セクハラしてたらメイドハーレムが出来ていた 作:上り坂は下り坂
ほんのりと後悔を抱えながら朝食を終えた後、剣術の鍛錬に向かう途中でハルラと出会った。
「あっ! おはようございますヴィクトル様。今朝は……その、処理されましたか?」
何やらモジモジとしているが、目線が俺の息子に向けられていることぐらいは直ぐに分かる。
ヴィーナとのやり取りを知ってる感じでは無いので、単純に俺の性欲を気遣ってくれている……のだと思いたい。
「問題無いに決まっている。俺をなんだと思ってるんだ?」
問題有り有りでした。ヴィーナの胸気持ち良かったです。すまん、強がらせてくれ。これでもいち男子としてのプライドがあるんだ。可愛い女の子相手にはしっかりしたとこ見せたいんだよ。
「……性欲旺盛で私のお口好きな癖に」
「おまっ!?」
廊下に人が居ないか咄嗟に確認するが誰も居なかった。
ほっと胸を撫で下ろすと共に少しむっとしてしまう。
「そんなに気になるなら触ってみろ」
苛立ちついでにハルラの手を取って俺の股間を触らせる。
「なんの問題も無いだろう?」
「うぅ……」
これから剣術の鍛錬に向かう予定だったので、今の俺の息子は大人しい真面目モード。仮性の皮を被って至福の時を待っているのだ。
だが予想外にハルラが手を何度も擦り付けていやらしく動かし、俺の息子を刺激し始めた。これには流石に驚きを隠せない。
「そんなに気になるのか?」
「…………」
返答を返さないハルラの耳に口を寄せて、
「もしかして、舐めたいのか?」
そう問えばハルラの肩が分かりやすく跳ねる。
「ほう……いつからこんな変態メイドになってしまったんだろうな?」
「ちがっ! 違います!」
「自分を変態だと認めるなら、見せてやってもいいぞ?」
「……ちがうもん」
口ではそう言いながら、俺の息子を撫でるハルラの手は止まらない。それどころか生唾を飲んで、息が荒くなってきているでは無いか。
俺はハルラの顎を持ち上げて、昨日俺のチンポが入り込んだだろう首の半ば辺りを指でさする。
俺のやっている事に気付いたのか、ハルラはどんどんと湧き出る涎を喉を鳴らして何度も飲み込む。
口の端はひくつき、分泌された唾液が多かったのか口から垂れそうになった唾液を舌で掬う姿はまるで餌に飢えた獣。
エッチな事なんて知りませんと言わんばかりに楚々とした振る舞いをし、ピンク色の髪を遊びの無い三つ編みにしているハルラがそれをやってしまえば、それはもはや女狐と呼ぶに相応しい。
「俺は今から剣術の鍛錬なんだ」
「あっ…………ん。申し訳、ありません……」
「だから、夜か朝か、鍛錬の無い日の昼間か……また折を見て相手してくれ。…………俺も忘れられないのでな」
「じゅるっ……畏まりました」
じゅる? 女狐は女狐でも野生の獣だったのか?
首輪が付いてないのは若干恐ろしいのだが……まあ、なんとかなると信じよう。
ハルラの未だ俺の股間を弄る手にデコピンをして、お返しに存外に豊満な胸と尻を揉みまくってやって俺はその場を去った。
……ハルラめ、嬉しそうにしやがって。何故か負けた気分だ。
にしても、精通して二日でこれだけ日常が爛れるとはな。
もしかして俺は前から目を付けられていたのか? 騎士団への入団予定も無く、政務を手伝う事もしていないこの俺が?
異世界の上下社会が厳し過ぎる所為で、相対的に俺が良い人になっている可能性はあるか。度し難い世界だな。……その恩恵に預かっている以上、変革するつもりも無ければ、そんな力も無いのだが。
===
伯爵家の敷地内にある訓練場へと赴いた俺は、早速軽いストレッチと運動を始める。
己の無力を嘆いた所で仕方が無い。それにそんなものは転生した直後から分かっていた。世界を知れば知る程に諦念を覚えた。
では俺がすべきは何か。俺の腕の中にあるものくらいは守れる程度の力を付ける事。幸せな生活を維持して、維持したまま次代へと引き継ぐ事。
つまりはパワー。ある程度の事は力さえあれば解決出来てしまう、道徳観念が広まっていない異世界だ。どこまで行っても最後にはパワーがある奴が生き残って勝つ。
だから、伯爵家と言うバックを持てる今の間に、俺はこの家に蓄えられた知識や知恵を出来る限り身体に叩き込んでしまいたい。
そして! 何よりも! 阿保みたいに絶倫な下半身に負けない屈強な精神を身に付けるんだー!!
「うおおおおおおお!!!!」
俺は気勢を上げながら訓練場の外周を駆け抜けるのだった。
+++++
「ヴィクトル様、やたら気合い入ってんなー?」
「あの方は魔法も剣も年不相応なまでの技術を持ってた筈なんだが」
「上昇志向って奴がすげえんだろうな。一丁俺もあの人に着いていってみっかな!」
「「……俺達も行くか!」」
「「「うおおおおおおお!!!!」」」
ヴィクトルの知らない所でも世界は回り、人は生きている。
彼が少し羽ばたくだけで、それに押された粒子がまた隣の粒子を押して行き、いずれ大きな現象を巻き起こすかもしれない。
少なくとも、今この場では三人の騎士団員が彼に当てられて訓練を励み出したのだ。
自らに人を惹きつける“カリスマ”。それは万人が持たない一種の才能。彼はその片鱗を確かに見せ始めていた。
「流石ヴィクトル様ですね。ヴィートリヒ様やヴァート様とは違った力を持つお方……鍛え甲斐があります」
ヘクトル家の男は、皆カリスマを備える。
長男のヴィートリヒは圧倒的な優秀さで、率いる者達を鼓舞し支えるカリスマ。
次男のヴァートは戦闘能力と気安さで人を纏め、多くの民を導くカリスマ。
ではヴィクトルは? 現時点で言えるのは、背中で魅せるカリスマ。彼が彼の意思で何かを成す姿を、愚直に真っ直ぐに走り続ける姿を見せるだけで人を魅了するカリスマと言えよう。
「この私、筆頭戦闘メイドたるジニアが、ヴィクトル様のその気概に応えましょうか」
そして、また一人。新たに魅せられた者が現れた。
戦闘メイド。主人に侍るメイドは護衛よりも距離が近い。それを活かした役割。メイドにして護衛。最も近くで主人を守る最後の砦。
その戦闘メイドの筆頭であるジニアは、筆頭であるが故に特定の主人を持たない。ヘクトル家の誰かが遠征や遠出の際に最優先で選出され、常に侍る事を求められる。
故に最強。故に堅牢。敵を倒さず、主人を守る事を第一とする彼女が側に居るだけで、スパイや暗殺者は行動を諦めて監視に努める他無い。
そう、そんなメイドがヴィクトルに近付こうとしていた……。
+++++
「流石、現役の騎士達……俺のランニング程度は余裕みたいだな?」
「はっはっは! 流石に負けられませんよ!」
「でも、ヴィクトル様も凄いですよ。まだ成人もしていない身でこれ程の運動量とは」
「将来はヴァート様と一緒に我々を率いて頂きたいな!」
何故か俺のランニングについてきた騎士達は、半分競争する様な勢いで走ったのに平然としている。
俺の方は軽く息も切れているのだがな……ままならん。俺だっておれつえーしたかった。
「活気があって良いですね? ヴィクトル様、このジニアが貴方を鍛えて差し上げましょう」
唐突に現れて話しかけて来たのは我が家の最終兵器、筆頭戦闘メイドのジニアだった。
「ジニア? 俺などよりもヴァート兄上の訓練相手を務めた方が建設的だと思うが?」
「そこは私に裁量権が御座います。それに私は貴方を見て鍛えたいと思った、それ以上に理由などいりますか?」
「…………ふむ。そうだな、そこまで言ってくれるなら是非も無い。俺を鍛えてくれ、ジニア」
先程まで仲良さげに話していた騎士三人は気付けば姿が見えなくなっており、少し周囲を見渡せば遠くの方でランニングを続けていた……まるで脱兎の如き速さと言える。
「あの者達も一緒に鍛えて差し上げようと思ったのですが……まあ良いです。ヴィクトル様、それではまずは山に参りましょうか」
成る程、こうなる未来が見えていたと言う訳だ。だが、俺からすれば好都合! 性欲すら湧かなくなる程に身体を疲れさせる事が出来れば文句は無い!
「ああ! 行こうジニア! 存分にしごいてくれ!」
黒く長い髪とメイド服を靡かせて悠々と歩くジニアに続いて歩く。
===
訓練場所を守護獣が住むとされる山へと変えた俺達は、軽登山道の様な少し険しい道を大した装備も身に付けずに進んでいた。
「はっ、はっ、はぁ……思ったより足場が不安定と言うのはしんどいな」
「実戦ではこんな事は日常茶飯事です。護衛と共に逃げる場合により険しい道を行ける方が生存確率も高い。今の内から慣れておくのがよろしいですよ」
常に俺の前を行くメイド服姿のジニアはとても引き締まった身体をしている。胸も尻もしっかりとあるが、それら全てを含めて美しさを感じる様な均整の取れた身体だ。
全身の動かし方も滑らかで身軽。不必要な力は掛けず、無駄が無く洗練されきっている。ぱっと見では非常に簡単そうに見えるが、それこそが凄いのだ。まずはあの動きを模倣しよう。
「っ! なるほど。普段使わない筋肉まで使うのか……ジニアの美しさは満遍なく鍛えられた肉体から来るのかもしれないな……」
「っ……。あまり不用意に褒めるのはお辞め頂きたいですね。少し調子が狂ってしまいます……」
「すまん! 余裕が無いと思考が口から漏れる! 気にしないでくれ!」
木の根を避けるのでは無く、木の根を踏んでもぶれない体幹。
ちょっとした崖でも怖気付かない精神力。
少し険しい山というだけで、いつもの訓練の何倍も集中力と体力を使う。面白い!
「これが人誑し……いえ、女誑し? おべっかでも、社交辞令でも無い……褒め言葉とはこんなにも響くものでしたでしょうか……」
先に崖の上の辿り着いていたジニアが何事かを呟いているが、正直気にする余裕が無い。
「はあっ、はあっ……ジニアは凄いな! その身体をもっと見せてくれ!」
「……っ。わっ、かりました。ですが、先ずは少し息を整えましょうか。どうぞ、膝をお使い下さい」
息を乱して仰向けの寝転んでいた俺の頭を持ち上げて、ジニアが膝枕をしてくれた。
程良く引き締まった太ももは適度に柔らかく、弾力があって気持ち良い。
「はっはは。訓練中にこんなご褒美を貰って良いのか?」
「褒美などでは……」
「いや、十分褒美だよ。気持ちの良い膝枕に、見上げれば美しいメイドの顔があり、さらに上には青く澄んだ空が広がっている。贅沢以外の何者でも無い」
俺は目を閉じて膝枕の心地良さに身体を預ける。
こんな場所まで連れて来てくれる人などまず居ないし、俺にそれを強いる事が出来る人もほぼ居ない。
今この場所でこの様な事が出来るのはきっとジニアだけだろう。
呼吸が落ち着いた頃、目を開ける。
黒く長い髪が俺の顔に垂れており、髪を辿ればジニアの顔がほど近くに見えた。
「ジニア? 近くないか?」
「日差しを遮っていたのです」
「そうか、ありがとう。おかげでしっかり休めたよ」
「……もう少し休んで下さい。身体の疲労は簡単には取れませんから」
……身体に疲労を溜めたいんだが??
ジニアの細く白い綺麗な手で目を覆われて閉ざされる。
あまり疲労感は感じていないのだが、プロフェッショナルがそう言うのだから従おう。
と思って力を抜いた矢先、ジニアの手が俺の顔を撫でていく。
「ん? ジニア?」
「貴方の口はよく回る。少し栓をしておきましょう」
その言葉の後に唇に柔らかい物が触れた感触があった。目を閉じているので何かは分からない。だが、ジニアの吐息を口元で感じたのでおそらくキスをされたのだろう。
……なぜ? ……分からない。顔を合わせた回数なんて数える程度だ。ほんとに分からない。
「ちゅっ……はむ、ちゅっちゅっ……」
キスは唇を重ねるだけでは終わらず、唇を何度も重ねるキスになっていく。
「ジニア……?」
「……私を女として見る人などそうは居ません。その上、貴方は私を褒め殺そうとしてくる。当たり前の能力を当たり前に使っているだけなのに…………ヴィクトル様が悪いのです」
またも再開されたキス。少しずつ俺の唇が深く貪られていく。
俺は快楽から離れるべく鍛錬に来た筈なのに、快楽は俺を逃がしてくれないらしい。
にしても、ジニアの言っていた事は半分も理解出来なかった。
黒く艶やかで長い髪、整った顔立ちと、出る所は出ながら引き締まった身体……こんなにも美しいジニアを女として見ない? 無理がある。
褒め殺せるほど褒めていない。褒めるべき所など他にも山程あるのだから。
当たり前の能力? 最終兵器とも最後の砦とも称されるその力は特別なものだ。それを俺の為に使ってくれる事に感謝はして然るべきだろう?
つまり俺は悪く無い。Q.E.D.証明完了。
「ジニア、どう考えても俺は悪く無いぞ。俺は真っ当な事しか言っていない」
「では、私が悪いです。貴方の言葉に心が揺れてしまった。もう揺らさない為にその口、私に塞がれて頂きたい」
「……気が済むまで塞げ」
俺はされるがままになって、ジニアからのキスを受け止め続けた。
だって逃げられそうにないんだもん。
鍛錬?? なんの?? キスの??