烏天狗たちが『しもべ』を連れて集まったのは、『シンコイワ』の駅にほど近い、『カツシカアラカワミズベ公園』だ。
集まった烏天狗たちは30人。そのしもべとなる男達ばかりのニンゲンは、おおよそ200人ほどになる。
男はどいつもこいつも屈強な、ガタイの良い者ばかりであった。
彼等の秘めた力は多くが『金剛力』。腕っぷしが倍になるという秘められた力である。
他に足が速くなる『韋駄天』や、より遠くを見渡す『鷹目』といった能力の持ち主もいたが、そうした者達はごくわずかであった。
この者たちには、とある共通点があった。
帰宅後、いきなりキンタマに激痛が走り、カランカランになるまでの大量射精をしたいという欲求が起こったということだ。
烏天狗達がそうしたのだ。
妖力を持つ彼女たちは、ニンゲンの男たちの身体に、こうした働きかけが容易にできたのだ。
自分たちの手駒として、こき使う為にである。
「お前達!」
烏天狗のうちで一番偉いのが、前に出てニンゲンらに呼びかける。
烏天狗衆の筆頭、『ばっひゃろーべる子』だ。25歳と最年長である。
錫杖を持ち、脇差しを腰にさげたこの女は人一倍目立った。
足元までの黒く長い髪でとても背が高く、180以上あるぐらいだ。
胸がおっそろしく大きかった。
ほっそりとした体つきなのだが異様なぐらいの盛り上がりである。
ただ、他の烏天狗と違い、彼女は袴を履いていなかった。
下からのぞけばどろっどろな精液が付着した、手入れしていない陰毛が丸見えである。
彼女は手早く男と交わり、己のしもべとするために、常にこのような、あられもない格好をしているそうである。
「我らはこれより、『コイワ』に現れたという謎の『ようかい』をひっ捕らえに向かう!」
『ばっひゃろーべる子』は持っていた錫杖を高々とあげ、力強く叩きつけた。
どん、という音がすると、他の烏天狗たちが脇差しを抜いてニンゲンの男たちに呼びかける。
「ゆえに、お前達には力を尽くしてもらう!」
「正体はよく掴めんが、『ようかい』らしいという話だ!」
このような特徴だと、目撃者から聞いている。
両方ともとんがった耳をした、女の『ようかい』だ。
「片方は黒髪の9歳ぐらいの童女のような体格だが、やけにおっぱいがおおきいらしい。雪のように白い肌をしているそうだ!」
「もう一人は銀髪で褐色肌だ。片方よりすこし背が高い。妙なズボンを履いていて、股と尻のあたりが丸見えになっていると聞く!」
2人とも『コイワ』の駅前のロータリーで大小便をひねった後、それを見て欲情した男たちの求めに快く応じ、何十人もの相手と公然猥褻に励んだという。
この2人が、『むさしまる』と『つばめさんじょう』が消息を絶ったことに関係しているのではないのか、という憶測でだが、烏天狗達は見つけだそうとしていた。
『ばっひゃろーべる子』が、自分にぎらついたチンポ視線を向けてくるニンゲン達を睥睨しながら叫んだ。
「知っての通り、この『エドガワ』と『スミダ』は白猫御前様のお膝元である! お前たちは御前様のおかげで職を与えられ、この『トーキョー』に住むことができている果報者たちだぞ!」
男たちがおおっ、と叫んだ。
正直トーキョーは息苦しくて住みづらいが、他の土地よりも優れたところがある。
結婚相手となる若い女がよく集まるのと、地方よりは給料のいい仕事があること。
何より、使役されるのが条件だが、ニンゲンの女よりもはるかに極上な、『女ようかい』や『烏天狗』のような眷属たちと、タダでセックスができることである。
特に『白猫御前』が治める『エドガワ』と『スミダ』は、街並みこそ汚かったが安い娯楽が多く、下層クラスのニンゲンの男たちにとっては、とても住心地がよい街でもあった。
女どもがネーミングバリューだけに惹かれて住みたがる、高いだけで中身空っぽな『メグロ』や『ロッポンギ』と比べれば遥かに良いところだ。
「『アラカワ』と『タイトウ』と並ぶ、トーキョー屈指の居住地に住まわせてくれる『白猫御前』に忠義を示す為にも!」
さあここからが唱和だ。大事なところだ。
烏天狗達は目を怒らせ、声を併せて叫びだした。
「必ず!」
「ホシをッ!」
「挙げるッ!!」
そしてニンゲンの男たちが「ハイッ!」と叫んだ。
これが烏天狗衆とニンゲンの男たちの、出動の前の儀式であった。
かくしてこの一団は、夜の『コイワ』の街へと向かうのだった。
□ □ □ □ □
一方である。
どこもシャッターが降りていて、中には打ち捨てられて崩れかかった廃屋もある。
しかし人通りはそこそこあった。
大人の男と若干歳がいっている女の連ればかりだ。
彼は耳を澄まして、彼らがどんな話をしているのか聞いてみる。
(……なんだ。この辺を歩く女は娼婦ばかりか。)
目を凝らしてよく見れば、路地の薄暗いところで金を握らせ、行為を始める者がいた。
この通りは娼婦たちの仕事場になっているらしい。
ホテルや休憩部屋を使わぬ、安値で買える売女ばかりがいる通りだったのだ。
まるでウマヤーノの『夜鷹街』とおんなじだった。
DSは色ごとをあんまり好かぬ男である。
汚なくてろくでもないを見てしまった彼は、気分が悪くなったと窓のカーテンを閉めた。
(飯でも食べよう。プリンプリン達に頼むか。)
階段を降りると、すぐ見える店の厨房でエスカとダフネがモッチモチと共に料理を仕込んでいた。
ダフネは知らないがエスカは料理がうまい。サキュバスレストランの厨房で立っていたとDSは聞いていたから、腕に関しては信じれた。
「夕飯の支度か?」
「ちがうでチュウ」
まな板の肉をタタタタン、と切さばきながらダフネが答えた。
「この店、夜中が一番客が入ってくるらしいずら」
そういうことだ、と客席からミレイユの声が。彼女はモップを持ってモッチモチと掃除をしていた。
「ディミトリウス。お前も雑巾を持って手伝え」