セクハラしてたらメイドハーレムが出来ていた 作:上り坂は下り坂
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熟睡した様子のスティア嬢はそれはもう良く寝た。
大体一時間は眠った後、パチリと目を開けて瞳に俺を映すと俺を手招く。耳を貸して欲しいのかと思い俺は身体を前のめりに倒した。
すると、首に腕を掛けられて寝技を用いて上を取られ、そのまま唇と唇が触れ合う。
「はぁむっ、ちゅ♡」
スティアは唇同士を拙い動きで一度合わせると、頬を染めた顔を名残惜しそうに離した。
美少女が無理矢理キスしてくるってのも悪くないのだが、さっきまで敵対的だっただけに情緒が追いつかない。
「お、おい……寝起きからそれってどう言う精神構造してるんだお前」
「スティア・リーデースは死んだの。貴方に介錯されたのよ。……だから、これはただのスティアの初恋。好きな異性への積極的なアプローチよ」
「俺、まだあんまり信用してないんだけど?」
「してない相手にずっと膝を貸す訳無いわ。無防備に顔を近付けもしない。そうでしょう?」
ぐうの音も出せん。実際はただの油断と慢心だった訳だが、にしてもこいつ体術も行ける口かよ……。万能系の天才か? これが燻る侯爵家はなに? 怖いんだけど??
「わたくしの……いいえ、わたしのファーストキスよ。喜んで欲しいわ!」
「まあ、それは、素直に嬉しいです」
「そう? 良かった! じゃあ、ついでに処女も貰っておいて……♡」
そう言ってドレスのスリットに手を掛けて捲り上げると、Tバックを惜し気もなく晒してきた。
もちろんガン見するのだが、なんとも扇状的だ。程良く引き締まった四肢、女性らしさを残した肉付き、小さなパンティのその奥を覗き込みたい衝動がムクムクと湧き上がってくる。
しかし、流石に貰えない。だって
「処女は駄目だ。言い逃れ出来なくなる」
「むぅ。貴方に特定の想い人や婚約者は居ないはずだけど」
「どこ情報だよ。ちょっと言えない理由でえっちはしたくないの。それにスティア、目元が腫れたままだ。それじゃ戻れないだろ? 治してやるから大人しくしてろ」
マウントポジションを取られた状態から、身体強化で無理矢理上体を起こす。向かい合う態勢でスティアの目元に手を当て、回復魔法を発動。魔力を癒しの力へと変換。大人しくなったスティアの目の腫れを癒していく。
「わたしの事、もしかして好き?」
「嫌いじゃ無い。今癒しているのは部屋を出た後を考慮してだ」
「わたしは貴方が好き。使命とか、義務とか、どうでも良くなっちゃった。……ねぇ、わたしが身分も立場も捨てたら、雇ってくれる?」
「ユーラとリンナに謝罪して仲直りが出来るなら考える。二人が許さないならどう足掻いても無理だ」
「……そっか。……そうだよね。…………間違えちゃったなぁ」
癒し終えて手を離すと、そこには再度涙ぐんだ顔があった。
ユーラ達に関して、どれだけの事象がスティアの影響下にあったのかは分からない。魔法を施して間者の任務を与えただけなのか、精神的に病ませる所まで含めてスティアの作為なのか。
どちらにせよ、俺は今居るメイド達の安寧を優先したいと思う。
そもそも、仮にスティアは侯爵家と縁を切れるのか? ……なんか上手い事やりそうだよな、コイツなら。手段を選ばない立ち回りに関しては信用があるわ。
雇うメリットは……ある。戦闘力も知識量も知能も、全てが高い。どこにおいても腐らない能力を持っている。俺への好意と言う鎖で縛れるなら、正直欲しい人材だ。
慰めも含めて、少しだけ優しくしてやるか……。
目尻に涙を溜めたスティアの頬を撫で、今度はこちらからキスをする。
「んぅ!? ……ん、ちゅ……ヴィクトル……悪い人。でも、もっとぉ……♡」
「処女はもらってやれないが、キスなら幾らでも」
「好き、好きぃ……ヴィクトルぅ♡」
猫撫で声で甘えるように身体を擦り寄せるスティアからは、侯爵令嬢としての威厳は失われていた。
本人が言った様に、今はただの女の子としてのスティアが居る。
涙を止める為のキスだったのに嬉し涙を流すスティアの目元を拭ってやり、魅力的な身体を抱き締めて密着しながらキスを続けた。
それこそ甘やかす様に。褒める様に。スティアが求めるままに、絡み合う様なスローペースなキスを。
唾液を混ぜ合わせ、吐息を感じ、まつ毛が触れ合う。蕩けた顔でねだるスティアの頬や額、目蓋にもキスを落としていく。
キスされる度に身体を僅かに震わせるスティアは、満たされながら飢えに喘ぎ、俺の背を掻きむしる様に抱き着いていた。
「スティア、お前が本気なら、うちに来い。或いは、側室でも良ければ正式に婚約を結ぶ方向でも話をつけられるかもしれない」
スティアは目を丸くすると、直後には思案に目を細め、そして程なく納得と理解を得る。
「……うそ、えっ……。あぁ、そっか……まあそうなるか。首輪代わりかな。側室以外は無理っぽいんだね」
「……あー、お前ほんとに頭良いな……。誰にも言うなよ」
侯爵令嬢が側室になる。普通に考えるなら、公爵か王族の婚約者が居る。近い年の婚約未発表の女性となるとミリアリア殿下。挨拶の場で、俺にのみ言葉を返した殿下を多くの者達が見ていた。そしてスティアは俺の能力に察しがついているとくれば、まあ察するか。
にしても答えに到達するのが速いが。
「言わないよ。貴方に嫌われたら、わたし死んじゃう。……でも、侯爵令嬢って立場はもう疲れちゃったから、やっぱりメイドが良いなぁ」
「……解放されたいって訳だ。逃亡、或いは叛逆? もしくは、死を偽装? 功を焦って魔物の群れに単身突撃でもするか?」
「あー、良いね。死んだ振り。わたしの情報はあんまり出て無い筈だし、侯爵家の情報操作が入れば簡単に非業の死は遂げられそうね。魔物も活性化してきてるし、やり易そう。最後の大仕事、かなぁ」
スティアは算段を既につけたのか、少し晴れやかな笑みを浮かべていた。侯爵家を手玉に取る自信がある時点でおかしい事に気付いているのだろうか。
この傑物がメンタルを擦り減らす程の魔境。慰めの言葉に涙を流すくらい余裕の無い環境。侯爵家と言う立場が求める有能の証明、そして優秀であると言う義務。この小さな少女は責任に押し潰されてしまったのだろう。
スティアの心境を理解してはやれない。努力の人である事しか分からない。だが、一つだけ教えてやりたい。もう一つの道があったと言う事実を。ミリアリアと言う規格外にやべー奴の事を。侯爵家じゃなく王家に生まれたのに、能力を偽る事で義務の敷居を下げ、自身の安穏のために人生単位で評価を調整する腹積りの異次元の怪物が居る事を是非伝えてあげたい。……また泣きそうだな。
とりあえず、もう暫く彼女の癒しになってやろう。
ベッドに横になって、徐々にキスを激しくし、舌を差し込み舐る。柔肌を撫で、俺からも抱き寄せてやり、出来得る限り寄り添おう。
この、もう一人の不出来な才女に。
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あの後、結局俺達は交わる事は無かった。
ベッドをリメイクし、紅茶を淹れ、化粧や髪型、服装の乱れを寸分違わず直した後、幾らか話を付けてから部屋を出た。
部屋を出る際も距離感は元のまま。俺が軽くエスコートするが、距離は空ける。決して心を許してはいない事を誰の目にも明らかな程度には装う。
会場に戻ると、そこではダンスパーティが始まっていた。
俺達は意味の無い握手をして別れる。なんらかの取り引きの合意があったのかと思わせる程度の軽い物だ。
ダンスには当然参加するが、スティアとは一切目を合わせない。俺は領地で甘いもろこしを作っている令嬢をお誘いし、お付き合い頂いた。勿論互いの特産品を贈り合う約束もした。
少しの間、文通の相手をする必要はありそうだったが、まあ必要経費だろう。
他にも、新鮮な魚が獲れる令嬢や、お菓子コンテンスト令嬢、美味しい令嬢と何度かダンスを踊らせて頂いた。
父上に『食が豊かになりますよ』と報告したら、『お前は文の書き方と言い訳の練習をしておけ』と命が下った。不服だ。
最後にはミリアリア殿下にもお声掛けをさせて頂き、手と手を取って仲良しダンスかと思いきや、何度も足を踏ん付けられる。
一曲の内に十回を超えた辺りで小声で文句を言うと『遊び人には相応しい罰です』と毅然とした声音で返事が来た。無能っぷりの披露とお仕置きがシナジーとなって、最後には俺が足の甲で殿下を御運びしたような気がする。
身体強化をしていたので特に痛みも怪我も無いのが救いだ。
父上は『ヴィクトルには女誑しの才能があるやもしれん』と呟いていた。とても不本意だ。
ともあれ、なんとかパーティを終えた俺は、ハークロックや御令嬢方、そして本当に挨拶程度にスティア嬢と会釈を交わした後、王都ヘクトル邸へと帰り着く。
さあ、今夜のメインイベントはここから。四人のメイド達の古巣の契約書を持って俺はシャオ、レイン、ユーラ、リンナを部屋に呼び出した。