セクハラしてたらメイドハーレムが出来ていた 作:上り坂は下り坂
ウィノを寝かせたまま一人着替えて差し迫った朝食へ向かい、厨房に居たベルメルに後で軽食を届ける様にお願いしてからまた部屋に戻ってきた。
自室にノックをするのも違うと思い、いつも通りにドアを開けて入室する。
「ゔぃぐどるさまぁああああ!!」
耳に入ったのは涙ぐんだ声。身体にぶつかった俺よりも一回り小さな身体。服に顔をうずめるどころか、尻尾を足に絡みつけて必死な様子で引っ付いて来たウィノ。
「ひとりに……しないでぇ…………」
いっそ悲痛にも聞こえるその叫びに罪悪感が湧くが、俺は俺でやらねばならない事があった……のだが、言い訳だな。
愛した直後に放置されたら、誰だって悲しい。
ことウィノに至っては親すら居らず、一人路地裏に佇んでいたと言う生い立ちからして孤独に恐怖を抱いてもおかしく無い。俺の浅慮だ。
「すまなかった。……本当にすまない。今日はウィノが満足するまで一緒に居よう」
「…………ぎゅって、して?」
力いっぱい抱き締める。壊れてしまいそうな細い身体をこれでもかと抱き寄せ、密着する。
頭を撫で、額に口付けをする。
「ふぁ……んにゃっ……ぽかぽかする」
「そうだな、俺もぽかぽかするよ」
ウィノが落ち着いた頃を見計らって、抱き上げてソファに腰を下ろす。もちろんウィノは横抱きに俺の上に乗せたままだ。
すっかり大人しくなって、されるがままなウィノ。身体を包む様に持たれるのはかなり安心する様だ。
どんどん猫っぽい部分が出てくるので、試しに顎を撫でてみる。
「うにゅぅぅ……」
少しくすぐったそうだ。
それならばと脇をつついてくすぐってみる。
「やっ。それだめ」
普通に怒られた。じゃあ次はお腹をさすってみよう。
「みゃっ……なんだかきゅんってする……」
うむ。なるほど。今はやめておこう。また発情されたら俺は全力で抱いてしまう。そしてヤってる時にベルメルが来たら気まずいなんてもんじゃ無い。
よって、流石に今は無しだな。
思考を終えたらお腹の手は退けて、頭や耳、首あたりを撫でるに留めておこう。
これらには純粋に気持ち良さそうな反応を見せるからな。
「……ヴィクトルさま」
「ん? どこか触って欲しい所でもあるのか?」
「それは……どこでもいつでも触れててほしーよ。でもそーじゃない。……我儘言って、ごめんなさい」
「我儘なものか。俺とてウィノと一緒に居たい。だから気にするな」
ウィノは申し訳無さそうに、だが確とこちらを見つめて謝罪をした。
だがこの程度の事で謝ってなど欲しくなくて、俺は反論して見せる。
……それを受けた上で、どうしてそう優しい顔が出来るんだ。
十三歳の少女だろう? もっと不出来で良い、もっと甘えて良い……なのに、なんだその大人顔負けな表情は。
どうしてこうも……子どもらしく無いんだよ。
「ウィノ、ヴィクトルさまの事、すき。だいすき。ずっと一緒に居たい。……でもウィノはメイドだから。主に仕えるメイドは主の邪魔しちゃダメ」
「俺が邪魔だと言ったか?」
「一昨日からジニアさまと訓練してる。ウィノ知ってるよ? 筋肉痛で痛がってたのも知ってるの。……一日空けて今日はジニアさまと訓練。ちがった?」
「………………」
予定はしていた。交互に肉体と魔法の訓練をするつもりだった。
だが、それを誰かに言った覚えは無いのだがな……。
「ウィノね? いつも見てる。ヴィクトルさまの事。だいすきだから。ハルラもきっと分かってる。ハルラもヴィクトルさまだいすきだから。……だからごめんなさい」
「……その謝罪を受け入れよう。だが、これだけは言っておくぞ。俺の言葉に嘘は無い。俺だって、ハルラとウィノが大好きだ。愛している。そして今こうしている時間を尊いとも思っている。それだけは……忘れないでくれ」
俺の腕に身を預け、こちらを見上げる猫耳とエルフ耳を持つ少女は、頬を染め、目を細める。
ゆっくりと身体を起こし、俺の顔を両手で挟むと、そのまま優しく口付けを交わす。
「うん……ウィノね。ヴィクトルさまに拾われて良かった。ヴィクトルさまを好きになって良かった。あいしてる、よ」
そう言ってはにかんだ少女の顔に思わず見惚れる。
彼女が浮かべたたおやかな笑みに目を奪われ、心拍が速まる。
顔が熱くなってきて、それを悟られたくなくて……咄嗟に抱き寄せて自分の顔を見られない様にウィノから隠した。
「にゃぁ。顔熱いね。なんだかちょっとはずかしーかも……。でも、嬉しい、ね?」
「……そう、だな。幸せ……と言う奴だ。胸が一杯で、苦しい程の幸せだよ……」
「うん……うんっ……! これで寂しくないよ。だから、訓練がんばって、ヴィクトルさまっ」
「……ああ。死ぬ程がんばってくる」
「死んじゃやだ。ちゃんと帰って来てぎゅーして……また、腰ポンポン……しよ?」
「死んでも生きて帰ってくる」
「それは怖いかも……」
ウィノに沢山の力を貰って、俺は訓練へと向かう事にした。
彼女からの想いを受け取ったが故に手は抜けない。今日も今日とてぶっ倒れるつもりで励んでやる!
無茶が出来るのもジニアが居る今だけだ。精々無茶をやって、鍛えられるだけ鍛えて、俺と言う存在の価値を——父上が手放せない程の価値を手に入れねばな!
…………部屋を出る前に、ウィノと思う存分キスをするぐらいは許して欲しいところだが。
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「いや危なかった……まさか部屋を出た直後にベルメルと鉢合うとはな……」
誤魔化す様にベルメルの頭を撫でて、ウィノに軽食を食べさせてやってくれと言い捨てて逃げたのはどこのどいつだぁい? ……俺だよ。
なんとも締まらない上に不甲斐無く格好悪いが、俺の本質なんてそんなものだ。
どうにか貴族らしさを取り繕おうとした上で貴族らしくないと兄上に言われる程度。
実のところ、複数の女を侍らせた所で、複数人との同時プレイとかまず無理だと思っていたくらいなのだ。
それくらい意気地は控えめで、腑抜け寄りだと自分を評価していたんだ。いやほんとに。
ところがね、双子との3Pは特殊枠に入れるとして……ハルラとリーフは流石に驚いた。あの二人が裸を見せ合える程度には仲良くなっているとは思わなんだよ。
まあ? お陰で両サイドからのたわわでふわふわ3Pを堪能する事が出来た訳だが。
どちらも“ド”をつけても良いくらいのマゾだからな。相性も良かった。見せつけプレイに二人ともがハマったのも意外だったな……うん。
ちゃうねん。それぐらい貴族らしくないって言いたかったんだよ。
なんならさっきまで愛情で幸せ一杯、がんばろー! だったのに……。
俺の最近の生活が爛れ過ぎているせいだな。幾らか自重して自制しないと、憧れの淫蕩生活が始まってしまう。
自分の頬に張り手をかまし、気を引き締める。
「よし。切り替えろ。責任を負うんだろ。幸せにするんだろ。現状に甘んじるな! ……山に行こう」
ジンジンと痛む頬で自らを律しながら向かうは訓練場では無く、守護獣が住まうとされるヘクトル家が管理する山。
一昨日、ジニアと駆け回った……いや、駆け回らされた…………いや、引きずり回された山だな。うむ。
その麓へと向かえば、やはりと言うか居てくれたジニア。我が家の筆頭戦闘メイド。最終兵器にして最後の砦……そしてキス魔。
俺が近付くと、上体を倒して深いお辞儀をして見せる。その際に大きなお胸がたゆんと弾むが、鋼の意志と頬の痛みで視線を下げない様に自制する。
三秒ほど頭を下げたジニアは、身体を起こすと澄まし顔で腕を組み胸を強調させるポーズを取った。
何故なのだろうか。理由は分からない。分からないが、目を向けたら負けた気がするので自制する。
それを受けたジニアは腕を組むのをやめて、今度は腕で胸を挟む様に持ち上げて再度上体を前に倒した。分かりやすく言うと『だっちゅーの』と言う奴だな。しかもこれまた澄まし顔。
……なんなの? 見て欲しいの? そこ以外に目を向けるべき場所が無くなって来たんだけど??
とは言え、俺の心は今はウィノでいっぱいだ。屈しはせんよ。
流石に諦めたのか姿勢を戻したジニアが後ろを向く。だが数秒後にまた振り向い……た!?
シャツの!! 胸の!! ボタンが!! 真ん中だけ!! 外れかかっているッッ!?
と、狼狽えた上にシャツの隙間をガン見した俺の前にジニアが瞬時に距離を詰めて現れた。
「お仕置きですね」
「……流石に理不尽では無いか?」
「口答えはお仕置き二倍です」
……そうだった。ジニアはこう言うキス魔だった。
速やかに顔を寄せたジニアと唇が触れ合う。そして唇を食まれ、啄まれ、舐め上げられて、舐られる。
その時のジニアは普段の澄まし顔はどこへやら、うっとりと恍惚な表情で俺とのキスを楽しむのだ。
……なんかウィノに悪い。
「んちゅぅぅ……っぱ。浮かない顔ですね。リーフさんの事ですか? ハルラさん? それともヴィーナさん? 双子姉妹でしょうか? 或いはウィノさん?」
「……なんで知ってんの?」
「暇だったので」
「せめて警護と言え」
「暇だったので警護していました」
とりあえず暇を消せ。
「今はウィノが理由だ。……本気で将来を考えさえられたのでな」
「……家を……お出になられるのでしょうか……?」
「いくつか道はあると思っている。ヘクトル家の裏方に回るか、規格外となって例外を勝ち取るか、家を出て自立するか、功を立てて新興貴族となるか……なんにせよ、しばらくは先の話だがな?」
安牌を取るなら自立。その際にはジニアを連れ出せないと思うのでそこがネック。
実家に残って裏方や補助に回るなら、後継ぎに関する契約を結んだ上で、さらに能力如何によってハーレムも許されるかどうか。
貴族となるには、それ相応の事件や災害を跳ね除けねばならない。が、一度成って仕舞えばヘクトル家との強い繋がりで幾分楽に過ごせはするだろう。
最後に規格外となって例外を勝ち取る。
これは埒外の努力が居るだろうな。そして国、或いはヘクトル家にとっての特別にならねばならない。
国外に出す訳には行かず、ヘクトル家の外に出すのも憚られる。そのレベルの印象を与えられなければ厳しい。
だが、対軍用の規模の魔法や攻撃法を獲得出来れば道はある。要するに自らを兵器に出来るかどうかだ。
どれも未知数が過ぎて難しい。
「自立されるのが最も楽な道と言えるのではありませんか?」
「平民に降る者にジニアを連れ出せる訳ないだろう? お前程の強者は、存在するだけで抑止力だ。故に、俺が平民になる道は無い」
真面目も真面目、大真面目に考えてそれくらいしか浮かばなかった。
まず俺に商才があるとは思えんし、運動能力も精々並。魔法は幾らか使えるが、どこまで大規模な物が使える様になるのか……。
魔法を学ぶ為の学園などもあるらしいが、そこまで興味は無いしなぁ。メイドの皆んなと離れるのも寂しいしなぁ。
「はぁ。ままならん。大切な者が増え過ぎた」
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悩む事に必死で、目の前でどんどん顔を赤くするジニアに気付かないヴィクトルなのであった。
クールな猫ちゃんが引っ付いてくるだけで可愛いんすよ。
クールな姉ちゃんが引っ付いてくるだけで可愛いんすよ。
クールを装った少年がスケベ心抑えようと必死な様もきっと可愛いんすよ