※この作品はR-18です。

母の写真   作:松田義和

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第六章 新しい写真

新しい写真は、さらに露出が大きくなっていた。

 それは、ただ肌の面積が増えているというだけではなかった。

 そこに写る母さんは、確かに「誰かに見せるため」にその姿を撮っていた。僕の知っている“母親”という存在の枠を、はっきりと踏み越えていた。

 

 3枚目の写真では、青いビキニを身にまとった彼女が、まるでグラビアのようなポーズでこちらを見つめていた。

 目線の強さに息を呑む。これが本当に母さんなのか、何度も疑った。

 

 

 

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 4枚目では、彼女は背中を向け、こちらにお尻を突き出すような姿勢をとっていた。

 挑発、としか言いようがない。

 その体勢のまま、首だけこちらを振り向いている。その視線が、刺さるように僕の胸に突き刺さった。

 

 

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 5枚目、6枚目と進むごとに、下着の色が変わっていった。

 黒いレース、紫のサテン――どれも、生活感の欠片もない。普段の彼女が選ぶはずのない衣装だった。

 色気というより、計算された演出の匂いが濃厚に漂っていた。

 

 

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 7枚目には、彼女がブラを下ろし、両手で胸元を隠している写真があった。

 隠しているのに、まるで「見せている」ように感じた。

 意図的な角度。手の形。そういう細部が、否応なく僕の理性を揺さぶった。

 

 

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 そして、8枚目の写真。

 そこには、左のブラを外し、右手で自分の胸を揉んでいる母の姿があった。

 視線は虚ろで、どこか恍惚としているようにも見えた。

 何よりも衝撃的だったのは、彼女が下半身には何も身につけていなかったことだった。

 

 脳のどこかで、「見なかったことにしろ」と警報が鳴っていた。

 けれど僕は、その警報を無視した。

 

 多分、あの瞬間の僕は――人生でいちばん、混乱していた。

 体が熱を持ち、喉が渇き、背中に冷や汗が流れていた。

 それが興奮なのか、恐怖なのか、もはや自分でもわからなかった。

 

 何が正しくて、何が間違っているのか。

 世界の境界線がぼやけていく。

 目の前の現実は、あまりにも鮮烈すぎて、もう後戻りできない場所に僕を引きずり込もうとしていた。

 

 母さんの写真は、僕の中に、ひとつの明確な“分裂”を生んだ。

 画面に指を滑らせるたび、心の奥で何かが壊れ、何かが生まれていくような感覚――それは僕の輪郭を、静かに、しかし確実に歪ませていった。

 

 もっと見たい。

 そう思ってしまう自分がいた。

 その衝動は、強く、どうしようもなく、理性を突き破ろうとしていた。

 

 でも同時に、胸の奥で膨らんでいく感情があった。

 ――これは、誰のための写真なんだ?

 

 誰に向けて、この姿を撮ったのか。

 なぜ、僕が知らない“母さん”が、そこにいるのか。

 その疑問は、やがて鈍い痛みとなり、気づけば“嫉妬”に変わっていた。

 

 自分でも認めたくなかった。

 けれど、たぶん僕は……母さんの中にある「誰かのための顔」に、取り残されたような気持ちになっていたんだと思う。

 

 母さんが、僕の知らない誰かにだけ向ける笑み。

 その表情を知らない自分。

 それが、どうしようもなく悔しかった。

 

 その後、再び母さんのスマホを手に取る機会が巡ってきた。

 あのときとは違う――今度こそ、冷静に見るつもりだった。

 自分にそう言い聞かせていた。でも、実際には指先が震えていた。

 

 写真ホルダーの中身は、以前と変わっていなかった。

 増えてもいなければ、消されてもいない。まるで何もなかったかのように、静かにそこにあった。

 

 ただ――そのとき、ホーム画面の片隅に、ひとつ見覚えのないアイコンが目に留まった。

 

 聞いたことのない名前。見たことのないロゴ。

 SNSでも、写真加工でもない。どこか匿名性の高い、メッセージアプリのようだった。

 

 “〇〇◯”

 

 アプリ名の意味も機能もわからない。

 けれど、なぜか直感的に悟った。

 ――ここに“答え”があるかもしれない。

 

 開いてはいけない。そう思う気持ちと、開かなければいけない。そう感じる衝動とが、頭の中でぶつかり合っていた。

 

 心の中で、何度も迷った。

 けれど――迷いは一瞬だった。

 

 気づけば僕は、そのアプリに指を伸ばしていた。

 

 

 

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