※この作品はR-18です。

甘くて、こわい君だった   作:Marks_Lee

34 / 83
maybe 11話

ホテルの部屋の扉を閉めた瞬間、早川の胸は激しく高鳴っていた。

 

「シャワー、浴びる?」

 

湊の声はいつもより低く、どこか甘く響く。

 

早川はその言葉に戸惑い、頬が真っ赤に染まった。

しかし、震える指で小さく頷いた。

 

「……一緒に、入る?」

 

湊の問いかけに、早川はさらに顔を赤らめながらも、静かに応えた。

 

二人で浴室へ向かう足音が、静かな廊下に響く。

 

湯船にゆっくりとお湯を溜めながら、湊がそっと背後から早川に近づいた。

 

唇が首筋に触れ、淡い震えが走る。

 

「もっと……」

 

囁く声は熱を帯び、次第に強くなっていく。

 

唇は首から耳へと這い、指先はそっと髪をかき分ける。

 

期待と戸惑いが入り混じった吐息が漏れ、早川の身体は反応を隠せなかった。

 

その時、浴槽のお湯が張り終えた音が静かに鳴り響く。

 

互いに見つめ合い、ゆっくりと服を脱ぎ始める。

 

湊の肌は滑らかで、陽に透けるほど白く、筋肉の陰影が妖艶に浮かぶ。

 

早川は恥じらいと好奇心が入り混じった視線で、彼の身体をまじまじと見つめてしまう。

 

湊もまた、その視線に応えるように少し微笑んだ。

 

シャワーから温かな水が降り注ぎ、二人の肌を濡らす。

 

互いに手を伸ばし、優しく洗い合う指先がゆっくりと、丁寧に肌を撫でていく。

 

その触れ合いは甘く、切なく、言葉を超えた感覚を伝え合っていた。

 

湯気に包まれた浴室で、目と目が合うたびに胸の鼓動は速くなり、息遣いが熱を帯びる。

 

やがて二人は湯船に身体を沈めた。

 

熱いお湯に包まれながら、手は自然とお互いの身体を求め合う。

 

滑らかな肌に指が触れ、軽く撫でるだけで身体が火照っていくのがわかる。

 

絡み合う吐息、濡れた肌が重なり、熱く蕩ける時間が静かに流れていった。

 

◇◇◇

 

湯船の中、湊の指先がそっと早川の肩から腕へと滑り降りる。

柔らかな水面が揺れるたび、肌がぬるりと濡れて輝いた。

 

「触れていい?」

 

囁く声に早川は静かに息を飲み、ゆっくりと頷く。

 

指は背中の曲線に沿いながら、優しく揉みほぐすように動く。

水に濡れた掌のぬくもりが、じわじわと身体の奥に染み込んでいく。

 

湊の手はさらに胸元へと滑り、指先が軽く撫でるように肌を撫でる。

早川の心臓は高鳴り、頬は熱く染まった。

 

彼女の指も自然と湊の身体へと伸び、硬く引き締まった胸筋をそっと触れる。

 

互いの肌が触れ合うたび、静かな水音と混ざり合いながら、熱がますます高まっていく。

 

湊は唇を寄せ、首筋から肩にかけての柔らかな部分を丁寧に舐め、吸い上げる。

早川の息が乱れ、指先が震えた。

 

「もっと……」

 

その言葉に呼応するように、二人の手はお互いの身体を隅々まで探り合い、優しく、時にはしなやかに愛撫を重ねていった。

 

水音が柔らかく響く浴槽の中、湊の指先は早川の肩からゆっくりと滑り落ち、背中を撫でるように動いた。

肌に触れるたびに水面が波打ち、微かなさざ波が広がる。

 

その音に混ざるように、二人の息遣いは徐々に熱を帯びていった。

早川の胸の鼓動が高鳴り、心臓の音が自分の耳にもはっきりと届くほどだった。

 

湊の手はさらに下へと移動し、腰のあたりを優しく包み込む。

指先が水の中で滑りながら、丁寧に愛撫を重ねる。

 

その感触に、早川の身体は思わず小さく震えた。

肌が濡れている分、触れ合う感覚はより繊細で、生々しかった。

 

湊の唇が首筋に触れ、温かな湿り気が伝わる。

軽く舐められた場所から、早川の背筋に電流が走った。

 

「気持ちいい?」

 

囁かれた言葉に、早川はかすかに頷き、熱い吐息を漏らす。

 

二人の身体が水の中で密着し、触れ合うたびに微かな水音が響いた。

その音が、静かな浴室に官能的なリズムを刻んでいく。

 

やがて湊の手は、胸元へとゆっくりと滑り上がり、早川の反応を確かめるように優しく撫でた。

 

早川の頬はさらに赤く染まり、目を閉じてその感触に身を委ねていた。

 

◇◇◇

 

湯船の中、二人の身体はしっかりと絡み合い、熱を放ち合っていた。

吐息と水音が混じり合い、空間そのものが熱を持っているように感じる。

 

やがて湊が、早川の額に優しくキスを落としながら、言った。

 

「……そろそろ、上がろうか」

 

早川は静かに頷き、湯船からそっと身体を起こす。

濡れた肌が湯気に包まれ、ぽたりと雫が滴り落ちる音が響いた。

 

バスタオルを巻いた湊が、脱衣所へ向かう早川の手をそっと引く。

その手はどこか名残惜しそうで、指先に微かな熱が残っていた。

 

脱衣所に入ると、曇った鏡と浴室から漏れる湯気が、まだ行為の余韻を残している。

 

タオルを巻いたまま、早川が湊に振り返る。

「……まだ、触れたい」

 

その一言に湊は目を細め、無言で早川の身体を抱え上げた。

 

「じゃあ、そのまま、ベッドまで行こうか」

 

早川が驚いたように声を漏らす間もなく、湊は軽々と彼女の脚を抱えて腰へ引き寄せる。

まるで背面座位に近いような体勢――両脚を抱え込むようにして、密着させながら立ち上がる。

 

「……っ、ここで……っ、え……?」

 

「平気、落としたりしないよ」

 

息が耳元をかすめ、濡れた肌と肌がぴたりとくっついた。

太腿の内側を伝っていく感触、肌に押し当てられる湊の熱――それに、呼吸が浅くなる。

 

床に滴る水が、足音と共に小さく弾けた。

ベッドに近づくにつれ、早川の腕は湊の肩にしがみつくようにして力を込めていく。

 

ベッドの端に辿り着いたところで、湊はそっと身体を下ろす。

そのまま背後から腰を引き寄せるようにし、ベッドの端で早川を抱えた姿勢のまま、ゆっくりと前かがみに倒していく。

 

「まだ、大丈夫……?」

 

早川は頬を赤らめたまま、顔を枕に押しつけるようにして、小さく首を縦に振った。

 

背後から湊の身体が重なる。

熱を帯びた肉が深くゆっくりと沈み込み、結合の瞬間、甘く切ない吐息が二人から同時に漏れた。

 

「……っ……ん……っ」

 

後ろからの体勢は、正面が見えない分、感覚が研ぎ澄まされる。

中を擦れる感触がはっきりとわかるたび、快感が脳の奥に響いた。

 

「どう? ……新しいの、悪くない?」

 

「や……っ……だめ、気持ちよすぎて……っ」

 

濡れた髪が背中に張りつき、肌が汗と水で滑るたび、ぬちゃり、と音が混ざる。

背後から突かれるたび、枕に埋もれた早川の声がくぐもって漏れ出す。

 

「もっと……いろいろ、していい?」

 

「……うん……任せる、から……っ」

 

ベッドの上、角度を変えながら、二人は今までしたことのない体位を次々と試す。

脚を絡ませるようにして向かい合い、腹と腹を密着させての交わり。

ベッドの端で腰を持ち上げ、支えるようにして深く沈ませる――

 

時間の感覚はとっくに曖昧になっていた。

水音はいつしか汗と吐息の音へと変わり、愛撫はさらなる熱へと繋がっていった。

 

早川の身体が小さく跳ねるたび、湊の腕に力がこもる。

肌の奥で快感が渦を巻き、止めどなく波が押し寄せてくる。

 

「……もう……っ、だめ……!」

 

そう言いながらも、早川の身体は湊を拒めない。

むしろ、奥へ、もっと奥へと迎え入れてしまっている。

 

湊もまた、彼女の内側の締めつけに、呼吸を整えるのがやっとだった。

 

「……あ、やば……」

 

不意に重なる動きの深さに、限界が近づく。

互いの鼓動がひとつに重なっていくように、身体が高まりきって、もう戻れないところまできていた。

 

早川の身体がびくんと大きく震えた瞬間――

 

「……っ、あああっ……!」

 

甘く掠れた声が、ベッドルームに高く響く。

湊もその直後、深く押し込むようにして静かに達した。

 

「……っ……っ……」

 

重なったままの姿勢で、しばらく二人は動けずにいた。

互いの身体が、心臓の鼓動を伝え合っていた。

 

静かに息を吐いて、湊はそっと早川を抱き寄せる。

ぬくもりと、疲労と、安心と――その全部が、やわらかく溶け合っていた。

 

しばらくして、ベッドに横たわったまま、早川がぽつりと呟く。

 

「……なんか、変な感じ。夢みたい……」

 

湊は小さく笑いながら、彼女の髪を指で梳いた。

 

「そう? 現実だけど」

 

「うん、わかってる。でも、現実っぽくない。……自分が、こんなふうになるなんて、思ってなかったから」

 

天井を見上げたまま、早川はぽつぽつと言葉を紡ぐ。

隣で彼女の体温を感じながら、湊は静かに頷いた。

 

「俺もだよ。……会社で会ってた時の“早川”と、今、隣にいる“君”が、同じ人だなんて……ちょっと不思議だ」

 

早川はくすっと笑い、そっと湊の胸に額を押し当てる。

 

「でも、ちゃんとつながってるよ。ちゃんと……全部、私だよ」

 

「うん。全部、好きだよ」

 

その言葉に、早川の肩がわずかに震えた。

 

ベッドに沈む静けさの中、二人はしばらく言葉を交わさず、互いの存在を確かめるように寄り添い合った。

 

◇◇◇

 

朝の光がカーテンの隙間から差し込み、ゆっくりとベッドを照らしていた。

白いシーツの中、早川は身じろぎした瞬間、小さく呻いた。

 

「……ん、いた……っ」

 

背中と腰にじんわりとした痛みが広がり、脚の付け根には鈍い張りが残っている。

あまりにもいろんな体勢を試したせいで、身体中が軋んでいた。

 

隣を見ると、湊は既に目を覚ましており、静かにスマホをいじっていた。

髪は少しだけ乱れているのに、表情はいつものように落ち着いていて、むしろ余裕すらある。

 

「おはよう。……体、大丈夫?」

 

「……どこが、って言われると……全部……」

早川は枕に顔を埋めるようにして、苦笑した。

「やりすぎ、だったよ……ほんとに……」

 

湊はわざとらしく考え込むような顔をして、少しだけ笑った。

 

「俺としては、後悔してないけど?」

 

「こっちはちょっと反省してる……」

 

そっと起き上がろうとするも、腰が言うことをきかず、早川はベッドに逆戻りする。

湊がタオルケットを軽くかけ直しながら、何気なく言った。

 

「このあとどうする? ……少し休んでから出る?」

 

「うん……それがいい……。ていうか、立てる自信ない……」

 

「そっか。……じゃあ、もう一度寝る?」

 

「やめて。今それ言われると変な意味に聞こえるから……」

 

早川の顔が真っ赤に染まり、シーツの中で身体を縮める。

そんな彼女の様子を、湊は柔らかな目で見つめていた。

 

「ごめん。もうちょっとだけ、休ませてからちゃんと抱きしめる」

 

「……なら、許す」

 

カーテン越しに差し込む光が、淡く二人を包み込んでいた。

痛みも恥ずかしさも、愛おしさに変わっていく――そんな静かな朝だった。

 

ホテルのロビーには、朝の光が広がっていた。

チェックアウトを済ませた二人は、やや気まずい沈黙の中で並んでエレベーターを待っていた。

 

早川は何度もストレートヘアを整えようとするが、少し湿気を帯びた髪は思うようにまとまらない。

身体の節々に残る感覚を思い出すたびに、顔がじんわりと熱くなる。

 

湊はというと、そんな彼女を横目に見ながら、特に気まずそうでもなく落ち着いていた。

それがまた、早川には悔しいような、でもどこか安心するような感情を呼び起こす。

 

「……一回、家に戻って、着替えてから会社行く」

 

先に口を開いたのは早川だった。

湊はゆっくり頷きながら、ポケットからスマホを取り出す。

 

「俺も。さすがにこのままは無理だね」

 

「……服、シワだらけ」

 

「それはお互い様だと思うけど?」

 

エレベーターの扉が開き、二人は並んで乗り込んだ。

小さな箱の中に沈む静けさが、どこかくすぐったい。

 

ロビーを抜け、外の空気に触れると、昨夜の熱が少しだけ冷まされていくようだった。

 

「じゃあ、またあとで」

 

湊があっさりと手を挙げる。

早川も、それに倣って小さく手を振る。

 

「……うん。会社で」

 

別々の方向へ歩き出すその背中に、ほんのりとした余韻がまだ残っている。

でもそれは、昨夜の続きではなく――今日という一日の、はじまりだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。