と、言う事があったんじゃよ……、と後ろめたさのある口調で伝えると、案の定太志たちはドン引きしていた。
洪水の遭ったシーツやマットは寮経由でクリーニングに出され、代わりに買ってきたそれなりの寝具に取り替えた。
そのベッドの上にはリーナとルーナにより壁際に寄せられた真奈美さんが寝込んでおり、時折もがいては首輪の鎖を掴んで安定する挙動を取っていた、怖いんだが。
ベッドの淵に座る俺たちは、いや、俺だけ何とも言えない表情を浮かべ、二人は呆れた表情を浮かべていた。
「恐らく何かしらのスキルが悪さしたんじゃないかなーと思う訳だが」
「……えぇと、竜胆殿。最近『爪砥ぎ』のスキルって使いましたかな」
「ん? いや、『蛮鬼剣』があるから使ってないな」
「でしょうな、無くなっておりますぞ『爪砥ぎ』」
「……わっつ?」
クワッと此方を見た太志が何とも言えない表情を浮かべて鑑定結果を伝えてくれた。
『簒奪』は倒したモンスターからスキルを奪う、と言うシンプルな強い物だった筈だが……。
再鑑定の結果、『簒奪』にモンスターの『隷属』確率を上げる機能が追加されており、その際に対象モンスターの格と同じスキルを消費するらしかった。
「……モンスターの『隷属』なんて能動的にしてなかった筈だが」
「一つ、思い付いたものがありましてな。モンスターカードの取得量が多かった時がありましたよな」
「あぁ、俺が『蛮鬼剣』の試運転でダンジョン無双してた時か」
太志は流石に売りに出せない貴重な物などを入れておく背嚢からカード群を取り出して検分し、やっぱりかぁと言った様子の表情を浮かべてから一枚を此方に手渡した。
名称、『-』
種族、スレイヴゴブリン
属性、隷
階位、1
能力、『隷属強化』
存在強度、☆
「隷属されし強欲なる者の末路」
それには鋼鉄の首輪をした闇堕ち系なビジュアルをしたゴブリンの姿が描かれていた。
指先の爪が猛禽類の鉤爪の様になっており、若干ゃ野性味のあるワイルドさが垣間見える。
……なんかテキスト変わっているというか、種族と属性も変わってない?
もしや、『怪物王』の『隷属』って学園一般的な隷属とは別の『隷』属性のナニカだったりする?
毒と猛毒が別カテゴリ扱いで重複するような、そんな関係性と言う訳か。
『簒奪』『隷属具象化』『怪力』『隷属首輪』、こう羅列すると全て一貫している様に思えるが、実際は前者二つ、後者二つでセット運用だった訳だ。
『簒奪』により『隷属具象化』する手駒を増やし、『怪力』で別口で『隷属』するための『隷属首輪』を嵌める。
……こうして見ると怪物たちの王様って言う割には奴隷商みたいな感じだな。
「まさか、怪物たちを統べる王って……逆、なのか因果が」
「と、言いますと?」
「俺は『聖堂』でクラスチェンジした時に『怪物王』が如何なる者かと言う説明みたいなのを感じ取っていたんだが、王冠を簒奪し王国を侵略する怪物たちを統べる王、それが『怪物王』なのだ、と。俺はてっきり統べる王だから世間一般的な魔王みたいな魔族の国の王を連想していた」
「ふむ、そのような事があったのですな、拙の時には特段何もありませんでしたが」
「……なんだろう、謎を増やすの止めて貰えます?」
「それって貴殿の感想ですよな? と、ひろゆき劇場は良いので続きをば」
肩を竦めて続きを促した太志に若干イラっとしつつ、そう言う構文だしなとこの場は飲み込む。
「はいはい。まぁ、国の王様だと思ってたんだが、スキップした第一段階の『怪物王子』の事もあって世襲制と言うか継承していくタイプの王様だと思ってたんだよ……。けどさぁ、これ怪物よりも怪物してたから頂点に立って結果的に統べる事になったタイプの王なんじゃね、と。だから王子って名前付いてるけど、次が王だからその次点は王子だよねって感じで付けられてそう」
「ははぁ、つまりは山賊の頭的な」
「まぁ、そう言う事だな。じゃないと『簒奪』『隷属具象化』『怪力』『隷属首輪』だとパワータイプの奴隷商にしか見えないって」
「つまり、学園一般的な隷属ではなく、『隷属』は文字通り支配下に置いた奴隷と言う状態を示している、と」
「だから『簒奪』は奪ったスキルをコストに『隷属』するパッシブだった訳だ。……スキルが成長するって在り得る事なのか?」
「うーむ、成長と言うよりも、拙の魔眼の鑑定不足な部分もあるやもしれませぬ。精度の甘い部分がありましたゆえ、今よりも簡易的に上辺だけ読み取っていた可能性が高いですな」
と、申し訳無さそうに言う太志だったが、本来だったら規格外クラスのスキルの詳細なんて体感でするしか無いので、ある程度言語化できるのは大変有難い事だ。
その事を指摘すると、ふっと笑みを零した太志、頼りにしてんだぜ副リーダー。
「では、今の拙の力、とくとお見せしましょうぞ」
と、初期の力強いクワッから見開く程度に改善された太志の魔眼が開かれた。
『
『
『
『
と、最初の鑑定よりもより詳しい説明のついた鑑定結果が語られたのだった。
前回の磨具奈さんのルビ忘れによる誤解を糧に、ちゃんとそこまで付けて貰った結果がこれだよ。
宇宙猫を晒す俺とは対照的に、だろうね、と言った様子の太志達、そのための右手、と片腕を上げた娘たち。
なぁにこれぇと自分の事ながら厄ネタが過ぎると冷や汗が浮かぶ、規格外クラスだから学園に届け出ないといけないけど出せる訳ねぇだろこんなもん。
「山賊とか海賊とかが商人とか村を襲った後に、奴隷にして売り捌くとか、そう言う系譜から来てるだろこれ」
「つまり怪物と言うのはダンジョン的なモンスターではなく、こいつやべー奴的な意味合いのモンスターから来ている訳ですな」
「怪獣たちの頂点に立つ最強個体だから怪獣王と名付けられたみたいに、やべー怪物の頂点と言う意味合いで『怪物王』なのかよ、統べるって暴力による恐怖政治じゃねぇか。そりゃ王様らしい領土を主張するスキルとか臣下への命令支援系とか持ち合わせてない訳だわ」
「やーい蛮族、怪物たちの王様、キングオブやばいやつー」
「てめっ、こらっ、『隷属』して錫花さんの命令に絶対服従する絶対命令権を発してやろうか」
「やめてください死んでしまいます、腹上死は流石にちょっと」
「ふふふ、そんな勿体無い事しない」
「ちょっとぉー!? ガチトーンではありませぬかぁ! 悪ノリも大概にするでござるよ竜胆殿ぉ!?」
やんややんやと普段通りの空気を取り戻しつつ、裏では真奈美さんに対してとんでもない事をしてしまった事実に震えていた。
牝ゴブリンと牝コボルトから産まれたリーナとルーナは最初から『隷属首輪』製と思われる首輪をしていたが、ステータスに『隷属』の二文字は無かった。
これはクイーンたちが俺の『隷属』下にあり、尚且つ存在をロストした事により、プリンセスとして継承した時に形見分けされたのだろう。
そして、『隷属首輪』の文から読み取るに性的な屈服は必要条件ではない。
『簒奪』と違い、能動的な『隷属』なので条件として考えられるのは自分より弱い存在である事、だろうか。
実際、意識して見れば太志や錫花さんに対しても『隷属首輪』を使えそうな感覚はあるが、それと同時に失敗しそうと言う不思議な感覚も存在している。
……もしや、ポケモンを捕まえるのと同じで相手が弱ってたりすると『隷属』させやすいのだろうか。
圧倒的レベル差+学園的隷属+絶頂による体力消費と言う恐ろしいコンボを喰らったが故に、真奈美さんの『隷属』は上手くいったんだろうな。
「……太志、すまん。真奈美さんのクラスあたりを見てくれるか」
「……ふむ、そう言えばそんな状態でしたな。ううむ、普通に人間でノービスのレベル2ですな」
「となると、『簒奪』で得た『隷属者』と『隷属首輪』で得た『隷属者』は微妙にカテゴリが違うのか」
「前者はモンスターをカードに加工していると見て良いのでは?」
「そうなると『隷属者作成』とかの名前でも良かったんじゃねぇのかね、なんで俺もスキルが使えたんだか」
「肉体強度を簒奪とありますからな、もしかしたら倒す毎に何%ずつかゲージが溜まって完了したらカードが生成される、そんな感じなのかもしれませんぞ。もしくはある程度の数のスキルを簒奪したらそれを消費して、次に殺した対象にそれを注ぎ込んでモンスターカードを発生させているのやも」
「後者、の様な気がするな。クイーンあたりのシステムがそこに流用されてる気がする」
「まぁ、そもそものスキル自体が検証結果でこういったものがある、と便宜上名付けられてるだけですからな。もしかしたら根本的な所が学園の教科書からずれている可能性だってありますぞ。熟練度次第でスキルが変化するだなんて、まるでスキルが流動的な物のようではありませぬかな」
「成程なぁ、取り敢えずそう言うものって感じでふわっと考えていた方がいいのか」
「悩むよりかは良いかもしれませんな、固定観念だなんて碌なもんではないですし」
「それはそう」
『スレイヴゴブリン』の例から真奈美さんを隷属人間あたりになってたりするのかと早とちりしてしまったぜ。
流石に、落ち着いて聞いてください、貴女は人間を辞めました、だなんて事を言う側にはなりたくない。
心底安堵しつつ、改めて『怪物王』の規格外さに胃が痛くなる心地であった。
にしても全然真奈美さんが起きないな、と振り返ってみれば依然寝込んだままだった。
もしや、と思い『隷属首輪』を通じて起床の命令を伝達してみれば、すんなりと上半身を起こして目を覚ましていた。
……あー、生命維持を命令したから寝る事を優先し続けていた訳か。
外部から強制的に起こしたせいか暫くぼぉーっとしていたが、ある程度落ち着いたのか此方を見てニヘラと破顔した。
「あ……、御主人様」
「……なんて?」
「あー……、これは恐らく学園の方の隷属の奴ですな」
「隷属、深度、マックス。都合の、良い、お人形、みたいになる」
「ふへへ……、この首輪が教えてくれるんす、私が御主人様の物だって。身体だけじゃなくて、心も鷲掴みにされてるって分かるっす。御見苦しい所を見せてしまったっすね、どうぞこの愛玩奴隷を好きに使ってくれると嬉しいっす」
「……嘘でしょ。この学園闇深くない?」
「はっはっは、今更ですぞ。そもそもの話、一般科の生徒は卒業生からの推薦や誰かの基準でこいつなら居なくなっても問題無いとされた者ばかりですからな。真奈美さんもその類だったという事ですな」
何も命令していないのに真奈美さんはベッドから降りて、此処こそが自分の居場所に相応しいと言った様子で俺の開いた足元に座り込んでいた。
いつでも性奉仕できますと言った様子だが、残念ながら悪の理事長とか権力者ムーヴする気は無いんだよね。
絶対命令権でその場に立たせると真奈美さんの肩に両手を置いて、目を逸らさないように厳命した。
「真奈美さん、俺は性奉仕のために君を仲間に迎え入れた訳じゃない。ぶっちゃけそんなのリーナとルーナで事足りているから君に頼む事ではない。そして、一番の理由だが……、人を辞めた畜生に興味がない。ましてやこの学園はダンジョン探索を主軸にする弱肉強食の世界だ。君がすべき事は俺に媚びる事では無い。パーティの役に立つために行動する事だ」
「……はい、了承しましたご主人様。参列できた事を光栄に思います……」
感涙によって目じりを滲ませ、自身を尊重してくれた事に心の奥底から感謝を述べているのだと『隷属首輪』越しにどでかい感情が流れ込んでくる。
ところどころで、っす口調が無くなっているのは陶酔して感極まり、メインに設定されている奉仕口調が出ているからだろう。
とろんと指示を待つだけだった人形の様だった瞳に生気が戻り、段々と自意識が戻って行ったのか徐々に顔を真っ赤にして恥ずかしさが込み上げている真奈美さんを微笑ましく見ていた。
そうそう、こういうので良いんだよこういうので。
何でも性奉仕に繋げて奴隷ムーヴする同級生とかカロリー高過ぎて見てられないっての。
日常生活にエロスがあるから見栄えがするのであって、最初から痴女スタイルで乱交癖をしてたら情緒も無いんだよ。
最初に出会った時くらいの性格に戻った真奈美さんはベッドの淵に座り、恥ずかしさの余り顔を両手で隠していた。
そんな彼女に、うんうんと頷いたリーナたちだったが、『隷属首輪』のお陰で、活きの良い玩具に戻った、だなんて思ってるの気付いているからな。
……やはりと言うべきか、リーナとルーナへの『隷属首輪』の繋がりが強過ぎでは無かろうか、思ってる事を覗ける様になるのは不謹慎であるが便利でもある。
特に遊び盛りの二人を監督するには丁度良いくらいだしなぁ。
……真奈美さんから、御主人様格好良過ぎ好き過ぎる顔も良いし好き、とオタク特有の怒涛の心内詠唱されて此方に感情が飛ばされているのは見てみぬふりしておこう、好かれてこそばゆいし。
補修レイドは……
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オリジナルレイド
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轟天石榴山