【R18】主人公に蹂躙されるためだけに用意されたエロゲの悪役である俺が逆転できるルートがあるらしい。 作:柊咲
隠れ家から王都ビカリテまでは歩いて半日、馬車を使っても数時間ほどだろう。
今までの歩いた距離を考えるとそこまで距離はないと思っていたが、ペトラに「十分遠いんだけど?」と呆れられた。
「パモ、外に顔を出したら落っこちるよ」
『パモパモ!』
近隣の街や村を経由してビカリテまで運んでくれる荷馬車に乗ると、ペトラに抱かれたパモが短い手を外に伸ばす。
他にも数名だが乗車している客がいるが、おそらく訳ありなのだろう。一言も喋らず全員が下を向いていた。
ちなみに王都ビカリテまでは弐虎たちとは別行動だ。
単純に大人数で行動すれば怪しまれるということもあるが、弐虎に関しては単独行動が得意なタイプなので一緒に行動しない方が彼の持ち味を発揮できる。
他の奴らとは、無理して一緒にいるよりも別行動した方がいいと思ったので、自然と別れることになった。
なのでこうして、またペトラとの二人と一匹の旅となった。
「出発したのがお昼過ぎだから、向こうに到着するのは暗くなってからかな?」
「だな。まあ、向こうで時間を潰して怪しまれるよりはいい」
行動開始は太陽が沈み、王都全体が暗く静かになってから。
こちらの人数が少ないので、戦争のように大声を張り上げて敵地に攻め込むわけではなく、あくまでも闇夜に溶け込み王城へと侵入する。
ユーヒニアがいないとはいえ接敵は最小限に、目的は無事に王女エルヴィア・ニース・ウェーズニッヒを見つけることだ。
「向こう着いてからあまり休める時間はないだろうから、寝ててもいいんだぞ?」
「ん、平気。ガラルこそ、寝てもいいからね」
「眠たくなったらそうさせてもらおうかな」
「うん」
他の乗員の迷惑にならないように抱きかかえたパモの頭を撫でる。
「でも、せっかく王都に行くんだから、もう少しゆっくりしたかったなー」
「そういえば村や街に行くのは何度かあったが、王都のような大きな場所に行くのは初めてか」
「んー、正確には二回目? ほら、ガラルを助けに行ったとき」
「ああ、そういえばそうだったな」
「あの時も到着と同時に騒ぎが起きて、気付いたらガラルを助けて……って、こっち来てからずっと歩くか戦うかでゆっくりした時間過ごしてないかも。はあ、少しぐらい異世界旅行を満喫したいかも」
確かにこの数週間は忙しかった。
それに俺も王都の一部である闘技場の牢屋にはいたが、王都を散策したことはなかった。
観光したいという気はないが、ペトラとゆっくりしたい気はする。
「これが終わったら、ゆっくりできたらいいな」
「うん、そうだね。二人と一匹で美味しいもの食べながらぶらぶらして」
「で、酔い潰れるまでお酒呑んでか?」
「そっ、酔い潰れたらガラルにおんぶして連れて帰ってもらうの。どう、最高の休日でしょ?」
「ああ、そうだな」
ペトラは俺の肩に頭を乗せる。
それからも彼女は明るい話ばかりを口にした。
少なからず不安はあるのだろう。無意識に明るい未来のことばかり口にしていた。
それからも会話を楽しんでいたが、温かい気温と荷台の薄暗さから眠気が襲ったのか、彼女の声は段々とゆっくりになり、気付くと寝息に変わった。
抱擁する腕に力がなくなり、彼女の腕の中で眠っていたパモが転がり落ちていきそうになる。
「ほら、こっち座っていいぞ」
『……パモォ』
男の膝の上で寝るのは不服なのか、あからさまに不機嫌そうな声を漏らされた。
「嫌なら床に落とすぞ。寝ている間に転がって荷馬車から落ちても知らないけどな」
『パモ!? パモォ、パァモォ!』
ご機嫌を取るような猫撫で声で鳴くパモは、俺の膝に顔を擦り付け、ちらちら俺の方を見てくる。
左肩にペトラの頭が乗り、膝の上にはパモが座る。
到着までまだまだ時間はある。俺も寝ようかと思って目を閉じてみたが、結局は眠れずだった。