湊は独り暮らしの狭い部屋で、ソファに沈み込んだままスマホの画面をじっと見つめていた。
義妹の名前が浮かぶ表示に、胸の奥がざわつく。迷いながらも意を決し、通話ボタンを押す。
「もしもし?」明るくて優しい義妹の声がすぐに耳に届いた。
「お兄ちゃん、最近どう?ちゃんとご飯食べてる?」
家族の温かさに、一瞬だけ心が安らぐ。だがその裏側で、紬との絡み合った感情が重くのしかかっていた。
「うん……食べてる……ちゃんと」掠れた声に、隠しきれない揺らぎが混じっている。
背後から、紬の細い指がそっと首筋に触れた。
その冷たくも温かい感触に、湊は思わず身を震わせる。
「そんなに震えなくていいの。私だけに見せて」
耳元に甘く囁く声が絡みつき、湊の神経はじわじわと解けていく。
紬の指先はゆっくりとシャツの裾を押し上げ、柔らかな内腿の付け根の周辺を、触れているか触れていないかの絶妙な距離でさわさわと撫でる。
そのじらしは湊の感覚を鋭く刺激し、身体の奥底から熱が湧き上がる。
「我慢できる?」
紬の問いかけに、湊は返事もできず、ただ小さく息を漏らす。
指先は首筋をなぞり、耳たぶの裏を軽く噛む。
冷たく熱い吐息が耳元を這い、湊の理性はひとつずつ溶けていった。
胸の下、柔らかな腹部に指が繰り返し触れるたび、身体は小刻みに震え、紬のじらしに翻弄される。
「声は殺しても、身体は正直だね」
紬の声は甘く、時に苛立ちを含むように響いた。
湊は声を押し殺し、紬の指先のひとつひとつに翻弄されていた。
この距離で、これだけで、ここまで反応してしまう自分に恥ずかしさと抗いがたい快楽を感じていた。
そのとき、スマホ越しに義妹の声が遠く響いた。
「お兄ちゃん?本当に大丈夫?」
湊は苦しげに笑みを浮かべ、震える声で応えた。
「大丈夫……だよ」
だが、その言葉とは裏腹に、心はもう揺らぎ、戻れない深みへと沈み始めていた。
通話が終わると、紬は背後から湊を抱きしめ、甘く囁いた。
「これから、もっと君を解放してあげる」
◇◇◇
紬の甘い囁きと指の感触がまだ身体に残る中、湊はゆっくりとスマホの通話を終えた。
義妹とは普段から連絡を取り合っているが、彼女がこの部屋に訪れることは一度もなかった。
独り暮らしのこの空間は、誰にも邪魔されないはずだった。だが今、その境界線は微妙に揺れている。
湊はソファから立ち上がり、窓の外の淡い夕暮れを見つめる。
街のざわめきと夕焼けの静けさが入り混じり、心は一層ざわついた。
キッチンへ向かう途中、彼はテーブルの上に置かれたスマホのメッセージ通知に気づいた。
義妹からだった。
《今日もお疲れさま。無理しないでね。》
文字だけのやりとりは、暖かくも冷たかった。
誰かが見守っている安心感と、孤独の境目。
湊は冷蔵庫を開け、いつものように簡単な夕食の準備を始める。
手は動いているのに、頭は紬の指先の感触と甘い囁きに囚われて離れなかった。
電話の向こう側にいる義妹の声が遠くに聞こえるような錯覚を覚えながら、湊は静かな夜の中で、自分の心の揺らぎをどうにか抑えようと努めていた。
しかし、その心の奥底では、紬が静かに、しかし確実に入り込んでいた。
これでいい?
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いいよ。もう十分だよ
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