※この作品はR-18です。

FINAL FANTSY X ~脈導の聖女~   作:彼処舐ノ助嗅過

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5.ティーダの怒りと淫欲のジッジ

どこかの地下空間。

閉ざされた空気と、ほのかに漂う香の匂い。

ティーダは、石の椅子に座らされていた。

目の前には淡く光る霊脈ランプと、ローブ姿の弟子たち――

 

彼らは武器を持たず、静かに語りかけてくる。

「ティーダ様。どうか、落ち着いて話を聞いてください」

「我々は敵ではありません。あなたの“混乱”を癒すためにここにいます」

「今のユウナ様は、自由意志で“新たな道”を歩み出したのです。……それを、貴方が否定していいのですか?」

 

弟子の言葉は、攻撃的ではない。

むしろ穏やかで、まるでカウンセリングのようだった。

「……ユウナが、“自由意志”でって……? そんなの、お前らの言いなりじゃないのか?」

「思い出してください。シンを倒した後も、彼女は何度も“自分にはまだ使命がある”と言っていましたよね?」

「今、彼女が脈導を学び、人々に希望を与えている姿を……否定できますか?」

ティーダの目が少し泳ぐ。

彼自身、どこかで“英雄であるユウナ”を引き止めたがっていた心があったのかもしれない。

 

(……違う。俺は、ただ……一緒にいたかっただけなのに)

弟子たちは、あくまで優しく、論理的に、ユウナの“今”を肯定していく。

それは、静かに心を揺さぶる“説得”だった。

 

 

その頃。ユウナは、宿のベランダに佇んでいた。

冷えた夜風に当たりながら、ふと視線を横に向ける。

(ティーダ、まだ帰ってない……)

彼女はティーダの部屋の扉をノックしたが、返事はない。

食堂にもいない。外にも姿はない。

 

「まさか……また、無茶してるんじゃ……」

言葉には出さなかったが、胸の奥に不安が広がる。

ジッジが宿の弟子に「聖域の警備強化」を命じていたことを、思い出す。

(……あの場所に、行ったのかも……)

ユウナは胸の奥に重い感覚を抱えながら、そっと夜の空を見上げた。

 

 

ユウナは部屋の中を何度も行ったり来たりしていた。

ティーダの不在が、彼女の心をざわつかせていた。

(何かあったのかも……。彼は無鉄砲なところがあるから)

一度決めると行動が早い。

ユウナはサンダルを履き、静かにドアノブに手をかけた――その時。

「ユウナ様。どちらへ?」

 

宿の廊下に、控えていた弟子の一人が立っていた。

ローブに身を包み、落ち着いた表情で彼女を見ている。

「……彼を探しに行きます。……何か、良くない予感がして」

ユウナは隠すつもりもなく答えた。

弟子は小さく首を振った。

 

「ティーダ様は、ただ今、少々混乱しておられるだけです。おそらく、一時的な感情の昂ぶりかと。少し、冷静になられる時間が必要なのです」

「でも……!」

ユウナが言いかけると、もう一人、別の弟子が現れた。

今度は若い女性。彼女もまた、落ち着いた口調で続ける。

「どうか、今は信じて待っていただけませんか。ユウナ様が動かれれば、かえって事態を大きくしてしまう可能性も……」

「事態を……?」

 

弟子たちは言葉を選びながら、しかしはっきりと伝えた。

「今は、スピラ中が、ユウナ様の穏やかな振る舞いを見守っています。もしユウナ様が急に動けば、不安に思う者たちが動揺しかねません」

「それに……」

もう一人の弟子が言葉を添える。

「ティーダ様も、ユウナ様の信頼を得たい一心で行動しているのかもしれません。今、焦って向かえば、かえって彼のプライドを傷つけることになるかもしれません」

 

ユウナは、ぐっと言葉に詰まった。

(……そんな。……でも……)

 

弟子たちは、あくまでも穏やかだった。

無理に止めるのではなく、“ユウナ自身の決断”を促しているようにも見えた。

ユウナは迷っていた。

心の中で、ティーダの顔が何度も浮かんでは消えた。

(……信じたい。でも、今すぐ会いたい。でも……)

「……わかりました」

ユウナは、静かに視線を伏せた。

弟子たちは深く頭を下げた。

 

 

石造りの地下室。

幽かな光が揺れ、空気は重く、冷たい。

ティーダは椅子に縛り付けられていた。

目の前には、ゆったりと歩を進めるジッジ――脈導師の姿。

 

「……ティーダ殿。お話は尽きぬものですねぇ」

ジッジは両手を後ろに組み、ティーダの正面に立った。

その顔には、あのいつもの柔らかな笑みが浮かんでいた。

「俺は……ユウナを……こんな茶番に巻き込むつもりはねぇ!」

ティーダは渾身の力で声を張り上げた。

 

ジッジは、ゆっくりと微笑みを深くする。

「……やはり、まだ迷いがあるようですね」

そのまま、軽く手を振る。

するとすぐに弟子たちが数人現れ、ティーダの周囲を固めた。

「ならば、ここからは少しお休みいただきましょう。……脈導の真実を受け入れるまでは」

 

ジッジは、柔らかく、しかしはっきりと告げた。

「幽閉しなさい」

弟子たちがティーダを乱暴に立たせ、別の暗い通路へと連れていこうとする――。

(チクショウ……! こんな……っ)

ティーダは歯を食いしばる。

 

 

 

その時だった。

扉の向こうから、ジッジに呼ばれたのか、ルチルとエルマが姿を現した。

かつて青年同盟で共に戦った彼女たちも、今はジッジに心酔している。

だが、ティーダの視線を凍りつかせたのは――

彼女たちの格好だった。

かつての騎士鎧を脱ぎ、動きやすい薄手の衣装に着替えていた。

軽装だが、無防備さを感じさせるような服装。

 

「ルチル、エルマ……。その格好、なんだよ……?」

ティーダが掠れた声で尋ねた。

ジッジはゆっくりと、いつも通り穏やかに告げた。

「脈導のさらなる高みへ至るためには、古き儀式が必要なのです。……さぁ、私の私室へ。特別な“修行”を始めましょう」

ルチルとエルマは無言でうなずく。

その表情は無感情にも見え、またどこか酔ったようにも見えた。

 

ティーダは息を呑んだ。

彼女たちが連れられていく背中を見ながら、背筋を冷たいものが這い上がる。

(まさか……まさかユウナも……?)

脈導の修行。

その名の下で、どれだけのことが、どれだけの“取り返しのつかないこと”が、行われようとしているのか――

ティーダは震えた。

怒りと、恐怖と、無力感で。

 

そして彼の脳裏を過ったのは、心から信じている少女の顔だった。

(……ユウナ……)

彼女もまた、こうして“選ばれた存在”として――。

ティーダは、縛られた腕に力を込めた。

縄が食い込み、痛みが走る。

(絶対に……絶対に助ける……)

その決意だけが、彼を立たせていた。

 

 

だが、その夜。

ティーダの耳に、2人の女の嬌声が聞こえてきた。

すぐ近くのジッジの私室からだった。

その声が誰と誰のものなのか、彼にはすぐにわかった。

――ルチルと、エルマの声だ。

「はぁ……っ! あ、あ、あっ!」

(やめろ……!)

ティーダは耳を塞ごうとしたが、それはかなわなかった。

「んぁっ! あ、あぁんっ」

(やめてくれ……っ!!)

彼はただ、その部屋から聞こえてくる声に打ちひしがれるしかなかった。

そして同時に、自分の無力さを痛感した。

(俺は……何もできないのか?)

 

「脈導師様ぁ、もっと……もっとください……っ!」

「だらしないですなぁ。ほれっ、ここがいいのでしょう?」

「んああっ、そこ、そこですぅ!」

エルマの嬌声に、ジッジの熱い息が混じる。

「こんなにいやらしい身体をして……もっと乱れていいのですよ? 私が許しましょう」

「は……はいっ……! ああぁんっ!」

(やめろ!)

ティーダは叫びたかった。だが、声は出ない。

「あ、あ、あ……っ! も、もうダメぇ……」

「ふふ、そろそろですかな?」

「はいぃ、きちゃいますぅ……!」

 

(やめてくれ!!)

そして彼は悟った。

もう、“何もできない”。

自分は無力だ……と。

 

「ふぅ……エルマは脈動の奔流で、気を失ったか……。まだまだ修行が足りんのぅ。……さて、ルチル。次はあなたの番ですよ。前回の“続き”をいたしましょう」

「はい……ジッジ様……」

(ああ、ダメだ……)

ティーダは絶望と後悔の中にいた。

(こんな……こんなことが許されるのか……?)

“何か”が、彼の心で叫び始める。

それは、怒りか? それとも悲しみか? いや――

彼はただ、叫んだ。

「やめろぉおおおお!!!」

しかし、ルチルの快楽に喘ぐ声がそれを呑みこんでいく。

「ああぁ……っ! ジッジさまぁ、わたし、もう……」

「ふふ、ルチルは可愛らしいのう。さて……どこに出してほしいですかな?」

「お、おしりにぃ……っ!」

(やめろぉおお!!!)

ティーダは絶叫した――が、その叫びもまた、2人の嬌声にかき消される。

 

「ルチルチルチルチルチルチルチルチル~~ッ♪」

「ジッジさまぁ、ジッジさまぁあああ~~っ」

「むほほほほ~~っ!! 出るぞ! 受け取れ、脈動の奔流をぉおお!!」

「あ、あぁぁあああぁ――っ! イクッ! イキますぅううっ!」

(やめろ!!)

ティーダは声にならない声で叫んだ。

その後も、ジッジと2人の弟子による"特別な修行"は朝まで続けられるのだった。

 

 

ティーダが幽閉されてから、どれほどの時間が経ったのだろうか。

地下の冷たい空気の中、耳を澄ませていた彼の耳に、かすかな足音が近づいてきた。

ギィ……と扉が軋む音。

光が差し込み、逆光の中に二つの影が立っていた。

ルチルとエルマ――だった。

 

だが、ティーダはすぐに違和感を覚えた。

彼女たちの目。

まるで深い霧に包まれたように、焦点が合っていない。

それでいて、異様なほど穏やかに、柔らかく微笑んでいる。

 

「ティーダ様。お加減はいかがですか?」

ルチルが、かつての快活な面影を微塵も感じさせない、抑揚のない声で問いかける。

エルマもまた、無表情でティーダを見つめていた。

その目は何かに深く染まっているようで、かつての彼女の明るさ、活発さは一切なかった。

 

(なんだよ……これ……)

ティーダは知らず知らずのうちに、後ずさる。

彼女たちの衣装もまた変わっていた。

儀式前に着ていた薄い修行着はそのままだが、襟元や袖に見たことのない刺繍が施されている。

それは、どこか不気味な“脈動”を思わせる意匠だった。

 

「……なぁ、ルチル、エルマ……お前ら、どうしたんだよ。目、覚ませよ!」

ティーダは必死に呼びかける。

だが、ルチルはゆっくりと首を傾げ、微笑んだ。

 

「私たちは目覚めたのです。脈導師様のお導きにより、スピラの真理を知りました。……それが、救い」

エルマも続く。

「もう迷いません。これからは、すべて脈導師様の御心のままに」

二人は顔を見合わせ、うっとりとした微笑みを浮かべる。

それは狂信の微笑みだった。

 

(違う。違うだろ、ルチルもエルマも……そんなヤツらじゃなかったはずだろ……!)

ティーダは、縛られた手をぐっと握り締めた。

だが、弟子たちはそんな彼を冷たく見下ろすばかりだった。

 

「今、ユウナ様もまた、脈導師様にお導きされようとしています。彼女は、スピラを救う母となるのです」

ルチルが静かに言った。

「……っ!」

ティーダの心に、鋭い痛みが走った。

 

ルチルとエルマは、もう以前の彼女たちではない。

完全に、脈導師ジッジに支配されてしまっていた。

静かに、しかし絶望的な気配が、ティーダを取り巻いていく。

(俺が……助けなきゃ。絶対に……絶対に、ユウナをこんな風にさせるわけにはいかねぇ……!)

ティーダの瞳に、消えかけていた闘志が静かに燃え始める。

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