※この作品はR-18です。

モンスターファックアンドスラッシュ   作:不落八十八

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#29

 包帯でグルグル巻きにされてしまった両腕をぷらぷらさせつつ、既知外領域に差し掛かるところまで進んでいた。

 俺『怪物王』レベル29、太志『悪代官』レベル25、錫花さん『絡繰り師』レベル22。

 真奈美『黒魔術師』レベル6、満子『落書き師』レベル8、一二三姉妹『文官』レベル12、宮子『娼婦』レベル30。

 順調にレベリングが進んでいて何よりだ。

 参階層の既知外領域はレベル20が最大なので、今の戦力なら安全マージンを取れているだろう。

 SPは俺との粘膜接触で回復できるので、一二三姉妹には出来る限り『文官』のスキルを使う様にして貰っている。

 攻撃手段に乏しい『文官』なので早めにレベリングを進めておきたかったし、錫花さんのゴブリンズと合わせて前に出す事でゴブリンたちのレベルも上げておきたかった。

 学生決闘で『文官』がカードを『具象化』するのは反則では無いが、絶対に勝てると言う保証ではない。

 首を刈られインターバルが必要なうちのゴブリンズの様に、カードが砕ける事は無いが復活に時間が掛かるため、その学生決闘中に復活させられる事は不可能に近い。

 ……養殖に参加してなかった筈の真奈美と満子のレベルが上がってるのは、昨夜の性行為の結果だろうな、多分。

 多分それが無ければレベル30に達してた経験値はあっただろうになぁ、まぁ皆が強くなるのは良い事だから良いんだけども、事後承諾みたいなものなのでもにょもにょする。

 

「ある程度レベリングしたらゲート行って肆階層に行くのもありだな」

「ですな。レベリングの効率を考えて安全性を考慮しても今なら充分でしょうな」

「そしたら、もう、行く?」

「おぉ、フロアボス戦っすか? 早いっすね」

「……いや、早くは無いわよ。私たちが養殖してた時間を忘れようとして短く感じてるだけよ」

「一度突いては私のため」

「二度突いては皆のため」

「三度突いてはオーバーキル」

「んふふ……、これ程安心してダンジョンを歩けるのは初めてよ。……『遊び人』や『娼婦』にさせられちゃった子は碌な選択肢が無いから。こうして大手を振って過ごせるのは嬉しいわ」

 

 レベルがカンストしていて後ろに下がっている宮子が俺の左手を取り、恋人繋ぎで腕を組んでしなだれかかってくる。

 随分と幸せな重みだなと体温を分け合っている様な心地に笑みが浮かぶ。

 ……うん、なんだかんだで俺は平和主義者なんだろうな。

 自分の周りだけ、と言うエゴの塊でもあるが。

 和気藹々と道中の既知外領域のゴブリンたちをしばき倒す様子を眺めながら、右腕と背中に引っ付いたリーナとルーナをあやしつつ歩いて行く。

 一二三姉妹の『文官』スキル『位置(ロケーション)』により既知外領域に突入しても道に迷う事はなく、ちょっとした棚ぼたもありサクサク進んだ。

 

「さて、『欺瞞工作』っと」

「それで宝箱開け放題はやべぇな」

「罠に関してだけでござる、地味に面倒な鍵構造だとピッキングが長引いて大変ですゾっと」

「Skyrim式ピッキングで開けてるのも大概だと思うが……」

 

 満子に実体化して貰ったピッキングツールでがさごそと宝箱の鍵を開き、エバラのごまだれー、とセルフ効果音を出しながら中身を引っ張り出した太志に苦笑する。

 『欺瞞工作』により、宝箱は開かれた事に気付けないらしい、実にフレーバーが効いているスキルだ。

 罠が作動する感知の部分で欺瞞されているので罠が発動せずに開けられるのだとか。

 既知領域では既に開けられていた宝箱ばかりだったが、既知外領域に入ると途端に未開封率が上がる。

 既知領域近くは安全性も高いので宝箱狙いで開けに来たグループがあったんだろうな。

 宝箱から出て来たポーションを見て、またかと溜息を吐く。

 宝箱の中身は当然ランダムであるが、外見でノーマル、レア、Sレア、SSレア、に分類される様に中身もそれ相応になる。

 ノーマルは大体ポーションやしょーもない効果の装備品で、Sレアになると武器や防具が入る様になり、後はピンキリだ。

 太志の鑑定結果で傷を治すポーション、通称赤POTを拾った様なので『収納袋』にスタックする。

 SPを回復する青POTもあるにはあるが、ノーマル程度では回復量も微妙なので回し飲みしてたりする。

 錬金術師みたいなポーションやら合成の出来るクラスが居たら素材になるかもなので、空き瓶だけは回収している。

 

「うーむ、やはり参階層じゃしょっぱいよなぁ、序盤も序盤だし」

「うむ、致し方ありませぬなぁ」

「北北東に感知」

「次の交差する回廊を右に」

「目的地周辺です、ナビゲーションを終了します」

「……まるでカーナビだなぁ。三人居るから正確性も段違いだし、『職人』じゃなくて『文官』になってくれて良かったな」

「えへへ」

「褒めて褒めて」

「甘やかして蕩けさせて」

 

 わーっと抱きついて来た一二三姉妹を均等に撫でて褒めてやり、その有能性に『文官』ビルドの可能性を見た。

 『文官』の『位置』でモンスターの場所を把握し、召喚したモンスターを先行させ、足止めしている隙に数で囲んで棒で叩く、を繰り返せば比較的に安全なレベリングが出来るんじゃなかろうか。

 

「満子、ちょいと相談が」

「はいはい、何かしら?」

「確か学生決闘終わりに申組女子たちが倶楽部作りに行ってたろ? あの感じからして『文官』で固めた倶楽部になりそうだから取り入ってアドバイザーしてやってくれる?」

「あら、なぁに、私たちじゃ足りない?」

「んな訳あるか、ちゃんと満ち足りてるよ」

「えへっ」

 

 正面から茶目っけ出して抱き付いた満子の唇に接吻を落とす、可愛いやつめこのこの。

 

「……じゃなくてだな、俺らで倶楽部作るからその時に同盟組むための仕込みをしたいんだよ」

「……成る程?」

「学園ファンタジーにありがちな障害イベントあるだろ、ボスの亜種のな」

「……レイドボスですな。殺したかったが死なせたくは無かったと言われる様な」

「そゆこと。上の繋がりは正直微妙なところだ。一年経ってこの学園に毒されてるのが多いからな。それなら同級生を青田買いして計画的に田んぼを育てる方が効率的だ」

「確かに、数は質に優る時もありますからな」

「それに、俺には他のグループでは生み出せない黄金の価値がある」

 

 そうニヤリと笑みを浮かべて、『収納袋』からノーマルなゴブリンカードを取り出した。

 太志も合点がいったのか背嚢からカードを取り出していた。

 『隷属』モンスターを省き、その数既に50枚以上、これからも増えて行く事だろう。

 

「学園ではモンスターカードは希少で値打ちがあるらしいじゃねぇか、暴落させて『文官』ブーム到来させてやる。遊戯王のカード並みに普及させてやんよ。……まぁ、新入生で400人近いから半数の200としても数は要るけどな」

「うわぁ……、大暴落の予感がしますぞ。『文官』の『位置』を使えば位置情報で前の階層にも戻れますからな……。戻ってハムる気ですかな竜胆殿」

「うちの倶楽部はモンスターカード販売で成り上がるぞ。今はゴブリンだけだが、階層が進めば新しいのが手に入る。そしてゴブリンやコボルトのカードはケツ持ちした申組女子の倶楽部に後々任せる。店舗運営も投げられたら最高だな、不労所得は最高だZOY」

「うっわぁ……、取らぬ狸の皮算用なのに成功する未来しか見えませんな……」

「んふっ、んふふっ、良いね。実際、新入生が上級生の玩具とされる要因に、境遇のせいで控えめな性格だから『文官』になっちゃったけど、カードが手に入らなくて食い物にされちゃうって子も多いから」

「それに、希少なモンスターカードを販売する倶楽部は学園にとっても有益な存在だろう? 悪い話に繋がる事は無いさ」

「はぇー……、凄い考えられた作戦っすね、流石はご主人様っす! っぱ、ご主人様しか勝たんっす!」

 

 と、展望を語り、太志の肩に手を置いた。

 それはもう重い重圧がその肩に乗っかった事だろう、太志の顔が青褪めて震え出すくらいに。

 

「『文官』のゴブリンに持たせる武器、必要だよな?」

「あっ、ぁっ、ま、まさか……」

「此処にぃ『職人』系倶楽部の部長と接点がある奴居るらしいんだがぁ……」

「ひ、ヒィッ」

「そっちとも商業的な同盟組めたらwin-winだよなぁ、どう思うよサブリーダー?」

「……非常に有効的なアプローチでござる、はい、誘致の程頑張るでござる……。はぁ、と、砥蘭兄さんに、連絡を取らねば……」

 

 ……ん?

 錫花さんはとら姉って言って無かった?

 とら兄さんって言ったか今、それで尻を狙われるって事は……男の娘かっ!?

 なんてこった、このリンドウの目を持ってしても読めなかった……!

 しかもニューハーフタイプの女装男子か、ははぁ、死んだな太志。

 成る程なぁ、白ギャル枠はそっちだったかぁ。

 白ギャル女装とらさんに、黒ギャル磨具奈さん、そして地雷ぴえん系ギャルの錫花さんと言うトライアングルバミューダに沈められてたのか太志。

 ……あぁ、反動でオタク趣味に走るのも理解できた、おかずの種類がギャル系に染められてたんだな。

 とんとんと太志の肩に同情の肩ポンして哀悼の意を示すと、血の涙を流した様な表情を向けられたので顔を逸らした。

 

「さて、太志と言う尊い犠牲があったが、まぁ、大体今の感じの流れで倶楽部運用するつもりだ。カード分の銭の補填は追々するんで宜しく」

「……既に並大抵の一年生が得られる銭の額じゃないから大丈夫と思うわよ。んふふ、私も漸くそっちの道を歩けるのね……」

 

 一々闇の扉が開く宮子を宥めつつ、各々の様子から不満は見えない様で安心した。

 ……む? パパ一人で充分なんだから同意得なくても良いんじゃないかって?

 いやいや、俺一人で出来る事は限られてるからな、特に君らを愛でるのは俺じゃないと駄目だろう?

 外に対しての反抗期真っ只中なリーナたちを宥めつつ、時間を作るのも大変なのだ、と学ばせていく。

 内で解決出来なくもないが、そのデメリットを越えるメリットは無いので非効率的だ、TASさんにタイムが遅いと再走させられる事だろう。

 そんなこんなでサクサクゴブリンをしばいて、『スレイヴゴブリン』たちも復活したのでフロアボスへと直行する。

 次の階層への門を守るゲートキーパーは太志の魔物知識判定こと魔眼鑑定により『ゴブリンキングシャーマン』と判明し、既知領域における参階層ボスの混ざった個体である事が分かった。

 

「皆、丸太は持ったな!」

「ギヒヒィッ!」

「ギャギャ!」

「ギャー……」

 

 全ゴブリンに満子が描いた先の尖った丸太状の杭を持たせ、シャーマン目掛けて走り込むと言う脳筋戦法を取ったのは理由があった。

 シャーマンとある様に配下を召喚してくる戦法を取りつつ、キングとしての持ち前の腕っぷしで勝負するパワータイプコマンダー。

 そんな奴が何をされたら嫌がるか、答えは簡単である、斬首戦法である。

 要するにボスの『ゴブリンキングシャーマン』を殺せば勝ちなので、取り巻きを全て倒す必要性は無い。

 そのため、一二三姉妹と錫花さんのゴブリン計八体による取り巻きの排除及び足止めを行い、本命の『スレイヴゴブリン』部隊によるボスへの波状突撃を行う。

 なお、『ゴブリンキングシャーマン』を第二段階のレベル30とすると取り巻きをコスト60までしか呼べない計算なので、計算式が違ったり最初から用意されてたりしない限りは一体一殺により串刺しが確定している。

 フロアボス部屋を見やると門の前でシャーマンらしい杖に寄り掛かる『ゴブリンキングシャーマン』の寛いでいる姿があった。

 此方は太志の工作スキルにより、アンブッシュ状態な訳だ、卑怯とは言うまいな、死ぬがよい。

 

「と、言う事で駄目押し宜しく」

「きゃう……きゃあん」

 

 殺意高いなぁと呟いたリーナによる先制攻撃。

 『誘引』により、牝個体への強制発情かつ意識を性行為に狭めてしまうデバフを受け、不意打ち判定でレジスト出来ずにふらふらし始めた。

 一二三姉妹と錫花さんによる突撃指令により、ふらふらと此方に瞳をハートマークにして歩くボスに、全力疾走したゴブリンズの丸太杭による突撃が突き刺さった。

 全身杭だらけで死に掛けている『ゴブリンキングシャーマン』が悲しそうな声を出してリーナへと掌を向けたので、何とも言えない雰囲気が漂った。

 が、知った事ではない、ゴブリンは皆殺しだ、赤子までなぁ!

 

「きゃう……」

「誰の娘に色目使ってんだテメェ、逝ってヨシッ」

「ギヒヒ!」

「ギャ! ギャギギャ! ギギャー!?」

 

 リーナにキッショと『誘引』を解除された事により、もうどうしようもない状況で我に返った『ゴブリンキングシャーマン』は、畜生、卑怯者め、これが人間の遣り方かぁー!? と叫んで、続く『スレイヴゴブリン』たちのトドメにより息絶えて霧散した、サツバツ!

 まぁ、同種であるゴブリンなので、リーナの『誘引』が確実にぶっ刺さるだろうなとは思っていた。

 

「ふぅ、『ゴブリンキングシャーマン』は強敵でしたね!」

「なんかもう見てられないくらいに哀れでしたぞ……」

「ハメ殺せるのが悪い、フロアボスの自覚ねぇのかよ」

「ある訳無いでしょうな、自動給餌機めいたゲートに寄生するモンスターな訳ですし……」

 

 『ゴブリンキングシャーマン』のドロップアイテムは捻れた長い杖であり、鑑定結果は召喚コストを減らす能力が付いている長杖『召喚杖』だった。

 ……が、一カード当たり2割減のため、弱い個体を並べるなら良いが普段使いは微妙そうだった。

 強い個体を出して余ったコストで取り巻きを呼ぶ、みたいな使い方だろうか。

 その黒魔術師っぽいデザインに刺さったらしい真奈美が受け取り、『黒魔術師』の基本スキルである『黒弾』を飛ばして遊んでいるのを微笑ましく見ていた。

 『黒魔術師』と言うクラスはその名の暗さの通り、妨害系と攻撃魔法が混ざったスキルを持っている。

 撃ち出している『黒弾』も着弾すると魔法ダメージに加えて麻痺めいた縛り状態を付与し、当たった部位を妨害するスキルとなっている。

 なので、正確に狙えば嵌め殺しが出来るしれっと恐ろしいクラスでもある。

 喉あたりに当たれば痙攣で呼吸が止まるので発声を必要とする『術士』系の天敵を名乗れる事だろう。

 なので、素人が銃を撃つ時は腹部を狙えと言う様に、真奈美にも腹部へと狙う事を教えていた。

 モンスターは大体生き物の構造なので、幾つかの内臓に縛り状態を与えればその場で蹲る。

 満子に描いて貰った拘束支柱に縛り付けられたゴブリンの尊い犠牲もあって検証できた事だ。

 うちのパーティはゴブリンズのお陰で人数差の暴力で有利を取れるので、勝利を盤石にするための妨害を飛ばせるのは非常に有難い。

 

「さて……、おぉ、装飾がそれなりにありますな。中身に期待できそうですぞ」

「つっても、参階層だぞ? ヒトカゲ選んだニビシティみてぇなもんじゃんか」

「あー……、それもそうですな。取り敢えず開けてしまいますかな」

 

 私が開けると次々に手が上がり、ならじゃあ俺が、と手を上げるとどうぞどうぞされた、ダチョウ倶楽部かよ。

 罠無しと太志に太鼓判を押されたので、パカリと開くと……明らかに宝箱に入らない長さの柄尻が見えていた。

 呪いを警戒して一度太志に視線を向ければ、サムズアップを返されたので大丈夫そうだ。

 柄を握って引き抜くと手品の様にするすると伸びていき、1メートル程引き抜いて漸く全貌が見えた。

 『砥技薙刀(シャープネスパルチギア)』と言う固有武装であり、ゴブリンの『爪砥ぎ』のスキルを使えるらしい。

 つまり、薙刀の刀身部分を硬いものに擦らせると切れ味が上がると言う事だ、モンハンの太刀かな?

 

「薙刀、習ってる、欲しい、かな」

「あぁ、確かに華族の女性って薙刀を使えそうな感じだもんな。異論は……無さそうだな、はい」

「初の固有武装が錫花で良いのですかな」

「俺が持ってても宝の持ち腐れだろ、『蛮鬼剣』あるから十分だよ。それなら扱える奴が持ってるべきだ」

「かたじけない、これで自衛手段を得られたのは重畳でござるな」

「うん、ありがと」

 

 大事そうに無表情ながらニコニコと分かり辛い笑みを浮かべた錫花さんに、一同微笑ましいものを見たと言う感じ。

 そんな視線が恥ずかしかったのか、若干照れて太志の後ろに隠れたのだが、薙刀の刀身が顔横を反る形で飛び出しているので堪ったものじゃないだろう。

 これで肆階層への道は開けたので入った先でログアウトを待てば良いか、そろそろ閉門の時間だしな。

補修レイドは……

  • オリジナルレイド
  • 轟天石榴山
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