※この作品はR-18です。

爆焔のダークエルフ   作:洗濯屋チャコちゃん

6 / 15
05

 その取材場所(異世界)の『トーキョー』という街について、キファニアはこう言った。

 

「この『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング雑居ビル』みてえになあ、すんげえ高いセメントづくりの建物が、いっぱい建っているらしいべえよ!」

 

 それも1棟ではない。100棟も200棟もだ。

 

 えのき茸のように、高いビルが密集している街区がある。

 『マルノウチ』や『シンジュク』、『ギロッポン』といった商業街区がそうだとか。

 

 しかし別のタイプのものもある。

 

 貧乏人の小屋ばかりが並ぶ住居街区の中で、一番土地の値段が高そうな場所に、1棟か2棟だけ、みょーんと伸びているものもある。

 そういうのは『たわまん』と呼ぶらしい。

 

 『たわまん』だが、その街区のアッパークラス(成金)のモニュメントだったり、でっかいタワーに住みたい目立ちたがりやの見栄の象徴とされている。

 

 人口は1000万人以上。

 

 その中心地の広さは、最盛期に30万の人口を誇ったタカレストの街と同じぐらいだとか。

 

 しかしタカレストと違い、トーキョーはどうも息苦しいそうだ。

 すべてがセメントに覆われていて、自然の緑はほぼ皆無のようだ。

 

「だけど、あちこちに公園があるでチュウよ。そこではいろんなニンゲンしゃんたちがやって来るでチュウ。そこでわんこを放って遊ばせたり、テントを張って暮らしたりする人もおるでチュウ」

 

 出発する前、エスカはその様に教えてくれた。自由で野糞もし放題な、緑豊かな広々とした公園の他に、『としまえん』や『はなやしき』、『あくあてくすせんたー』といった、娯楽施設もある。

 

 そういったセメントづくりの街の民だが、岩の精霊たちのように、三大欲求から離れることはできぬらしい。

 

 特に色欲だ。

 エスカが言うにはトーキョーの民は、常に下半身がイライラとしっ放しである。

 そのため、売買春や手淫コンテンツが盛んだという。

 

「ちんちんちゃん限定でチュウけど、その手の色街があちこちに点在しているでチュウ」

 

 『カブキチョウ』、『イケブクロ』、『キンシチョウ』といった名前の色街がそれだ。

 特に『キンシチョウ』はサキュバスたちの一大活動拠点になっているそうだ。

 

 それと、トーキョーには財宝を売る店がたくさん並んでいるという。

 

 ボロボロのズボンやシュールなポエムが書かれているシャツを身につけたり、ブーンとまわるプロペラをつけた上着をまとったり人々は着飾っている。

 

 食べ物も素晴らしい。

 下層民まで『よしのや』や『とりき』といった美食に舌鼓を打つ。

 お湯を入れれば3分でおいしいスープと麺を味わえる、『かっぷめん』があった。

 

 発展した科学。

 限りない娯楽。

 装飾と飽食。

 そういう黄金の都とも、魔都とも言えるトーキョーの街が、エルフィーリズムの『大型イベント』の舞台となるのだ。

 

 闇属性の破壊の戦士であり、悪をもって悪を討つ魔戦士・DS(ダーク=ソーサラー)は、ある意味でトーキョーについて期待を持っていた。

 

 それほどの絢爛豪華な街であれば、取材をしている最中にも、欲にまみれた悪党どもを目の当たりにするだろう。

 

(ふふ……悪を討てる。小癪な闇を俺の、大きな闇の力でねじ伏せてくれよう!)

 

などと、変な考えを持ったりもした。

 

 当然、姉のミレイユは武器を持たされても、せいぜいが『エルフィーリズム』の取材で終わるだろうと信じていたが。

 

 

□ □ □ □ □

 

 

「げほ! げほげほげほ、げほっ!

「おええええっ! うぉええええっ!」

 

 エルフの姉弟の咳払いと嗚咽が鳴り響く。

 とんでもなく空気が汚いからだ。

 

 異界への扉から彼らが出たのは、人通りの無い、埃っぽい裏路地だった。

 室外機がけたたましく回り、生暖かく、臭い風が吹いていたから、姉弟は余計に咳き込んでしまった。

 ダフネに至っては、こんな空気じゃ息ができないと口の周りに風魔法のシールドを張っていた。

 

「な、なんなんだここはッ!」

「おらたちはどこに来ちまったんずらかっ!」

 

 DSとミレイユは涙声で、ぜーはーと息をしているエスカに叫ぶ。

 

「こ……こんなに空気が悪かったはずではなかったでチュウが……ごほ」

 

 記憶と違う。

 かび臭く埃っぽい裏路地だからというのもあるが、空気がより一層汚くなっていた。

 

 エスカは1人路地から出てみた。

 息苦しいのは変わらなかった。

 しかも日差しは強く、湿っぽくて暑い。

 通行人たちは半袖かノースリーブで、ぼろっちいゴムのサンダルばかりを履いていた。

 

(ここはどこ、いつでチュウか……。)

 

 どうやら真夏のようだ。

 エスカが『魔羅民』で小銭を稼いでいた時は、そりゃあクサくてきったない風が吹いていたが、もう少し息が楽だったのに、ただただ息苦しい。

 

 エスカは周囲を見まわして、何度かいったことがある街であると思い出した。

 その当時でも「汚くてぼろっちい」という印象だったが、経年劣化は更に進んでいた。

 

 『てつどう』の駅前であった。

 停止したままエンジンをふかし、排気ガスを撒き散らす大きな乗用車がいくつも並ぶ止まるロータリー。

 それと、『てつどう』の高架沿いの、向かって右側にある商店街の入口から漂う、サキュバスの巣窟くさい気配。

 

 エスカはようやく思い出した。

 『魔羅民』の出前版、『コーマンイーツ』の宅配で、よく訪れた地区だ。

 エスカやアニーみたいなちびっこサキュバスの「くぱぁ♡」と開いたおまんこでも、存分にいただこうとする性に飢えた若者が多く住んでいた、トーキョーの貧民街だった。

 

「……ここ、コイワの駅前でチュウね」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。