と、言う事があったんじゃよ、と報告すると太志と錫花さんは顔を引き攣らせて絶句していた。
中々羅城門に来ない俺を心配し、態々海燕荘の方まで来てくれたらしい。
そこで事態を把握した宮子が裏BBS経由で拡散された情報を目撃し爆笑、文字通り抱腹絶倒しているところに一二三姉妹を拾った俺たちが到着し、説明したのだった。
「……うわぁ、これ、やばいですぞ。『文官』を志す新入生が増えますぞこれ……」
「ナイス、メンズーア。流石、レッド、ファイトの、使い手」
「いや、あれをレッドファイト分類するのはレッドマンに失礼だ。あれはただの鬼畜外道戦法だからな」
「アレをそれで片付けて良いんすかね……。途中から飽きて背中側から両腕引き千切ってたっすよね」
「両手掴んでぐるぐる回して千切った時は酷い有様だったわね……」
「今後俺に学生決闘を仕掛けると、バーリトゥードされると認識してくれれば御の字なんだが」
「無理でしょうな、出る杭を打たんとする事でしょう」
「ですよねー。んじゃ行くか、人数的に太志と錫花さんで2グループ作って飛ぶべきだな」
「ん? ……あぁ、そう言えばソロってましたな。承知しました、我らが道導になりましょうぞ」
――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――
――第『参』階層、『既知』領域――
「と、言う事で先ず先に、一二三姉妹に渡したゴブリンの養殖をします」
「ソロの時に拾ったのでござるか? 幸先良いですなぁ」
「んや、真奈美たちの養殖の時にだな。ソロのは、ほら」
スキルが違うだけのゴブリンカードのみのジャッジキルされそうなデッキを『収納袋』から取り出した。
満子の『落書き師』により武器問題が解決したので『小鬼長槍』を外した事で空いたスロットをカード入れにしていた訳だ。
面白い事にスキルが違うモンスターカードでもスタックされたので、あくまでアイテム表記が同じな小物と言うのが条件っぽかった。
全てが『ゴブリン』レベル1のカードとして認識されており、レベル2だと『ゴブリン』レベル2となり別アイテム扱いになるらしい。
『隷属具象化』した『スレイヴゴブリン』ズ10体を召喚し、養殖用の指示をして散開させた。
そして、数十秒後に四肢の捻じ曲がった可哀想な生きてる経験値がずさーっと地面を滑って到着する。
一二三姉妹が操るゴブリンズを錫花さんが教導として傍について教える間、ふと思い出した事を口にした。
「あぁ、そうだ太志。俺のクラスの隠しステを見てくれないか?」
「はい? ……あぁ、そのカードの量や何か疑問があったのですな」
「俺の精液が『隷属者』限定で経験値アイテムになる件について」
「いつの間にエロ同人ゲーのキャラになったでござるか?」
「俺が聞きたいくらいだ。とりまステータス全部教えてくれ」
「むむ、確かな信頼を感じますぞ。では、見越して差し上げましょう」
名称、『〇● 竜胆』
種族、
属性、怪物
階位、10+20e+27e
能力、『
存在強度、☆★★
『豊葦原学園壱年丙組男子生徒』
「……ゑ?」
「なんか既に人を辞めてませぬか? いや、ギリ人判定……?」
太志に書き出して貰った紙切れを見ながら冷や汗を流す。
おかしいな、種族に要らない漢字が入ってる様な……。
え、何時の間に俺は人を卒業してたんだ、表記の変化からして『怪物王』になった時か?
明らかに変なクラスのルートを辿ってるだろこれ、度々変な悟りみたいな事を感じるのはこれが原因だったのだろうか。
王道的な道を進むのか、覇道を進む道を歩むのか、分岐点に立っていた様に思える。
今は覇道の方を歩いている、そんな導きを感じるが、誰が導いてるんだこれは……。
よく分からん事が増えたな、と思いつつ、太志に続きを促したが首を傾げられた。
「うーむ、見た感じ、前に伝えた通りですな。拙の鍛錬不足か、はたまた情報として確立していないから読み取れない、とかですかなぁこれは」
「謎が謎を呼んでるって感じかぁこれ。ありがとう、助かった」
「面目無い、拙も精進するでござるよ」
ゴブリン版殺しますロボの量産現場を眺めつつ、スケッチブックにカキカキと絵を書いている満子に近付いて覗いてみる。
……あの、これ量産型エヴァが持ってたあのおっかない両刃剣じゃねぇの?
あー……、両刃の意味合いを取り違えたか、言葉って難しいな。
重厚な両刃の剣、つまりはブロードソードとかを頼んだつもりなんだが……、にしても上手いな。
にしても元漫研部長と言うべきか、定規を使わずにフリーハンドなのに線が綺麗だな。
「幾つか書けたか?」
「ひゃっ、う、うん。描けたわよ、重厚な両刃タイプの武器」
「おぉ……、凄い上手いな。『落書き師』のクラスを勝ち取った実力を感じる」
「もぅ、やめてよ。文字通りの落書きなんだから」
そう謙遜しつつ照れている満子、可愛いが過ぎる。
後ろからぎゅーっと抱き締めて愛でてから、『落書き師』の基本スキルらしい『
「ミニチュアサイズ、ね」
「原寸ママって感じか。もしかしたら設定を付与しないといけないかもな」
「原画ラフ的な感じで?」
「もしくは『実体化』する時にとか」
量産型エヴァのプラモに持たせるサイズで掌に乗っかるそれを掴み、倒れている生きた経験値ゴブリンの腕を斬ってみると擦り傷が付いた。
やや切れ味が悪いのはイメージ不足か、または武器の強度判定が製作者のレベルが基準なのか、検証し甲斐があるな。
「切れ味は付与されてる、か。となるとやっぱりイメージ不足かもな。武器だから切れるイメージはあるけど、量産型エヴァのサイズだとデカ過ぎる。俺ら人が持つ様な大きさをイメージしてみようか。具体的にはこれぐらい」
「分かったわ。……『実体化』」
モンスターカードと同じで描いた物自体が消える仕様では無い様で、先程描いた両刃剣に触れながら実体化を行う。
スケッチブックから飛び出る様に粒子が形を帯びて1メートル程の両刃剣を形成する。
落ちるそれを空中で拾い上げ、先程試したゴブリンの心臓に切先を突き立てて見れば、先程よりも切れ味も良くなりぐっさりと刺さった。
生き絶えたゴブリンが霧散し、その様子を見て満子は両手を上げてガッツポーズをした、可愛い。
「良いね、先程よりも武器の解像度が上がったからか切れ味も良くなってた」
「ほ、ほんと?」
「ほんとほんと、へい!」
「ギヒ?」
「これ使って試し切りして来てくれるか」
「ギヒヒ、ギッヒ!」
若干手持ち無沙汰だった『スレイヴゴブリン』に両刃剣を手渡すと、うっひょい格好良い武器だぁ、と喜んで試し切りに行ってくれた。
……へぇ、これ有効範囲無いのか。
製作者の手から離れても実体化し続けると言う事は、実体化した時点で情報が固定されて物質化するのか。
「『実体化』した時点で物質として残るみたいだな。消せる感じはある?」
先程のプラモサイズの両刃剣を手渡し、消せるかどうかを確かめて貰うと、形が解けた後は霧散せず掌に吸収されていった。
「で、出来たわね。少しだけ減ってたのをちょっと足せた様な、そんな気がするわ」
「確かスキルはSPとやらを消費するらしいからそれかな。……にしても、回収も出来るのか。良いクラスになれたみたいだな」
「そうね、この力で貴方を支えてみせるわ」
「健気可愛いなぁ満子は」
「えへへ」
再び抱き合ってイチャコラしつつ、こっそりと接吻の時にSPを譲渡して回復させる。
意識して見れば『隷属首輪』経由か、繋がっている感覚があるので可視化は出来ないが体感で何となく分かる。
……と言うよりも、先日の真奈美との性行為の時に気付いたが、鎖に縛られているのは多分俺の方だ。
俺には首輪は無いが、その代わりに鎖の輪が嵌められており、そこから『隷属首輪』に繋がる鎖の先が接続されている。
つまり、俺を封印するための人柱として真奈美たち『隷属者』が居るのであって、そのために逃さないよう『隷属』させている節がある。
『隷属首輪』で繋がっていると言うのが比喩では無かった、と言う訳だ。
精液で経験値を与えられる仕組みも、人柱を減らさないための仕様とすれば頷けるものだった。
……俺は封印されしエグゾディア的な奴なのかね、図書館で分回さないと。
『怪力』が『隷属』数で出力上がるのもそう言う絡繰なんだろうな、引き留める力が強くなるので、力の上限が上がると言う感じかな。
……むしろ拘束具付けられてるエヴァ初号機なんじゃねぇのこれ、暴走が怖くて『怪力』を全力でぶん回せねぇよ。
「わわっ、これが噂の」
「ほほぅ、クラスチェンジですか」
「Bキャンセルは出来なさそう」
一二三姉妹のゴブリンの養殖が佳境に入り、第一段階へのクラスチェンジが完了した様だった。
太志に見て貰うと『ゴブリンサーヴァント』になっており、首輪は無いが両手首足首に枷が付いていた。
あー……『隷属者』の従者でそう言う感じなのか。
第二段階で武器とか手に入れる感じなのかね、何かしらのテコ入れが必要かもなぁ。
「良し、もう少し養殖したら既知外領域に繰り出すぞ。満子、こいつらに両刃剣持たせてやってくれ」
「分かったわ『実体化』!」
「おぉ、こう並ぶと壮観っすね」
「……分かってたけど規格外クラスのオンパレードね」
「お労しい、早急に慣れる事をお勧めしますぞ」
「そうね、ご主人君だもの、それぐらいするわよね……」
「何だろう、間違ってないけどそれはそれとして傷付くんだが」
「きゃぁう」
「わふん」
可哀想なパパを癒してあげる、とリーナとルーナが抱きついて頬擦りしてきた、うちの娘が愛らしい。
……ん?
「待て、いつの間に出て来たんだ。まだ召喚してなかったろ」
「きゃうきゃう」
「わふわふ」
「……は? 天邪鬼お姉さんがやりくり上手で、逆干渉する遣り方を教えてくれた? いやまぁ、構えてないのは事実だが、うぅん、強く言えねぇ……」
レベルカンストでもちゃんと呼び出して構ってくれないと嫌! と言われてしまい、素直にすまんとしか言えなかった。
そうだな、家族団欒は大事だな。
……ただ、ダンジョンでもやらなきゃ駄目か?
お父さん頑張って仕事してるんだぞ、安全なお家でお留守番していて欲しかったなぁーって。
親心子知らず、まぁ、きっちり見張ってれば――。
「何だ、今の」
玄室と玄室を繋ぐ回廊の先、直線の通路と言う事もあり見晴らしは良い。
だが、奥先で歪んだ空気が遮り、先程両刃剣を渡した『スレイヴゴブリン』が死に戻りしたのを知覚した瞬間にゾワリと背筋に悪寒が走った。
時間を確認するが30分程しか立ち止まってはいない、なので『天敵者』では無い。
「養殖中断! 『放浪』が来たぞ、こっち側!」
「承知! 『隠蔽工作』及びに『偽装工作』、〆の『欺瞞工作』でござる!」
瞬時に理解した太志が此処ら一帯を隠蔽し、俺の後ろで距離を偽装、そして最後に疑問を疑わないと言う新たなスキルにより取得できる情報を欺瞞する。
『蛮鬼剣』を握り締め、回廊の先よりヒタヒタと歩く白い影を捕捉して困惑する。
アレは明らかにゴブリン種が進化した様な類では無く、完全にイレギュラーとして出現したモンスターだ。
『スレイヴゴブリン』9体を前に出し、斥候役に育てていた4体を先行させ威力偵察に出す。
満子から受け取った両刃剣を構えながら俊敏に駆け寄った――が、滲んだ瘴気に紅い残光を残す白い線に首を刈られた。
そして、近付いた事により、『怪力』により強化された視力がその襲撃者の正体を暴いた。
「……兎?」
それは銀糸に見紛う美しい白い長髪を靡かせ、特徴的な長耳を縦に伸ばし、白い体毛に隠されたエロティックな肢体は妖艶でしなやか、兎関節の特徴的な美脚を描いていた。
けれど、その顔は兎の可愛らしさを残しているものの、人の顔に兎のパーツを当て嵌めた様なケモ度4のそれだった。
一見少女と見紛う容姿をした女体化モンスターに当て嵌まる知識を俺は持ち合わせていた。
「ヴォーバルバニー! 首刈り兎だ! 太志と錫花は首を守れっ!」
ダンジョンにおける恐怖の象徴の一角にして、即死攻撃の体現者、
幾多の冒険者が初見殺しを受けたであろうダンジョンに住まう怪物、その名を冠した女体化モンスターが現れたのだった。
『
難易度どうなってんだ、まだ既知領域の筈だろうが。
しかも、マザーモンスターと言う感じはせず、性欲ではなく殺意しか感じられないのが恐怖を助長していた。
……いや、ある意味ヤンママ系と思えばワンチャンあるのでは?
トン、トン、トンと規則的なリズムで跳ね始めた殺人兎女、そして一度の瞬きで目の前まで接近し、紅い得物を振り抜いて来た。
『蛮鬼剣』でのガードは間に合わない、瞬時に判断して『怪力』を左腕に全集し、首を刈られるのを護った。
――紅い刃のシミター、それも曲がる角度が浅く、逆手持ちで巧妙に腕に沿わせて隠し込んでいた。
一閃の邂逅で獲物を看破し、左腕の擦り傷からして防御力は抜かれない。
しかしながら驚異的な速度だ、歯噛みしてデッドウェイトになる『蛮鬼剣』を収納し、ボクサー宜しく両腕で首を守る構えを取った。
「キィィ……ッ!」
太志の工作により遠くに居る面々には気付かなかったようで、俺だけを獲物として見ているらしい。
目で追う事も出来なかったらしい『スレイヴゴブリン』は先の一撃のついでに始末されてしまった。
耐久力では此方が優っているので、勝ち筋は速度を殺す掴み投げからのコンボを決める事ぐらいか。
『怪力』を二等分して纏った両腕で殺人兎女の猛攻を耐え忍び、跳躍し此方に一撃与えた瞬間のみを狙って、身動き出来ない状態の細い手首を掴み取った。
「しゃあっ! 取った!」
筋肉の重さから此方が勝ち、勢いよく振り回して背中から壁に叩き付けてからダウンを取り、怯んだ隙に一本背負いし追い討ちを掛ける。
男女平等制裁拳を瓶底眼鏡で見抜いた肝臓に叩き込み、悶絶したその隙に細い首へ手を掛け、両腕を膝で押さえ付けてチェックメイトを掛けた。
「俺に降れ、ヴォーバルバニー」
「……きゅぅぅ」
『怪力』を込めた腕に生死を文字通り握られ、戦意を喪失した殺人兎女へ『隷属首輪』を嵌める事に成功した。
――が、油断するべきでは無かった。
首から指を外した瞬間に、遠隔操作系のスキルで動かしたのだろう浮いた紅いシミターにより自らの首を切り裂いた殺人兎女は、唖然とした俺の唇を奪ってから悪戯っぽくキシシと嘲笑い霧散した。
……なーにが、娘は宜しくね、だよ、後味最悪だわ。
枷に嵌められた生き方はノーサンキュー、だから身代わりに『隷属首輪』経由で此方の情報を奪い取り娘を生成したらしい。
足元には案の定と言うべきか、一枚のモンスターカードが落ちていた。
『ハーフヴォーバルバニーガール』と銘打たれたそのカード。
白髪に紅瞳の目付きワルワルなやさぐれた兎の少女が、白いバニースーツ姿で不良座りして煙草代わりに萎びた人参を咥えている絵が描かれていた。
元ヤンママの娘此処に在り、と言う感じである。
片手にママとお揃いの紅色のシミターを継承しているようで、ちゃんと愛情は残されている様で安心した。
拝啓、何処ぞで沈んでる両親へ、娘がまた一人増えました。
その後、両腕がズタズタな状態で戻って来たので大変心配されてしまった、そろそろ防具が欲しいなぁ。
補修レイドは……
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オリジナルレイド
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轟天石榴山