短い纏めのSHRを行い、教室から自室へと太志を連れて歩いて行く。
先程の特別実習で幾人か箍が外れた様に見え、グループ内の目を付けていた女子を性的にファックしてやると豪語する頭ピンクピンクな発情猿が散見された。
太志を見れば、クズを見るかの様な冷たい視線が先程の彼らに向けられていた。
……成る程な、彼らは、と言うかほぼ全員が特別実習の羅城門の先に人間性を落として来た様に見える。
清楚な奴隷気質な美女系と組んでいたシリアルキラーめいた恐ろしい形相の彼は、懐かれた犬を世話してやっている様な様子で割とまともな表情を浮かべていた。
……いや、あの形相だしなぁ、外で既に何人か殺害してますみたいなサイコパスみのある感じだし勘違いだろうか。
羅城門ではなく外で人間性を落としたのかもしれない、強く生きるんだ。
そんな彼の近くには軽薄そうで掌ドリルで裏切りそうなチャラ男が小判鮫宜しく引っ付いている、アレは……、何となくだが駄目だな死んでそうだ。
死に戻りしている奴のサンプルが多過ぎて、してない奴の確定サンプルが俺と太志くらいなのでイマイチ断言できないな。
まぁ、そこらへんも含めて何か知ってそうな太志の話を聞いてからでも遅くはないか。
どうせ先程既に篩い分けは済んでしまっているのだから。
黒鵜荘の3階奥側の自室に入り、自分の机に置いてある電子学生手帳を見て安堵する。
良かった、何処かに忘れた訳じゃなく持ち忘れただけで。
お互いに自分のベッドの淵に座り向かい合う。
「竜胆氏を同士と見込んでの情報開示ゆえ他言せぬ事をお頼み申したい」
「……お、おぅ」
「心配なされぬな、既にこの部屋の目と耳は塞いであるますぞ」
オーソドックスなオタク口調かと思えばガラリと変えて来たな、もしや華族の出なのだろうか。
そしてしれっと開示される監視カメラと盗聴器の存在にげんなりした、プライベートとかどうなってんだよ此処。
「拙はお気付きの通り華族の分家筋であり、妾の子が故に疎まれ施設に捨てられた者でしてな。兄が、大層良く出来た兄が居たのですがこの学園にて行方を絶ったのです。拙はその真相を調べるべく、この魑魅魍魎の箱庭へと飛び込んだ」
「……ふむ、それで」
「たはは、やはり豪胆ですな竜胆殿は。要するに、手を組みませんかと言うお誘いです。情報共有を軸に共に行動が出来ればな、と」
「太志はこの学園の事は詳しいのか?」
「正直に申せばさわり程度ですな。外部への縁が切れている場所がゆえ、拙が知り得るのは此処が伏魔殿の如し常識が捻じ曲げられた場所である事と、兄が唯一残してくれた此処での日記で得た些事くらいですな」
「ふーん、……何で俺だったんだ?」
「拙の言動に対して寛容だった事、そしてあの悪辣な実習で生き延びた猛者である事、そして拙の勘ですな」
「勘、か。良いね、そっちの方が浪漫だ。分かった、手を組もう」
正直目の前の彼ぐらいしか話通じる奴居なさそうだしな。
華族からなる華組と違い、此方の一般クラスは玉石混交の外れ値の高い学級崩壊レベルの学生の集まりだ。
つまりは不良が多いので陽キャやヒャッハーが大多数を占める、陰キャには過ごし辛い社会が構築される事だろう。
……早速隣の部屋からギシアンの洗礼が聞こえ始め、隣誰だっけなと思い返せばあのシリアルキラー君とチャラ男君だった事を思い出す。
聞こえてくる二人分の嬌声に手が早いなぁとすっとぼける。
危険極まりないダンジョンの中でラブラブえっちで童貞を卒業した超弩級のアホは私です。
「……まぁ、木造建築だもんなぁ。日常会話ならまだしも嬌声は突き抜けるよな」
「……はぁ、嘆かわしい限りですな。リア充死すべし」
二人して深い溜息を吐き、太志がこんな事もあろうかと用意していたらしい防音材を壁に貼り付け始めた。
騒音問題が解決したので話を戻し、ベッドに座り直す。
「んで、あの実習は何だったんだ? 確定的に明らかな殺意あったよな」
「兄のグロンギ語で書かれた日記には、死んだ時に魂魄結晶なる物が拙らから零れ落ちるとの事で。これを失うと生殖能力を失い、寿命も削られ短命になるデメリットがあるとかないとか」
「……あー、だからこの風紀でコンドームが売ってないのか、全員漏れなく種無しになるから必要無いだろって削減されてるのか、露骨過ぎんか???」
「それはまぁそうですな。裏取りしなくても良さそうと楽観視してしまいましたなぁ」
「……んで、生き延びた俺らは今後RTA宜しく乙るの禁止な訳か」
「走者はいったい何人居るのやら。魂魄結晶なるものが戻せるなら多少は緩和されますなぁ。そのためにも事情を知った者でパーティを固めたかったので」
「成る程な。最悪片方が生き延びればワンチャンあるのか」
太志との生還同盟のメリットがデカくなってきたな。
これが見知らぬ奴なら死体を置いて逃げてしまうから魂魄結晶も拾われずにロストする訳だ。
「そしたら基本俺らでペア組んで前線の攻略組になれば大丈夫そうか。太志も生き延びたんだ、強いんだろ?」
「たはは、竜胆殿には負けますな。一定時間留まるとFOEが来るので、最小限の移動を繰り返して逃げ延びたのです、お恥ずかしい。拙は見ての通り武勇に優れるタイプではないので、後方支援や戦闘以外の補助がメインですな」
「鍵開け任せていいか?」
「勿論ですとも、レアドロも良いですが宝箱で一喜一憂するのも乙なものですからな」
そう胸ではなくふくよかな腹をぽんぽこと叩いた太志は頼もしかった。
戦闘の話になった事で、ふとそう言えばと言う様子で此方に顔を向け、唐突に目を丸くする様にクワッと見開かれた。
うわぁっ、太志くんの瞳が鋭くなって口元がちょっと笑ってる、怖っ。
何処の動物小学校の名探偵だよ。
面白い事を知ったと言う風に口元が笑ってる、こわっ。
「拙はちょっとした異能を持ち合わせていましてな。凝視した者の情報をチラ見出来るのです」
「……チラ見?」
「えぇ、たっぷり5秒見つめて隣の机のテスト用紙の答えを一つだけ見るくらいの微妙な精度なのですが、裏を返せば一つだけ情報を抜くなら充分と言えましょう」
「まぁ……、確かに?」
「して、竜胆殿。ノービスのレベル10になっている様ですが性的な衝動はどうされたのですかな?」
「ノービスイズナニ」
「他のクラスに就いてない状態を指す初期クラスの事ですな。何も無い基本的なジョブみたいなものですぞ」
「あぁ、確かにカンストっぽい感覚はあったな。途中から既知外領域に迷い込んでたみたいで経験値効率が、ね」
「兄のノート曰く、羅城門のダンジョンにてモンスターを倒すと経験値が入るのですが、聖堂にてクラスチェンジなる儀を成すと過去に成した事を参照して新たなクラスに就く事ができるとか。けれど、その過程で成長を果たすと所謂レベルアップ酔いなる状態になり、生命力が滾り興奮状態に陥るとの事でした」
ずぃっと顔を近付ける太志に、俺はナニを言わんとしているのかを察して目を逸らす。
てめぇクラスメイト襲ってたんじゃねぇだろうな、と言う疑いを掛けられている訳だ。
「……太志になら、いいか。実はだな……」
壁に耳ありドアにメアリー、第三者に聞かれるとマズいので物的証拠で釈明を果たす事にした。
……そう言えばまだ見てなかったな。
先に見てから見せるか、と懐の内ポケットに手を忍ばせてそれを引き抜いて掌へ隠す様にしていざ拝見。
ん? なんか全体にボリュームが無い様な、と言うか若干幼くなってない?
モンスターの書かれたカードと称すべきそれには、インディアンハットめいた帽子を被り、杖を後ろ手に持ち此方へ前屈みになって妖しい笑顔で微笑むつるぺたな牝ゴブリンの姿があった。
牝餓鬼ってか、やかましいわ。
名称、『-』
種族、ハーフゴブリンプリンセス
属性、土
階位、1
能力、『誘引』『鼓舞』『受胎』
存在強度、☆☆☆
「マーラを崇め清め啜る者、穢れ無き淫欲の牝餓姫」
……何だろう、文字を見ただけだと言うのに寒気がする様な。
と言うかゴブリンプリンセスの前に付いてるハーフってなんだよ。
よく分からんが、太志に見せれば分かる事があるだろと意を決して見せた。
「こ、これは……っ、ご、ゴブリナ。いや、あれはシャーズとの混血でしたな。……成程、此方のカードはモンスターカードと呼ばれているレアアイテムの一種ですな。召喚系のクラスで使役するために用いる所謂ユニットキャラの様な存在。……もしかすると、もしかするかもしれませんな」
「……やっぱり? となると今直ぐにクラスチェンジゲッターした方が良さげ?」
「オープンゲットと言いたくなりますが、博打になりますなぁ。何せ、竜胆殿、この身体を堪能されたのでしょう?」
「いや、こんな感じじゃなかったんだけどなぁ。……良し、モンスターキングに俺はなるッ! どんっ」
「キングギドラにでもなるご予定が? まぁ、悪い事にはなりますまい」
善は急げと言うし、何よりもこのリビドーを止められないやめられない。
一応電子学生手帳で時間の確認をしてみれば、クラスチェンジのための施設である聖堂は二十四時間営業と言うよりも人による管理がされていない様子だった。
善は急げと廊下に飛び出すと、やはり此処は青藍島だったんじゃないか、と言うぐらいに聞こえてくる嬌声の嵐。
……もしかしなくても、一部屋に集団で居る様な熱気と言うか気配を感じるんだが輪姦レイプ現場かよ。
他人の出した精液が残っている膣内に喜んで挿入するとかゲイの資質あるよ君たち。
あぁでも亀頭のカリって他人の精液を掻き出すためについてるもんだったな、と生物的には問題無いのかと発情猿たちの住まう部屋から視線を外す。
濃厚なホモセックスめいた現場をさっさと通り過ぎ、夕方を経て夜の帳が掛かり始めた道を歩いて行く。
……所々でイクイクセーシが鳴いてるんだが治安どうなってんだよ本当にさぁ。
聖堂のある場所へとすたこらさっさと辿り着き、辺りを見回して誰も居ない事を確認してから入口からこっそりお邪魔します。
うーん、この理解できない感じの儀式場って感じの雰囲気良いねぇ、テンション上がるねぇ。
で、どうやって使うのこれ、まだ授業でやってないんだけども。
取り敢えず入口に立ってみるか、あっ、此処進研ゼミで習ったところだぁーって感じで。
その場のノリでサークル状の部分へ足を踏み入れた途端、足元から光の筋が床に向かって行った。
そして、目の前の柱に光のラインが伸び、そこから更に奥の柱へと続く溝にラインが進んでいく。
そのまま真っ直ぐに奥の柱へと至った瞬間に、何かが逆流してくる様な、自分と言う存在に触れられた様な感覚が生じた。
「なっ、んだ、これ……ッ」
――王冠の祭壇が王国の祭壇へと導き、第一段階『
窮屈な肉体の枷を解き放ち、魂がイドに基づきその形を変え、規格外の骨格へと魂を嵌め込み形作るのがこの場所の仕様なのだと理解させられた。
本来であれば
しかしながらあの牝ゴブリンを犯し殺した事により第一段階の条件を満たしてしまい、怪物王までスキップされた様に感じる。
掌を見ても何も変わっていない筈なのに、何故だかそれを使う事ができる、そんな意味不明な感覚があった。
――『
――『
王冠を簒奪し王国を侵略する怪物たちを統べる王、それこそが規格外第二段階クラス『怪物王』としての在り方である、と脳に焼き付けられた知識が理解に至らせる。
「嘘でしょ、俺、そんなやべぇ内面持ってたのぉ……?」
確か、クラスチェンジで行われるクラスはエゴよりもイド、その魂の本質によって左右されるとかなんとか。
つまりは、そうかそうか君はそういうやつだったんだね、と聖堂に言われた訳だ。
自身でも知らないようなこれまでの集大成から生じる本来の自分から放たれる衝動、それがイドと呼ばれるものだ。
と言う事は、俺の本質は奪う者、と言う事になる。
……取り合えず、ユニークなクラスになったって事で一応の納得をしておこう。
このまま居ると誰かに見られるかもしれないし、さっさと帰るか。
そそくさと元来た道を戻ろうとして、頭では早歩きをしている筈なのに競歩程の速度が出て普通にビビった。
成程、ダンまちのレベルアップ的な感じだな、肉体と精神がズレている状態と言う奴か。
いやまぁ、仮にもモンスターの王様だなんて肩書きがあるのだから力が弱い訳無いよなぁ。
すたこらさっさと言うよりかは、バビューンッと言う足元をグルグルするエフェクトめいた速度で黒鵜荘へと戻り、自室のドアをノックしようとして思い留まる。
……念のため、右手で左手へパンチをしてみると想像以上に強い威力の衝撃が返ってきた。
危なかった、ノックしてもしもーしする筈が、開けろデトロイト市警だ、の威力で叩くところだった。
指先でトントントンツーツーツートントントンと小突く様にノックし、中へ入れば苦笑した表情を浮かべた太志が目をクワッとしていた。
此奴、俺のクラスチェンジ結果が気になって速攻でネタバレしやがった、SNSがあったらやばかったな。
補修レイドは……
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オリジナルレイド
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轟天石榴山