【R18】主人公に蹂躙されるためだけに用意されたエロゲの悪役である俺が逆転できるルートがあるらしい。 作:柊咲
「兄弟はプレイヤーじゃないってのが俺の考えだ。みんなの意見は?」
「完全に同意。お前から話を聞いたときは記憶喪失かもって思ったが、兵士とか女騎士との戦いっぷり見たらないな。もし俺らが記憶喪失になってもあんなの無理だわ」
各々が弐虎の意見に賛同する。
ペトラも頷き、ここに来るまでに感じた考えを話す。
「ただ、ゲームの人格とはだいぶ違う気がする」
「と、言うと?」
「ゲームのときのガラルって、ほんとこれぞ寝取り役の悪者って感じだったでしょ。乱暴で不潔で、女性の扱いもモノみたいで」
「まあ、寝取り役に求められるのってかっこいい男よりも汚い男って感じだからな」
「だけど一緒にいてみて真逆というか……」
言いたいことは色々とあるのだが、それは二人のやり取りであって、第三者に聞かせるにはかなり恥ずかしい思い出もたくさんあった。
「やっぱなんでもない」
顔を赤めながら口を閉じたペトラ。
「別にいいんだぜ。アレ中もすっごく優しかったの~っていう惚気話を俺たちにも聞かせてくれてもよ」
「違う、そういうのじゃないから!」
「いやいや、あからさまに良かったですよみたいな反応されたら誰だって勘繰るだろ。……なあ?」
「まあ」
ここにはペトラ以外に女性はいないということと、全員がエロゲをプレイするプレイヤーなので、自然とそっち方面に話題がいくのも仕方ない。
このままでは根掘り葉掘り情事を聞かれると思ったペトラは強引に話を戻す。
「こほん! それは置いておくとして、性格はほんと真逆なの! そこは少しだけ気になるわね、うん」
「随分と強引だなあ。まあいいけど、それに関しては、おそらくだが出会った時間軸が違うんだろうな」
「時間軸?」
「ああ」
弐虎は自分の覚えている範囲で、ゲーム本来のストーリーを話す。
今この状況はゲームでいう最序盤、RPGでいうところの勇者が最初の村を出るとこだ。
それはユーヒニア王子がまだ王国いることやヒロインの誰とも接触しておらず、もちろん関係も持っていないことから明らかだ。
そしてゲームのストーリー通りであれば、ここからユーヒニア王子は旅に出る。
ストーリーの根幹でもある魔王を倒す勇者の旅に。
だけどそんな表の英雄譚の裏で、ユーヒニアの父親である国王が、この世界に不必要な奴隷剣闘士を使って魔物の巣へと攻撃を仕掛けていた。
「後にユーヒニアたちもこの事に気付いて、父親に非人道的なことを止めろと言うがそれは起きた後だ。囮みたいな扱い方をされた奴隷剣闘士ガラル・アッフェンドは勇者ユーヒニアを恨んでいた。結果、憎しみから人が変わっちまった。主人公の持つ全てを奪おうとするようになった」
「じゃあ、今のガラルが本当のガラルだったわけね」
「ゲーム上では語られてないとこだからあくまでも想像だがな。ただ別人みたいに感じるってのは、たぶんそういうことなんじゃねえかな」
物語の表面から見た世界と、裏側から見た世界では全く異なる感じ方になるというのはよくある話。
性格が変わる前の優しい青年と奴隷として売られたバックボーンを公開するかしないかで、ガラル・アッフェンドという人間の見方は大きく変わる。
「それで、他に一緒に旅した中で感じたことあるか?」
「え、ああ、えっと……」
「なんだよ、なにかあるなら言ってくれ」
「あることはあるんだ。だけどその……」
言いにくそうにするペトラだったが、ここで時間を使って口ごもるほど言いにくくなると思ったのだろう、大きくため息をつくと、重い口を開く。
「ガラルと、その……アレした後、彼があたしのスキルっていうか、この武器を生成できるようになったみたいなの」
「アレ? アレとは──」
「──は?」
「いえ、なんでもないです」
「で、これってゲームにない仕様よね?」
「ないな。そもそも兄弟を操作するってこと自体なかったからな」
プレイヤー側はあくまでユーヒニアを操作する。
敵として見たガラルは、良くも悪くも見た目通りの脳筋タイプだった。
「それはあれか、行為が終わってすぐか?」
真面目な顔で聞かれたので、恥ずかしい気持ちを抑えながらペトラは正直に答える。
「知らない。ただ次の日に発現したっぽい。ガラルもよくわからないって言ってた」
「この世界の魔法とかでは?」
「ないって。ガラル、魔法の類は使えないって言ってたから」
「じゃあ、本当に行為が原因か。……相手がプレイヤーだったからか、それとも両想いの関係になったら誰でもいいのか。もしかして、相手は敵でも……」
弐虎が難しい表情で考え込むのを見て、ペトラはずっと考えていたことを口にしようかどうか迷った。
「でもよ、それって神様からの俺たちへのサービスだよな?」
誰かがそう言うと、連動するように他の者たちも口を開く。
「この世界ってエロゲだし、そういうエッチ方面の特典とかあってもおかしくないんじゃね?」
「そうだよ、だって向こうはレベル100でこっちレベル1なんだぜ。だったら俺たち側にも何かしらの特典がなきゃ不公平だろ!」
「確かに。じゃああれか、女の子をいっぱい堕としてスキルを集めて、そのスキルを組み合わせてレベルがずっと上の敵を倒せー、みたいな」
「ああ、なんかそれ主人公みたいじゃん! ってか、もしかしてそれ、俺たちにもあるんじゃね?」
「いや、さすがに俺たちみたいなモブキャラにはないだろ。主人公特典ってやつじゃないか?」
「うわー、羨ましい! ハーレム作って強くなるとか、男の夢じゃんか!」
自分のことでもないのに各々が喜び、その使い道を考えて楽しむ。
勝機を見出して気持ちが上がったのか、それともゲーマーとしてただ単純に面白そうだと思ったのか。
ただ、ペトラはそんな会話を聞いて、みんなと同じように笑うことはできなかった。
♦
空はすっかり暗くなっていて、湖の側ということもあってか気温も少し肌寒い。
上半身を脱いだまま顔を振り向かせると、少し元気がないように見えたペトラがやって来た。
「大丈夫って言ってたのに、やっぱり火傷してる。見せて、塗り薬を塗ってあげるから」
彼女は俺の後ろに座り、背中の状態を確認する。
「なんで平気だって嘘付いたの?」
「別に嘘じゃないさ。本当にこれぐらい平気だったんだ」
「こんなに痛そうなのに。話し合い前に強引に治療したら良かった」
「すまない。ただ、せっかくの仲間との再会だから邪魔するのも悪いと思ったんだ」
「邪魔って……」
弐虎やペトラは普通だが、他の者と話すときは少し遠慮がちな反応をされる。何より意味の通じない名称だったり、会話の雰囲気に付いて行けないときがあって、誰も言葉にはしないが疎外感は感じる。
仲間ではあるが、それは形だけのもの。
であれば傭兵のようにやることはやって、彼らと慣れ合うべきではないのかもと思う。
「それに、こうしてここでパモの体を洗っているのが楽しかったからな」
一人で湖に行くのを見て、主から離れて俺に付いて来たパモ。
俺の背中が寂しく見えたのかは知らないが、この柔らかいボディを洗っていると幸せを感じる。
「あたしは、ガラルの側にいる方が幸せだよ。みんなといるよりも、それに……元の世界にいるよりも」
「ペトラ?」
「要するに、今後はこういう隠し事はなしってこと! ちゃんと言って、何を思ってるのかとか、何を考えているのかだとか」
「ふっ、ああ、そうする。だけどそれは俺だけじゃなく、ペトラもだろ」
「……うん」
「何か俺に言いたいことあるんじゃないか?」
ここ数日、ペトラはたまに何かを自分の頭の中で考えて、それを口には出さず飲み込み、暗くなるときがあった。
自分から話さないならこちらから無理に聞き出そうとするのは違うと思ったが、そういうことなら聞いておこうと思った。
「……キスして」
「え?」
「今は、ものすごくあなたとキスがしたいの」
愛した女に潤んだ瞳でそう言われて断れる男はいない。
「ああ」
俺は考える間もなく彼女にキスをした。