※この作品はR-18です。

甘くて、こわい君だった   作:Marks_Lee

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第4話

目覚ましよりも早く、ふと目が覚めた。

 

窓の外はまだ灰色がかっていて、朝というより夜の終わりに近い。

隣には、紬がいる。制服のまま、すこしシーツをはだけて、眠っている。

 

初めてではない。これが何度目かも、もう正確には覚えていない。

けれど確かに、最初に感じたような「戸惑い」はもう、ほとんど残っていなかった。

 

湊は静かに起き上がり、洗面所に向かう。

 

鏡に映る自分の顔。

目の下にうっすらとクマができている。

けれど、それが昨夜のせいなのか、それとも——この関係のせいなのかは、わからなかった。

 

台所に戻ると、紬が湯を沸かしていた。

 

「おはよう、コーヒーいる?」

 

「……ああ、うん」

 

まるで、これがいつもの朝のように。

家のどこに何があるかを、彼女はもう知っている。

 

ソファに座ってコーヒーを飲みながら、ふと視界に入った。

洗面所の棚に、歯ブラシが2本——1本は、明らかに湊のではない色の。

 

紬が持ち込んだのだろう。気づかないうちに。

その事実が、心の奥にゆっくりと沈んでいった。

 

 

 

職場では、なんとなく集中できなかった。

パソコンの画面がやけに眩しく、何度も同じ文章を読み返してしまう。

 

「湊さん、大丈夫ですか?」

 

声をかけてきたのは、営業部の新人、早川だった。

明るくて、気の利くタイプの子で、入社当初からやたらと距離が近い。

 

「なんか、疲れてる顔してます」

 

「……ちょっと寝不足でな」

 

「ふーん……彼女とか、できたんですか?」

 

湊は、一瞬言葉に詰まった。

 

「いや、別に……」

 

「ふーん、じゃあなんで寝不足なんだろ。お仕事だけじゃ、ないような気がしますけど?」

 

にこっと笑った早川の表情に、何か見透かされているような気がして、背中に冷たい汗が伝った。

 

 

 

夜。

部屋に戻ると、紬がすでに待っていた。

 

制服のまま、ソファに座って、テレビをぼんやり眺めていた。

ドアを開けたとき、彼女はすぐに顔をこちらに向けて、ふわりと笑った。

 

「おかえり、湊くん」

 

まるで、ここが彼女の家であるかのような自然さだった。

 

湊はなにも言えず、ただ「……ただいま」とだけ返した。

 

◇◇◇

 

照明を落とした部屋の中に、かすかに湿った音が響いている。

 

ベッドのシーツの上、紬は脚を開いたまま、湊に体を預けていた。

喉の奥で甘い声を殺しながら、白い太ももが湊の腰に絡む。

 

「……もっと、して」

 

囁く声がかすれて、でも確かに求めているのがわかる。

 

湊はゆっくりと腰を沈めながら、彼女の髪を指ですくうように撫でた。

絡み合う肌と肌。

熱が、擦れ合い、溶け合って、もうどこまでが誰のものなのかわからない。

 

「んっ……んんっ……や、あっ……っ、すご……っ」

 

紬の目元には涙が滲んでいる。

でも、顔は蕩けたように、悦びに染まっていた。

 

何度目かわからないほど深く繋がり合って、それでも飽きることなどなかった。

湊の指は、彼女の首筋、鎖骨、胸、腹、そしてさらに下へと這い続ける。

 

敏感になった身体が、触れるたびにびくびくと跳ねる。

 

「ふっ、ふぁ……ん、あっ、そこ……だめ……っ、のぼせちゃう……っ」

 

耳元に唇を寄せて、名前を呼ぶと、紬は目を閉じて小さく頷いた。

そのまま耳たぶに舌を這わせると、腰が勝手に浮いた。

 

快感が体内を突き上げるように広がっていく。

呼吸が合わなくなる。

熱が、ふたりの間に膜のように張り付いて、逃れられない。

 

そしてまた、紬が囁いた。

 

「……壊して、もいいよ?」

 

その言葉に、湊の理性が崩れた。

 

ぎりぎりと押し付けるように、身体を重ねていく。

ただ快楽だけを求める動きではない。

そこには、確かに「意図」があった。

 

支配でも、愛でもない。

依存と堕落の、心地よさ。

 

「んぁ、っ、あ……っ、深い、の……もう、だめ、だめ……っ」

 

腰を打ちつけるたびに、ベッドが軋む音が響く。

長い髪が揺れ、指に絡まり、吐息が耳を打つ。

 

乳房を吸い上げると、背がのけ反る。

両脚を肩に引き寄せて、さらに奥へと踏み込む。

 

「……んっ、んっ、あ……だめぇ、そんな……イッちゃう、イッ……!」

 

シーツに汗が滲み、紬の手が湊の背に爪を立てる。

 

それすら快感として受け止めながら、彼女の内側に何度も沈んでいく。

 

——ふたりで、壊れていくような夜だった。

 

意識の輪郭が曖昧になる。

名前を呼ばれるたび、自分が誰だったかさえ忘れていく。

 

湊はただ、彼女の体温に沈んでいった。

 

気づけば、カーテンの隙間が白んでいた。

また、朝が来てしまった。

 

でも、何も終わってはいない。

むしろ、これは始まりにすぎない。

 

隣では、裸のまま眠る紬が、夢の中でも湊の手を探しているかのように指を動かしていた。

 

湊は、そっとその手を握る。

もう、自分から離せる気がしなかった。

 

この関係は、誰にも知られてはいけない。

でも、もう止まらない。

そんなことは、とうの昔にわかっていた。

 

——そしてまた、夜が来る。

これでいい?

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