれた気持ちになっていた私に、大尉は向き直ると笑いかけてきた。
「君が今回の彼女の
「は、はい……頑張らせて、いただきます」
「ふふっ、そんなに気張らなくていいわ」
私の反応が面白かったのかお姉さまが少し笑う。そのままお姉さまはスッと私に近づくと、肩に触れてベッドへと促した。導かれるままに私はエプロンドレスを脱ぎ、床に落とす。
「……ッ!」
息が詰まる。自分がひどく緊張しているのが分かる。それは同じ緊張でも「お客様」を相手にするのとは全く違うものだ。
ララァ・スンは私にとって敬愛する存在だ。それこそ毎夜のように違う相手──連邦・ジオンの上級将校や富豪など──とベッドを共にし、口に出すのも憚られるような
そんな相手と今からセックスをするというのだ。自ずと動悸が激しく、全身が熱くなってゆく。
「あっ……」
「大尉、そこから見えますか?」
「ああ、大丈夫だ。始めてくれ」
ぽふっと柔らかな、キングサイズのベッドの上に身体を寝かされる。大尉は車椅子を動かしてベッドの側、私たち二人を横から眺める位置に身を置いた。彼の言葉に頷き、お姉さまは私の給仕服のボタンに指をかける。
慣れた手つきでお姉さまは前のボタンを外し切り、ゆっくりとシャツを左右に広げた。
「綺麗よ、カンチャナ」
「そ、その、お姉さま。確かに『接待』をしたことはありますが、女性相手は私……ンンッ!?」
「んっ、ふうっ……っぱ……」
「ふぁ……ハァッ……」
「……大丈夫、わたしに任せて」
戸惑う私の唇にお姉さまの唇が押し当てられる。それだけで私の身体はビクンと跳ね、やがて力が抜けてゆく。
暫くキスを続けていたお姉さまは私の緊張が解けたのを確かめると、身体を起こして自身のワンピースの裾を摘まんだ。
「ちょっと待っていてね、わたしも……」
「……!」
もともと白い服の上からうっすら透けてはいたが、ワンピースを脱ぎ捨てたお姉さまの姿に私は息を呑んだ。
初めて見た訳ではない。部屋の掃除などで訪れた時など、シャワー上がりの彼女と遭遇することは珍しくなかったし、それを「綺麗だ」と思ったことはあった。
「……さあ、続けましょう」
しかし髪を解き、今こうして私のスカートを脱がしに上から覆いかぶさるお姉さま、ララァ・スンの裸体は綺麗であると同時に──怖いほどに淫猥だった。
透き通るような緑色の瞳に整った鼻筋、ルージュで彩られた艶めかしい朱色の唇。肩は細いが乳房は大きすぎす、小さすぎず、瑞々しい果実のように私の眼前で小ぶりな乳首と共に揺れる。余分な脂肪のない腰周りはキュッと引き締まっており、それでいて太腿は女性らしい曲線を描く。
私の位置からは覗く程度にしか見えないが、秘所の陰毛は薄く、黒のうっすらした茂みが褐色の肌を彩っている。
「カンチャナ、上を……」
「は……はいっ……!」
手際よくスカートの留め具を外すお姉さまの言葉に応え、私は既にほぼ脱げかけていたシャツの袖を抜く。上と同じ象牙色のフリル付きのショーツを見てお姉さまが囁きかけてきた。
「可愛い下着ね。この前の買い出しで買ったものかしら?」
「はい、子供っぽいかと、思ったんですが……ああっ……!」
「そんなことは無いわ。とても似合ってる……」
ショーツの隙間からお姉さまの細い指が侵入して来た。無毛に近い私の秘所にお姉さまは触れ、まだ未成熟な陰唇を丁寧に撫でてくる。それだけで私の身体は不思議なほどに昂り、抑えられない喘ぎを漏らした。
「おね、お姉さま、そこっ!」
「ふふっ、敏感なのね……じゃあ、ここも……?」
「んっああっ!」
秘所を弄る指を止めないままお姉さまは空いた左手で私のブラをずり上げた。引っかかる程の隆起もない私の乳房は露わになり、肌の色よりやや濃い乳首は早くも尖り始めている。顔から火が出そうな程の恥ずかしさを覚え、私は思わずお姉さまから顔を逸らした。
「……え?」
逸らした顔の先、車椅子に座ったままの大尉の姿が目に入る。
「うっ……あぁ……」
椅子に座ったまま、彼は恍惚の声を発していた──
「あの、お姉さま、あの人……」
「ふふっ、大尉も悦んでいるわ……もっと続けましょう、カンチャナ」
「えっ……ンッ、ンンッ……!」
どうやら大尉の様子はお姉さまにとっては当たり前の事だったようだ。疑問を口にしようとした私の唇に再びお姉さまの唇が重ねられ、今度は熱を帯びた舌が口腔内に侵入してくる。
「ん、ちゅ……カンチャナ、貴女も……あむっ……」
「ふぁ、ふぁいっ……ちゅ、じゅるっ……!」
先端を尖らせて歯茎を裏からくすぐるように蠢くお姉さまの舌。私は戸惑いつつもそれに自分の舌を絡ませた。互いの吐息と唾液が混じり、その熱さに頭がくらくらする程だ。
「んぱ、はっ、ンンッ!」
「こっちも濡れてきたわね。わたしも……ふっ、んうっ……!」
同時にショーツに差し込んだままの指を動かすのも彼女は忘れない。しっとりと滲み始めた愛液を指先に絡め、その動きをより大胆なものにしてゆく。
その一方でお姉さまは左手を私の胸から自身の股間へと移し、そこで自らの秘唇を弄っていた。汗ばむ腰がビクンと時折跳ね、興奮の昂りをこちらに伝えてくる。
「んっ、はぁっ……そろそろ、かしらね。脱がすわよ……」
「あっ……!」
私の身体の準備が整ったと判断したのだろう。お姉さまは私を弄っていた方の指を止め、そのままショーツをずり下げ始めた。抵抗する力も入らない私の脚をくるくると丸まりながらショーツは移動し、ベッドの端に脱ぎ捨てられる。
「ちょっと待っててね、カンチャナ」
「おねえ、さま……?」
お姉さまはそう言うと自身を慰めていた指を抜いて身を起こし、ベッドに備え付けられたキャビネットのひとつを開けると中の物をふたつ取り出した。反り返った棒状のそれは両の先端が亀頭を模した形になっている。もうひとつはトロッとした液体の入ったポリ容器だ。
「それって……」
「ええ、今からこれで、貴女と……んんっ!」
何に使うものかは考えるまでもない。寝たままの姿勢で見上げる私にララァ・スンは微笑みかけ、片側を自身の女陰に押し込んだ。
「あっ、はぁっ……!」
あの細い腰のどこに挿入されているのかと思う間もなくズブズブと
やがて半分近くが
ゴクリと喉が鳴る。お姉さまは私に向き直ると腰を落とし、私の脚に手を添えて広げた。
「あ、あぁ……」
「……広げて、カンチャナ」
お姉さまの柔らかく、同時に有無を言わせない強さを感じる声。私は言われるがままに自分の未熟な陰唇を小さな手で広げ、お姉さまの前に全てを晒した。おそらく今の彼女の緑の瞳にはひくつく膣孔まで露わになっているだろう。
「お……お願いします、お姉さま。私のここに、くだ、さいっ……!」
「可愛いわよ、カンチャナ。本当にっ……ん、あぁっ!」
「あ、あ、ふあぁっ!」
竿に手を添えて狙いを定め、腰を突き出す。私の孔は限界まで広がり、お姉さまのそれを受け入れてゆく。全身がガクガクと震え、圧迫感と同時に快感が押し寄せてくる。
「ぐ、うぅっ……い、いいよ、ララァ。その、ままっ……!」
傍らで目を閉じたままの大尉が同時に悶える。しかしそれを気に留める余裕など私には既に無かった。お姉さまの体温と貼りつく肌。押し当てられる乳房の柔らかさ、内側からジンジンと響いてくる快感。それらを受け止めるだけで精一杯だ。
今まで男性の肉棒を嫌悪感と共に挿入される事は幾度もあった。今、挿れられているのはその模造品に過ぎない張り型だ。なのに相手が違うだけでここまでの快感が生まれるものなのか。
「動く、わね……ふっ、うっ、んはっ……!」
「あっ! あ、あぁんっ!」
お姉さまが腰を振り始めた。私の片足を抱えて固定し、もう片方の手は張り型が抜けないように竿に添えて調整している。
「ど、どうっ、カンチャナ、気持ち、いいっ!?」
「いっ、いいっ、いい、ですっ! わた、私の、中っ! お姉さまに、犯され、てっ! 凄く、悦んで、ますっ!」
激しい腰の動きに息が途切れる。それでも私は懸命にお姉さまの言葉に答える。
お姉さまの形良い乳房が眼前で揺れる。汗の飛沫が散り、ベッドに新たな染みを作ってゆく。
「わたしも、気持ち、いいわっ! 本当に、貴女の膣内に、挿いってる、みたいっ!」
「んっああっ! お姉さま、お姉さまぁぁっ!」
部屋中に響くほどの嬌声が抑えられない。お姉さまの動きに合わせて勝手に腰が動き、張り型を愛おしそうに締め付けてしまう。
自分の中の快感が更に大きくなってきた。今にも身体が弾け飛びそうだ。
「おねっ、おねえ、さまっ! わたっ、私っ、もうっ!」
「カンチャナ! もう少しだけ、我慢、してっ! あとちょっとで、大尉がっ……!」
「んくっ、うっ、うあっ!」
お姉さまの言葉に応え、私は抵抗する。歯を噛みしめ、シーツを強く握り、押し寄せる快感の波を懸命に堪える。
「だ、大丈夫だ、ララァ……そのまま、やってくれっ!」
車椅子の上で悶えつつ大尉が叫ぶ。お姉さまはその声に頷くと、私に優しく言った。
「もう、大丈夫よ。よく我慢、できたわね……あぁっ! ん、はぁあぁっ!」
「お姉さま……あっ、あっ、ああぁぁぁっ!」
我慢から解放され、私の意識は一気に絶頂まで達した。背中がピンと張り、直後に全身の力が抜けてベッドに人形のように身体を投げ出す。
「う、あぁ……ありがとう。ララァ、カンチャナ」
──意識が落ちる前、大尉のそんな声が聞こえた気がした。
──ニュータイプ、と呼ばれる人々がいる。
ゴシップ誌の胡乱な記事では「驚異的な反応速度を持つ超人類で、一年戦争時のエースパイロットの多くはニュータイプだった」などと書かれているが、お姉さまの話ではそんな単純なものではないそうだ。
周囲の環境への感応力、他人の感情や思考に対しての共感性や理解力。それらが大きく進化した人間で、人類が宇宙に上がったことで起きた自然な変化らしい。
そして、そんなニュータイプ同士が出会った場合はその共感性は更に増し、相手の気持ちを理解するどころか
「つまり、大尉はお姉さまと同調することでお姉さまと私の『セックスの快感』を味わっていた?」
俄かには信じがたい話だ。しかし最初の絶頂から幾度となく身体を合わせた朝、お姉さまはこう言った。
「大尉は戦争後に爆弾テロで普通のセックスが不可能になってしまって……ここで私と同調することで、彼はかつてと同じ快感を経験できるの」
その為だけに数か月も貯蓄してこの館で最も高額なララァ・スンを指名する。それを愚かと嗤うことは出来ないだろう。少なくともそれだけの価値が当人にはあるのだ。そしてそれは、この館を利用する他の男性にも言える事でもある。
しかしそんな特殊な能力を持つ存在なら、傷痍軍人とはいえもっと優遇されて良いのではないだろうか。私のそんな疑問に大尉は苦笑いと共にこう答えた。
「はは、『人類の革新』とか言っていたけど今のジオンはニュータイプって存在に懐疑的でね。月のキシリア様の派閥は研究を推進してるが、そこもMSに乗れない怪我人は門前払いだ」
「……そうですか」
そう答えるしかなかった。
申し訳なさが顔に現れていたのだろうか。俯いた私に大尉は言った。
「カンチャナ。次にこの館に来るのは何か月後になるか分からないが……また私が来れたら、ララァの相手になってもらって良いかな?」
「え?」
「君の相手をしている時のララァは非常に興奮していたのでね。相性が良いのかもしれない」
目線をお姉さまへと送る。返ってくるのはいつもの柔らかな、優しい微笑み。
「お……お願い、します」
私は頬を染め、頷いた。
とはいえ──この約束は、永久に果たされないことになる。