セクハラしてたらメイドハーレムが出来ていた 作:上り坂は下り坂
「すまん、ヴィーナ……少し乱暴が過ぎた……」
魔法によってすっかり綺麗になった応接室で、意識が回復したヴィーナに俺は頭を下げて謝罪する。
「謝らないで下さい! 私だって発情しちゃってましたし! ……それに獣人の発情は人を選びます。獣は発情期に発情しますけど、私達は特定の人にしかこうならないから! だからっ……」
「……ああ、そうか。……そうだったな」
そう、この世界の獣人は発情期が訪れるのでは無く、特定個人のフェロモンに反応して発情する。
基本的には本人が求める相手で無ければそもそも発情せず、性行為に及べないと言われる程なのだ。
……一応、娼館などにも獣人が居るのだが、彼女達はその辺りのコントロールを掴んでいる“プロ”と言う奴なのだろう。閑話休題。
とにかく、処女だったヴィーナがその手のプロな訳無いのだから、俺の謝罪は逆に失礼にあたってしまう訳だ。
「……私は嬉しかったので……。ヴィクトル様さえ良ければ、またして欲しい、ですっ。わんっ……。」
恥ずかしそうにしながらも、空気を変えようと「わん」と鳴いてみせて……ヴィーナ、良い女だな。
ヴィーナを胸に抱いて、頭を撫でる。
「っ! ……ヴィクトル、様?」
「魅力的な女性は抱きしめたくなるものだ。ヴィーナはさらに撫でたくもなった」
「くぅーん……これ、すきです」
顔を俺の胸に擦り付けながらまた匂いを嗅いでいるな、可愛らしい。
俺はヴィーナが満足するまで、彼女を撫で続けた。
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お互いに落ち着いて、応接室のソファに二人隣り合う様に腰掛ける。
「そう言えば、私に何かご用でしたか?」
「実はメイドを探していてな。魔法で掃除の全てをこなしてしまうあのメイドだ」
「ああ、ジンジャーとリンシャですか。あの二人なら今日は屋根の掃除を担当して居た筈です。二人に何か?」
「魔法の手解きを頼もうと思ったんだ。俺はもっと自分を鍛えねばならん。だが、今日は筋肉痛でな? 動けないなりの鍛錬をと思ってな」
俺がそう言うと、隣でヴィーナが首を傾げて見せる。
「そんな状態で私に四回もえっちな事してくれたんですか?」
「……性欲に負けた。筋肉痛など途中から忘れていたよ」
「そっそんなに私の……おっ、おまんこ、気持ち良かったんですか?」
おそらくドーパミンとアドレナリンが両方とも大量に分泌されたのだろうが…………ヴィーナの言う事を否定するほどでも無いか。
両手を閉じた足の間に持っていってぎゅっと握り込むヴィーナ。
淫語を言うのはまた違った恥じらいがあるのだろう、犬耳がへなっと倒れてしまっている所もまた良い。
「そうだな。とても気持ち良かったよ。思わず夢中になってしまった」
俺がそう言えば、ヴィーナは逸らしていた顔をこちらに向けて輝く様な瞳を見せる。
そんなヴィーナと目を合わせていると、彼女の瞳が少しずつ潤み出して俺にしなだれかかってきた。
「ヴィクトル様……」
そんな彼女の頬に手を添えて、そっと口付けを交わす。
「夢みたい…………」
「現実だ。今度する時は、ちゃんとヴィーナを抱かせてほしい」
「はい……いつでも、お待ちしています……」
最後にヴィーナの唇を食む様にキスをして、応接室を出た。
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メイドをメイドとして扱う……割り切りが大事……性欲に流されない……貴族らしい振る舞いが何一つ出来ていないな、俺は。
婚約者をもらった日には婚約者の方が可哀想になるかもしれん。
色んな意味で自分を鍛えなければならない、と改めて気を引き締めながら歩く。
だが気付けば既に屋根裏に通ずる部屋の前。考え事をして居ても辿り着く程度にはしっかりと俺の家なんだなと思うと少し感慨深い。
とは言っても屋敷には家族以外にも多くの人が居る。この部屋も基本物置となっているが、今はあの二人のメイドが居るかもしれない。驚かせない為にも一応ノックしておこう。
…………反応は無い。既に屋根の清掃を開始しているのかもしれないな。
ドアを開けると、屋根裏に通じる天井の穴へと梯子が掛かっているので既に二人は上に居るのだろう。身体強化の魔法で筋肉痛を和らげながら俺も梯子を登って行く。
屋根裏は少々埃っぽく、まだこちらの清掃はしていないのかもしれない。
屋根裏部屋にある窓が開きっぱなしになっている事から、予想通り屋根の清掃を開始している様だ。
「折角だし、これも鍛錬と思って掃除でもしてみるか」
貴族として生まれてから、俺は清掃と言う事を一度もやった事が無い。そも、やろうとすると近くのメイドが俺を止めて、速やかに片してしまうのだからやる隙も無かった。
だが、今は人目も無く、邪魔する者も居ない。
掃除道具入れから箒を取り出して、魔法を掛ける。
「『念じるままに 思いのままに 我が手足となれ サイキック』……うむ。存外難しいな」
魔法としては初歩の初歩。目には見えない力を御する魔法の練習のそのまた練習の為に使われる魔法だ。
俺も何度か使わされたが、普通に使えてしまったのでサイキックの魔法自体の使用回数が少ない。
では、なぜ『クリーン』では無く『サイキック』を使ったのかと言えば、ジンジャーとリンシャの得意魔法がサイキックだからだ。
あの二人は『サイキック』を極めており、同時に複数の物体を思い通りに動かしてしまう。
例えば、魔法を掛けた箒に乗って空を飛びながら、もう一本の箒を操って屋根のゴミを落とす、と言った芸当が出来る訳だ。
故にあの二人は高所の掃除や、面倒な場所を任される事が多い。
とまあ、そんな使い熟しさえすれば便利な魔法は戦いに置いても有用なのでは無いかと思った次第だ。
剣や盾を浮かして遠隔で攻撃出来ればまず怪我を負う事すらない。昨日登った山だって飛べれば地形を無視しての移動が出来る。
可能性は無限大。この魔法が初歩の初歩として扱われていることに涙を禁じ得ない。そしてその魔法の真価を保証してくれているジンジャーとリンシャには頭が上がらない。
故にこそ、『サイキック』を用いて屋根裏の掃除をさせて貰おう!
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「ふぅ。ようやく掃き掃除を終えられそうだ……だがこの後に拭き掃除と水拭きがあるんだよな……メイドとは斯くも大変な仕事を毎日熟してくれているんだな」
サイキックに消費される魔力は微々たるものだ。なので魔力残量に問題は無い。だが、なにぶん集中力が要る。
箒の動き自体は反復なのだが、同じ事の繰り返しと言うのは地味に難しい。
俺が日々のメイド達の苦労を偲んでいると、背中に柔らかい感触が当たり、そのまま俺に密着しながら誰かがもたれ掛かってきた。
「そーだよ〜。メイドさんはと〜っても大変なんだから〜。ね、ジンジャー?」
「あぁあぁ!? そんな持たれ掛かるなんて失礼だよリンシャ〜!?」
「なんだ、二人か。驚いたぞ」
「驚いたのはこっちなんだけど〜? なんでヴィクトル様がお掃除しちゃってるの?」
「ふぇぇ……それはそうだけどぉ、リンシャ〜取り敢えずヴィクトル様から降りてよぉ〜!!」
俺に持たれて気軽に話しかけてきたのはリンシャ。
おどおどとしてリンシャを俺から離そうとしているのがジンジャー。
この二人は双子なのだが正反対と言っても良いくらい性格も見た目も似ていない。
姉であるジンジャーは言葉がつまずく事が多く、あまり自分の考えや思考を外に出す事が得意では無い。自信の無さから来るものなのか、前髪も伸ばし気味で目も隠れてしまっている。リーフとは違った意味で人前にあまり出てこない子だ。
見た目は、伸ばし気味の暗い藍色の髪を低めの位置で一つ結びにしており、前髪で隠れてしまっている垂れ目と困り眉で気の弱さがよく分かる。
服は当然メイド服。ロングスカートでパンツが見えるのを気にしなくても良くて気に入ってるそうだ。
妹であるリンシャは自信と好奇心を持ち合わせており、基本臆病風に吹かれる事が無いので様々な事に躊躇無く挑めるタイプ。現に今も俺に引っ付いて離れないので、怖いもの知らずとも言えるかもしれない。
こちらはウェーブの掛かった長めの明るい茶髪で、切れ長な目をしている。小ぶりの鼻と薄い唇、小顔なども相まって十人中十人は美人と答えるだろう。
服はこちらもメイド服。ミニスカートの方が可愛いじゃんとか言いそうに見えるが、実はリンシャもロングスカートが好みらしい。
そんな二人は普段から行動を共にしており、慎重な姉と勇敢な妹と言った具合で互いを補完しているのか相性は良いみたいだ。
「リンシャ〜怒られる前に離れてよぉ〜!」
「え〜? ヴィクトル様が嫌って言うなら離れよっかなー?」
「嫌では無いぞ。むしろ嬉しいくらいだ」
「じゃあ良いよね〜ぎゅーぅ! 素直でかわいー!」
「ゔぃっ、ヴィクトル様まで……」
……うん。実に悪く無い。リンシャの大きい胸が背中で潰れる感触が最高だ。
「でっでもでも、ヴィクトル様がどっどうして……お掃除、を?」
「あ! そうだった! それ聞きたかったの! 教えてヴィクトル様」
「ああ。実はな——」
俺が二人を探していた事、そしてその理由、ここで掃除をして二人を待つ間にも鍛錬して居た事などをかい摘んで説明する。
ちなみに、リンシャもこの時ばかりはきちんと俺から離れて話を聞いてくれた。
「……ふぅーん。なるほどね。サイキックを教わりにきた訳だ」
「私達なんて、そっそんな大した事ないのにぃ……」
「そんな事は無いぞジンジャー。少なくとも俺には出来ない事をジンジャー達は出来る。それは俺からすれば凄いんだ」
「ふぇぇ……嬉しい、ですぅ……。リンシャ〜、私褒められたの久しぶりだよぉ」
「人の前に出ないからだよ? 私はよく褒められるもんね!」
面白い双子だ。これで体格や身体のサイズは二人同じだと言うのだから不思議である。
「ま。そゆことなら私はいーよ! 可愛いヴィクトル様が近くに居るだけで気分アガるし!」
「ふぇっ。ふぇぇっ。……リンシャが良いなら……わっ私も。私なんかがお役に立てたらいいんですけど……」
「二人が良いなら、是非よろしく頼む。迷惑を掛けたくは無いからな、空いている時間を教えてくれ。俺から二人に会いに行くよ」
俺がそう問うと、二人は全く同時に目を合わせてから俺に向き直る。
「今だね!」
「今、です……」
「そっそうか。では、今から頼むよ」
「かしこまりー!」
「かしこまっまりましたぁっ!」
見た目も性格も違っても、きちんと双子らしい。細かな動きや言葉は違うが、声の出だしは全くの同時だった。
何がどうなってこの陰陽の差異が生まれたのやら。
「それじゃ、早速この屋根裏の掃除の続きを始めちゃおっか!」
「ふぇっ!? お掃除させちゃうの!? 流石にそこは私達がやろうよぉ……」
「えー、だって一緒にやった方が楽しいよ? ジンジャーだってヴィクトル様の事は好きでしょ?」
「それは……そうだけどぉ……って!? いやっあのっ違くてっ!! 好きは好きですけど!! そうじゃなくてぇ……!?」
涙目になりながら俺に向けて必死に弁明するジンジャーをリンシャが後ろからにまにまと見つめている。どうやら揶揄われている様だが、当の本人は気付く様子が無い。
そしてリンシャから何度もウィンクが飛んで来るのだが、一発かませと言う事だろうか?
「その!! あの!! ……ヴィクトル様ぁ!」
「大丈夫だジンジャー。俺もジンジャーの事が好きだぞ」
そう言いながら、気持ち柔らかめの笑顔で笑いかけて一発かましてみた。
するとジンジャーの顔が面白いくらい真っ赤になって、ふらついたかと思えば倒れ込む。
倒れる寸前で咄嗟に受け止める事は出来たが、まさかここまで効いてしまうとは……後で謝る……謝ったら嘘みたいになるか? でも訂正はしておかないとな。
「……ずるい」
「リンシャ、この場合はどうしたら良いんだろうか? どこか寝かせられる場所などあったか?」
「…………」
「リンシャ?」
返答が返ってこないのでリンシャの方へと目を向けて見れば、今度はリンシャが俯いてわなわなと震え出した。かと思えば、むすっとした顔で詰め寄ってくる。
「私の事も好きって言って?」
リンシャの口から放たれたのは予想外過ぎる言葉。何がどうなってそうなったのかを是非聞かせて欲しいが、再度俺を後ろから抱きしめて離してくれない。
義務的に言わされた好きに満足するのか知らないが、言わなければどうにもならないなら言うしか無いわな。
俺は顎を上げて、頭上にあるリンシャの顔を見ながら言う。
「リンシャの事も好きだぞ」
「……むふっ。むふふっ。うへへぇ……ヴィクトル様可愛すぎぃ……」
ぶっ倒れたままの姉を放置して、俺の頭に頬擦りをかます妹……それで良いのか? 実は日常的な光景なのか?
ジンジャーの身体は落ち着いたのか、俺の腕の中で眠っているみたいだが、それでもベッドに寝かせてやりたい所だ。
「リンシャ?」
「なぁにー?」
「ジンジャーなんだが……」
「あぁ、もう起きてるよ。多分緊張して動き出すタイミングを逃し続けてるだけ〜」
そう言われてジンジャーの顔を覗き込んで見れば、前髪が横に垂れた事でようやく見えた閉じられた瞳。そのまつ毛がピクピクと震えているのが分かった。
「ふむ。今がちょうど目覚め時だと思うんだが……。ああ、そうだ。御伽話の様に口付けでもすれば目が覚めるか?」
冗談をひとつまみしてみると、またしてもジンジャーの顔が赤くなった。どうやら本当に起きている様だ。
そしてそんな俺の言葉を魔に受けたのか、唇をうーっとすぼめるジンジャー。
……流石に会うメイド全員に手を出すなんて節操無しにはなりたく無いので、そのすぼめられた口に人差し指を当ててやる。
「きっキス……しちゃったぁ……」
ようやく目を開けたジンジャーの第一声がこれだ。
「おい、リンシャ……どうしたら良いんだ?」
「えっとぉ……どうしよっかな……?」
本気で勘違いしていそうなジンジャーに二人して困り果てていた所に、目覚たジンジャーが何故か俺の顔を掴んできた。
「一回も二回も同じ、だよ、ね? んちゅぅ!」
「っ!? んっ、んん!?」
「あっ、ああ!? 何してんのおお!?」
俺の魔法の鍛錬は一体どこに行ってしまったのか、ジンジャーに唇を吸われながら、俺は脱力して遠くを見つめるのだった。
世にある属性の豊富さ。メイドと一つ掛け合わせるだけで無限にメイドが生まれてしまう。
いや……メイドを生み出すんじゃ無い。無限にメイドを内包した屋敷があるだけなんだ。ヘクトル家のメイドはアンリミテッドなんだ!