【R18】主人公に蹂躙されるためだけに用意されたエロゲの悪役である俺が逆転できるルートがあるらしい。 作:柊咲
「エルヴィア様、何を──」
アイリスは俺に背を向け、エルヴィアに詰め寄る。
「ごめんなさい、アイリス。でも、ここまで侵入を許してしまっては、これ以上の抵抗は無意味かなと思って」
「ですが!」
「それに、この場を守る理由は最初からもう無いですから」
空いた玉座、明らかに少ない兵士、空虚な王城。
ここが王都だと言って誰が信じるだろうか。
「国王と王妃はどうした」
二人の会話に割って入ると、エルヴィアは笑った。
その笑顔が、目元を隠していても苦しそうな笑いだというのは簡単にわかった。
「お父様とお母様はユーヒニアと共に、兵士を連れて何処かへ行ってしまいました。上手くたぶらかされたのでしょう、元から跡継ぎのユーヒニアには甘かったですから」
「……王女を置いてか」
「王子と王女では優劣の差がありますから。それも、他国に嫁がせるにも敬遠されるような盲目の王女ではなおさら」
俺には国政なんてのはよくわからない。
思うのは、親からしてみたら同じ息子と娘であってそこに優劣はない。
王子が偉いだとか、王女だから駄目だとか。
ただこの感じだと俺の知らない面倒なしがらみがあることだけは、彼女とした少しの会話で理解できた。
そして、そう話す彼女の雰囲気が……どこか他人事のように話している気もした。
「……あの王女様も、プレイヤーとやらなのか?」
ペトラに聞くが、彼女は首を傾げる。
「わかんない。でも、メインキャラだからプレイヤーだと思うけど」
「そうか。だったらあの反応も頷けるか」
自分のこれまでの人生よりも未来を重きに置いている、というのが例えとして正しいかわからないが、エルヴィアの雰囲気は元からいた人間の身体に別の魂が入れられたペトラやアイリスと同じ感じがした。
俺が彼女の立場だったなら、こんなに達観できない。
プレイヤーでないというのなら、これまで一緒に生きた家族と共にここを離れているはずだから。
「俺たちも無駄な争いは望まないから、降伏ということでいいなら有難いが」
「いや──」
「──はい、構いません」
アイリスの言葉を無理矢理に遮ってエルヴィアが答える。
罠という見方もできるが、ここで『信じられるか!』『信じてください!』の押し問答を繰り返しても意味はない。
♦
終戦。
拍子抜けの終幕。
それでも囮役だった弐虎たちが無事だった姿を見ると、無事に終わって良かったという感想が真っ先に出た。
王城内に招き入れられた弐虎たちだったが、その後のことまでは深く考えてなかったのか、エルヴィアへの挨拶が済むと用意してもらった宿屋へと向かった。
詳しい今後については明日、夜が明けてからということだろう。
ずっと俺の側にいたペトラも、気付いたらエルヴィアと談笑していた。
これまで女性の仲間というのはいなかったから、久しぶりの同性との会話を楽しんでいるようだ。
そして、俺は……。
「なに、エルヴィアはプレイヤーじゃないのか?」
静けさのある庭園で夜空を見上げながら、まだ納得していないという表情のアイリスといた。
「エルヴィア様は元からこっちの人間で、私たちとは違う」
「それにしては、随分と達観しているように見えたが」
「彼女から聞いた話だが、両親とは元からあまり関係は良くなかったらしい。この国は王子であるユーヒニアが継ぎ、残ったエルヴィア様は他国に嫁ぐ。だけど盲目ということで他国の王子とのお見合いも上手くいっていなかったそうだ」
「なるほどな」
「それで両親からは邪魔者扱いされ、溺愛していたユーヒニアはいつの間にか別の人間が乗り移っていた。……エルヴィア様が達観しているように見えるのは、今の家族に対して一切の興味がないからだろう」
「だから一人……いや、二人でここに残ったわけか」
「それもあるが、国民のことは王女として大切なのだと思う。あっさり降伏したのも、この地で荒事を起こさせず、被害を生まない為の配慮だろう」
と、エルヴィアの考えを理解している感じだったが、
「だからといって会って早々に降伏宣言なんて。……はあ。少しは私のことを信じてくれても良いと思うんだが」
打ち合わせとは違ったようで、何度目かの大きなため息をついた。
「まあ、俺としてはアイリスとは戦いたくなかったからな。王女様の選択に感謝している」
「……それは、まあ。異常な力を手にしていても、私に勝ち目が無いのはわかっていた。こっちとしても戦わないで良かった」
アイリスはやっと優しく笑った。
「お話は済みましたか?」
少し離れていたとこで隠れていたエルヴィアに声をかけられた。
その側にペトラや従者はおらず、どうやら一人でここまで歩いて来たらしい。
「エルヴィア様、いつからそこに!?」
「アイリスが頬を赤らめながら『あなたの側にいられることになって、幸せよ』と言ったあたりからですね」
「そんなこと言ってません!」
「ふふ、では、もう少し待てば良かったですね。そうしたら言っていたかも」
「言いませんよ、まったく!」
姉妹のようなやり取りを見ていると、ふとエルヴィアが俺へと顔を向けた。
目が見えていないはずなのに、目が合っているかのような感覚がした。
「それではガラル様、そろそろ行きましょうか」
「行く? 何処にだ?」
歩き出したエルヴィアが振り返ると、微かに頬を赤らめながら微笑んだ。
「敗戦国の王女の末路といえば、屈強な侵略者から休憩すら許されないほど長時間の凌辱と相場が決まっています!」
にっこりと満面の笑みで怖いことを言うエルヴィアに、アイリスは慌てて俺とエルヴィアの間に割って入る。