※この作品はR-18です。

モンスターファックアンドスラッシュ   作:不落八十八

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#34

 さて、久しぶりの自室での朝だな、と平和を噛み締める。

 ……めっちゃ腹減ったな、朝からがっつり行きたい気分だ。

 当然の結果と言うべきかカロリーと栄養が不足していた、げっそりした気分だ。

 久方振りの黒鵜荘の食堂へ行き、大盛りにして貰った野菜炒め定食をがつがつむしゃむしゃと二度お代わりして腹を満たし、満腹気分で自室に戻って身嗜みを整えて教室へと向かった。

 少し早めの時間だからか人通りも少なく、朝姦をしている奴も少なくて静かで良い。

 ふらりと足が勝手に『聖堂』の方へと行こうとするのに抵抗し、援護のつもりなのか誰かに耳を引っ張られている心地がある。

 もしや、天邪鬼のお姉さんは俺の目では見えない程に格が高かったりするんだろうか、触られている指の感触がちっこい感じであるのでお姉さんは自称なのかもしれない。

 よくある話だよな、神格なんかが人の目に見えない、みたいなやつ。

 天邪鬼の名前からして鬼と言うか妖怪系なので実は大妖怪なのかもしれない。

 

「のじゃロリ……? いや、普通にメスガキも捨て難いな。いや、逆に清楚でも……」

 

 けれども日本系の妖怪なのだし、綺麗な長い黒髪に着物を着た美少女であって欲しいな。

 そんな事を思いつつ、何故かほんのりと頭が抱き締められている様に温かいのが気に掛かるが教室へと向かう。

 今日は水曜日なので一般授業か、流石に中学の分野は暇過ぎるんだがなぁ。

 春の陽気によるクソネミ状態でうつらうつらしていると、右の方からややざわりとした騒ぎを感じた。

 また叶馬君が何かやらかしたんだろうなと思っていたら、昨日嗅いだ事のある匂いが近付いたのを感じて目を開く。

 そして、其方を見やればドリルヘアーな髪型な似非御嬢様こと玲子が高笑いポーズで立っていた、何故に。

 

「おはようございますわぁ!」

「そこはご機嫌ようじゃないのか?」

「似非ですもの、ちゃんと身の程を弁えますわ!」

「そうだったな、君はそう言う奴だったわ……。んで?」

「あ、これ、パートナー登録用紙ですわ。わたくしの分は書いてありますので」

「あぁ、そうだった。最後の方で言ってたなそう言えば、……書いたぞ」

「ありがとうございますわぁ! ではオーナー様、早速提出して来ますわね」

「ありがとうな、ちょっと待ってくれるか」

 

 指を組んでから伸ばして背中をごきごきと鳴らして伸びをする、よし、ある程度目が覚めたな。

 パートナー登録用紙を摘まんで、立ち上がると玲子は少し驚いた様子で目を見開いていた。

 

「んじゃ、学務課行こうか。今ならまだ間に合うだろ」

「……ええ! おほほ、そう言う所ですわよ、オーナー様」

「あん? 何が?」

 

 嬉しそうに左腕を抱き込んで隣を歩く玲子の言い分に小首を傾げつつ、クラスの男子たちからの驚愕の視線を向けられながら学務課に向かう。

 うむ、朝から左腕が幸せだなぁと噛み締めつつ、段々と眠気が抜けて自分のやらかしに気付いて内心で毒づいた。

 思いっきり目立ってるじゃねぇか、お前それでもモブを名乗ってるつもりかよ。

 後悔後先絶たずと言うべきか、でもまぁ玲子が嬉しそうにしているので良いか、と問題を棚上げして学務課に提出を果たしたのだった。

 

「……はい、不備も無いので受理致しますね。あぁ、そうだ、此方申請が通ったのでピンバッジの方をお渡ししておきますね。二年の宮子さんとのピンバッジになります」

「あ、通ったんですね。ありがとうございます」

「えぇ、スピード受理でしたよ、相手が貴方と知って急いで来たのでよく覚えてます」

「……そっすか」

「はい、ではまたのご利用をお待ちしております」

 

 思いがけず何のトラブルも無く宮子のパートナー変更が受理されたようで安堵するべきか、傷付くべきか。

 どうしたものか、二年の教室へ届けに行くべきだろうか、……カチコミ扱いされそうだから放課後で良いか。

 ブレザーのポケットに仕舞い込み、玲子を侍らせて一年の教室へと戻って分かれる。

 唇ではなく頬にキスをしていくあたり初心て可愛いものだ、真奈美あたりならディープキスだった事だろう。

 戻って来た時に視線が向けられ、非常に鬱陶しかったので全部無視した、気付かなかった大賞取れるぜ。

 つまらない授業を終え、昼になり放課後だ、光陰矢の如しと言うかあっと言う間に時間が過ぎたな。

 

「と、言う事で今日はフリーだ。武運を祈る」

「応、な、なんとかしてくるでござる……」

「援護は、任せて」

 

 磨具奈さんの居るであろう部室の方へと歩いて行った二人を見送る。

 ……本当に援護か? 追撃の間違いじゃなくて? と口にしなかったのはきっと正解だろうな。

 近い順から拾って行き、準溜まり場となりつつある申組へと顔を出した。

 昨日の情事を思い出したのか17人が一斉に熱を帯び始め湿度が高くなった、エアコン効いて無いぞこの教室。

 この学園の隷属現象マジで怖いな、肉食獣の檻に入れられた気分だぜ。

 その逆で男子たちは非常に羨ましそうな表情と、その裏に隠された恐怖を感じるな。

 そそくさと身支度をして出ていった男子たちへ若干申し訳ない気分になりつつ、順に用事を済ませる事にした。

 

「あ、そうだった。宮子、パートナー名義変更通ってたからピンバッジ貰って来たよ」

「あら、ほんと? 良かったわね、面倒が無くて」

 

 いやはや、随分とばっさり切り捨てるものだ、俺はそっちの側にはなりたくねぇな。

 と、思いつつピンバッジの取り付け合いをして、無事に俺のネクタイのVはVIになった。

 昨日の様に教壇に立ち、前側に座り直した『鮮血薔薇』の面々と対面する。

 

「はい、皆さん無事にクラスチェンジしたと言う事で、先ずはおめでとうございます。玲子、集計は?」

「わたくしを含めて『文官』9人、『職人』6人、『戦士』3人ですわね」

「え、『戦士』の子も居たのか? そしたら遊撃に回してフィニッシャーにすれば良いな。『職人』の子たちでゴブリンに持たせる武器とかを作れる様に素材を回した方が良いだろうな。小鬼シリーズを習作にして砥ぎ直しとか作り直しで熟練度上げも考えないとな」

「ええ、『文官』3人、『職人』2人、『戦士』1人の6人組を3グループで運用しようかと思ってますわ。『職人』の子もゴーレムを作る事で戦闘に参加できますものね」

「確か『強化外装骨格』だったか、『職人』の基本スキルにあった筈だ。……養殖の時に出た生素材を集めてフレッシュミートゴーレムとかも作れるのかな」

「いや、あの、普通に鎧タイプのゴーレムを召喚する感じですわよ? 部分展開とかもできちゃう感じのやつですわ」

「……そうか、今のところゴブリンの餌にしかならないから有効活用できないかなと思ったんだが」

「……因みに、どう言った使い方をご想定で?」

「全身に筋肉を後付けで付け足して、バイオのタイラントみたいな感じの君らに足りないパワータイプとか、と思ってたけど全身鎧なのか。鉄人28号的な感じ?」

「コストが高くてまだ召喚した事はありませんわね、どうなってるのかしら?」

 

 電子学生手帳で調べてみるとベースとなるフレームだけあるらしく、それを元に思い思いに改造するのがゴーレムなのだとか。

 骨格のベースフレームは召喚者を纏う形になっており、内部からの操作を想定されているスキルの様だが、作り込み次第では外部操作も可能なのらしい。

 一番最初は本当にペラい装甲が張り付いているだけで、全身鎧と言えば部分的にそうと言わざるを得ないクオリティの様だった。

 

「ブレイクブレイドと言う漫画があるんだがな、人工的な筋肉を使って魔動巨兵って言うゴゥレムを動かすんだ」

「……その人工筋肉をゴブリンの素材で作る、と言う事ですわね?」

「昨日も見かけた部位パーツから筋肉だけを採取して工作室で捏ねる必要がありますね。人工的な筋肉を作れれば油圧式よりも滑らかに稼働が可能ですね。その分馬力は落ちますが、量でカバーする事はできると思います」

 

 『職人』になった子から見解が飛んできたのであくまで参考にしてくれ、と話題を一旦切る。

 流石に『職人』じゃないのでゴーレム作成について本格的な助言は出来ないので各自に任せるしかない。

 

「さて、本題だが今日も養殖するか? それとも壱階層に戻って自分らで探索を続けるか? と言うのを聞きに来た。前者のメリットは言わずもがな時間効率と安全性だな。後者のメリットは、自立するなら一から戦い方を構築した方が良いからな。もっとも、新入生狩りをしているカスや他のクラスメイトだったりの横槍を懸念しないといけないけども」

「……本音では前者を選びたいところですが、自分たちの手で弐階層に進出する経験を取りますわ」

「良いんだな?」

「……と言うかですわね、昨日の一件で全員オーナー様に完堕ちしてますのよ。なので、例え先輩方でもエロ同人誌ばりに犯されても隷属できないに決まってますわ。よっぽどの上級生でも無い限りは大丈夫そうですわよ」

「へ?」

 

 玲子の言葉に同意する様に『鮮血薔薇』の面々が頷いて顔を赤らめていた。

 そういうもんなのか、と一番経験豊富な宮子に視線を向けると苦い顔で頷かれた、成程そういうものらしい。

 ……と言うか今気づいた、玲子以外の17名の首にチョーカーが巻かれているんだが、『隷属首輪』の子機……じゃないな、繋がってる感覚は無い。

 視線が向いたのを感じたのか、彼女らの代表として立ち上がった玲子が説明してくれた。

 何でも同盟云々ではなく『鮮血薔薇』の面々が俺こと竜胆の傘下である事を知らしめるアクセなのだとか。

 確かに質感は違うが『隷属首輪』に似ているデザインをしている、関係者だなとは思う事だろう。

 あぁ、成程、上級生の新入生狩りは巣への持ち帰りもセットだからその時点で色々割れるのか。

 パートナー権を勝手に登録すれば俺が出張って学生決闘で始末すれば良い、と言う感じか。

 ……完全にケツ持ちのボスだな俺、いやまぁ、彼女らがそれで楽しく過ごせるというのなら良いか。

 

「まぁ、うん、君らの覚悟は分かった。それに応えられるよう俺も精進する事としよう」

「善は急げですわぁ! 『鮮血薔薇』、行きますわよぉ!」

「おぉー!」

 

 借りていた机などをちゃんと整頓してからダンジョンへ向かうあたり育ちの良さと言うか、真面目な性格を感じるなぁ。

 がらんとした申組の教室に残された俺たちは笑みを浮かべながら肩を竦めた。

 昨日の養殖で最低限のガッツは得られたようで何よりだな、と思いつつ今日のこの後の事を考える。

 

「さて、太志たちが過去の因縁にケリ付けてる間、俺らはどうすっかな」

「ダンジョンに潜らないんすか?」

「てっきりダンジョンに行くのかと思ってたわ」

「一美も同意します」

「二美もそう思います」

「三美もそう思ってました」

「お前らな……、確かに俺はMMOで廃人と呼ばれる様な奴ではあったが、現実でそこまでするつもりは無いぞ」

 

 昨日思い付いた『文官』のカード弄りの事について伝えると、あるかもしれないわね、と宮子は頷いた。

 

「私たちが扱っているスキルなんだけど、本当は個人差があったりするのよ。同じ『強打』でもSPの消費量が違ったり威力が違ったりとかね。だから、スキルは似たような現象であって同じ規格のものではない、って言う噂が流行った事らしいわね。まぁ、検証が難しかったからか鎮火も早かったそうなんだけどね」

「……同じ規格じゃない、ですか。随分と面白い考え方をする人が居たんですね」

「確か二個前の『勇者』の人って話だったかな、なんかたまに変な言葉を使う人だったとか」

「……変な言葉?」

「確か……、話題に上がる時で聞いたのは、ボソグ、ジャデデジャス、だったかな。よくダンジョンでモンスター相手に呟いてたって話だけど」

「因みにその人って」

「ロストしちゃったみたいね、『勇者』みたいなユニークレアなクラスは代替わりが早いらしいのよね」

 

 ぐ、グロンギの兄ぃー!?

 マジかよ、太志の探してる兄貴、既に死んでるじゃねぇか。

 いや、ロストした、って言ってるだけだから学園側から観測できなくなったってだけで生きてる可能性……あるのか?

 確かに5千人くらいが暮らしてる場所だから紛れ込む事は出来るかもしれないが……、ううむ。

 二代前の『勇者』か、取り敢えず太志に情報として渡しておくか。

 

「二代前の『勇者』の人の名前って分かります?」

「え? えーっと……なんだったかしらね、聞いた気がするんだけど、忘れちゃったわ」

「そうですか、分かりました。その人多分太志の探してる兄貴だと思うんで、何か情報があったら教えてやってください」

「あら、そうなの? お兄さんを探しにこの学園へ飛び込むだなんて、よっぽど慕われていたのね」

「みたいですね」

 

 学園でロストすると外では行方不明扱いになるのか、いや、生きていた証拠を消されていたとか言ってたっけ?

 やっぱりきな臭いな此処、学園の皮を被ったデストロン訓練校と言われても不思議じゃねぇぞ。

 にしても……規格が無い、ね、どうもその言葉が頭に引っ掛かった。

 『簒奪』『隷属具象化』『怪力』『隷属首輪』、成程確かに『怪物王』と言うクラスに相応しいスキルだ。

 だが、確かに決められたスキルが、規格があると言うのなら『怪力』と『隷属首輪』の順は逆ではないだろうか。

 と言うか最初から『隷属首輪』が使えていても可笑しくない筈だ、つまりこのスキルだけ順番がおかしいのだ。

 右掌を見やり、『怪物王』らしいスキルを、姿かたちを連想し――。

 およそ人体から出てはいけない音を垂れ流しながら右手が怪物めいた手に変形した。

 そして、規格が無いという言葉を信じてインスピレーションを働かせる。

 醜い鬼の手の様だった右手が装甲を纏う様な形で、鉤爪めいた指先の鱗篭手の様な右手に変化した。

 怪物と言うイメージをどう扱うかで出力される結果は容易に変更ができてしまった。

 ――成程な、そう言う絡繰りかぁ。

 右手を振って人間の手を浮かべてみればあっさりと見慣れた人肌の手になった。

 

「勘違いしてた、と言うよりかは固定観念に囚われていたと言うべきか……」

 

 『クラス』と言う概念からこうあるべしと抽出した肉体の変化、それこそがスキルと言うものの正体なのだろう。

 『術士』が魔法を使えるのは、術者が魔法を使えるクラスだと思い込んでいるからであり、実態は『魔力器官生成』的なパッシブスキルの恩恵で肉体が変化している事で、魔法を発するための器官のある身体へ作り替えたからだ。

 もしかしたら『聖堂』でクラスチェンジした時に、その『クラス』への普遍的な思い込みから共通スキルとして獲得する事で魔力を使える身体になっているのかもしれない。

 ……そもそもの話、羅城門と言うロストテクノロジーを潜ってダンジョンに行った時、既に身体を作り直されているのかもしれない。

 それならば教科書に載っていた様に『聖堂』と羅城門の様なダンジョンの入り口がセットで存在していたのも頷ける。

 あくまで『聖堂』は作り替えられた身体の調整装置であって、本来の身体はもう無いのかもしれない。

 それはダンジョン内で人間が死んだ時にモンスターと同じ霧散現象が起きている事に繋がるのだろう。

 で、あるならば本来スキルとは個人で勝手に作れる物だったんじゃなかろうか。

 学園はその事実を授業と言う形で固定観念を植え付ける事で、プラシーボ効果の様な形で安定させたのだ。

 ノービスの間に、この『クラス』にはこう言う『スキル』がある、と固定させてしまう訳だ。

 SP消費の変化なども個人差の体感の範疇で収まってしまったから疑問に思われなかったのだろう。

 ……そうなると『クラス』の概念も怪しいな、現に規格外クラスと言う形で未発見のクラスがある訳だし。

 いや、こっちは『聖堂』を作った奴の趣味が入ってそうだな。

 あくまで鋳型鋳造みたいなもんなんだろうな、用意した型に嵌ればアーキタイプで出力、違ったら祭壇とやらを経由して新しい型を作って出力って感じか。

 一度作った型は残しておけば再利用できるからな、アーキタイプ系列とされているのは大多数に使える万能な型だったというだけなのだろう。

 こうして、新たなスキル『形態変化』を取得したのも当然の流れと言える。

 あくまで俺が求めたから生まれたスキルなのだと、認識を改める。

 つまりはHUNTER×HUNTERの念の様な物なのだ、これは。

 ……やばいな、めっちゃ楽しい、凄い事が出来るぞこれ。

 天邪鬼のお姉さんが俺の第三段階を留めたのはきっとこれが理由――。

 頭を後ろから小さな手で側面を掴まれて左右にふるふると振られてしまった。

 ――じゃないみたいですね……、と言うか君もナチュラルに思考盗聴するじゃん、プライバシーの概念とか無い感じですかね。

 何とも言えない表情を浮かべながら、俺を見て小首を傾げている真奈美たちに『工作室』へ向かう事を伝えたのだった。

補修レイドは……

  • オリジナルレイド
  • 轟天石榴山
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