※この作品はR-18です。

モンスターファックアンドスラッシュ   作:不落八十八

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#44

 サモエドの成犬を2周り大きくしたサイズの灰色の狼をどう運搬するか、と言う問題に俺は巨大サイズの背嚢に詰める事で解決させた。

 頭から突っ込んだので立派なもふもふ尻尾が飛び出たが、なんかもうそういう素材と言う感じで誤魔化す事にした、なのでお外に出られた嬉しさでぶんぶん振るんじゃないよお馬鹿。

 閉門に合わせて行なった苦肉の策であるが、生もの素材でも有用な部位を持ち帰る事は多々ある様で、訝し気な視線はあれど指摘される事が無かったのは幸いだった。

 何か言いたげな太志に待機とグリーンめいたバイビーを投げ付けてそそくさと海燕荘に逃げ帰った事で、何とかなったと思いたかった。

 宿直室の畳にどっかりと座り、背嚢を下ろして紐を緩めるとにゅっと出てくるグレイウルフ。

 そのままするりと出て来たかと思えば、俺の目の前で再びへそ天して全身全霊の降伏をしていた。

 

「……はぁ。お前の首に俺のモノって言う証拠があるだろ、それがあるうちは処さないっつーの」

「クゥン……」

「そうだ。お前にはこの女子寮の番狼をして貰う。外へ出ずに中の警備だ。女子寮の住人及び客を害する事を禁ずる」

「クゥゥン、クゥン」

「まぁ、外に出ても良いが、実験体として攫われても俺は拾いに行かないぞ。むしろ面倒にならない様に始末するまである」

 

 ご無体な……、とがっくりと顔を落としたグレイウルフ君であるが、そのもふもふとした犬には無い凛々しい顔で媚びを売ればそれなりに充実した生活を送れる事だろう。

 まぁ、そのあたりは速攻で降参を選んだ性格からして適役でもあると言える。

 確認したら立派な物をぶら下げていたので牡と判明した、お前の性別を呪うと良い、牝だったら可愛がったが野郎はノーセンキューだ。

 ……芸を仕込むノリで獣姦を教え込むのも面白いかもしれないが、案外好き者が居るかもしれないので放っておくか。

 

「……さて、取り敢えずお前は此処に居ろ。部屋の中を荒らすなよ、荒らした分だけ尻尾を逆立ててやるからな」

「クゥン……」

 

 力無く頷いたグレイウルフの頭をわしゃってから、羅城門のある広場へと戻り、一角で屯する太志たちを見つけて近寄る。

 既に銭カードの等分などは済んでいる様で手ぶらの様子だった。

 ぶっちゃけ、生もの素材は『職人』ありきの素材なので、実力の足りない今の『鮮血薔薇』の子に卸しても腐らせるのがオチだ。

 オークションサイトを見て価値ありそうな物だけ手元に残して、後は購買部のある棟で二束三文な値段で投げ売りしている感じな訳だ。

 

「おぉ、漸く戻りましたな。アレに関しての説明は要りませんぞ、何となく分かりますからな」

「試しにやってみたらカード化はしなくてな。取り敢えず海燕荘の番犬くんにする予定」

「無料でもふり放題だなんて贅沢っすね」

 

 度々ブラックドックを見てもふりたそうにしていた面々がキラキラ笑顔だ、人気があれば生き延びられるぞ頑張って媚びるんだな。

 レベル確認をしてみるとクラスチェンジ出来るのは俺だけだった様で、どうやら鎧犀を止めるのが大変だったらしくレベリング効率が悪かったらしい。

 前回同様に満子に大盾を作って貰い、錫花さんと一二三姉妹のゴブリンズで受け止める作戦だった様だが、ボーリングのピンみたいな事になり改善に時間が掛かった様だった。

 今思えば完全に自意識を解放している俺のゴブリンたちと違い、錫花さんたちのはガチガチに命令で縛ってたな。

 特に錫花さんのゴブリンズは完全に命令待ち状態なので、細かい指示が飛ぶまでの間は突っ立って盾を構えていただけで、踏ん張りの弱さから先のボーリングピン事件が起きたらしい。

 通常の『文官』が使役するモンスターは自意識をガチガチに縛っており、使役者のレベルを超えると暴走すると言われているそれは即ち野生化だ。

 よくもコキ使いやがって、と逆上するのが常だったんだろうな、故に暴走だなんて呼び方をしている訳だ。

 一方で一二三姉妹の『ゴブリンサーヴァント』たちはそこまで自意識を縛らず、最低限のセーフティだけ掛けている事もあり、目の前でボーリングピン事件が起きても即座に腰を落として受け止める事ができて惨事にはならなかったそうな。

 これにより被害が起きなかった事もあり、一二三姉妹手ずからヨシヨシされたとの事である程度の信頼関係を築けているらしい。

 

「……ぶっちゃけ、乗り換えた方が良くないか? 戦力過多と言うか、本来の『絡繰り師』としてのスタイルに戻るべきだと思うんだが」

「うぅむ、確かにそうですな。姉妹殿も居りますし、因みに竜胆殿は10体と1匹とモン娘3人でしたかな」

「いや、3人クラスチェンジしてそれぞれ10体以上近衛兵を召喚できるようになったから、そこに20体と10羽だ」

「実質1人でモン娘3人と30体と10羽に1匹でござるか。……流石に冗談きついでござるよ、そんな無法許されませんぞ」

「マジなんだよなぁ」

 

 パァ顔を晒した太志に、加えてリーナたちの新たなスキルを伝えていくと引き攣った顔に変わった、そりゃそうだ。

 何せ、その軍団の要が俺1人で完結しているからな、エグいにも程がある。

 完全に指揮系統がはっきりした精鋭部隊を抱えてる訳だからな、完全に数の暴力である。

 

「と、言う事でクラスチェンジしに行くんで着いて来てくれ」

「今より更に強くなるおつもりで?」

「最低でも第四段階までは強くならんと来た意味無いだろ此処に」

「それは……まぁ、そうでござるが」

 

 第三段階に上がって漸く一人前のダンジョン組みたいな風調もあるらしいし、何よりもまた天邪鬼のお姉さんを認識するためにも強くならなくちゃならんのだ俺は。

 何とも言えない表情を浮かべて同行した太志が各種工作スキルを展開し、一時だけ『聖堂』を俺たちの貸し切りにして貰ったので準備は完了だ。

 はてさて、『怪物王子』『怪物王』と続く第三段階はどうなる事やら。

 肩を後ろから小さな手に押された感覚があるので、天邪鬼のお姉さんも準備はOKと言ったご様子だった。

 『聖堂』の入り口に仁王立ちし、円に足を踏み入れた瞬間、白に似た光のラインではなく鮮血の様な紅の光が足元を奔った。

 音があればハザードビープが繰り返されているであろう非常事態めいた特殊演出にただただ困惑する。

 ――■■が反転され、怪物へと堕ちた半■の子は王の道を進まん。

 王冠の祭壇が紅く染まり、流された血が王国の祭壇へと流れていく。

 ――怪物の子は経験を経て、頂へと君臨して王冠を簒奪せん。

 王国の祭壇が紅く染まり、赤黒く染められた血は奥に存在する石門の下へと溜まっていく。

 ――■■の子よ、その血から逃れる事は出来ないと知れ、汝は怪物(りゅう)である。

 秘匿の祭壇に血が奉げられ、深淵より来たる奔流が逆流した。

 より黒く、深淵を帯びた漆黒の闇が、2つの祭壇を経由して俺の足元へと戻ってくる。

 けれど、これは秘匿の祭壇によって暴かれた真実でしかないのだと愕然と理解だけが及んだ。

 

「『龗人(カミビト)』……?」

 

 ぱっと見では身体には何も変わっていない、変わっていない筈だ、なのに、致命的に何かが変わった感覚があった。

 人間であると主張しているのに、人間ではないナニカが覚醒した、そんな悍ましい感覚の拡張があった。

 ふと、頭が若干突っ張っている感覚があったので触れてみれば、両目から真っ直ぐ上になぞった先、頂点付近に2つの突起があった。

 髪に隠れる程度のコブめいた大きさであるが、何故かこれが角であると理解できてしまう、なにこれ怖い。

 『怪物』の第三段階『龗人』へとクラスチェンジしたのだと、何故か分かるのはこの不思議な感覚のせいだろうか。

 薄っすらと学園に満たされた瘴気が今の俺には見えていた、いや、正確には感じ取れていた、だ。

 視覚に瘴気の濃度が映っている訳ではない、感覚で濃い薄いが肌で感じ取れると言うべきか。

 ……なんか本格的に人を辞め始めている気がするんだが、第四段階まで進んで良いやつかこれ。

 困惑しつつも『聖堂』を貸し切り状態にし続けるのは面倒に繋がると思い、外に出る。

 太志たちの様子は特段変わった感じではないので、あの特殊演出は俺だけが見ていた幻覚なのだろう。

 

「……すみませぬ、もはや、拙の眼では竜胆殿を見越す事が叶いませぬ。格の違い、と言うやつなのでしょうな。同じ第三段階とは言えども、こうまでも差異が出るとは……」

「まぁ、なんだ。強い友人が居るってだけだぜ、そうだろ太志」

「……ふは、それもそうですな。して、『怪物王』の次は何に成られたので?」

「『龗人』ってやつだな。雨に、口が並んで3つ、難しい龍の合体漢字でカミって読んで、人間の人が付いて『龗人』だ」

 

 それを聞いた太志と錫花さんと磨具奈さんが頭を抱えてその場に蹲った、とんでもない事になった、と言わんばかりのオーバーリアクションである、ナニコレ。

 もしや、華族の方ではこの『龗人』と言うクラスになった人が居るのだろうか、もしくは文献とかがあったりするんだろうか。

 真奈美たちと小首を傾げていると、よろよろと立ち上がった太志が屋上に行こうやのジェスチャーで海燕荘を差していた。

 成る程、工作スキルが発動していても口にする事が憚られる内容なのかぁ、……そっかぁ、厄ネタじゃん。

 口元を抑えてぶつぶつと呟く太志を先頭に海燕荘へと戻り、人数が人数であるが宿直室を会議場とした。

 

「……落ち着いて聞いて下され、竜胆殿が合体漢字と呼んだそれは(おかみ)と言う漢字でしてな。水を司る神様や龍神様を示す漢字でござる」

「……つまり、龍人。龍神見習いみたいな訳か?」

「その通りでござる、一応の確認でござるがその瓶底眼鏡を取って貰っても宜しいですかな」

「あぁ……、ほい」

 

 瓶底眼鏡を外して前髪を上げてオールバックにして素面を晒すと、その美貌に息を呑む音に別の音が混じった雰囲気だった。

 再び太志たちが天を仰いだのを見て、隠されていた目に何かしらの変化があったのだろうと察した。

 近くに居た女子力の高そうな満子に手を差し出せば、ツーカーで察してくれた事で折り畳み式の手鏡を受け取れた。

 さて、どうなってる事やら、と鏡面を覗き込めば日本人らしい黒目が映ったが、目を凝らすと瞳孔が縦に開き所謂爬虫類系のそれに酷似していた。

 りゅ、龍の瞳だぁー!? 頭の角といい、この瞳といい、本格的に人を辞めたな俺は!?

 内心でドサクサ妖精が大根両手に通過したぐらいに大混乱な内心であるが、心の何処かでいつかこうなる定めだった、と言う感覚もあった。

 ……今の俺には2種類の感覚があった、蛇のピット器官の様な人間の感覚ではない別種のそれが、漠然とした人間の感覚よりも鋭敏にアンテナを張っている様な感じだ。

 瓶底眼鏡を付け直し、前髪も下ろせば少しは抑えられるだろうか、恐らくこの龍の眼が関係している様に思える。

 

「にしても……、何でこんな事になってるんだ俺は」

「うぅむ、龍神様の加護とか貰い受けていたりしますかな。もしくはそういった家業だったとかは」

「いやぁ、皆目付かないなぁ。母親が客取ってた中に龍神様が居たとかかね」

「もしくは……」

 

 何やら言い辛そうに口籠る太志の様子からして、学園の上層部やそれこそ学園に出資するお偉いさんの非人道的な実験の産物なのだろう。

 だって揃いに揃って元華族組が頭抱えてるんだぞ、絶対にそうだろ。

 もしくは、秘密裏にされているが祀ろわぬ神様が普通に市井を闊歩していて、何処ぞの下半神の様に母親を孕ませたのかもしれない。

 あの時の父親の言葉はきっとそう言う事だったのだろう、だから麻薬に走ったのか恐怖を忘れるために。

 父親が学園の典型的なOBであるならば、気に入った肉壺の母親への態度は主従のそれだったに違いない。

 今思えば父親が密売人を始めたのは俺が産まれてからなんじゃなかろうか、それまでは学園外の野良ダンジョン的なのを調査したりする仕事に就いていたのかもしれない。

 魂魄結晶を失ってもダンジョンに行かなければ孕む事もある、と言う過去の事例からして生殖機能が劣化するだけて完全には無くなりはしないのだろう。

 当たる確率がピックアップ詐欺めいた小数点になるなら、当たるまで引けば良い訳だからな。

 聞く話によれば媚薬の類とされている『ゴブリンラブポーション』なら避妊効果が、『オークラブポーション』は妊娠効果があり、好事家がオークションで買っているのだとか。

 ぶっちゃけ、種子が胎内に残り続けるくらい盛るから数射ちゃ当たるをしているに過ぎないんだろうな。

 ダンジョンへ行かずに回され続けるのだから然もありなん。

 故に、学園の外に出て退廃的な生活から、日常生活に戻らないといけなくなれば必然的に回数は減り、よっぽど計画的に子作りに励まないと外で妊娠するのは宝くじを当てる様な確率になる。

 だが、宝くじ側から来てしまえば話が変わってくる、レベル差や段階差、つまりは肉体強度の違いが格差であれば孕む可能性は上がる。

 売春婦ぐらいしか出来ないであろう母親に客として訪れていれば当たる事もあるだろう。

 

「……もしや、俺らの立場ってDクラス職員?」

「遠からず、ですな。華族の者は日の本の新たな支柱になるべし、とダンジョンの機構を身体能力及び頭脳強化のために利用して政界や大企業に組み込まれるべく、勉学に励むのでござる。ダンジョンから日の本を守る守護者としての役割は、華族の一部特化した家柄や一般生徒の役割となっておりますな」

「付け加えるならよぉ、昔の護国精神溢れる方々は既に身罷れてて、その後に甘い汁を吸いに来た寄生虫共が上層に巣食ってんだ。この学園の在り方なんざ昔ながらの男尊女卑な亭主関白だろ、つまり上の頭はそう言う頭をしてるって訳だ」

「……故に、私たちみたいな、溢れ者は、立場が無い」

「……成る程ねぇ。俺の出生もそこらへんが関係してる可能性が高いって事か。学園OGの胎を使った人体実験とかな」

 

 太志たちは俺の言葉に静かに頷く、何かしらの噂があったんだろうなと察した。

 一般生徒である真奈美たちは、すんごい事を聞いてしまったと『鮮血薔薇』の面々と共に顔を見合わせていた。

 そして、生唾を呑んで彼女らの代表として真奈美がおずおずと前に出て口を開いた。

 

「つまり、ご主人様の逸物はお父様からの遺伝って事っすか? ってあいたぁっ!?」

「この馬鹿! シリアスぶち壊してるんじゃないわよ! 今聞く内容じゃないでしょ!」

「……あぁ、天然物だぞ。それもドラゴン級、超ド級の逸物だ」

「アンタもノってんじゃあないわよっ!?」

「……ま、この面子で真面目な話なんて出来ないわよね」

「つよつよおちんぽ」

「よわよわおまんこ」

「流石は旦那様、略してさすだん」

 

 俺たちにはこの雰囲気で良いな、やはりオタクは光ある所で生きられない生き物なのである、故に闇に紛れて生きるのだ、妖怪人間かよ。

 と言うか今更俺が人外化しても、既に玉藻みたいになってる宮子が受け入れられている訳だし取り越し苦労か。

 太志たちが反応したのは龗の部分だけで、『龗人』自体には引っ掛かる物は無いらしい。

 そんなこんなで集まりは解散し、太志たちはもはや愛の巣と化した自室へと戻り、俺は27人の欲情を我慢した少女たち相手に何処ぞのライダー軍団に挑むショッカー隊員めいた心地でお相手仕るのだった。

補修レイドは……

  • オリジナルレイド
  • 轟天石榴山
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