※この作品はR-18です。

【R18】主人公に蹂躙されるためだけに用意されたエロゲの悪役である俺が逆転できるルートがあるらしい。   作:柊咲

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第26話 侵入

 

 

「仲間の中に貴族街出身の奴がいるんだ。そいつと一緒に入れば上手く侵入できるはずだ」

「へえ、あたしたちの仲間にそんな人いたんだ。でもなんで貴族様がこっちの味方してんの?」

「悪徳貴族って奴だな」

「ああ、なるほど」

「……貴族の坊ちゃんとして奴隷を買って第二の人生を謳歌するんだとかほざきやがって一度は俺たちの誘いを断ったが、他の街で豪遊してるとこを捕まえてなんとか脅して協力させた。今そいつに頼んで馬車を用意してもらってる、もう少ししたらこっちに着くはずだ」

「脅したんだ。まあ、せっかく好き勝手できる貴族様に生まれ変わったのに、こんな泥船に乗せられる……というか、泥船にさせられるのは嫌か」

「悪いことしたとは思うが、俺たちが死ねばあいつの悪徳貴族転生物語も終わる。仕方ないことなんだよ」

 

 

 二人が同時にため息をつく。

 貴族街の出である貴族と共に入るなら問題はないだろう。

 

 ただ、

 

 

「顔を見られるのは危険だな」

 

 

 ユーヒニアがどこまで俺のことを警戒、敵対視しているかは不明だが、もし俺の情報を兵士に伝達しているなら貴族の知人ということだけでは通れないだろう。

 それにもし隠れ家に攻めて来た兵士が門番をやっていたなら、すぐに正体が気付かれる。

 

 

「兄弟的には、馬車で堂々と侵入するのと、馬車の荷台に隠れて侵入するのならどっちがいいと思う?」

「顔を見せるよりは隠れた方がいいだろうな。もちろん見つかれば問答無用で戦闘になるが」

「そうか。オッケー、隠れて侵入で行こう。ここで考えてる余裕はあんまないからな」

 

 

 俺たちは移動を開始した。

 用意された荷馬車の荷台は、俺たちがビカリテまで乗ってきた荷馬車の荷台よりもずっと狭い。

 まあ、人を後ろに乗せて運搬する荷馬車ではなく少人数が移動する為の荷馬車なので仕方ない。

 

 それから少ししてから一台の馬車がやって来た。

 

 

「はあ、なんでこんなことに。せっかくフリーターから貴族にランクアップしたっていうのに」

「どんまい、全部が終わったら貴族に戻れるからさ」

「もし君たちが失敗したら戻れないでしょ。っていうか、もし引き入れたのが僕だってバレたら死刑じゃない?」

「まあ、大丈夫だって!」

「何を根拠に。そもそも君たちと関わりたくなくて、離れた街でずーっと遊んでたのにさ。はぁ、なんで見つかっちゃうかな」

 

 

 人生に絶望したかのような雰囲気の貴族と、それを見て笑みを浮かべる弐虎の会話。

 そして準備を終えた執事がやってくる。

 貴族と執事が前の席に座った。

 

 

「全員で侵入する方が安全かもしれないが、この狭さだからな。それに隠れる人数は最小限の方がいいだろ。先に二人で行ってきてくれ」

「わかった」

「もし見つかったとかの問題があったら俺たちも強行突破するからさ」

 

 

 俺とペトラは用意された荷台に乗りこむ。

 高級そうな置物に毛布をかけ、俺たちの体も同様に隠せるぐらい毛布をかけた。

 どこかのお店で大量に買った商品たち、というシチュエーションか。

 

 

「なんかドキドキするね」

 

 

 ペトラはこんな状況でも楽しそうだった。

 

 

「いつ戦闘になってもいいように準備だけは頼むな」

「わかってるけど、そうならないように全力で祈ってる。パモも、ここから喋ったらダメだからね。あと動くのも禁止」

『……パモ』

 

 

 ペトラに抱かれて小さく頷くパモ。

 どうやら状況を理解しているらしい。

 まだ普通に喋っていいというのに最小限の声しか出していない。

 

 

「二人とも、そろそろ門を通るんで」

 

 

 貴族の男にそう言われ、静かに通り抜けるのを待った。

 馬車が停まり、前方での会話が聞こえてくる。

 

 

「止まってください、通行届を確認します」

「ご苦労様です。シュトラーフェ伯爵のご子息、イグシッド様です。こちらが通行届です」

「確認するので少々お待ちください」

 

 

 門番と執事の定番化されたであろう会話が聞こえた。

 それから少し間を空け。

 

 

「確認できました、ありがとうございます。荷台は購入された商品ですか?」

 

 

 門番の一人が後ろに回り込み、荷台の物を見ながら言っている。

 

 

「ええ、そうです。──あまり触らないようお願いします。旦那様から、壊れやすく高価な物だからくれぐれも丁重にと申しつけらておりますので」

「な、なるほど。わかりました、ではお気をつけてお通りください!」

 

 

 どうやら許されたようだ。

 まあ、貴族のコレクションを触ってもし壊したりしたら、兵士の給料では弁償できないからな。

 奴隷剣闘士だった頃、そういった問題を起こした兵士がこちら側に堕ちてくるのを何度か見たことがある。

 

 そして離れたとこから荷台の確認が終わると、ゆっくりと馬車が動き出した。

 

 だが、

 

 

「待て!」

 

 

 その声に馬車を引いていた馬の足が止まる。

 

 

「なんだ貴様ら!」

 

 

 おそらくこの声の主は門番の兵士だ。ただその前の馬車を止めた者は貴族でも執事でもない。

 毛布を被った暗闇からだと何があったのかわからないが、無事に、とはいかなくなったのかもしれない。

 

 

「荷台は調べたのか?」

「いきなり現れて何を。当然だ、荷台には購入した商品が載っていた」

「だから、それをちゃんと確認したのかと聞いている」

「……目視でだが、ちゃんと確認した」

「触って確認はしていないのだな?」

「それは……そもそも貴様らはなんだ。ここの門は警備隊の管轄で──」

「──我々はユーヒニア様からの直接の指示で動いている。門を守護する警備隊とはいえ、そちらよりも立場は上のはずだが?」

「ユーヒニア様の!?」

 

 

 声しか聞こえないから状況がわからないが、どうやら新たな兵士が現れたらしい。そしてそいつらはユーヒニアの指示で動いている。

 門周辺での兵士同士のやり取りなら門番の方が立場は上だが、王族からの指示であればどんな状況どんな場所でも簡単に覆る。

 

 

「ユーヒニア様が、なんの指示を……? 我々は何も聞いていないぞ!?」

「あのお方が旅に出る前に用意した罠が発動した。賊がこの王都内に侵入している可能性がある」

「罠?」

「魔法の詳細は知らされていないが、あらかじめ賊に仕掛けていた罠と王都内に設置した罠が接近すると報せが入る魔法らしい。それが先程、発動した。おそらく狙いは王城に残ったエルヴィア様だろう」

 

 

 いつの間にかそんなものを仕掛けていたのか。

 それは俺になのか、それとも他の奴らになのか。

 ただ昼頃に発動したなら俺たちで、それよりも前なら弐虎。夕暮れ頃なら他の仲間たちだが、兵士は”先程”と言った。

 ということは、ここに戻ってきたばかりのこの馬車と貴族をターゲットにしていたということだろう。

 

 どうしてわかったのかは不明だが、ユーヒニアにしかわからない理由があるのだろう。

 

 

「そして、魔法が発動してから最初にここを通ろうとしたのはこの馬車だ。──念入りに調べろ」

「りょ、了解!」

 

 

 再び荷台の後方へと近付いて来る門番。

 ゆっくりと息を吐く。

 王城まで静かにしていたかったが、どうやら叶わないらしい。

 俺は商品のように飾ってあった大剣へと手を伸ばした。




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