水泳部の「伝統」~”ペナルティー”という名の凌辱事件~ 作:てんぽ塔
つらい「過去」を共有する二人だからこそ、支え合える未来がある……
校舎裏で奈々先輩を待っていると、彼女は少し照れくさそうに近づいてきた。
「水戸君、待たせちゃった?」
「いや、今来たところだよ」
彼女の表情には以前のような明るさが戻ってきていたが、それでも時折何かを思い出したように表情が曇ることもあった。
「あの……水戸君に、話があるんだけど……」
「うん、なに?」
僕は彼女の言葉を待ちながら、彼女の目を見つめた。
「私ね……ずっと、あの日から色んなことを考えてたんだ。あの事件のこと、私のこと……そして、水戸君のこと」
「うん……」
奈々先輩は少し深呼吸をして続けた。
「最初は怖かった。あの日のことを思い出すと、体が震えて……でも水戸君が訪ねてくれて……怒ったり冷たい態度を取ったりしても、それでも来てくれて……」
「それは……当たり前だよ。僕にとって、奈々先輩は、大切な人だし、あんな事件で奈々先輩と会えなくなるなんて、本当に嫌だったから……」
奈々先輩が、僕を見つめる。
「うん、これまで、私のことを見守ってくれて……ありがとう」
彼女は少し俯いた後、また顔を上げて僕をまっすぐ見た。
「私ね、もう怖くない。まだ時々夢に見るけど……でも、……でも、もう怖くないの。だって、水戸君がいるから」
奈々先輩の声は少し震えていたけれど、その瞳は真っ直ぐに僕を見つめていた。
「水戸君、私……あなたのことが好きです。友達としてじゃなく……恋人として……」
風が吹いて彼女の髪が揺れた。その瞬間、彼女の頬が赤く染まっていくのが見えた。
「え……」
突然の告白に僕は言葉を失った。心臓が激しく鼓動を打ち始めた。
「最近はね、怖くなったら、ずっと水戸君のことばかり考えてた。怒っても冷たくしても、それでも私を見捨てないでいてくれた。だから、水戸君ともっと一緒にいたいなって……」
奈々先輩の目には涙が光っていた。しかし、その涙には、もう過去の悲しみの色ではなく、前を向いて生きたいという意思の光が宿っていた。
言葉がうまく出てこなかった。彼女の告白が信じられなくて、でも心の底から嬉しくて。
「水戸君、答えてほしい。あなたの気持ちを」
奈々先輩は一歩前に出て、僕の手を取った。
僕は深呼吸をして、奈々先輩の手をしっかりと握り返した。
「僕も……奈々先輩のこと……好きです。出会った日からずっと……」
「よかった!嬉しい!!」
「うふふ♡……アハハハ……フフフ……」
・・・
それからあんまり、奈々先輩が笑い続けるから、僕はちょっと不思議になって、
「そんなに嬉しい?」と聞いてみた。
「うん!だって、私、たぶん水戸君以外の男の人とは、もう恋愛なんてできないと思う。
それに、あのとき、水戸君に、わたしの“全部”見られちゃってるから……
だから、あなたに“責任”をとってほしいと思って。
ふふ……これからも、よろしくね、
……奈々先輩のトラウマは、まだ癒えていない。
そしておそらく、彼女は僕のこともまだ、心の底から許してはいないのだろう。
恋人として、またあの事件の“加害者”の一人として、彼女の「愛」と「憎しみ」を受け止める。
これが僕の一生に課された“ペナルティー”なのだろう。
事実、あの事件から20年たった今、僕は彼女の「尻」にしかれている……
<End>
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