※この作品はR-18です。

甘くて、こわい君だった   作:Marks_Lee

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第3話

目覚めたとき、窓の外はもう白んでいた。

 

カーテンの隙間から差し込む朝の光が、天井の角をぼんやりと照らしている。

 

湊は、しばらく天井を見つめたまま動かなかった。

隣に、紬がいる。

制服のまま眠るその身体の温もりが、シーツ越しにじかに伝わってくる。

 

現実のはずなのに、どこか遠くの世界をなぞっているような——

そんな、やわらかく歪んだ朝だった。

 

 

 

ゆっくりと起き上がり、洗面所に向かう。

鏡に映った自分の顔が、ほんの少しだけ違って見えた。

 

昨夜のことが、身体の中にまだ残っている。

熱が、肌の内側に宿ったままのような感覚。

首筋にかすかに浮かぶ赤い痕は、自分で見ても背筋がぞくりとした。

 

 

 

「……おはよう」

 

背後から声がする。

 

振り返ると、紬が起きていた。

襟元を少し手で隠すようにしながら、それでもこちらを見て、笑っていた。

 

「……おはよう」

 

その笑顔に何かを言い返す気力もなく、湊はただそう返す。

 

まるで、これが“続いて当然”のことのように、彼女は当たり前の顔をしてそこにいた。

 

 

 

朝食を取るでもなく、支度をするでもなく。

静かなまま時間は流れ、やがて、駅まで一緒に歩くことになった。

 

制服姿の少女と、スーツ姿の男。

ただ歩いているだけなのに、なにか決定的に“おかしい”。

 

でも、紬はまったく気にした様子もない。

湊の腕をそっと掴んで、笑う。

 

「また、夜に行っていい?」

 

その一言が、拒否の選択肢を、最初から用意していない。

 

湊は、何も言えなかった。

ただ、うなずいた。

 

◇◇◇

 

部屋の照明は落とされ、薄暗いリビングの中で、紬はそっと湊のシャツに指をかけた。

その指先が、躊躇いなくボタンを外していく。

 

「……湊くんの匂い、好き」

 

耳元でささやかれるその声に、喉の奥が熱くなる。

 

シャツを脱がされ、胸元を撫でられる。

体温がゆっくりと高くなるのを、指先で確かめられているようだった。

 

湊の手が、彼女の頬に触れる。

頬の感触は、ひどくやわらかく、あたたかい。

唇が重なり、深く、舌を差し出すと、すぐに絡まった。

 

ぬるりとした感触が喉の奥まで伝わって、喉が鳴った。

 

紬の指が、自分の胸元を這い降りていく。

ベルトに触れ、少し力を込めて外される。

その手付きに、呼吸が乱れていく。

 

 

 

「……ベッド、行こ」

 

囁くようにそう言って、紬は湊の手を引いた。

その細い指が、やけに熱を帯びて感じられる。

 

寝室に移動する途中で、彼女は自分のブラウスのボタンを外しながら歩いていた。

白い肌が、ひとつ、またひとつと露わになる。

 

スカートのホックを外し、ストンと足元に落とす。

 

まるで、脱皮するように制服を床に置いていくその姿は、どこか現実感を欠いていた。

だからこそ、ひどく淫靡で、美しかった。

 

 

 

ベッドの端に腰掛けた紬が、下着のまま、こちらを見上げる。

 

「……湊くん、触って」

 

震える声でそう言ったその顔は、頬が熱に染まっていた。

唇を軽く噛みながら、首を差し出してくる。

 

湊はその喉元に唇を押し当て、舌でなぞる。

柔らかな肌に、うっすらと汗が滲んでいる。

そこに唇を這わせ、噛んで、痕をつけると、小さく息が漏れた。

 

「っ……やだ……そこ、ずっと残っちゃう」

 

「消えなきゃ、いいのに」

 

冗談めかしてそう言うと、紬は目を伏せながら、少しだけ笑った。

 

その笑顔は、すこし壊れかけていた。

けれど、なぜかそれが、美しく見えた。

 

 

 

下着の上から、彼女の中心に触れる。

指をそっと押し当てると、すでに湿っていた。

 

「昨日より……もっと、濡れてる」

 

「……っ、言わないで……」

 

紬は、シーツを握りしめながら、脚をわずかに開いた。

 

その隙間に、湊の指が入り込む。

下着の布越しに、ゆっくりと撫であげると、全身がぴくんと震えた。

 

下着をずらして、指を差し入れる。

ぬるりと滑る感触に、内側から吸いつかれるような熱を感じる。

 

「ぁ……っ、だめ、そこ……動かさないで……っ」

 

そう言いながら、紬の腰が自ら動いていた。

拒みながらも求めるその姿が、湊の奥をかき乱していく。

 

 

 

指を二本に増やし、奥まで沈める。

紬の脚が、ビクンと跳ねた。

 

「あっ……! いまの、すご……っ、あっ、もう……っ」

 

シーツを掴んだまま、彼女の喉が甘く震え、背中がのけ反る。

 

乳房を包み込み、親指で先端を転がすと、また喘ぎが漏れた。

 

息を詰めながら、目を潤ませ、何かを我慢している顔。

その顔がたまらなくなって、湊はそっと上に覆い被さる。

 

そのまま、ゆっくりと腰を重ねる。

彼女の内側に、熱が沈んでいく。

粘膜が絡まり、熱と熱が交わる。

 

「んっ……っ……っ……! っ……すごい、……入ってる……」

 

頬に涙を浮かべながら、それでも脚を絡めてきた。

まるで、もう離さないとでも言うように。

 

ゆっくりと、深く。

浅く抜き、深く沈める。

そのたびに、彼女の声がベッドに吸い込まれていく。

 

何度も。

何度も。

音も、熱も、時間の感覚さえ溶けていくほどに。

 

抱いて、求めて、また沈む。

 

この夜は、もう夢ではない。

 

夢よりも現実で、現実よりも濃密な、

ただ堕ちていく快楽の沼だった。

 

◇◇◇

 

翌朝。

また、同じように目が覚める。

 

違うのは、自分の内側だった。

 

もう、「関係が始まった」なんて曖昧な段階ではなかった。

これはもう、戻れない関係だ。

 

職場での会話が、どこか遠く感じる。

同僚の視線が、ほんの少しずつ冷たくなっている気がする。

通勤電車の中でも、誰かが見ている気がする。

 

——きっとバレていない。

そう思いながらも、どこかで“気づいてほしい”とさえ思ってしまう。

 

そんな感情が湧いていること自体が、すでに異常だった。

 

帰宅すると、また、彼女がいた。

 

制服のまま。

笑って、玄関の前に立っていた。

 

「ただいま、って言ってもいい?」

 

その言葉に、湊は答えられなかった。

 

ただ、その夜も、彼女を中に入れた。

 

繰り返すたびに、理性がやわらかく溶けていく。

抱いて、貪って、肌に沈んで、抜け出せなくなる。

 

その心地よさに、抗うことがもうできない。

 

——落ちている。

優しく、深く、戻れないところへ。

これでいい?

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