※この作品はR-18です。

モンスターファックアンドスラッシュ   作:不落八十八

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#43

 土曜日の専門科目が単位制で、ある程度融通が効いて助かったな、と54連戦した腰を押さえながら眠気を噛み潰した。

 1限と2限は座学が多く、午後のウォーミングアップを兼ねてか3限と4限に実技系が入っている事もあり、違和感なく紛れ込む事が出来た。

 まぁ、一般授業よりも専門科目の単位の方が比重の重い学園なので、必修を逃すと面倒な補講が待ってるのであんまりサボれないけどな。

 この学園の中間試験は一般教科の温い筆記テストと、専門科目を総合したダンジョン踏破記録を提出する実技テストになっており、既に伍階層まで行っている俺らは既に終わっている様なものだ。

 『鮮血薔薇』の面々も近々参階層行きとの報告を貰っているので、今回の弐階層突破はクリアしているので安心だ。

 ……まぁ、学生手帳のステータス画面が文字化けしている以外は問題無いだろ、多分。

 端子を差し込んで充電する度に教務科への提出をしろと言うポップアップが浮かぶが、数秒でスッと表示が消えて使えるようになるので多分問題無いだろう。

 ……その度に鈴めいた綺麗な嘲笑が薄ら聴こえるのはホラーだが、天邪鬼のお姉さんが何やらしてるらしい。

 最近の妖怪は電子機器の扱いもお手のものらしい、実に頼もしい限りだ。

 

「さて、重役出席でしたが腰は大丈夫ですかな?」

「……正直ギリだな。ダンジョン入ったら赤POT飲むわ」

「ははぁ、竜胆殿の場合は人数が段違いでござるからな……」

「27人だ」

「……は?」

「リーナたちが増えて一周27回だ」

「……こ、此度は?」

「二周だな。明朝頃までクソネミ状態で腰振って、泥の様に寝てた」

「ご愁傷様でござる……。何というか、ハーレム物の主人公を普通の目で見られなくなりますなぁ」

「まだマシだろ、うちはレベルアップ酔いで全員発情期だ。あっちは日替わりが可能だが、こっちはローテーションなんて組めないぞ」

 

 最初の養殖の時にレベルアップ酔いをある程度克服させる方針を取っていなかったら、一度や二度どころじゃない回数を周回させられる事だろう。

 

「……俺が分裂すれば良いのか?」

「分裂理由が性行為で1人あたりの時間の延長のため、と言うのは何というかアレですな……」

「いっそ、逸物を触手みてぇに増やせば良いんじゃなかろうか。一度に27人相手すれば疲れも減るな……?」

「……何というか、もはや怪物王と言うか触手王ですな?」

「此処がダークファンタジーなエロゲの世界だったら選んでたかもしれんなあ。野生のローパーとかが居たりする様な世界観ならな」

 

 この学園では性と暴力の嵐が吹き荒れているものの、エロいモンスターが闊歩している同人エロゲーな世界では無いんだよな。

 そもそものダンジョンに居るモンスターは人間の普遍的無意識から抽出された形を瘴気で作っていると言う説があるので、かつては餓鬼の様な姿だったそれも今はゴブリンと言う形に変わっているとの事だし。

 ……居るのかなぁエロに特化したモンスター、ちょっと欲しいなと思ってしまった自分が居た。

 1限後の中休みの喋りも程々に終えて、我流を行く戦闘スタイルになっている事で正直行く意味も薄い専門科目の授業を熟していく。

 ――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――

 ――第『伍』階層、『既知外』領域――

 

「実戦に勝る教訓はねぇだろって話だよな」

「きゃはは、パパ、すっごぉい!」

「わはー、パパ、格好良い!」

「きひひ、パパ、強い」

「おぅ、ありがとうな愛娘たち、皆も随分と――」

 

 今日は俺のレベリングを中心にするべく、太志たちに一言入れてソロで潜る事にさせて貰った。

 切り札的な立ち位置である『形態変化』をフル活用すべく、見た目が非常にグロイ事になる事間違いないので初回は配慮を兼ねた訳だ。

 ぶっちゃけ自分でも悍ましい変化のそれなので、練習無しでお出しするのはちょっとな、と言う自主練だ。

 と、言っても別に太志たちがログインしていないと言う訳ではなく、俺だけ先に階層のゲート前に送って貰い別方向に歩いて行くと言うだけだ。

 ……ぶっちゃけ、広過ぎてゲートが見つかる可能性低いから苦肉の策でもある、レベリング的に次階層が適正だからな。

 さて、軽い現実逃避も終えて新しくなったリーナたちの恰好を見ていく。

 先ずは第二段階『ハーフゴブリンクイーン』となったリーナであるが、お姫様らしい葉っぱのドレスから方向性を一転し、悪の女幹部めいたレザー質なSM系女王様スタイルとなっていた、何でだよ。

 次に第二段階『ハーフコボルトクイーン』となったルーナは、姫騎士だった恰好を脱ぎ去り、黒いビキニアーマースタイルとなっていた、名残はあるがお前もか。

 そして、第二段階『ハーフヴォーバルバニーレディ』となったニーナは、白いバニースーツから逆バニーめいた露出度の跳ね上がった痴女スタイルになっていた、だからなんでだよ。

 

「――変わり過ぎだろっ!? 清楚な感じは何処行った!?」

「ママの真似」

「同じく、ママ」

「若い時、やんちゃ」

「そう言うオチかー。ってんな訳あるかぁ!? お前らのママはダンジョン産まれのダンジョン育ちだろうが!」

「きゃはっ、バレちゃった」

「わはは、イメチェン、だよ」

「きひっ、パパ、好きでしょ?」

「……まぁ、それはそうだが」

 

 薄々と容姿は母親似であるが、それ以外が俺似なのだろうと気付いてしまった。

 つまり、単純な種族的な恰好ではなく、一捻りえっちな恰好を好んだ結果と言う事なのだろう。

 ……防御力がめっちゃくちゃ減ってないかこれ、大丈夫かこれ、傷跡とか残らないだろうな、と心配が勝った。

 『隷属首輪』越しに心配している事を察したのか、3人娘たちはむふんと小さい胸を張って笑みを作った。

 

「心配、無用! 『親衛隊召喚』!」

「もう、姫、じゃない! 『騎兵隊召喚』!」

「きひひ、『同胞召喚』!」

 

 リーナがかつんと杖を床に突き、ルーナがレイピアを掲げ、ニーナがシミターを向けた。

 そして、俺のSPがごっそりと半分程減った感覚がしたかと思えば、それぞれの真後ろに召喚の予兆を感じた。

 リーナが呼び出した親衛隊は俺よりも背の高い2メートル程の騎士鎧を着た巨兵たちであり、その数10体。

 ルーナが呼び出した騎兵はブラックドック程の大きさの巨犬に跨る細い馬上槍を構えたコボルトナイトたちであり、その数10体。

 ニーナが呼び出した同胞、つまりヴォーバルバニーと呼ばれる殺人兎が何処からともなく現れた、その数10羽。

 玄室があっと言う間に埋め尽くされ、マザーモンスターと言う軛から解き放たれた3人娘の恐ろしさを思い知った。

 

「もっと、呼べる、100体!」

「こっちも、増やせるよ、100騎!」

「同胞、もっと居る、100羽」

「……いやいやいやいや、インフレが過ぎるだろ!?」

「……そう? だって、パパ、召喚、できるよ」

「うん、パパ、もっと、呼べる」

「だって、パパ、だもん」

「嘘でしょ」

 

 久しぶりに脳裏でドン引きしたサイレンススズカが左回転して走って行ったくらいに困惑していた。

 ……ん? 10体分でこのSPの減りだよな、この10倍が3回あるんだろ、……無理じゃね?

 と、悪戯に気が付かれたと察した3人娘は揃ってニンマリと笑顔を浮かべた、可愛いなぁ許しちゃう。

 迷い込んだ一般通過鎧犀が曲がり角から現れたが、一斉に視線が向いた事でぎょっと足を止めてからそのまま回れ右して逃げて行った。

 いやまぁ、騎士鎧の多分中身ゴブリンの巨兵が10体とその横にコボルトライダーが10騎居て、その後ろにヴォーバルバニーが10羽待機してるとか普通に悪夢だよな、モンスターハウスかよ。

 此処に『ハイグレートスレイヴゴブリン』と『ハイグレートスレイヴドック』も召喚したら計30体と10羽と1匹か、もはや小隊だなこりゃ。

 さて、いざ出発と動き出した訳だが、真正面から突っ走って来た鎧犀が騎士鎧ゴブリンたちの持つハルバードによって引っ掛けられ倒れ伏し、あっと言う間に制圧されて霧散したのを見て数の暴力って最高だなと思った。

 比較的硬い鎧犀はまだ良い方だろう、玄室で堂々と擬態しているエントなんて囲まれて全方位からきこられ伐採され、奇跡的に生き延びたのだろうマタンゴは殺人兎に齧られおやつと化し、ブラックドックに似たグレイウルフはコボルトライダーに2対1で終始不利で駆除されていた。

 

「圧倒的だな、我が軍は! と言いたくなる光景だな。因みに経験値効率はどうなってんだ?」

「パパ、あたし、半分こ!」

「召喚した奴らには入ってない、と言うかリーナたちのレベルを参照してるタイプなのか」

 

 そこら辺は『文官』のセオリー通りなんだな、と思ったが今の言い方だと倒した奴を召喚した娘と俺とで半分って事か。

 俺に半分、もう半分を3分割って感じじゃないのかレベリングが偏るなぁ、と思ったがよく見れば順番に倒してるから一応均等なのか。

 第二段階に上がった事でスキルも増えた様で、しれっと使っているのだがどれも凶悪の一言である、誰に似たのやら。

 

「きゃはは! 『大鼓舞(ブーストオール)』、『闘争心(ソウルブースト)』!」

「わはは! 『強襲陣形(アサルトシフト)』、『騒音々(ランブルブル)』!」

「きひひ! 『致命殺法(アサシネイション)』、『二兎得不(ニトエズ)』!」

 

 珍しい混成のモンスターの群れに出会した時の反応がこれである、頼もしい限りだ。

 リーナが全メンバーに身体強化の肉体バフと集中強化と痛み軽減の精神バフを重ね掛け。

 ルーナが全メンバーに攻撃力増強バフと敵の鼓膜に直接作用する妨害スキルをぶっぱなし。

 ニーナが全メンバーに致命傷確率を上げるクリバフと敵の視界を攪乱する妨害スキルで畳み掛ける。

 全員が一丸となり狩りを成立させ、獲物を絶対に殺すと言う信条の強さを感じる。

 俺を支える女王としての全体バフを引っ提げてきた事により、ソシャゲなら人権級の性能を有しているなこれは。

 ……はい、明らかに俺のレベリング癖と言うか、元廃人ゲーマーらしい凶悪シナジーコンボになってるな。

 ただでさえ数の暴力に質が備わってるのに、そこにバフと敵へのデバフまでついちゃったら狩猟と言うよりも蹂躙だよこれ。

 時折出てくる彷徨う魔物も可哀想なくらいに秒殺し、3人娘のイケイケドンドンムードに背を押される様に攻略が進んでいく。

 うむ、『文官』の強みである数の暴力に支援を充実させたこの戦法は最高だぜ、これこそがテイマー職の醍醐味だもんな、質を伴った数の暴力の恐ろしさを教えてやろうか!

 そんな快進撃を進めていると、ふと当初の目的である『形態変化』の事をすっかりと忘れていた事を思い出した。

 リーナたちの召喚のSP肩代わりで失った分も時間経過で全回複しているので、ある程度無茶な使用もできるだろうな。

 イケイケドンドンな3人娘に攻略を任せ、後ろで奇襲を警戒しながら検証を始める。

 

「ふぅー……、よし、『形態変化』開始」

 

 ブレザーを脱いでから腰元で縛り付けた後、ワイシャツの袖を捲って肘まで露出させる。

 先ずはオーソドックスに指先から変形させ、人体から鳴っちゃいけない音が聞こえるが無視し、魚鱗と言うと魚っぽいので竜鱗を生成する。

 生身の左手で叩いてみると確かに鱗の様な硬い外殻みを感じるが、元は俺の身体である筈なので何かしらの物質を使っているのだろう、……と自分で枷を作ってしまうとドン詰まりになるので物質Xであると仮定しておく。

 リザードマンの様な手になった右手を眺めてから、固定観念を壊すために右腕である事を辞めてみる事にする。

 指をにょろにょろと伸びる触手の様な形にして指の体操の様にウェーブしてみたり、指先を口の様にしてヒュドラパペットマペットをしてみたり、口から火を吐かせてみたりした。

 

「……前に『簒奪』で奪ったモンスターのスキルを使えてた理由これかよ」

 

 モンスターのスキルを使えてたんじゃない、スキルをラーニングして俺が使える様に身体を無意識に『形態変化』していたのか、それこそ『聖堂』の様に身体を調整して……。

 と、考えていたら後ろからアンブッシュを仕掛けた隠蔽系のスキルを持ったグレイウルフを知覚した、してしまった。

 おいおい、背中にも目を付けろってこう言う感じか?

 第六感と言うよりも魔力反応を追う様な、もやっとした何かを知覚するような変な感覚だった。

 涎を零して強襲するグレイウルフに気が付いたのは鼻の利くコボルトライダーもだったが、左手でそれを制した俺は右手を後ろへと向けた。

 イメージだ、この力を十全に使うためにはそれだけで良い、理屈なんてものは後から付け足せば良いのだと『形態変化』によって変貌する右手を構えた。

 元の人間の右手に戻してから、前腕の半ばから下顎を意識して上下に口蓋を作り上げて閉じる。

 人間の歯のモース硬度は5から8とされ、鉄の4よりも硬いのがエナメル質と呼ばれる歯の表面を覆う部分だ。

 動物が噛み付くのは理解しているからだ、己の身体で一番強い部分が此処なのだと。

 そんな知識を脳裏に掠めながら、赤黒い肉塊から押し潰して切断する事に特化した刃めいた歯を形成し、傍目から見れば口の裂けたフルフルの頭めいた怪物の口が完成した。

 眼や鼻と耳も無い顔の無い怪物の顎が出来上がり、飛び掛かったグレイウルフの横腹へと肘先が伸びて喰らい付いた。

 通常なら上口蓋は動かずに下口蓋のある顎が上に向かう事で閉じるが、この口は両方から閉じに行くため顎の力は通常の倍だ。

 ゴムを千切る様な鈍い音と共に脇腹を内臓ごと噛み潰されたグレイウルフが断末魔を上げ、そのまま息絶えて霧散した。

 ……うーん、なんか違うな、確かに怪物っぽくはあるが、ありきたりだ。

 傍目から見て明らかに右腕が凶器と化した化け物ではあるが、怪物と言うよりは正しく化け物の類ではなかろうか。

 内容物を壁に吐き捨てながら人間の右手に戻し、怪物とはナニカと言う哲学チックな思考に没する。

 怪しい物と書いて怪物であり、化けた物と書く化け物と違って、ケモ度の様に段階が違うと俺は思う訳だ。

 ――例えば、掌の中に口があり、普段は隠れているとしたらどうだろうか。

 人の形でありながら怪しい人体構造をしていると言うのは実に怪物らしくは無いだろうか。

 怪物と化け物の差異はきっとそこにあると俺は考える。

 人の名残りがあってこその怪物であり、人から逸脱し過ぎたらそれはもう人だったナニカであり化け物カテゴリだ。

 見下ろした右掌の中央が口の様に裂けていき、内側にエナメル質的なナニカで生成された噛み切る形をした歯が生えていく。

 食べる為ではなく、敵を噛み千切るためだけにある攻撃的な機能、普段は手の皺として擬態も出来る初見殺しの生きた暗器の完成だ。

 無論、飲み込む機能はオミットしているので噛み切った物は顎内に残るので吐き出す必要がある。

 

「……実に怪物らしいデザインだな」

 

 そうなるともはや俺は『怪物王』と言うよりかは『怪人』なのではなかろうか、人型の怪物である訳だし。

 続いて仲間の仇を取らんとするグレイウルフが跳躍し、此方の喉笛を噛み切ろうと牙を剥き出しにして襲い掛かって来たのを捕まえる。

 両手で顔を掴んだ俺はそのまま掌の顎を開き、グレイウルフの下顎の付け根辺りに噛み付いた。

 容易く骨を砕き頰肉ごと首を両側から削り取り、か細くなったそれを絞める様に掴み、背骨を噛み砕いた。

 側から見れば手に触れた箇所から破砕音が聞こえ、手を動かしただけで殺した様に見えた事だろう。

 

「……パパ、それ、怖い」

「……モンスター、よりも、モンスター」

「……格好良い」

 

 両掌を見せて顎をガチガチ鳴らしてみたらやや不評だった、ニーナの感性は若干厨二病のそれかもしれん。

 肩を竦めて顎を閉じた俺は『スレイヴグレイウルフ』のモンスターカードを拾って胸ポケットに仕舞い込んだ。

 もう3枚拾ってハイグレートにしたいもんだな、と仲間の末路を見て尻尾巻いて逃げ出したグレイウルフへゴムゴム宜しく腕を伸ばして尾を掴み取る。

 必死にキャンキャン鳴いて逃れようとするが、力量の差をこれでもかと思い知ったのだろう、抵抗を止めて大人しくヘソ天しながら引き摺られたのは潔い。

 

「……この状態で『隷属首輪』を掛けたらどうなるんだ?」

 

 カード化していないモンスターを直接隷属させる事は可能なのだろうか、と感情と知性を感じられる目の前のグレイウルフの首に触れて発動した。

 掌の閉じた顎から飛び出した鋼鉄の首輪がグレイウルフの首に嵌り、モンスターテイムが成功してしまった。

 

「……因みにカード化は出来るか?」

「クゥン」

「ッスー……、ですよねー。やっべ、やらかしたかもしれん」

 

 か細いしおしお声で、わかんないです、と返されてしまい、目の前に居る大型犬を2周り程デカくしたサイズの灰色の狼をどうやって隠すか頭を抱える事になった。

 ……海燕荘で飼えないかな、番犬ならぬ番狼として。

補修レイドは……

  • オリジナルレイド
  • 轟天石榴山
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