※この作品はR-18です。

母の写真   作:松田義和

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第三章 ポケットの中の秘密

そこにあったのは――

 

ブラジャー一枚で、大きな胸を露出している写真だった。

下から煽るように撮られたアングル。鏡の前で、カメラを見つめる目。

ただの記録じゃない。誰かに「見せるため」の構図だった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

次の写真は、短いスカートを穿いて脚を組んでいた。

肌が、白く、なまめかしい。

膝の角度、手の位置。意識的な「見せ方」が、そこにはあった。

 

極めつけは、スカートを捲り上げて、白いパンティを見せつけるようにした一枚だった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

顔は映っていなかった。でも、誰がどう見たって、それは“母さん”だった。

 

――なんで、こんなものが……?

 

まさか、誰かに送っている?

その可能性を否定したくて、僕は必死で他の手がかりを探した。

LINE、メール、Instagram、Facebook――。

履歴はどれも、普通だった。

地域のスーパーのチラシ、同じ町内のグループLINE、親戚への連絡、父さんとのやりとり。

怪しい人物との接触は、どこにも見当たらなかった。

 

だけど、“写真”は、そこにあった。

確かに。

誰にも見せていないのなら、なぜ撮った?

なぜ、削除しなかった?

 

「もしかして……他の誰かとのやり取りは消した?」

 

そう考えたとたん、心がざわついた。

どこまで疑っていいのか、自分でもわからなかった。

いや、わかっていた。

もう、疑うことを止められない自分が、いちばん怖かった。

 

それでも、僕の中にもう一つの声があった。

 

――もしかしたら、本当にふざけて撮っただけなのかもしれない。

――誰かに見せるつもりなんて、なかったのかもしれない。

――僕が勝手に、想像を膨らませているだけかもしれない。

 

信じたい気持ちと、見てしまった現実。

その両方のあいだで、ずっとぐらぐらと揺れていた。

 

だからこそ、夕飯のとき。

母さんの顔を見た瞬間、僕は言葉を失った。

 

エプロンをして、台所で笑っていた。

「今日の味噌汁、ちょっと濃いかも」なんて言いながら。

テレビからはバラエティ番組の笑い声。

父さんは相変わらずくだらない冗談を言って、母さんに軽くどつかれていた。

 

全部が、いつも通りだった。

全部が、ちゃんと「日常」だった。

 

でも、僕だけが、もう元に戻れなかった。

 

なぜなら――

ポケットの中に、母さんの写真を入れていたから。

 

あの下着姿を。

あの、絶対に見てはいけなかったはずの“女”としての姿を。

 

自分でもわかっている。

これは、踏み越えてはいけない線だった。

なのに僕は、自分の手でそれを保存して、持ち帰ろうとしていた。

 

罪悪感よりも先に、なぜか鼓動が速くなっていた。

 

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