※この作品はR-18です。

甘くて、こわい君だった   作:Marks_Lee

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maybe 10話

午後の柔らかな陽光が、窓のブラインドの隙間から細く差し込んでいる。

会議室の中は静まり返り、広げられた資料の上でほんのわずかに紙が揺れているだけだった。

 

扉が静かに開き、早川が入ってきた。

彼女は深呼吸を一つして、気を引き締めながら扉をしっかり閉める。

 

「遅れてすみません」

 

そう告げる彼女に、湊は淡く微笑んだ。

「気にしなくていいよ。資料はここにあるから、ゆっくり見てて」

 

湊は声を落とし、ゆったりとした動作で資料の束を広げる。

しかしその視線は早川から時折逸れることなく、心の奥底で揺れ動いているのを隠せなかった。

 

最初は淡々と仕事の話をしていたが、次第に言葉は途切れがちになり、緊張感が室内を満たしていく。

 

突然、湊の手がそっと早川の肩に触れた。

驚いた彼女の身体は一瞬震えたが、触れられるままに身を委ねる。

 

「大丈夫か?」

 

囁く声に、早川は小さく頷いた。

その距離が少しずつ縮まり、互いの視線が絡み合う。

 

「ここで……触れてもいいか?」

 

「……はい」

 

彼の指がゆっくりとスカートの裾を掴み、慎重に引き上げていく。

肌が露わになる瞬間、二人の呼吸が重なり合う。

 

指先が敏感な部分に触れるたび、かすかな水音が響いた。

早川は目を閉じ、吐息を漏らしながら震える身体を抑えた。

 

しばらくの間、熱がゆっくりと高まっていく。

その時だった。

 

遠くから、廊下を歩く足音がゆっくりと近づいてきた。

 

「やばい、誰か来る……」

 

慌てて湊が指を引っ込め、スカートを整える。

二人とも息を潜め、何事もなかったかのように資料に目を落とす。

 

ドアが静かに開き、部屋に入ってきたのは課長だった。

 

「すみません、ちょっとこの書類を確認したくて」

 

課長はにこやかに微笑み、資料を受け取る。

「会議は順調ですか?」

 

湊は落ち着いた口調で答える。

 

「はい、おかげさまで」

 

早川も静かに頷いた。

 

課長は資料に目を通しながら、少し間を置いてから軽く言った。

 

「何かあったら、いつでも言ってくださいね」

 

そう告げてから、扉を閉めて出ていく。

 

二人が互いの顔を見合わせると、無言のうちに笑みが交わされた。

緊張の糸が少しだけ緩み、しかしその胸の奥には言葉にできない想いが渦巻いていた。

 

◇◇◇

 

会議室を出てからの足取りは、どこか重く、そして心が熱く揺れていた。

 

湊はデスクに戻ったものの、目の前の書類はすぐにぼやけてしまい、集中できない。

ふと早川の方を見ると、彼女も同じように資料を手に取りながら視線を泳がせていた。

 

「……今日は、もう終わりにしようか」

 

湊の声はいつになく静かで、けれど確かな決意を感じさせた。

 

早川は一瞬驚いたように見えたが、やがて頷いた。

「はい……そうですね」

 

二人は言葉少なに、パソコンの電源を落とし、書類をまとめて席を立った。

 

外の明るさが夕暮れへと染まり始めている。

湊と早川は別々の出口から会社を後にした。

 

それぞれの胸の内はざわついていたが、まだ言葉にはできない思いが溢れていた。

 

待ち合わせ場所のカフェ。

そこに先に着いた湊は、窓際の席で静かにコーヒーを飲みながら、早川の到着を待つ。

 

やがて早川が入ってきて、二人はお互いに照れたように微笑んだ。

 

「来てくれてありがとう」

 

「こちらこそ……」

 

言葉は少なかったが、空気は温かく、確かな距離の縮まりを感じた。

 

カフェを出て、手を重ねながらホテルの入口へ向かう。

 

その建物の前で、一瞬立ち止まる二人。

 

湊がそっと早川の手を握り締めた。

 

「行こうか」

 

「うん……」

 

重い扉がゆっくりと開かれ、二人は中へと足を踏み入れた。

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