※この作品はR-18です。

セクハラしてたらメイドハーレムが出来ていた   作:上り坂は下り坂

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間者メイドと空を飛ぶ

 

 

 レインの心を解きほぐし、その後ろに居た存在であるケリュオン子爵についての理解を深めた俺は、レインを信用しても良いと考えた。

 

 夕食の後、シャオとレインには敢えて漏らさせる情報を共有し、情報の受け渡し方法などを確認。後にジルベルトにその詳細を伝えると、父上に話が行ってラヴィが動く事になった。

 目的は賊の追跡と、その背後関係の裏取り。俺ですら気付けない隠密能力を持つラヴィならば万が一の心配すら失礼に当たるだろう。

 

 一人になったタイミングでラヴィの名を呟けば、程なくしてラヴィが現れる。両腕を広げて見せれば飛びついて来る。それを受け止め、ただ一言「頼んだ」とだけ告げる。それが俺に出来る最大限の信頼の示し方だ。

 ラヴィは満面の笑みを浮かべて俺の頬へと口付けを落とすと、スッと姿を消した。

 

「上には上が居るものだ。間違っても俺が最強などとは言えんよ。マジで」

 

 さて、伯爵家と子爵家の間者に対する対処はこれでもう良いだろう。同格以下の相手なのでこちらも打って出やすい。

 しかし侯爵家は面倒だ。王家の血筋にのみ与えられる公爵の地位を除けば、貴族の位で最も高い存在。財力、情報収集能力、武力、兵力、どれを取っても侮ってよい存在では無い。

 

 そんな存在が俺個人に興味を示していると言うのは、それそのものが貴重な情報ではあるのだが、いかんせんこれ単体ではどうしようもない。

 そこで、食事中に姉上に聞いたリーデース侯爵家の情報を纏めてみる。

 

 まず言えるのは非常に堅実な家と言う事。黒い噂はほとんど無く、財に溺れている様子も無く、過度な重税に苦しむ民の話なども無い。侯爵の子どももかなり真っ当な人間性が見て取れるらしい。

 例えば近衛騎士隊に選ばれた次男。

 領地の相続を行い、現在はほぼ全ての運営を担っている長男。

 長女は隣国の有力貴族に嫁いでおり、次女は魔法の才があるのか宮廷魔導士を目指して魔法学院で日々研鑽に励んでいる。三女は現在王城勤務のメイドとなって居るとかで、悪さをする余地が無い。

 誰か一人でも信用を損なえば、お家自体の信用を大きく損ないかねない重要な肩書を持っているのがその証左だ。

 

 しかし、今一番怪しいのは俺と同じ歳の四女。こちらは社交会にもあまり出ていないのか情報が少ない。俺と似た引きこもりタイプなのやもしれないが、予想がつかないと言う意味では厄介極まりない。

 ……いや、まあ、俺が言うなと言われたらその通りなのだが。逆の立場になれば、そりゃ間者の一人でも送り込みたいよなと思うのだが……。

 

「ユーラを落とすまで行かなくとも、ある程度の信用を得られると良いんだが」

 

 キスしたし? おまんこチラ見しちゃったし? 毎日お風呂一緒に入ってるし? 毎日起こしに来てくれて、毎日顔を合わせてるし? 考え様によってはエロゲの隣の家の幼馴染と言えなくも無い関係性的な?

 うん、過言では無いな。今言った情報だけ見れば真っ当な判断だろう。ラッキースケベ系主人公ヴィクトル君なだけだ。今晩のお風呂もラッキーがあるやもしれん。楽しんで行こう!

 

「ヴィクトル様……お待ちしておりました」

 

 脱衣所にて俺を待っていたのは隣の家の幼馴染系女子ユーラのみ。シャオとレインには今日は外して貰ったんだ。

 しかし今日はユーラの空気が重く、雰囲気だけ見れば出会った頃のレインそっくり。今朝のやり取りは俺からの脅しにも取れるので仕方がないか。

 

「今日は二人きりだ。お前の話を聞かせてくれ」

「……はい」

 

 ユーラは何処か観念したとも取れる様子で頷くと、静かに俺の服を脱がせていく。その手つきはこの三日で手慣れたのか随分とスムーズになっており、程なくして俺は素っ裸に。

 湯浴み着のユーラと共に浴場へと向かい、気持ちの良い指使いでシャンプーして貰い、泡立てたボディソープでいつもの洗体プレイ。

 そしていつも通りユーラは俺の筋肉やら巨根やらに何度か目を奪われつつも仕事をやり終え入浴。

 

「すっかり手慣れたな。凄く気持ちよかったよ」

「それは……良かったです」

「リーデース侯爵家と比べて、うちはどうだ? 働きやすいか? 率直な意見をくれ」

「働きやすいと思います。家格の違いから求められるレベルの違いはあるのでしょうが……ここは、人が良いのです。働くことの達成感以外に、交流が楽しいのです。……たのし、かったのです」

 

 そう語るユーラの横顔から嘘は感じない。声の震えやトーン、普段の喋り方などから鑑みても、今のは本音と捉えて良いだろう。

 シャオも言ってたしな。間者は環境の違いに人一倍驚くから分かりやすいと。有意義で面白い視点だ。

 

「では何故、あちらに与する。お前がここを選ぶだけで、それだけで俺がお前を庇護する。それの何が不満なんだ?」

「……正直、都合が良過ぎて信じられませんでした。シャオの様子を見ても、それが事実だとしても信じたいと思えませんでした。……何より、私は私の庇護など望んでいません。私が助けて欲しいのは……妹なのです」

「言ってみろ。俺は対話がしたい。ユーラを知りたい。内容によっては協力だってする。……話してくれないか?」

 

 お前はまだ俺の手が届く範囲に居る。どうか、それ以上遠くには行かないで欲しい。

 

 俺の願いが届いたのかは分からない。だが、ユーラはポツリポツリと語ってくれた。

 

 

 ユーラの両親は冒険者で、十歳と五歳の子どもを置いて亡くなった。五つ下の妹との二人での生活は最初はなんとかなった。両親のへそくりを自由に使えたからだ。しかしそれも長くは続かない。やがて資金は尽き、家を追い出され、スラムへと追いやられていく。

 妹は栄養不足が祟ったのか身体が日に日に弱っていき病気がちに。ユーラは幾つもの場所で働き日銭を稼ぐが、妹の薬を買う度に金は尽きていく。

 そんな折だった、リーデース侯爵家の長男に憐れみで拾われたユーラ姉妹は、恩を返すべく必死に働いた。長男も自分が拾ってきたと言う事情があるので比較的多く構い、可愛がってくれていたらしい。

 だがそれが災いした。長男の妾や側室の座を狙う者は少なく無い。そんな中にスラムで拾われた少女が二人飛び込んで仕舞えば、それは恰好の餌食だった。

 従者の間で流れる二人の悪い噂、近くを通ればコソコソと話をされ、嘲笑や侮蔑の笑みが必死だっただけの少女達を容赦無く襲った。

 身体が弱かった妹は、その分社会経験が少なく、姉の庇護の下に居たので人の悪意に触れた経験も無かった。それにより深く心を病んでしまった妹はそのまま体調も崩していく。そして体調は悪化の一途を辿り、床に伏せてしまったらしい。

 

「その妹は今何処に居る」

「……王都の安い物件を借りて、そこに」

「悪意から遠ざかったのなら、幾らか心労はマシになったか」

「はい。ですが、衰えた筋力と、病んだ心は……簡単には元に戻りません」

「昨夜は其処に行っていたのか?」

「…………はい」

「其処が情報の受け渡し場所でもあるのか?」

「っ……はい……」

「情報の対価に何を得ている」

「金銭です。一刻も早くあの家から逃れるための……。あの子が、また笑って過ごせる場所を探すための……。申し訳、御座いませんでした……」

 

 俺にこれを話していると言う事は、金銭は貯まったのだろうか。或いは、俺達を頼ってくれる気になったのだろうか。

 そう言えばリーデース侯爵家の目的も見えない。ユーラの事情に漬け込んだ悪どい手法に見えるが……と言うか長男なら自分の周囲の状況くらい見えていて然るべきだ。ユーラの状況は誘導されていると見るべきか?

 俺のメイド好きも知っていると仮定するなら、安易に動くのは悪手?

 或いは長男は善意百%で四女が糸を引いている……? 間者がバレて契約魔法も解除された場合に損をするのは基本的に仕掛けた側。印象も良く無い。その上でさらに弱みを利用してまで情報収集を続けるか? よりにもよってヘクトル家に?

 

 んー、分からん。少なくとも現状では答えが出せない。

 

「一応聞くぞ、どうしてそれを話してくれたんだ?」

 

 ユーラが立ち上がる。そして湯から上がると、初日のようにまたしても膝を折って深々と頭を下げる。

 

「……私を殺すのは構いません。もしくはヴィクトル様の奴隷にされても文句はありません。貯えた金銭も、私の命も捧げます。しかし代わりに妹を……どうか、あの子を、リンナを助けて下さい!」

「俺に賭けると言う事か?」

「はい!」

「自分より妹が大事か」

「はい……!」

 

 唯一の肉親だものな。俺もトトアと二人だけになった時にはトトアを生かす為にもがき足掻き続ける自信がある。きっとある意味で依存に近い精神状態。ユーラが強くあり続けられるのは、守るべき対象が居たからなのだろう。

 

 力で捩じ伏せる……には向こうの家格が高い。実害も今のところは無く、貴族目線で言うならば、いち平民が苦境に喘いでいるだけ。

 数ある不幸のうちの一つ一つに手を差し伸べていては領地経営などやっていられない。切り捨てられる程度のよくある不幸。

 

 ……きっついなぁ。こう言うのが一番嫌いだ。不幸の度合いは主観。自分ならどうこう、誰々ならどうこうでは無いんだ。ユーラは、目の前の彼女はそんな良くある不幸に命を差し出す程に苦しんでいるんだよ。

 助けられるなら助けたいと思うだろうが……。

 

「身も心も捧げられるか?」

「……お望みのままに」

「妹の様子次第では……リンナと言ったか。リンナの状態を見て、うちで雇えるかどうかも考えよう」

「で、では……!?」

 

 俺も湯から上がり、ユーラを立たせ、脱衣所へと歩く。

 

「先ずは妹を見に行く。間者どうこうはもうどうでも良い。俺がお前に絆されてやる。……これも演技のうちだったのなら、その時は盛大に俺を笑え。俺も俺を笑う」

「そのような事は致しません。ここに至って騙すなど、私には出来ません」

「それならいい。着替えを手伝え。飛ぶぞ」

「……飛ぶ?」

 

 風呂を上がったのち、戸惑うユーラを引き連れて父上の下を訪ねる。そして今から向かう場所と、今の状況を報告する。

 リーデースが読め無さ過ぎて怖いからね。いざと言う時はラヴィかティルが居る。それを思えば俺も安心して無茶が出来ると言うものだ。

 

 さて、準備を終えたら後は出発。部屋のバルコニーにてユーラを抱き上げ、『サイキック』にて空の旅へご案内〜!

 

「へ、え……? ふぁ? ……ゔぃくとるさま……これは……?」

 

 突如地面が離れていく光景に呆気に取られるユーラを他所に、俺は端的に訊ねる。

 

「妹のところまで案内しろ。俺が直接見定める」

 

 初速から時速百キロで飛ばし、景色を線にして俺達は夜の王都へ繰り出すのだった。

 

「ひやぁぁぁぁあああああぁぁ!?」

 

 うるさい口はキスで塞いでおきましょね。

 

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