朝の光がカーテンの隙間から柔らかく差し込む。
まだ眠気の残るまぶたをゆっくりと開けると、見慣れない天井が視界に入った。
だが、それ以上に意識を引いたのは、部屋に漂う湊の匂いだった。コーヒーと柔軟剤が混ざり合った、落ち着いた香り。
薄く張ったシーツの下、身体には何も纏っていない。
昨夜の記憶が静かに、しかし確かな熱をもって甦ってくる。
唇を重ね、肌を絡め合い、湊に触れられた感触が全身をまとう。
胸の奥に溢れた想いと、身体を満たす熱。
それらが混ざり合って、いつの間にか涙がにじんでいた。
そっと布団から抜け出し、白いシャツを羽織ってリビングへ向かう。
湊はコーヒーメーカーの前に立ち、カップに熱い液体を注いでいた。
湯気がゆらゆらと揺れている。
「……おはよう、早川」
彼の声はいつもより少しだけ柔らかく、まっすぐに心へ届いた。
あやねは小さく頷き、マグカップを受け取る。
「よく眠れた?」
「はい……すごく」
朝の静かな時間がふたりを包み、昨夜の熱は言葉にせずとも共有されていた。
◇◇◇
廊下を歩くあやねの視界の隅に、ふと湊の姿が入った。
彼は別の女性社員と笑いながら話している。
穏やかなその表情は、いつもの優しい彼そのものだった。
だが、あやねの胸はざわついた。
——こんなふうに話す彼を見るのは初めてだ。
笑顔が眩しくて、でもどこか、胸を締めつける。
彼の言葉に女性が笑い返すたびに、知らなかった嫉妬が胸に広がった。
「私だけの湊さんじゃない……」
そう思った瞬間、感情がぐるぐると渦巻いた。
これまで感じたことのない、焦りと戸惑い。
早川は、急いでスマホを取り出した。
震える指でメッセージを打つ。
「給湯室、今ひとりです。来てくれませんか?」
胸の中のざわつきをどうにかしたくて、たまらなくて。
◇◇◇
廊下のざわめきが遠くに聞こえる。
オフィスビルの一角にある給湯室は、薄暗くひっそりとしていた。
誰もいないはずのその空間に、あやねの心臓が高鳴る。
スマホの画面を何度も見返す。
「給湯室、今ひとりです。来てくれませんか?」
自分で送ったそのメッセージが、胸の奥に熱い波紋を広げる。
数分後、静かな足音とともに扉が開いた。
湊が現れ、無言で入り口の鍵を閉める。
互いの視線がほんの一瞬ぶつかる。
「どうした、早川?」
声は低く、優しく、そして少しだけ緊張を孕んでいた。
あやねは声を震わせながら小さく答える。
「さっき、あなたが他の女性と話しているのを見て……胸がざわついてしまって」
言葉はつたなかったけれど、そこにある感情は本物だった。
湊は一歩近づき、静かにあやねの肩に手を置く。
「そっか……」
壁に押しつけられるように、身体が密着する。
唇がふっと触れて、吐息が重なる。
「声は我慢できるか?」
囁かれた言葉に、あやねは震えながらも頷いた。
スカートの裾がゆっくりと指でつままれ、持ち上げられる。
滑り込んだ指先は、ショーツ越しに濡れた肌を確かめる。
「くちゅ、くちゅ……」
濡れた音が静かな給湯室に小さく響く。
あやねは声を押し殺し、震える膝を支えながら身体を委ねた。
指がゆっくりと、だが確実に敏感な部分を撫で、深く入り込む。
「まだ……我慢できるか?」
「……あ、ああ……」
水音に合わせて吐息が漏れ、身体の熱がじわりと広がる。
湊の指は焦らすように動きながら、あやねの反応を探っていた。
膝がガクガクと震え、身体が火照ってくる。
声をあげそうになるのを必死に堪えながら、胸の奥は熱く波打っていた。
「もう……すごく濡れてる……」
「わかってる……だから、もう少しだけ待ってて」
指がさらに深く、繊細に愛撫を続ける。
快感の波が次第に大きくなり、あやねは身を震わせながらも必死に耐えた。
「い、いきそう……」
「まだだ。声は出すな」
一瞬の沈黙。
次の瞬間、指が強く動き、くちゅっ、と濡れた音が高まる。
あやねの身体は震え、膝が崩れそうになる。
目の前が霞み、全身を駆け抜ける快感の波に抗えなかった。
湊は静かに手を離し、乱れたスカートを整える。
あやねの頬に軽くキスを落とし、声もかけずにそっと給湯室の扉を開けて去っていった。
残されたあやねは、足元のふらつきを必死で抑えながら、秘密を胸にしまい込んだ。