セクハラしてたらメイドハーレムが出来ていた 作:上り坂は下り坂
ハルラ、ウィノ、ヴィーナの三人を抱いた後の朝食。
相変わらず家族が全員席に着いてから始まるのだが、今日は珍しく父上から俺個人に話がある様だ。
「ヴィクトル、まずは成人おめでとう」
「ヴィル君も大きくなったわね〜」
「ありがとうございます、父上、母上」
「ああ、成人を迎えた良い機会だ。ヴィクトルには一つ、魔物の間引きを頼もうと思う」
「間引き……ですか」
魔物の間引きとは、この世界における飼われておらず、且つ敵対的な魔物の数を調整する事を言う。
例えばゴブリン。前世では、悪戯好きの妖精だったが、今やファンタジー世界で有名なこいつはもちろんこの異世界にもいた。
その生態もファンタジー作品寄りで、繁殖能力が高く、群を作り、集団行動に長けた小賢しい小型の人型魔物。もちろん多種族のメスを犯し孕ませ、ゴブリンを産ませると言う特殊能力持ちだ。
だが厄介ポイントはまだある。
この世界の魔物は進化する。ゴブリンはホブゴブリンになり、その後も多種多様な進化を重ねてキング——王の名を冠する種族に至るのだ。
そしてキングと名のつく魔物は厄介どころでは無い。街が一つ滅ばされる事が珍しく無い程の凶悪な魔物。
生存競争によって魔物同士での殺し合いが日々行われているが、やはり放置し続けていると賢い奴が生まれ凶悪になっていく。
なのでそうなる前に狩ってしまおう、と言うのが魔物の間引き行為だ。
ちなみに間引きのポイントは殲滅しない事。
仮にゴブリンの領域でゴブリンを倒し過ぎた事で空白地帯が生まれると、そこに新たな魔物が侵入してくる。
そうなると魔物の力関係などが一気に崩れて予想外の事態を巻き起こす為、“人里に降りてくるな”と言う牽制に留める事が大事なのだ。
「お前の実力はジニアからの報告で信頼に足ると思っている。先んじて専属のハルラとウィノには魔物討伐経験を積ませているので、その二人を従え……ヘクトル領内全域の魔物の間引きを一ヶ月で終わらせてみよ」
「領内全域……ですか?」
「そうだ」
あまりに広過ぎないかと思ったが、父上が俺に出来ると判断したのならやれるだけをやるだけだ。……そう考えていると、突如姉上が机を叩きつけながら立ち上がり、形の良い眉を吊り上げた。
「なっ……お父様!! それはあまりに酷……いいえ! 不可能ですわ!」
「トリアーナ、あまり騒ぐな。私はヴィクトルなら出来ると踏んだ。お前のすべき事は間引きの必要なエリアをピックアップして地図を渡してやる事だ」
「うん、僕も父上と同意見だよ。トリアーナ? ヴィルを舐めない方が良い。一応要注意エリアと優先的なエリアの情報も追加で頼むよ」
父上とヴィートリヒ兄上から目配せをもらった。
ここで力を示せ、と言う訳か。
俺はまだ、生物の命をこの手で奪ったことが無い。戦闘能力と移動能力には自信があるが、殺害行為に慣れる意味でも良い経験となるだろう。
トリアーナ姉上の心配そうな目に俺は頬を緩ませる。
「ハルラとウィノも居るなら食事や暇には困らないでしょうし、問題ありませんよ」
「はっはっは! ヴィクトルお前、良い度胸持つ様になったじゃねえか。流石に一ヶ月で全域は俺には無理だが、それが出来るんならお前はもう特別だ。精々やって見せやがれ!」
「はい、ヴァート兄上に負けない様にやってやります」
「兄様……」
「トトア、心配要らない。俺は弱くは無い。任務の完遂よりも生存を優先し情報を持ち帰る重要性も知っている。安心して待っていると良いよ」
「一ヶ月と少し後には王都で成人した子息令嬢のパーティがある。それまでに片付けて見せろ」
「はっ!」
全くもって興味は無く、面倒の極みなパーティだが、社交会に顔を出さない訳にも行かない。そこでもある程度の力を示せれば父上の面目も立つと言うもの。お世話になって、面倒を掛けているんだ、俺に出来る事はやって見せようじゃないか。
===
食事の後、トリアーナ姉上の部屋を訪ねる。
「失礼します、地図を受け取りに参りました」
「ヴィルっ!」
姉上の部屋に入った瞬間、柔らかい物に顔が挟まれた。
これはおっぱいの感触。姉上の大きな双丘に頭を押さえ付けられる様にして抱かれているようだ。
「どうしてお父様もお兄様もヴィルを虐める様な事を言うの!? 領内全域って……どれだけヘクトル領が広いと思っているのよ! ヴィル……無理しなくて良いの。お姉ちゃんが居るわ、私が二人を説得して見せるから……!」
そこまで心配してくれるのは嬉しい。そして有り難い。だが必要な試練なのだ。これを乗り越える事が出来れば俺の有用性をあの二人に大きくアピール出来る。
肉親としての甘さでは無く、貴族として、領主、そして為政者としての視点から俺と言う存在を認めざるを得なくなる筈なんだ。
それは俺のメイドハーレムを盤石にする立場を築き上げる足掛かり。この機会を逃してなるものか。
姉上を押し退ける訳にも行かないので、背中に腕を回して肩をぽんぽんと叩く。
すると少し落ち着いたのか俺を拘束する力を緩めてくれたのでおっぱいから顔を上げる。
「ぷはっ……。心配してくれてありがとう、姉上。でも俺、やるだけやってみたいんだ……駄目かな」
「駄目」
「駄目じゃない」
「駄目」
「どうしたら駄目じゃ無くなる?」
「キスしてくれたら良いわ」
では仕方ない。姉上の顎を少し持ち上げ、唇を優しく当てる。見開かれた姉上の瞳が落ち着いて細められた頃、顔を離す。
「これで良い?」
「……女誑しになったわね、ヴィル。お姉ちゃん悲しいわ」
そう言ったトリアーナ姉上の瞳はほんのりと潤んでいる。果たしてこれはそう言うアレなのか? 親愛のキス自体はこっちにもあるはずなんだが。
「俺の周りには良い女が沢山居たので」
「もう……分かったわよ。ヘクトル領の事、知りたい?」
「教えて下さい」
「じゃあもう一度キスなさい」
姉上の言葉に従い、再度口付ける。姉上の唇はぷるぷるで柔らかく、いつまでも味わっていたくなる。唇を食んで少し遊んでから顔を離す。
「えっちなキス……ヴィルったら」
「姉上の唇が美味しい所為です」
「もうっ……良いわ。教えてあげる」
優しく手を引かれ、何故かベッドの縁に案内され腰掛ける。
そこに姉上が地図を持って来て俺に密着する様に並んで座り、二人の足の上に乗る様に地図を広げてみせた。
俺に寄り添う……と言うよりは身体を当ててくるので、姉上の大きな胸が俺の腕に押し付けられて形を変える。
胸元が開いたドレスを着ているのもあってか、形を変えた胸の肉が上に盛り上がり、少しだけ乳輪が見えている気がする。……エロ過ぎるんだが。
「ヘクトル領は台形を九十度右に倒した様な形をしているわ。ヘクトル家の屋敷はその中心から少し左、西側に行った所にあるの」
「はい、十年ほど前に習いましたね」
「なら良いわ、今回周るのはこの全域。魔物が生息しているのが山間部や森のある場所。特に最西端の樹海は広く深く、魔物も強い。最も間引きが困難な場所ね」
正直話が頭に入っているか怪しい。おっぱいと綺麗な桜色の乳輪が気になって仕方が無い。姉とは言え、俺は転生者。感性は未だ前世を色濃く引き継いでいる。つまりだ、姉でも普通に興奮出来るし抱けそう……やばい。
「でも安心して、自治組織や衛兵隊、地方勤めの騎士などが日々仕事している筈よ。魔物の総量自体はそう多く無いと思う」
「一番の問題は移動距離ですね」
「その通り。ヘクトル領から最西端の街まで馬車で十日は掛かるわ。最西端から最東端なら、二十日掛かると思って頂戴」
「常人なら匙を投げますね」
「投げないのでしょう?」
「まあ、はい」
姉上は諦めた様に笑いながら、俺の肩に頭をもたれさせてくる。
「最西端だけでもしんどいわ。でも道中にも山々や、小規模な森や林がある。全域の間引きの程度も観測出来ないし、あなたの宣言次第でどうとでも結果は変わると思う。でも、ヴィルは適当な事をするような人じゃ無い。……だからね、私も本気で調べてピックアップしてみたわ。辺鄙な場所にある村や、そこから続く街周辺。ヘクトル領の辺境までね。移動の足をどうするのかは私には分からない。けれど、全てのポイントを回る際の最速のルートを幾つか考えておいた。参考にしてね」
……最速のルート? 巡回セールスマン問題の最適解を昼食から俺が尋ねてくるまでの間にピックアップも含めて済ませたと言うのか。
建築や農業知識、災害対策などに大きく貢献して既に実績を立てているのは知っていたが、我が姉はもしかしなくても数学的なギフトをもらっているのかもしれない。
「ありがとうございます。出来うる限りの手を尽くして、五体満足で帰って来ますよ」
「ヴィルっ…………」
薄らと涙を瞳に溜めた姉上が、俺をベッドに押し倒しながら抱き付く。
俺はそれを受け止め、丁寧に編み込まれた髪を崩さぬ様に姉上の頭を撫でる。
「私の弟……理想の人……だからこそ無茶をしてしまう。してくれる……好き……」
「…………ん?」
「ヴィルが怪我をしていたらお姉ちゃんが一生看病してあげるからね? お父様もお兄様もどうでも良いわ、私がヴィルを養って幸せにするの。いつでもお姉ちゃんに甘えて良いのよ。朝起きてからトイレもご飯も訓練もお風呂も寝る時もずぅっと一緒……だからね? ……お願いだから……帰ってきてね……ゔぃるぅ」
最後以外の全てが早口。聞き取れたけれど目の焦点は合わず、荒い呼吸がその興奮度合いを俺に教えてくれていた。
「えっ…………あっ…………えっ?」
俺はなにか、呼び覚ましてはいけない物を呼び覚ましたのでは無いかと思った。冷や汗が垂れた。口が乾いて声も思う様に出なかった。……こわかった。
でも。……最後の言葉はどこまでも純粋な願いだった。だから、俺は姉上の顔をこちらに向けない様に胸に押し付け抱き締めた。
早鐘を打つ鼓動を押さえつける様に強く抱きしめた。
冷や汗を垂らす顔を見せない様にきつく抱き締めた。
震える呼吸を聴かせない様に耳まで覆う様にして抱き締めた。
しばらくそのまま抱き合ったのち、俺は姉上の目尻に溜まった涙を拭ってから感謝を告げて、地図を持って部屋を出る。早足で自室に帰って部屋にいたハルラに抱き付いて甘えに甘えたんだ。こぁかったの。
*****
あぁヴィル。愛しいヴィル。どうして貴方にこんな試練が与えられるの。どうしてそれを快く受けてしまうの。貴方はここで幸せに笑っていてくれるだけで良いのに……。
私の理想の男性は、私の縁談相手には居なかった。悉く居なかった。
ヴィートリヒお兄様は程近い匂いがしていたが、性格に少し難がある。頭が回って利口で狡猾。でありながらそれを表面に出さない根っからの貴族。
私の好みはそれとは真逆。素直で明るく直向きで。時に不器用に悩み、時に困難を力尽くで解決しようとしてしまう人。
少しだけヴァート兄様に被る所はあったが、ヴァート兄様は粗野がすぎた。私が求めるのはヴィートリヒお兄様とヴァート兄様の間の様な人。
そんな都合の良い人は居ないと諦めかけた時、気付いた。私の唯一の弟にして素直で頑固で優しいイケメンのヴィルってそれじゃないかって。
その人柄の良さから若くして多くのメイドの心を射止めているヴィル。可愛がれば照れて、褒めれば喜び、だけど努力は辞めない。時に我儘で振り回されることもあったけれど、それすら愛おしくって怒りを覚えた事すらない。
そう……気付いてしまったの。ヴィルが私の理想の人だったんだと。
それに気付いてからはもっと縁談が退屈で面倒なものになった。
比例する様にヴィルを眺める時間が増えて、血縁である事を呪った。
別に貴族の近親相姦なんて珍しくはないのだけど、ヴィルに嫌われたくなくて家族愛を装って来た。けれど、ヴィルが成人を迎えた日に変わってしまった。決壊してしまった。
私がヴィルを想ってありとあらゆる報告書や地図情報を思い出して、ヘクトル領内の地図に書き込み精査を終えた頃、ヴィルが訪ねてきた。
入ってきたヴィルはなんて事無さそうな顔をしていて、そんな顔も格好良くて、思わず胸にかき抱いてしまった。
ヴィルの生の呼吸が私の胸に当たる、好き。
ヴィルの体温が胸から直接伝わる、好き。
だからこそお父様とお兄様が許せない。
ヴィルが肩を叩いてくれて気付いたけど、助けたい人が苦しそうにしていて、少しの後悔と羞恥で冷静になれたわ。
でも、それでもヴィルはこの不可能な試練に挑むと言う。無理をすれば身体を壊す。身体を壊して無理をすれば命を落とす。出来ればそれだけはやめて欲しかった。だから、一応は作った地図を渡したくなくて冗談で「キスをしたらあげる」と言ってしまった。
その直後だったわ。顎を指で上げられて、ヴィルの格好良い顔に意識を奪われて、その隙に気付いたらキスされていた。好き。
更には、ヴィルは私の目を見ていて、落ち着くまで唇を重ね続けてくれていたの。好き。私が目を閉じて身も心も預けた頃、ようやくヴィルは私を解放してくれた……ずっと囚われていたかったのに。好き。
せめてあの幸福をもう一度と思ってまた冗談を言ったら、今度は唇をヴィルの柔らかい唇にあむあむって、はむはむってされたの! 好きぃ! もう頭おかしくなりそう!
その後もヴィルに身体を寄せても全て受け止めてくれて、頭を寄せても受け入れてくれた。
ベッドに押し倒してしまっても優しく頭を撫でてくれて……もう抱かれても良いと思ったわ。て言うか抱かれたい。好き。
思わず感情が暴走して本音の十パーセントを声に出してしまったけれど、ヴィルはそれはもうきつく熱く情熱的に私を抱き締めてくれて…………もうこれ以上の幸せなんて私には無いのかもしれないと思った。
きっと私は弟が好きなんじゃ無い。ヴィクトルが好きなの。
でもじゃあ、ヴィクトルは何が好きなのかしら? ……やっぱりメイド? メイドよね? そうだわ、メイドの子を何人も虜にしている話は既に聞いている。今度私もメイド服であの子の部屋に忍び込んでみましょう! 夜闇に紛れれば誰かもわからず抱いてくれるかも……うふふ。うふふふふふふ。
…………たった一度切りの処女。せめて本当に好きな人に捧げたいものね。例えトリアーナだと思われていなくても、本望だわ。
兎にも角にも、先ずはヴィルがちゃんと帰って来れるのかどうか。私のポケットマネーでなにか有用な魔道具を買い集めておきましょう!
「誰か! 誰か! 今すぐ馬車を用意して欲しいわ!」
夢の様な日は、目の前に差し迫った地獄を乗り越えてからのご褒美よトリアーナ! 待って居てねヴィル! お姉ちゃんが絶対に貴方を