焼肉を鱈腹食べて腹いっぱいで注意力散漫だったのが悪かったのか、曲がり角で全力疾走な女子とぶつかってしまい、頑強な体幹と隠れた筋肉を披露する事になってしまった。
まるで壁にぶつかったかのようにその場に尻持ちをついた女子だったが、持ち前のバストクッションが作用してか、俺の胸板と接触する直前でぐにゅうっと衝撃を受け止めた事で顔へのダメージは無かったようだ。
此方を見て目を白黒ぱちくりさせて困惑していた女子だったが、ハッとした様子で立ち上がって後ろを振り返ると、俺を見て何かを決意した表情となり――。
「だ、ダーリン見つけただっちゃ!」
「テンパるにしてももう少し別の台詞あっただろ、お前はラムちゃんと言うよりかはカウちゃんだし」
出る所がちゃんと出ているトランジスタグラマーな女子をよく見やれば、丸眼鏡を掛けているものの丸っこい童顔が印象的で、数ヵ月前までは中学生でしたと言う供述にダウト判定を受けそうな丸っこい肢体をしていた。
言うなればロリ巨乳と呼ばれる類なのだが、寸胴鍋体型と言う事もあってぽっちゃり系の系譜かもしれない。
とまぁ、そんな人物が俺の左腕を取ってむぎゅぅっと抱き締めてきたからさぁ大変、厄介事の気配がする。
実際問題、この同級生と思われる女子を追って来たであろうハイエナめいた表情の先輩方らしき人らがこっちに来てるからね。
……てか、よく見ればこやつブレザー一枚だけで下に何も着ていない様に見えるんだが、どんなシチュエーションだこれ。
「へへっ、漸く追いついたぜ。放牧の途中で逃げ出しちゃだめだろ牝牛ちゃん?」
……あぁ、成程なぁ、この子新入生狩りに遭ったのか。んで、恐怖と諦めを煽るために防御力皆無な恰好で態と逃げ出させて猟犬ごっこしてるのかこの先輩、良い趣味してんなぁ。
心の折り方を良く分かっているというか、大分手慣れた様子で常套手段の四文字が見えますねぇ。
さて、どうしたものか、別にこの女子を見捨てても良いが、掛けられた言葉が微妙に気になる方面だったので助ける方面でも良いかもしれない。
「助けてください何でもします私を見て嘲笑う事しかしない人たちじゃなくて貴方は怪訝な顔をしてくれた常識のある人っぽいっすから。い、今ならしょ、処女も、つ、付きますよぉ……。ど、どうっすか?」
「言外に俺の事を処女厨って言ってる? ……いやまぁ、お手付きよりかは魅力的ではあるけども」
ぼそぼそと高速詠唱する女子だったが、何となくイントネーションからして陰キャのそれである。
漫画倶楽部や同好会で耽美物ではなく好きなキャラのイラストを描いてそうな感じのライトな層の。
推定、何処かのFランク倶楽部の催しっぽいな、5人の先輩たちを見て周りの奴らは、あぁあいつらか、みたいな表情をしているから常習犯っぽい。
傍目から見れば姫を守る騎士か、もっともぽっちゃりオタ姫に目隠れモブ王子に見えるかもしれないが。
太志をチラリと見やれば、やるんだな此処で、みたいな表情を浮かべて丸眼鏡をくいっとした。
この瞬間、太志の『隠蔽工作』によりこの遣り取りは隠されるべきものとされて、他者の頭からフェードアウトする、この手に限るぜ。
検証した結果だが、隠されたモノは第三者からの興味を失い放置される事が分かった。
確定的に明らかな財布を道にぽいっと置いて、拾うかどうかの思考実験染みた検証の結果である。
面白い事に、ラッキーと表情を浮かべていたと言うのに『隠蔽工作』を財布に施された瞬間、そこには何も無かったとばかりにスルーして行ったのだ。
明らかに財布を拾おうと前屈みにしゃがみ込んでいたのに関わらず、だ。
……多分、スキルとしては元々こういう阿漕な事をさせるための想定をしていたんだろうな。
さて、結果的にどうなったかと言えば、先輩方は数秒棒立ちしてから首を傾げて元来た道を戻って行った。
隠された対象が俺とこの女子なので、目の前に居るのに居ない状態となり、探していた事実も頭からすっぽ抜けた事で一種の記憶混濁として処理されたのだろう。
まるで白昼夢だ、良い夢みろよ、ダンジョンで出くわしたら悪夢を見せるが。
「サンキュー、太志」
「いえいえ、流血沙汰になると面倒でしたからな。毎回学生決闘をするのもアレでしたし」
「えっと、その……、うぉあっ!?」
「っとと、緊張が解けて腰抜けたかな。取り敢えず、その恰好を何とかしようか」
後ろから膝カックンをされたかのようにその場でつんのめる女子を抱き抱えると、腰へしがみつく様にして此方を見上げたその表情が段々と真っ赤に染まった。
……あっ、やっべ、この角度だと顔が見えてるな。
俺が目隠れモブをしているのは目線を隠す他にも理由があり、ちょっとしたトラウマで母親譲りの美麗な顔を隠すためだった。
誰だって脂ぎったおっさんに尻を狙われたら対策すると思うんだ、俺だってそうしたし君もそうしろ。
なので、年がら年中マスクをするのは費用と不審者感があるので、目元が隠れる様なシロウズヘアーをしていたのだった。
つまり、目の前の女子は隠されたそれを目撃してしまったのである、陰キャでおぼこい女子が、だ。
吊り橋効果も相まって俺を見る瞳が肉食的と言うか、ひぇっ顔が良い、みたいな感じで見惚れている様子だった。
しまったなぁ、前世も今生もイケメン死ねと宣う性格な俺なので、この顔を武器に使っていないので対処に困る。
孤児院で初恋キラーしてしまった時以来のやらかしである、どうしたものかなこれは。
「す、すいましぇん……」
「いや、気にしなくて良いよ。随分と怖い目にあったようだし、縋りつきたくなるのも分かるさ」
「ほぉぁ、顔だけじゃなくて心もイケメンだなんて……、や、やばいっす、破壊力強過ぎるっす」
……この子なんかこうおもしれー女だな。
少女漫画から出てきた様な価値観と言うか、やはりこやつ陰の者だな?
妄想も激しいのか口元をにやけさせてぐへへとしているあたり、耽美物の入門があれば立派な腐女子になりそうな資質を感じる。
見た感じ既に特別実習で死んでいる様子だが、陰キャな子なら向かい入れるのも吝かじゃないな。
そんなシンパシーは太志も思っていたようで、錫花さんを見てから分かりやすく首を振っていた。
いや、違うから、お前にこの子を押し付ける的な視線じゃねぇから早とちりするな、錫花さんがお前をロックオンしてんぞ。
取り敢えず、『隠蔽工作』が効いているうちに安全な場所へ移動するべきか、そう考えて黒鵜寮へと向かった。
……のだが、それを深読みしたのかあわあわと三つ編みを左右に振って太腿をもじりつつも慌ててる様子だった。
そうだったわ、男子寮ってこの学園だとヤリ部屋の意だったぜ、失念していた。
「既に察してると思うけど、今の俺らは隠された状態なんだ」
「つ、つまり透明マント的な?」
「君がハーマイオニーだって? ……確かにちょっと赤毛で歯も矯正済みだけども」
「そ、そんな貴方はハリー・ポッター?」
「んな訳、禿げた醜いおっさんのスペアになったつもりはないし、これからも無い」
それにしてはボリュームが大き過ぎる、そんなむちむちしたハーマイオニーが居て堪るものか。
……だが、海外製のエロ同人ゲーなら割と有り得るか、取り敢えず乳を盛れの世界だし海外物って。
目の前から先輩が歩いているのに此方を認識していないように、けれどもホーミング生肉せずにすいっと自然に避ける様子を見て、人払いのルーン的な、と呟くあたり割とコアだなこの子、話が合うかもしれない。
階段を上り始めたあたりでブレザーの裾から見える巨尻に気が付いてしまい、何となく隠すために後ろへ陣取ったのだが、ちょっとした善意だったそれが俺が覗くための行動と見たのか女子は非常に恥ずかしそうにしていた。
これはこれでありっすね、だなんて呟いてブルってるあたり、ドMの才能あるよ君。
……『隷属首輪』を付けて『隠蔽工作』された状態で裸のお散歩だなんてしたら悦びそうだなこいつ。
三階に辿り着いて俺らの自室に招き入れた途端、腰をぺたんと落として肩を抱いて震え始めたのを見てフォローが必要だなと錫花さんを見たが、良い顔で首を振られた。
隣にいた太志でさえも、えぇまじかこいつ、と言う表情を浮かべているので、仕方がなく対応する事にした。
後ろからあすなろ抱きをし、心音を聞かせるように顔を此方に傾けさせる。
孤児院でパニックを発症した新しい子によくやった対処法だ、結局人は人の温もりを求めるのだと感じさせてくれた必勝法でもある。
最初は強張って硬い様子だったが、段々と緊張が抜けたのか此方に体重を寄せる様に信頼を見せてくれた。
「安心して良い、俺たちに君を害するつもりはないし、頭ゴブリンな奴であると思われたら心外だ」
「……っす、ありがとう、ございます。あの人たち、いきなり。何も分からなくて、怖いし、なのに身体は疼くし、やだぁっ、怖い、怖いっす……」
ちらりと太志を見れば神妙に頷いた、恐らく先輩方の中に『遊び人』系列の奴が居たのだろう。
ダンジョンの外以外でスキルを使う事は基本的に難しく、それを可能とするのが俺たち生存組か、またはダンジョンの機能を扱える施設の中でしか行えない。
基本的に申請フリーな『工作室』ではエンジョイ組な倶楽部でさえも入り浸れるので、『職人』系の女子を襲う場として最適な狩場の一面がある。
無論、そのまま使うのではなく媚薬効果を発する匂いを散布するスキルがあった筈なので、それをクロロホルムを湿らせたハンカチ宜しく媚薬ハンカチにしたり、それこそビニール袋に空気を詰めるだけでも効果を外に持ち出せる事だろう。
または『ゴブリンの媚薬』の様な物を霧吹きに入れてシュシュッとするだけでも良いだろう、その手のアダルトグッズ染みたマジックアイテムが跳梁跋扈しているから悪知恵は働くものだ、やっぱり滅んだ方が良いよこの学園。
数分程抱き締めた事で理性のある瞳になったので安心していると、おずおずと振り返って正座をした女子は此方に向かって三つ指ついて頭を深く下げた。
「ふ、不束者ですがどうぞ宜しくお願いします……」
「待て待て待て、段階が吹っ飛び過ぎだ、名前すら知らないんだぞ」
「あっ、そ、そうでしたね。自分は一年申組の真奈美と言います」
「一年丙組の竜胆、こっちが同じクラスの太志。んで、……何処の組だっけ?」
「むぅ、辰組の錫花」
「一応今のメンバーはこれだけだ。パーティへの加入を希望する、と言う事で良いんだな?」
そうこくりと頷くと思っていたのだが、真奈美さんは何処かもじもじして恥ずかしそうな様子だった。
小首を傾げていると横から錫花さんが脇腹を突いて来たので見れば、自身のスカーフについたピンバッジをこつこつと叩いていた。
……ん、あー……、まさかと思うが、俺のパートナーとして色々スるために此処へ連れて来られたと思ってる?
察した様子でもう一度錫花さんを見れば、しっかりと頷かれてしまった、オーマイゴッド。
悪習ながらもメリットも多いパートナー制度は色々と問題があったが、最たる物は男子の方に優先権がある事だろうか。
その場に女子が居なくても紙切れ一枚で承認とピンバッジが渡されてしまうとんでも規則である。
これにより、パートナーを持つ女子を狙う輩は激減する上に、理不尽な事をされようとしてもパートナーの事を盾に拒否する権利が生じるのだから地味に凄い規則でもある。
「あー……、っと、ごめん。俺はそういうつもりじゃなかったんだが、真奈美さんはパートナー相手としても宜しくお願いしたい感じ?」
「そうっす……、可能なら私の友人たちも一緒に引き取ってくれると嬉しいっす。同じ中学で漫研やってた友達でして、きっとこのパーティの役に立つと思うっす。……その、恥ずかしいですけども、そう言う事にも興味はあったのでその……」
「俺で良いの?」
「は、はい! り、竜胆さんが良いっす!」
どうしよう、何か大分決意決めてきてるぞ真奈美さん、太志を見やればサムズアップを返され、防音カーテンの先へ消えやがった。
こ、こいつ、本格的にリーダーとして俺の事を尊重する素振りで丸投げしやがった。
確認のために錫花さんを見ればサムズアップしながらカーテンの先に消えていき、数秒後にゅっともう一度サムズアップが端から飛び出て来た。
……こいつらとパーティを組んだの失敗したかなぁ、全部丸投げしやがってからに。
あぁ、上等だよ、ならもう俺の采配で好きにさせて貰うわ、文句言ってもしらねぇかんな畜生めぇっ。
俺は未だに床で此方に土下座な恰好をしている真奈美さんの前にしゃがみ込み、返答をするべく右手を彼女の顎にやって上を向かせてから視線を合わせた。
「あぁ、分かった。良いよ、パートナー契約をしよう。その子たちも明日連れてくると良い」
「ほ、本当っすか!? あ、ありがとうございま――」
戸惑いながらも満面の笑みを浮かべて謝礼を述べようとする真奈美さんの唇を途中で奪い、咥内に此方の舌を伸ばしてふっくらとした舌と絡め合うディープなキスを敢行した。
唐突のディープキスに困惑して目を白黒させた真奈美さんだったが、段々と呼吸すらも忘れる程にキスへ溺れ始めていた。
うちのパーティに入るとなれば、俺らの抱える秘密を伝えざるを得ない訳で、そうなると既に死んでいるであろう真奈美さんたちを抱えるのであればパートナー制度だけでは不安だ。
生きているのなら死なないために尽力と協力を結ぶ対等の約束が交わせられる、しかし、既に死んでいるなら悪いが真奈美さんの価値は一枚札が落ちる。
極論言えばダンジョンでも死んでも良い肉盾としても扱えてしまうと言う事だ。
この学園における普通ならばパーティ専用の肉便器やら自分専用の性処理奴隷として扱うのだろうが、そんな効率の悪い馬鹿みたいな物を俺のパーティに持ち込みたくない。
で、あるならばリーダーとして、俺が出来る事は、やるべきことは一つだけだ。
――『隷属首輪』により、俺らの情報の外部への漏洩を完全に禁止する事、だ。
そのためだけに俺は真奈美さんを抱くし、利用させて貰う。
何故なら俺の中での天秤では彼女たちの価値はリーナとルーナのそれに釣り合わないからだ。
態と酸欠寸前にまで真奈美さんをキスで追い詰めてから、ぼぅっと頬を赤らめさせ意識が揺れた隙を狙って抱き抱えてベッドの上に移動させたのだった。
補修レイドは……
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オリジナルレイド
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轟天石榴山