その10日後である。
DSとミレイユの姉弟は、ウマヤーノ行きの大陸横断鉄道『えくすぷれす』の中にいた。
大陸の南、カイロネイアの東にいったサガミニア平野にあるアーツギの街から乗った。
北にあるウマヤーノの都・タカレストが終着点。
距離でいうとおよそ1000キロ、5時間の道のりだ。
「姉さん。これに乗る時いつも思うのだが……なぜ弁当をアーツギで買うのだ?」
ミレイユに頼まれた『鶏肉の炊き込み弁当』を3つ重ねて席に座るDSが、向かいの席にいる姉に尋ねた。
「ウマヤーノ地方が大陸屈指のメシマズだと、わかっているはずだな?」
「あ、ああ……」
ろくな作物が獲れず、食文化が貧しいウマヤーノの駅弁は、そこらへんの草でも食ってたほうがマシ、という出来あいのものばかりであった。
それは酒にも言える。
ウマヤーノの名産物・こんにゃく芋から作った蒸留酒・こんにゃく酒は、酔うだけにしか用途が無いと言われている程まずかった。
(※すとぜろ、に甘味や香料を抜いて、アルコール度数とえぐみを強めたような酒である。大陸一まずくて悪酔いしてしまう。)
ゆえに、タカレストまではおいしい弁当の購入は絶望するしかない。
途中の駅で売っているものも微妙な出来具合だ。食の彩り豊かな生活を日々送るカイロネイアの民の舌に合わない。
だから弁当は、一番美味いと評判のアーツギで買ったのだ。
「弁当はウマヤーノ地方に入ってから寄越してくれ。次のイルマーヤ駅を出てからでもいい」
「わかった。ダフネもそれでいいか?」
ミレイユの右、窓側の座席に座るエルフの少女に問いかける。
「ん? ああ。おらもそんぐれえでええずらよ」
ニンゲンで言えば10歳ぐらいの童女に見える娘が答えた。彼女がダフネだ。カイロネイア=エルフの子供である。
銀色の髪で肌は浅黒い。前髪は切りそろえて長く伸ばしており、目つきは眠たげだが愛らしさは十分に備えていた。
とはいえ、彼女は村長の代行をつとめているほどしっかりものだ。
何故なら父と母は商売や傭兵隊を率いる為、よく村の外を出ていたからだ。
今度は彼女も呼び出されていた。DSの助手としてである。
「まあしかしだ、ダフネ」
DSが彼女をじろじろと見て指摘した。
「ウマヤーノに入ったら、その股をごしごしとしている棒を仕舞ったほうがいい」
「んへ?」
ダフネは脚を大きく広げ、しゃがみがちに座っていた。
彼女はカイロネイア=エルフの女児がよく着る、股がぱっくりと開いたズボンを履いていて、割れ目から尻穴までが丸見えであった。
そのふっくらとした恥丘の間に、大きく曲がった樹脂製の太い棒が突っ込まれていた。
カイロネイアの女児エルフがよく膣に挿れて遊ぶハリガタだった。
「それを見てしまった男たちに、いらぬ情欲をもたらすからだ」
「だったらディミトリ、おらのまんこのいらいらを収めてくれるずらか?」
棒を右手でつかんでごしごしとしながらダフネが言う。DSは興味を示さなかった。子供がよくやることだからだ。
「姉さんからもダフネに言ってやってくれ。はしたない真似はするな、とな?」
「はしたない? 我らエルフにそんなものを求めてどうする? 自然の発露というものだ。好きにさせろ」
ミレイユは意に介さない。DSは呆れて黙ることにした。
自慰に耽るダフネのせわしない息遣いを聞きつけて男の乗客が何人か近づいて来た。
どいつもこどもエルフと大人の遊びをしたことがありそうな、表情に癖がある者達ばかりだった。
「あのう、お嬢ちゃん……」
「もっと楽しいもので、ぼくたちと遊ぼうよ?」
ダフネは膣肉をごしごしとして悶えるまま、答えない。
代わりにDSが剣に手をかけて彼等に応えた。
「私が代わりに引き受けよう。斬りあいがいいか、魔法の撃ちあいを試したいか、どちらかを選べ」
DSの気迫に圧されて彼等は引き下がった。
ミレイユがため息をつき、不粋な真似を、とつぶやく。
「あいつらも楽しい旅をしたいのだろうに。おまんこぐらい、許してやれ」
「便所からのやかましい盛り声を聞きたくないのでな。耳ざわりだ」
「心が狭いと嫁のなり手が寄って来ないぞ?」
「嫁? そんなものは知らん」
DSは窓の外を見た。
延々と、森と野原ばかりが広がっている。
カイロネイアでよく見ているものばかりで、面白味に欠けると思った。
□ □ □ □ □
タカレストに入った。
未だ大破壊からの後遺症に苦しみ、瓦礫や廃屋ばかりが目立つ都に建てた塔がある。
人工水晶で表面を張ってきれいにしているが、形はちんぽに見えた。
高さは300メートルほど。
タカレスト市の一大モニュメントとなっている。
エルフとドワーフ、それから他大陸の魔法王国の魔道建築技術を結集し建てたものだ。
ちなみにだがその塔の周りは、廃屋や瓦礫ばかりである。
その塔だが、こういう名前だ。
『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング雑居ビル』
命名者は塔の持ち主だ。
雑居ビルというのは複数の企業がオフィスを構えるインテリジェント=ビルディングに与えられる、とてもかっちょいい名称である。
実際、数多くの企業がこのちんぽみたいな形のオフィスビルに事務所を構えていた。
人々は『クリスタルタワー』とか『バブイルの塔』など、かっこいい別名をつけたかったが、ビルの所有者がこう拒んでつけられなかった。
「ぴかぴかおったちちんぽこ塔、みてえな名称なら許してやるべえよ。だいたい、かっちょいい名前にしようという心理というもんは、この塔をぶんどりたいという、よこしまなことを考える様なやつが抱くもんだべえ」
このビルのオーナーこそ、今のウマヤーノを支配する独裁者であった。
いい名前にしようと署名した者は国家反逆罪としてしょっぴき、ミナッカミニア山地の奥深くにある、温泉地やファミリー牧場への強制労働刑に処した。
そしてこの全身がてかったビルの最上階、陰茎の亀頭の先端部分にあたる一室のオフィスに、『エルフィーリズム』を作った会社のオフィスがあった。
いや、ゲームのプロデューサーかつ会社の最高責任者がいた。
その人物は同時に『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング雑居ビル』のオーナーであり、このウマヤーノに恐怖政治を敷き、人々を従順な羊とする独裁者。ミナッカミニアの女王エルフその人である。
ここのところ彼女は異世界のことを自分にたくさん語ってくれた人物を側に置いていた。
ちびっこのサキュバス。
10歳ぐらいのニンゲンの娘みたいに見える美少女だが、実年齢は20を超える。
しかしこの年齢でもかの種族としては『こども』だ。
とはいえ、胸のあたりが大きく膨らんでいた。
彼女は子どもを産んだからだ。
そして今、前をはだけて片乳を丸出しにしていた。
まんまるくて大きいのはさることながら、視覚情報だけで柔らかさが精密に想像できそうな、美品である。
しかし乳首はふさがれている。
将来彼女に似て美少女になりそうな、しかしどうにも豚の脂身くさいにおいを放つ、福々しいなりの赤ん坊に飲ませていたが。
「なんだ。チン負けザコサキュバスの……エスカか」