※この作品はR-18です。

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第13話『僕たちの日常』

 同棲が始まって、早くも2週間が経過しようとしていた。僕の一日は、ハルの存在をすぐそばに感じながら始まる。

 

「…………」

 

 隣から規則正しい寝息が耳に届く。左腕はハル専用の枕と化しており、ハルは身を丸めるようにして僕の胸元にすり寄っていた。

 

 幸せだなぁ……。

 

 起こさないように細心の注意を払いながら、枕にされている左腕をそっと引き抜く。僕はベッドを抜け出して、寝室の扉を開けた。

 

「――――」

 

 最初に飛び込んでくるのは、この1週間で劇的に様変わりしたリビングダイニングの光景だ。ダイニングテーブル、ローテーブル、ソファに大型テレビ――その他諸々の家具が、絶妙な一体感で配置されている。

 

 がらんとした空間は一転して、ゆとりのある空間へと仕上がっていた。

 

 ちなみに家具の購入費用は軽く3桁を越えている。まあ、それを支払った張本人は、なんてことないとばかりに満足そうにしていたけれども。

 

 窓際に向かい、開けるのも一苦労な長いカーテンを引っ張っていく。リビングが朝日に照らされると、寝起きの脳内が覚醒へと向かっていった。

 

「さて――」

 

 冷蔵庫を開けて、中身を確認しながら朝食の献立を考える。ありがたいことに食費はハルが負担してくれているので、巨大な冷蔵庫の中には食材が山のように入っている。

 

 ご飯作りは僕の担当だ。ハルの口に入る物だし、下手な物は作れない。

 

「よし――」

 

 鮭の切り身が余っていたので、今日の朝食は和食にすることにした。味噌汁と卵焼き、ほうれん草のお浸しも添えるとしよう。

 

 ハルの「美味しい!」が聞けるように、腕を振るわなければ。

 

「――――」

 

 食材を台所に並べて、僕は手際良く調理を進めていく。

 

 魚を焼く傍ら、熱湯に味噌を溶かしていたところで寝室の扉が開いた。

 

「んぅぅ……いい匂い……」

 

 パジャマ姿のハルが、瞼を擦りながらぼんやりとした足取りでキッチンに来る。

 

「おはよう。もうすぐできるから顔洗ってきたら?」

 

「ふぁぁーい……」

 

 同棲を始めてわかったことだけど、ハルは意外と朝に弱い。というか、私生活は全体的に抜けている印象があった。

 

 ふらふら歩いていくハルを横目にしつつ、僕は料理を再開する。

 

 鮭の切り身を2枚焼く。茹でたほうれん草を醤油と化学調味料で味付けして、仕上げに白ごまを振りかける。

 

 焼き魚、味噌汁、お浸し――なんだか物足りない気がしたので卵焼きも作ろうと思う。

 

「ほわぁぁ……」

 

 卵を溶いていると、ハルが洗面所から帰還した。顔は洗ったようだけど、まだまだ眠たそうにしている。

 

「なにか手伝おっかぁ……?」

 

「大丈夫。ハルはテーブルに座ってて」

 

「んー……」

 

 うとうとしながら椅子に腰を下ろし、自分の腕を枕にするようにハルはテーブルに突っ伏した。

 

「ふふっ……」

 

 微笑ましい光景をカウンター越しに眺めてから、卵焼き専用のフライパンにIHの熱を通す。ついでに沸騰しない程度に味噌汁を温め直して、フライパンが温まったら油を引いて溶き卵を流し込む。

 

 砂糖で甘味をつけて、焦げないようにさっと卵を巻いていく。全体が固まったらまな板に移して、包丁で6等分にして皿の上に盛りつける。

 

 焼き魚、お浸し、味噌汁、お米はそれぞれ別の器に入れて、これで朝ご飯の完成だ。

 

「できたよ、ハル」

 

 テーブルに朝食を並べ、ハルの向かいに腰を下ろす。

 

「んぅぅぅっ……」

 

 伸びをするように体を起こすと、ハルは薄く瞼を開いた。食卓に並ぶ料理を前にして、ぱっとその目が見開かれる。

 

「わぁっ……! 日本の朝って感じだね!」

 

 眠気が吹き飛んだのか、途端に声を弾ませるハル。

 

 今日も喜んでもらえたようでホッとした。

 

「冷めないうちに食べよっか」

 

「うんっ!」

 

「それじゃあ――」

 

 ふたりで目配せし合い、「いただきます」と両手を合わせる。

 

 ハルが最初に手に取ったのは、味噌汁のお椀だった。猫舌のハルは、ふーふーと息を吹きかけてからゆっくりとそれを口に含む。

 

「んぅぅっ……、寝起きの体に染み渡る~」

 

「朝の味噌汁って美味しいよね」

 

 言って、僕も味噌汁を啜る。赤味噌とわかめの塩っ気が利いてて美味しい。

 

「さすがショウタくんだね! お母さんが作るやつより美味しいかも!」

 

「ありがと。でもまあ、味噌汁なんて分量調整が大半だから、誰が作っても一緒だと思うけど」

 

「謙遜しないの! それに他のおかずも美味しいよっ」

 

「そう?」

 

「うん! 卵焼きもふわふわで世界一美味しい! ショウタくんは天才料理人だね!」

 

「大袈裟だって」

 

 とは言いつつも、悪い気はしなかった。ハルに褒めてもらえるのはかなり嬉しい。

 

 その後もハルは、僕への賞賛を口にしながら朝食を平らげていった。

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