【R18】主人公に蹂躙されるためだけに用意されたエロゲの悪役である俺が逆転できるルートがあるらしい。 作:柊咲
俺の左手から伸びた鞭は真っ直ぐウォーウルフのボスへと向かい、首に触れると先端を絡めて縛り付ける。
抗おうと引っ張られるが力では負けない。
どうして俺の手からペトラの使う鞭が生まれたのかよくわからないが、これは絶好の機会だ。
「ふんっ!」
勢いよく引っ張りボスを群れから引きずり出す。
丈夫な素材が使われているのだろう、どんなにボスが抵抗しても切れたりしない。
そのまま引きずり出すと、俺は右手に持った大剣を振り下ろす。
──ズサッ!
その大きな獣を真っ二つにすると、群れのウォーウルフは我先にと俺たちから逃げていく。
逃げ去った後にあの中から新たなボスが選ばれるのだろうが、それは俺たちが知ることじゃない。
それよりも、
「これも、ペトラたちの言うゲームとやらのシステムの影響なのか?」
魔力を使って武器を生成する魔法は存在するが、生まれたときから魔力を持たない俺にそんな芸当はできない。
だが実際にこうして俺の左手には無から武器が生まれた。
可能性があるとしたら、ペトラたちが現れたことが影響しているのだと思った。主人公陣営のシステムに守られているアレに近い謎の力が。
「ごめん、これはわからない」
ペトラは少し考えた後、首を左右に振った。
「ゲームにこんな力は無かったから。だからあたしもビックリしてる」
「そうなのか」
「弐虎なら知ってるかも。あいつの方がこのゲーム詳しいから」
「あいつに会ったら聞いてみるか。……でも」
鞭を地面に置くと、それは俺の意志とは関係なく粒子となって消えた。
だが先程と同じく左手に意識を向けると、何の前触れもなく鞭が現れる。
魔法であれば多少なりとも魔力を消費するから疲労感のようなものを感じるらしいが今は何も感じない。
であればこの行為は魔法の類ではないのだろう。
言わば、好きに出して戻してができる武器庫から武器を取り出したようなものか。
「これ、いいな!」
「え?」
「重さも丁度いいから、こうやって……左手に持った鞭で相手を引き寄せて右手の大剣を振り下ろすことも、遠距離から牽制するのにも使える。それに不要になれば手から離せば消える。相手に武器を奪われて悪用されるリスクもない。これだけでずっと戦いの幅が増えるぞ」
他にも用途はある。
頭で考えながら、思いついた戦い方を仮想の敵に披露していると、ペトラは子供に向けるような優しい笑顔を浮かべた。
「……す、すまない、少し熱くなった」
「ううん、いくらでも聞くよ。ガラルの戦い方講座」
「それよりほら、魔物の素材を回収しよう」
少し照れくさくなって、逃げるように魔物の素材を回収していく。
「でも、あたしの鞭とお揃いってことは、やっぱりあたしとのことが関係してるのかな」
「ん、どうだろうな。ただ関係しているということは、その……昨夜のことか?」
「じゃないかな、たぶん……。エロゲだし、この世界」
「そのエロゲというのはよくわからないが、可能性としてはそれが一番なのか」
「かな。あっ、そういえば、もしゲーム通りでそれがあたしのと同じ鞭なら【魔封じの鞭】っていって、魔法を打ち消す効果があるらしいよ」
「なに!? ってことは、あのガキにも……いや、あれはシステムか。どちらにしても、早く試してみたいな」
戦う前というのは気が重く感じるものだが、今だけは、この新しく得た力を使ってみたいと思った。
「ガラル、なんだか楽しそう」
魔物の素材を集め終わったペトラは、俺とは正反対に、どこか悲しそうな表情をしていた。
「どうかしたのか?」
「ん、別に。なんでもないよ」
「そうか……。でも、これでペトラと特訓できるな」
「え?」
「今までは鞭なんて使ったことなかったから教えられなかったが、こうして同じ武器を使うことになったなら使い方も戦い方も言い合えるだろ」
「そっか。じゃあ、これからいっぱい、ガラルに教えてもらおっかな」
ペトラは俺の横にぴったりとくっ付くと、
「ねえ、キスして……?」
不意にそんなことを言われた。
やっぱり何かあるんじゃないか、とも思ったが、俺が聞いたときに話さなかったということは俺には言いたくないことなのだろう。
であれば、ここはしつこく理由を聞くよりも、ペトラのお願いを聞く方が彼女も喜んでくれるはずだ。
「……あむっ、ちゅ。はあむ、ちゅ」
軽く唇を触れ合わせるだけかと思ったが、ペトラは何度も俺を求めるように唇を動かした。
俺の足下では、嫉妬に狂った獣のパモが俺の足を殴ったり蹴ったりしているが、それでもペトラは止めなかった。
「ん……ふふっ、明るいときにするの初めてだから、なんか緊張するね」
「そうだな」
「あたしね、言ってなかったけど甘えん坊で寂しがり屋なんだ」
「言わなくてもわかるがな」
「もう、うるさい。……それでね。構ってくれなくなったら、イヤ……だからね?」
どうしてそんなことを聞くのかわからなかったが、俺が返す言葉は一つだけだった。
「俺がペトラを離すことは絶対にないから安心しろ」
「あ……うん、じゃあいい」
「それじゃあ、そろそろ行くか。このまま続きしたいところだが、俺の足じゃなくてパモの手と足が先に折れそうだからな」
「え? ……あ、こらパモ!」
俺の足を叩き殴り疲れて、ぜえぜえ言っているパモの体を抱き上げたペトラは、いつも通り明るい表情に戻っていた。