窓から差し込む月光が薄暗い書斎を照らし出す。
ラーニャとの行為を終えた俺達が、ゆっくりと休んでいた。
「それで、どうかしらラーニャ?彼の力になってくれるかしら」
アルファは、そうラーニャに問いかける。既に黒いドレスに身を包んだ彼女は、窓際に立っていた。ラーニャも既に変身を解き、アメンバッグルを手にしている。
「ああ。問題ない」
ラーニャは静かに頷いた。
「ただし……」
彼女の視線が一瞬だけ俺に向けられる。
「……彼は王となるのに相応しい男だ。そう思う」
その言葉にアルファは僅かに目を見開き、すぐに柔らかな微笑を浮かべた。
「そうね。私も同感よ」
俺は二人の会話の意味がよく分からなかったが、とりあえず頷いておく。
「それなら良かった」
アルファは満足げに頷き、話題を切り替えるように書棚から古びた羊皮紙の巻物を取り出した。
「では本題に入りましょうか」
彼女は巻物を広げながら静かに告げる。
「これから我々が取り組むべき最大の課題について」
ラーニャが僅かに身を乗り出した。
「アンティリーネのことか?」
アルファは巻物を広げながら静かに頷いた。
「ええ。その名はエルフ社会でも禁忌とされているわ」
彼女の細長い指が巻物の上を滑る。月光に照らされた黒いドレスが微かに揺れる。
「アンティリーネ・ヘラン・フーシェ」
アルファの声は低く落ち着いていたが、その響きには明らかな警戒心が含まれていた。
「彼女の存在がエルフの歴史に与えた影響は計り知れない」
ラーニャが深く息を吐いた。
「戦闘力だけではない。彼女の思考能力も並外れている」
アルファが頷く。
「そう。だからこそ危険なのよ。彼女がその気になれば一国を揺るがす力を持つ」
俺は二人の会話を聞きながら、次第に緊張感が高まるのを感じた。
「彼女は今どこに?」
「・・・分からないわ」
アルファは本から目を離さずに答えた。
「彼女自身の戦闘能力もあるけど、それ以上にとある事が要因があるから」
「しかし、彼女の影響力は今も続いている」
「影響力?」
俺の問いにラーニャが静かに頷いた。
アルファの瞳が暗闇の中で一瞬輝いた。
「アンティリーネはエルフ王家の血筋でありながら人間との間に生まれた禁忌の存在よ」
「あぁ」
現状、人間とエルフの間で戦争が起きている以上、アンティリーネが人間側につく事は考えにくいが。
しかしラーニャは首を振った。
「戦争の勝敗など関係ない。アンティリーネが動けば両陣営ともに混乱に陥る」
アルファの指が巻物の上を滑る。
「彼女の力は単なる戦闘力だけではない。その知性とカリスマ性が最も危険なのよ」
俺は黙って二人の会話に耳を傾けていたが、次第に不安が募ってきた。
「そんな相手にどうやって対処するつもりなんだ?」
「まずは彼女を探し出すことから始めなければならない」
ラーニャの声は静かだが確固たる決意が感じられる。
アルファが巻物を巻きながら言う。
「そして彼女の動向を監視し続ける必要があるわ」
俺は再び不安を感じた。
「でも見つかったとしてもどうやって彼女を説得するんだ?」
アルファとラーニャが同時に顔を上げた。二人の視線が俺に注がれる。
「・・・それはまぁ」
「その役割は、あなたしかいないわね」
「・・・」
それに対して、俺は何も言えなかった。