※この作品はR-18です。

モンスターファックアンドスラッシュ   作:不落八十八

1 / 56
#1

 あぁ、我ながらとんでもない場所に入学してしまったものだと辟易した。

 今生の産まれは最悪の一言に尽きた。

 密売人のチャラパパに売春婦のギャルママと言うカースト家族、生活は基本ネグレクト、外で自立する事しばしば。

 挙句の果てにチャラパパはヤクザに〆られ東京湾へドボン、追い打ちの如くギャルママは違法な風呂に沈んだ。

 そうなると可哀想な少年一人が残されて、義理と人情はあったらしいヤクザの手腕により無事施設入りした。

 嗚呼何たる悲劇か、チャラパパとギャルママは不幸な事に交通事故で死んでしまったらしい、とヤクザの集金係さんに宣われた時は乾いた愛想笑いしかできやしなかった。

 戸籍上で両親が死んだ事で施設入りもスムーズに進み、しれっとツケられた100万ちょっとの借金の返済のため、とある学校に入学するように仕向けられた。

 その名も豊葦原学園、立山連峰の麓にあるらしく表向きは高等専門学校と言う扱いなのだとか。

 保護責任者と言う名の監視員として派遣された集金係のお兄さんは朗らかに言った。

 あそこは政府によって管理されたとんでも施設であり、生きて帰って来られたら良いな、との事で。

 調べてみれば調べる程、謎に包まれた場所である事が分かると言う厄ネタの宝庫に思わず顔へ掌を当てた。

 

「まぁ、なんだ。これは本当に噂だが、案外御前向きの場所かもしれねぇぜ」

 

 何せ――剣と魔法の学校らしいからな。

 剣と魔法の世界、ね。

 集金係のお兄さんの言っていた事は割とマジらしく、初日を使って学校を歩いた結果あるわあるわファンタジー。

 鍛冶屋に武器や防具がショーケースに入っていたり、購買でしれっと売られている割高商品の数々。

 加えて、金、暴力、SEX、の世界でもあるらしく、所々で興味深い遣り取りをしている先輩方も居た。

 まるで青藍島に来たみたいだ、テンション上がるハメーと一人ハメドリ君しつつ、こっそりと寮へと戻った。

 マンモス校もびっくりな人数を収容するこの学園は寮暮らしが規定されており、俺も第三男子寮こと黒鵜荘と言う木造三階建ての住人として登録されていた。

 外部の部外者立ち入り禁止という規則のせいで、部屋に詰め込まれる荷物は先輩寮生が荷運びしてくれる。

 だが、ダンボール箱無し、ボストンバック1つで入居した俺はなんかこう可哀想な人を見る目で見られていた。

 俺の部屋の担当になった先輩が後ろから肩を優しく叩いて頷いていた事から大分同情されたらしい。

 極度のミニマリストと言う訳ではない、ネットワーク関係が遮断されているとの事だったのでデスクトップ型の渾身のPCを持ってこれなかっただけだった。

 そもそも施設で物を置ける場所も多くなく、あっても年下の子たちに融通して好感度を得るために使い切っただけだ。

 そんなこんなで自室に辿り着き、ノックをしてから鍵を回して中へと入る。

 見ればベッドでぐったりと倒れている小太りの少年がスマホ片手に項垂れていた。

 

「うぅ……聞いてくれよぉ、全滅だ、これまで課金してきた全てが皆勤賞断絶なんだよぉ」

「……それは、大変だな」

 

 一階の食堂で行われている新入寮生歓迎会からしれっと抜け出した同居人を追ってみればそんな事を宣っていた。

 この学園はよっぽど末法に触れているのか学園内のネットワークを遮断しているらしく、加えて外部への接続はフィルターの掛かった物になるためチャット機能があるタイプのソシャゲは全滅のようだった。

 ぅおぉおおん、あんまりだぁーと泣き叫ぶ子豚くんを尻目に電子学生手帳の内容を閲覧する。

 ……ふむ、なぁにこれぇ、ハイテクが過ぎるだろ、もはや魔法染みた科学だよ。

 倒したモンスターの討伐数やらそこから算出したレベル推定とかどうやって判別してんだよ、こっわ。

 ポケモン図鑑もびっくりな性能にドン引きしつつ、翌日の特別実習とやらの内容も大体予想が付いた。

 成程、モンスターが出る様なタイプの特別実習かぁ……、ローグライクやハクスラ、はたまたウィザードリィもしくは風来のシレン。

 うーん、地獄かな、そこに性暴力の嵐も巻き起こるんでしょこの学園、もう終わりだよ。

 ……寝るか、七時間はしっかりと寝ておこう。

 

「それでは、前の人から順にグループ毎に入場してください」

 

 翌日、一時限目から特別実習と言う名のオリエンテーションと言う皮を被った罠っぽい事に巻き込まれていた。

 えらく陰のある案内をする我らが丙組の担任である翠先生が羅城門こととんでもゲートへの入場を促し、キャッキャと楽しそうに支給された変な棒とプラスチック樹脂の硬い盾を手に向かう陽キャたちを見送る。

 あの表情からして、あぁこの子たちこれから生贄になるのねごめんなさい、って感じの事考えてるだろ。

 隣の太志は、ポが勇者だお、だなんて脳内勇者ごっこを始めてしまっているし、頼れる仲間がラリってるんだけどいつメダパニを受けたんだ俺たちは。

 順々に列が進み、二重円の転送装置にいってらっしゃいされている奴らの背を見送り続け、漸く俺らの番になった。

 

「では竜胆氏、初陣へと向かいましょうぞ」

「……逝くかぁ」

 

 二人で仲良く手を繋ぐ、だなんてきもい絵面になる事はせずにとっとこ歩いて行く。

 先程しれっとまれにはぐれるから部分的に接触しておけよだなんて言っていたが、時稀らしいし大丈夫でしょ、タブンネ。

 ――だなんて事を思いながら転送されたのが悪かったのか、着いた先で隣に居たのは太志ではなく饐えた臭いのするドブ川色の緑肌をしたTHEゴブリンと言った容姿の人型のモンスターだった。

 醜く曲がった鷲鼻に皺の多い不細工、身長も此方の半身あるかどうかの四頭身、極め付けはツルッとしたハゲ。

 スキンヘッドで毎日お世話してたらごめんな、だなんて感想が出た。

 

「は?」

「ギ?」

 

 一人と一匹して困惑の表情と声を零し、互いの顔を見て数秒、手持ちの得物を構えて向かい合った。

 なーんかやけに威圧感のある玄室っぽい場所に飛ばされているが、まさかのランダム転移かよ。

 此方はプラ盾に謎の棒、相手は鍋の蓋みたいな粗末な盾と粗削りの棍棒。

 先手は譲り合いの精神の無いゴブリンが取り、此方に向かって棍棒を振り下ろして来た。

 咄嗟に受け止めるか回避するかの選択肢が生じたが、俺は見様見真似でフロムゲーの主人公たちが受け継いだ結晶と言える盾パリィを選んだ。

 最初は受け止める様に盾の正面に当て、それを横合いに弾く様に外へと力を加える。

 すると初めてにしては良い出来で成功し、棍棒の重さに遊ばれているのかゴブリンが体勢を崩した。

 

「チェすっぞぉっ!!」

 

 すかさず右手に握った謎棒でゴブリンの顔を思いっきりぶっ叩き、倒れ込んだのを機に滅多打ちする。

 これもっ、あれもっ、それもっ、俺の分だぁっと殴り続けたら霧散して消え失せていた。

 光の粒子みたいに散っていったので、このダンジョンは死体が残らないクリーニングなダンジョンらしい。

 ビギナーズラックだろうか、それとも武器はドロップする仕様なのか、ゴブリンの持っていた棍棒がその場に残っていたので勝利の勝鬨を上げるかのように拾って頭上に掲げた。

 棍棒は片手で持つにはちょっとだけ重い程度の重量で、大体三キロぐらいの体感だった。

 実は俺の素性は素寒貧だったのかもしれない、とプラ盾を後ろのベルトに引っ掛けてから棍棒を両手持ちしつつ辺りを見回した。

 謎の一メートル棒よりも遥かに殺傷力の上がった事で一喜一憂しつつ、おっかなびっくりと玄室を繋ぐ回廊へと足を進めた。

 先の方で二匹のゴブリンがたむろしているのを見つけ、得物を確認すれば小剣と槍だった、殺意たけぇな。

 支給品の謎棒をゴブリンたちの頭上を越える様に大振りに放り投げ、タイミングを見て静かに近付いて行った。

 硬い床にぶつかり音をかき鳴らした謎棒の方向へと視線が誘導されたのを見計らい、お侍様の戦い方じゃない、だなんて言われそうな奇襲殺法で手前の小剣ゴブリンをしめやかに撲殺。

 近くの仲間の頭蓋骨が陥没する音と断末魔の悲鳴により此方の存在に気付いた槍ゴブリンだったが、振り向く頃には既に間合いに入っており、腰の入った渾身のフルスイングで軽そうな頭と言うボールをかっ飛ばす。

 小気味良い首の破砕音を奏でながら芸術点の高い吹っ飛び方をして壁に激突したゴブリンは絶命した。

 

「ふぅー……、なんだ、案外やれるじゃねぇか」

 

 ゴブリンの居た所に魔石っぽいクリスタル状の何かを見つけたので拾い上げる。

 ドロップ品の一部だろうか、ソウルっぽく砕いて使う類か?

 人差し指の側面と親指で握り込み、力を入れてみるも硬くて砕けそうには無かった。

 あ、もしやこれが経験値の元だったりするのだろうか、飲み込んだらすぅーと溶けて効く感じか?

 どれ味を確かめておくかとズボンで磨いてから一舐めしてみれば無味無臭、溶けたりする感じは無いので違うっぽい。

 よく分からんな、と首を傾げつつ左ポケットに仕舞い込む。

 次の回廊を進むと回廊の横合いからにゅっと出てきた棍棒ゴブリンと克ち合い、ライトセーバーごっこ宜しく棍棒で打ち合ってみると面白い事が分かった。

 朗報、ゴブリンの膂力くっそ弱い。

 なんだこいつ幼稚園児か、ってぐらいに打ち合いに勝てたので、卑怯なアンブッシュさえ気を付けていれば割と簡単に勝てるかもしれない。

 だなんて天狗になっていたら横道から三匹のゴブリンのエントリーに慌てふためく。

 二匹ならまだしも三匹はやばいって。

 注意深く敵の得物を確認すれば無手、棍棒、手斧、……なんか一匹可哀想なの居るぞ。

 

「チェぇえっすっぞぉおおッ!」

 

 一番殺意の高い手斧を持つゴブリンへと一気呵成に突撃し、人の腕と棍棒と言う容赦の無いリーチの長さを活かして此方の間合いから頭蓋をカチ割る。

 小剣や手斧と違い、棍棒は打撃武器であるからして肉を裂いて死肉に食い込む隙を生じさせない。

 右斜め上から左斜め下への叩き付けにより顳顬を砕いた一撃により手斧持ちは哀れ即死、慣性に従い横へ逸れた事で続く棍棒持ちへの突破口が開かれた。

 ある程度重量のある棍棒の遠心力に反する様に、左から右への薙ぎ払いを横っ面に叩き込む。

 最後にポツンと残った無手のゴブリンは仲間を失った事で戦意を消失したのか、尻餅をついて手を振り回しながら後退する。

 

「ギ、ギャギャ!」

「日の本言葉喋れや」

 

 此方を害するモンスターに慈悲など要らぬ、命乞いらしき弱々しい声色を切って捨てて殴殺した。

 三匹グループのエンカウントにヒヤリとしたが、相手の得物次第では十分に勝ちを拾えるな。

 薩摩式我流殺法であるが案外やれなくはない。

 猿叫に満たぬ発声ながら恐怖心を薩摩に売り払う遣り方はパンピーな俺には丁度良かった。

 武器が買える所で木刀か何かを買ってから、丸太相手に蜻蛉切りして二の打ち要らずを会得せんと修行するのも良いかもしれない。

 ありがとうドリフターズ、ありがとう島津、お前に良し俺に良し。

 

「……はぁー、ペース配分考えないとな。後どれくらいだ?」

 

 誰も居なくなった玄室の壁に寄り掛かり、そのまま座り込んで小休憩を取る。

 孤児院施設での無給労働のお陰かそれなりに身体を動かしていたのが功を奏したか。

 引き篭もり染みた前世の出不精オタク生活を今生もしてたら危なかったな、ありがとうシスターババァ。

 だが、小遣い無し御礼無しおやつ無しで働かせたのは根に持ってるからなクソババァ。

 残り時間や現在位置を見るために電子学生手帳をポケットから取り出そうとして、空を掴んだのを感じて時が止まる。

 ポケットを外から叩いても増えるための代物がそもそも無く、寮室に忘れて来たなとミスを痛感した。

 

「ふぅー……、移動するか」

 

 クラスの誰かが言っていた話だが、同じ場所に留まるとなんかやべーのが来るとかなんとか。

 体力作りのために早朝ランニングとか考えるべきだろうか。

 午前9時から午後3時までのドキドキ特別実習の予定だった筈なので、最大6時間は動かざるを得ない訳だ、殺す気かよ。

 思えば昼抜きでぶっ続けで実習っておかしいな。

 

「……マジで殺しに来てるな、これ?」

 

 翠先生の説明で気に掛かっていた部分と言えば、中で何が起きても戻ってくる時には五体満足で帰れる、あたりだろうか。

 道中のゴブリンをチェスト殴殺しつつ思考を回す。

 まるでお前ら全員死んで帰って来るよ、と予言と言うか断言している様な感じではあった。

 となれば、この特別実習は死に戻り前提であり、此方に何らかのデメリットを伏せた状態で、だまして悪いが罠だ死ねしてる訳だ。

 ……もしや、このダンジョンの維持に俺らが死んだ時に生じる何かしらのサムシングを使ってるのでは?

 ダンジョンと言う旨味を得るために、死んでも困らない奴等を政府主導で集めて管理している此処に集める。

 言うなれば肥溜め、どれだけクソでも最低限の使い道があると言う事になるのでは。

 

「……NOと言われたらやりたくなるのが男の子だぜ」

 

 決めた、意地でも生き延びて特別実習をクリアしてやる。

 体感時間で残り3時間くらいか、小休憩を入れながら持久戦の構えで攻略しよう。

 作戦は、いのちだいじに、だ。

 無論モンスターの命は軽んじるし踏み躙るが。




原作を読みながら書いてるのでやらかしがあったらコメントくれると助かる助かる。

補修レイドは……

  • オリジナルレイド
  • 轟天石榴山
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。