※この作品はR-18です。

モンスターファックアンドスラッシュ   作:不落八十八

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#15

 ――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――

 ――第『参』階層、『既知』領域――

 

 さて、土曜日なので二度寝するか、としたい所であるがこの学園は土曜日も授業があるタイプだった。

 来たる休日の一日前と言う事もあり、午前中の授業はそわそわしている者が多かった印象だ。

 そしてそれは俺たちのパーティも同じであり、太志が昨日の俺の様な感じでそわそわしていた。

 と、言うのもゴミみたいな性能の購買部のお薦めセットから小鬼シリーズの小剣に乗り換えた太志だったが、磨具奈さんの工房から身内価格で武器を買ったらしくそれの試運転に来た訳だ。

 未だにゴブリンの強さが弱っちいのもあり、既知領域を脱してない事から安心して見守れるのは助かる。

 ……流石にそろそろ『文官』の正統進化な『書記』や『案内人』の様な一パーティに一人的な人が欲しい。

 今日の授業で翠先生の迷宮概論にて次階層へのゲートが複数ある事を知った事ので、俺のレベリングを兼ねてボス狩りによるレアドロチャレンジ周回をしたいなと思った次第だった。

 ボス部屋に湧く個体は大体三日から一週間のリポップであるからして、ボス部屋を三ヵ所見つければ一日に一回ずつ倒す事も有り得る筈だ、相手ゴブリンだしイレギュラーじゃなければ三日で生えるだろう多分。

 参階層と言う事もあり、既にダンジョン組の二年の先輩方はとっくに先の階層に進んでいるだろうし、エンジョイ組であってもこの階層に居る可能性は低い。

 

「周回どうでしょう、おいボス食わねぇか」

「……正気でござるか?」

「見てみろこの曇り無き純粋な瞳を」

「竜胆殿目隠しキャラなのでちっとも見えないですな。……もしやそれ、目線を見られない様にするためですかな」

「バレてしまっては仕方がない……、此処で死ぬか周回するか、好きな方を選ぶが良い」

「どちらも似た様な感じではありませぬかね……。と言うか何故そんなにもテンション高いのですかな」

「……? リポップに時間の掛かるモンスターは美味しい物を落とすのがネトゲの鉄則だぞ」

「此処はネトゲの世界では無いし、ログアウトボタンが無くなったりしてデスゲームになってる訳じゃないですぞ」

「駄目か……」

「何がそこまで竜胆殿を掻き立てるのですかな……」

 

 折角の剣と魔法のファンタジーなのだし、MMORPG感覚でダンジョン探索をしても良いじゃないか。

 俺『怪物王』レベル24、太志『悪代官』レベル19、錫花さん『絡繰り師』レベル17なので、既にこの階層での既知領域なら安全マージン圏内と思うんだが。

 リーナとルーナに関しては既にレベリングとご褒美口淫でレベル20なのだが、モンスターのクラスチェンジって『聖堂』で良いんだろうか、多分駄目だよなぁ。

 戦闘の合間に電子学生手帳を開いて、モンスターカードの欄を調べてみれば条件次第でクラスチェンジを果たすらしい。

 ……プリンセスがクイーンになる条件イズなに、戴冠とかか?

 そうなると王冠アイテムが出るまでクラスチェンジができないのか……?

 太志が磨具奈さんの所で買った『護短刀』なる魔力を込めると防御力の上がる生存重視の小刀で無双しているのを眺めていたら、錫花さんが操るゴブリンズこと『ゴブリンナイト』が一斉に瞬いた。

 驚きに目を奪われる俺たちだったが、何故か敵のゴブリンも驚愕で足を止めていたので無慈悲に仕留められていた。

 雑事を終えて改めてゴブリンズを見たら、木製の長盾と粗末な槍に腰蓑と言う恰好だった彼らは、金属製の大丸盾と短小剣に加えて鉄仮面に露出の多い金属の拘束具に身を包んでいた。

 ……これ、剣闘士じゃねぇの、見た目からして奴隷っぽいから剣奴の方だろうけども。

 騎士道とは抗う事と見つけたり、的な感じなのだろうか、それ程までに解放されたかったのかもしれない。

 盾で守りながら短小剣でチクるスタイルだし、リーチ以外はあんまり変わってないかもな。

 

「おぉ……、『ゴブリンスパルタクス』にクラスチェンジしたようですな。これで全員が第二段階になりましたな」

「『文官』だと、ハーフハーフ、大分掛かった」

「おめでとう」

「きゃうー!」

「わふー!」

「……肉盾と言ってやるなよ、可哀想だろ」

 

 肉盾が硬くなったー、じゃないんだよ、もうちょっとオブラートに包みなさい。

 確か『文官』の『具象化』したモンスターだと、モンスターが得た経験値の半分が召喚者である『文官』にも入る仕様だったか。

 錫花さんの『絡繰り師』はそもそもモンスターで戦うのではなく、戦闘人形を使っての二人三脚が主軸なので経験値が十割入ってくる仕様だった。

 だが、『傀儡操り』を鍛えまくった事で操れる個数が増えたのを良い事に、半自動で動くモンスターを採用した事で楽になったが七割に下がってしまったそうだった。

 そのため、一部をゴブリンズに吸われていたのでレベルの上がる速度がなだらかだった訳だ。

 ……いや、そう考えるとこいつらよく頑張ったな。

 シテ、コロシテ、と呟いていそうな顔だったが、ボスケテ、に少し改善されていそうな表情をしていた。

 改善された……のか?

 まぁ、死に難い様にクラスチェンジした訳だからな、バイザーを下ろせば顔が見えなくなるので存分に泣くと良いぞ、救いは無いけどな。

 と言うかスパルタクスって奴隷剣闘士の反乱を率いた剣奴の名前だよな、次の段階があったら解放されるのだろうか、出来なさそうだが。

 

「……そういや、確か『文官』だと召喚者のレベルを超えると暴走するんじゃなかったっけ? 『絡繰り師』は違うのか?」

「うん、彼らはモンスター。だけど、人形でも、ある。生きた、人形。こうして、操っている事には、変わらない」

 

 そう言って白魚の様な細い手を動かした途端、ぼけっと立っていたゴブリンズが直立不動し、息の合った足音が聞こえた。

 ……成程な、暴走する前から魔力糸で脳クチュして意識を奪ってるから動けない状態なのかこれ。

 『傀儡操り』の傀儡の部分は比喩的な物ではないと言う事か。

 そう言えばクラスメイトらしき肉盾くんたちを操ってたな、となると副作用に自分のレベル以下の隷属も含まれているのかもしれない。

 ……『傀儡操り』の熟練度が既にカンストしてる可能性あるなこれ、哀れな横恋慕ドラ息子くんの犠牲あっての成果だな、可哀想が過ぎる。

 

「イケイケ、ドンドン」

「……なんか錫花が変なことを覚え始めているような」

「ウォウウォウイェェェイ!」

「貴様かぁっ!?」

 

 流石に悪いと思って淫夢語録は教えてないから、安心してどうぞ。

 頭狂った青藍島みたいなこの学園でその語録を放出したら、ミーム汚染により汚い事になる事が決定付けられてるからな。

 この世界では流行ってないどころか存在が無いので、住所不特定な野獣先輩は安心して枕デカくして寝れる事だろう。

 『ゴブリンスパルタクス』と化したゴブリンズの戦闘能力の向上は著しく、なんと太志の手を借りずに敵ゴブリンの群れを倒せる様になっていた。

 槍チクから剣チクになった事で威力が上がった様で、勝手にシールドバッシュもし始めて、錫花さんも戸惑いを見せる場面もあったくらいだ。

 ……やはりスパルタクス化してるから傀儡解け始めてないか?

 

「ギ、ギャギャ」

 

 調子に乗り始めてテンション上がってから、ふと振り返って俺を見て背筋をしゃっきりさせるのはなんか遺憾である、恐怖政治で圧政してるんじゃないんだからさ。

 なお、一枚減らして4匹運用したら傀儡に戻ったので支配力不足が考えられる。

 と言うか俺じゃなくてゴブリン系統のプリンセスであるリーナを見てしゃっきりしろよ貴様ら、うちの娘は不満かゴルァ。

 

「きゃうー!」

「ギャウッ!」

 

 訂正、リーナの応援で奮起していたので優先度の違いらしい。

 成る程、怠けていると殺されるからしっかり仕事してますアピールで、リーナだと姫様が御声を掛けてくださったと気合いが入る感じなのか、飴と鞭かよ。

 参階層既知領域のレベル10〜15くらいの下振れゴブリンが相手だからか、第二段回に上がりたての彼らには良い感じの塩梅の様だ。

 見れば錫花さんが良い顔で此方を見てから力強く頷いてみせた。

 ククク、どうやら錫花さんもレベリングの虜になったようだ。

 ……まぁ、どちらかと言えばレベルアップ酔いでハイになってるだけな気がするが、頑張れ太志。

 正午からのダンジョン探索により得た成果は約50万銭くらいで、全体的に効率が上がった事で時給が増えた感じだ。

 銭の入ったカードを仕舞い込み、電子学生手帳で速やかに入金する、癖になってるんだ分配するの。

 

「今日は食堂で食べるかね」

「寮のも良いですが、たまには良い物食べたくなりますなぁ」

 

 そう腹ペコ盛りな事を口にしながら広い方の食堂へと向かい――。

 

「行っちゃうか、肉」

「行きますかな、肉」

 

 足を止め、ピシガシグッグッと友情を噛み締め、食堂では無く食べ放題系の焼肉屋などがある方角へと揃って踵を返した。

 偶々俺たちは唐突に焼肉が食べたくなったから行くのであって、明らかに何かがあり事件現場みたいな有様な一角を見て逃げ出した訳ではない。

 ヒソヒソと聞こえた噂を拾えば、寄生しようとした馬鹿な女共が逆鱗に触れて化け物を怒らせた、だなんて継ぎ接ぎな事を拾えてしまった。

 レベルアップ酔いの余韻に浸って、太志の太い背中に抱き付いて太志吸いをしている錫花さんを連れて、庶民派な方の焼肉屋へと逃げ込んだ。

 

「……確定だよ、生存者だろ」

「……ですな、よっぽど規格外でユニークなクラスに就いてない限りは、新入生であんなクレーターをこさえる事は不可能でしょう」

「何かしらのスキル暴発の線が強いかね」

「ですなぁ、触らぬ神に何とやら、スルーで」

「異議無し」

 

 御通し感覚で運ばれた塩タンを焼きつつ、タブレットでカルビ盛り合わせとロース盛り合わせを注文する。

 ご飯は大盛り二つに中盛り一つ、サラダは定番のキャベツので良いか。

 飲み物は……、初回は黒烏龍茶で良いか。

 序盤の間に合わせを頼み終えたので太志にタブレットを手渡す。

 対面する形で座っているのだが、太志の隣に座っていた錫花さんが案の定机の下に消えたので溜息が溢れた。

 何故か『隠蔽工作』が発動し、太志の足元から聞こえていた音が消えたので、適当に宥めたら席に戻す様に視線で伝える。

 大変申し訳無さそうな表情で頷かれたので、視線を外して店員さんが持って来たカルビなどを育て始める。

 太志がタブレットを震える手で戻したので、カルビなどをドカっと注文した。

 意図を察した太志は俯く様にして頷いたので、注文したのが来るまで待ってからリーナとルーナをこっそりと机の下に具象化した。

 『隷属首輪』を通じて大人しく食べる事を厳命し、せっせと焼いた肉をタレ付けては、雛鳥の様に口を開く二人に与えていく、時折野菜も食べさせて健康的に。

 『隠蔽工作』により変則的な一家団欒が出来て助かるなぁ、といそいそと席に座り直した錫花さんから視線を外した。

 

「明日はどうする?」

「確か日曜日は午前と午後に別れてダイブできるんでしたな。朝から入りますかな?」

「入るなら既知外領域を目指したいところだ」

「みんな、レベル、良い感じ」

「錫花さんのゴブリンズがクラスチェンジしたからな、安定感あるのも理由だが下振れ引くのそろそろきつい」

「既知外領域なら上限個体がポップしますし、コツコツとレベリングするとしても肆階層に降りるのは時期尚早ですからなぁ」

「装備、準備、貧弱」

「媚びぬ、引かぬ、省みぬ」

 

 ある意味新調されたゴブリンズは良いとして、自衛のために何かしら武器を持つべきだろう。

 ……武器はまぁ良いんだ、防具が未だに学生服なのが問題なんだよな。

 レベルによる安全マージンはあるが、徘徊するFOEと出会したら逃げの一手なのは情けないし、失敗のリスクを考えると一撃ニ撃は受けられる防具はあった方が良い。

 

「うーむ、生存者じゃない人も視野に入れてパーティメンバーを充実化させるべきかもしれないなぁ」

「むむむ、拙らの情報が何分デリケートなので難しい所ですが、致し方ありませぬなぁ」

「ん、リーダーの、『隷属首輪』で、黙らせればいい」

「……なんでこう、女の子ってのは肝が据わってるんだか」

「多分、この学園特有のものではありませぬぞ。と言うか錫花を一例に取るのは些か早計かと」

「む、酷い。でも、間違った事言ってない。この学園の、隷属は、本当にすごい」

 

 肉を食って腹八分目な音がしている太志の太っ腹をぺしぺしと叩いてから、媚びた蕩けた顔になってそのまま手が下へと降りてズボン越しにナニをくすぐる錫花さん、……えぇ本当でござるかぁ?

 と、疑いつつも話の続きを促すと、出るわ出るわ腹黒いこの学園の実態が。

 ゴブリンの生素材の一つだと思っていた小瓶に入った液体の正体は『ゴブリンの媚薬』と言うド直球なエロアイテムだった。

 レアアイテム枠に入るらしく、エンジョイ組が浅い階層に入り浸るのはこれの調達も含まれているのだとか。

 基本的に牡しか居ないモンスターなので、当然と言うべきか落ちるそれも牡には効かずに牝にのみ作用する媚薬らしく、これを使って念入りに快楽堕ちさせられる新入生の一年女子が少なくないらしい。

 なので、基本的に男尊女卑の風潮がこの学園に入り乱れているのは、男女間の性行為による特権めいた『隷属』現象によるのだとか。

 肉体的な性行為が主軸なのではなく、『聖堂』やダンジョンによって作り替えられた肉体の状態で精子に含まれるようになった成分が問題なのだとか。

 此処で面白いのは必ずしも女性だけに『隷属』が起こる訳じゃないという事だ、磨具奈さんの所の様に男子側が『隷属』を受けた状態になる事も十二分に有り得る。

 つまるところ、この『隷属』はバトルファックによって負けた側へのペナルティと言う事だ。

 格と格のぶつけ合いであり、より優秀な牡の精子は牝を支配するし、優秀でなければ優れた牝の子宮などが精子を逆に喰らうので支配下における。

 

「……つまり、エロ同人ゲーみてぇなバトルファックが日常的にあるタイプの学園だった、ってことか?」

「まぁ、そうなる、のですかなぁ……? 確かに『隷属』は問題になっているようで、複数人に犯される事で隷属の主を二転三転する事で深い『隷属』を妨げる事ができるのだとか。最初の特別実習後の集まりで聞かされたそうですぞ、学園側から」

「うっわ、やっぱりこの学園闇深ぁ……。あれ、じゃあ錫花さんって」

「……はい、既に手遅れと言う事でござる。ははっ、しかもこれ幼少期からですからな、心がとっても痛いですぞ」

「うわぁ……、うわぁ」

 

 華族の令嬢としてそれなりにレベルが高かった錫花さんだったが、本来太志を『隷属』させる側だったのに関わらず意思で『隷属』させられる側になっているので、割と最初の方から手綱を引く側だったそうで。

 今はレベル差から太志優勢なのだが、つい最近まではシーソーゲームみたいな感じだった訳だ、『隷属』やっばぁ。

 だなんて感想を吐いたらチベットスナギツネみたいな表情で太志は深い溜息を吐いた。

 

「……して、竜胆殿。『怪物王』のスキルに『隷属』に関するスキル、あった筈ですよなぁ?」

「……あっ」

 

 指摘される事で改めて自分がどんな立場に居るのかを再認識する事になり、猫ミームめいた頭を抱えた呻きを披露する事になった。

 ……やはりこの『怪物王』っていうクラス、厄ネタの序章の気がするんだけど気のせいだろうか。

補修レイドは……

  • オリジナルレイド
  • 轟天石榴山
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