色々な検証を経て人を若干止めた事を実感した午前中のソロ活が終わり、昼飯のために羅城門の広場に飛ばされると尖がっていた角や伸びていた尻尾が鳴りを潜めていた。
あくまで瘴気の濃い所での臨戦態勢と言うか、活性化状態にあるとあの容姿になるようだった。
こうして広場を歩いているとあれ程までにムクムクとしていた性欲も収まっており、活性化により生命力の増強により有り余った力が精力として引き起こされていた現象だったのかもしれない。
銭カードへの換金も適当に済ませて、さて何を食べに行くかと腹の調子を確かめてから、全く空腹が無い事に気付いて違和感を感じた。
……まさかと思うが、『龗人』となり龍人めいた身体と魂の規格に変わったから霞を食って生きる仙人の様に、瘴気を食べて満足する身体になっていたりしないよな。
試しに何か食べてみれば良い話か、日曜なので学生街の方で小さな露店が出ているだろうと思い至り、其方へと足を進める。
「……流石は休日って感じだな、実に賑わってるな」
午前にダンジョンへ潜った男子向けにかステーキ串を出しているところがあったので、銭カードでピピっと支払い口にすると濃厚な牛肉の味が口に広がった、うむ美味い。
一串食べ終えて空腹具合が何にも変わってない事に気付き、若干嫌な予感を覚えつつ、目に付いた物を歩き食いする事にした、したのだが……。
「やっぱりか」
うおォン俺はまるで人間火力発電所だ、と言わんばかりに食っても飲んでも胃袋が埋まる心地は無い。
食べた先から消化されて栄養と化しているかのような心地だった、今ならあそこの大盛り挑戦メニューも食べられる気がして来た。
……ちょっと試してみるか、と思ったが白い犬の着ぐるみを着た恐ろしい気配をした少女が歩いて行ったので足を止める。
龍瞳で見やれば何もかもを食べ尽くすと言わんばかりの飢えの気配を感じるんだが、ナニアレ。
そして、そんな視線を感じ取ったからか、件の少女が此方を向いて怪訝な表情を浮かべた。
「なんだ、お前。変な感じがするのだ」
「……ご挨拶ですね、俺は至って真面目な一般通過モブですよ」
「本当かー? その割には……、変な臭いがするのだ。レアなのにウェルダンを越えて真っ黒焦げの様な」
「あー……、クラスのスキルの検証で学生服を焦がしたんでそれかもですね」
「ふぅん? ……同類、では無さそうなのだ」
「違うでしょうね、何となくそんな感じはします」
水と油と言うよりかはごま油と菜種油と言うか、似ているが相容れないカテゴリに居るそんな感じがする。
俺が護る者であるならば、目の前の着ぐるみ少女は壊す者だ、表立って対立する間柄では無いがきな臭さを感じる。
目の前のこいつがこの国で暴れ出したのなら、俺はそれを阻止して護らねばならない、そんな護国精神が何処からか降って湧いた心地だった。
常識で測れない相手だからこそ、お互いの非常識が浮かび上がって勘付くと言った具合に、何故か喧嘩腰になっていたマインドを首を振って打ち消した。
その突然の行動に着ぐるみの少女はきょとんとしていたが、今度は険しい顔ではなく可愛らしい困惑顔で小首を傾げていた。
「臭いが変わった……? なんなのだお前、不思議な奴だな」
「どっちつかずの半端者ってだけかもしれないですよ。これでも人間だと自称しているので」
「……まぁ、良いのだ。私は小腹を満たすのに五里霧中なのだ」
「そしたらそこのアレとか丁度良いのでは?」
「なになに、バケツラーメンチャレンジ! うーん、でも」
着ぐるみの少女は目を輝かせたもののしょんぼりと顔を俯かせていた、よく見れば店頭に出禁者の顔として少女の写真がでかでかと貼られていた。
あぁ、もしかして賞金を繰り返し手に入れて殿堂入りさせられている感じなのだろうか。
「出禁って……、そんなに来たんですか此処」
「ラーメンをいっぱい食べるには丁度良かったのだ。ちょっと大食いメニューをお代わりしたら食材を切らせちゃっただけで、何も悪い事はしてないのだ」
「あぁ……、成程そう言う感じですか。今の俺なら親近感湧きますね」
「む? どう言う事なのだ?」
先程までの訝し気に警戒してた姿とは打って変わって、食べ物の話になった途端凄い距離が近くなったな。
それ程までに食に心を傾けているんだろうな、常時着ぐるみ着ている意味は分からないが、呪われてたりするんだろうか。
「今のクラスになってから飢えも乾きも無くなりまして、前までならお腹いっぱいになっていた量を今さっき食べて来たんですが、この通り体型に出ないし直ぐに消化されちゃって満腹を味わえないんですよね」
「むむむ、それは由々しき事態なのだ。その辛い気持ち暴食の肩書を持つ私がよぉくわかるのだ」
「暴食? ……あぁ、7つの大罪ってやつですか。え、そんなクラスもあるんですか此処」
「うむ、何を隠そう『
「あ、これは御丁寧にどうも、やっぱり先輩だったんですね。自分は『
「うむ、君は礼儀正しいイイ子だな! 纏う気配がちょっとアレだけど!」
随分とロリな先輩だなぁと思いつつ、ロリじゃないんですけど、と叫んで欲しさがあった。
にしても7つの大罪を模したクラスもあるのか、そうなるとその逆のやつもありそうだな。
なんかいきなりファンタジーっぽくなったな、と思いつつ、先程から鋭い視線を陰から送っている人物への対処をどうしたものかと頭を悩ませた。
そりゃまぁこんな特異職保持者を野放しにしないよな、何処か初期の太志らしい隠密と言うか裏の人っぽい雰囲気を醸し出しているその人を髪の中にこっそり作った後ろの眼で見ると、ロン毛が特徴的なカマっぽい感じの人だった。
イケメンであるが何処か雰囲気と言うかくねっとした立ち振る舞いがジェンダーな感じを醸し出している。
着ぐるみロリにオカマのイケメンか、面白い組み合わせだなと思いつつ、食事のアテも無いので太志たちと合流すべく別れを口にした。
「では彩日羅先輩、午後のダンジョンのために合流しないといけないので失礼します」
「おぉ、良い心掛けなのだ、この学園に居る以上強くならないと駄目なのだ!」
円満な別れをしてロン毛の保護者とは反対側の方角へと足を進め、敢えて撒く様な素振りをせずに海燕荘のある方向へと堂々と歩いて行く。
此処で変な素振りを見せて警戒されても面倒だからな、こう言うのは自然で居るのが正解だろう。
思った通りあの保護者は彩日羅先輩から離れる事はせずに見送るだけに留めた様だった。
「……はぁ、アレ、明らかに学園の人だよなぁ。やっぱり居るよな……あぁ言うの」
敢えて一般組に潜んでいるあたり密偵と言うよりかは買収とかされた口なのだろうか、一般生徒ならそう言う人が居てもおかしくはないし。
太志の様に華族の分家筋って線もある訳だし、下手な行動は止めておこう、『龗人』の名前を出さなくて正解だったな。
だなんてホッとしているとうちのクラスの問題児こと叶馬君とその彼女さんっぽい静香さんが腕を組んでデートをしているのが見えたので、即座に路地裏へ逃げ込んで気配を隠して海燕荘へと走った。
鉢合わせれば面倒になると感じて逃走に舵切ったのは無意識の事だった。
……まぁ、一般モブが不良生徒に絡まれない様に自己防衛するのは当然の事だよな、うん。
だが、叶馬君が俺と似たような気配をしていたんだが、どう言う事だろうか。
近親感と言うか、似たような系譜と言うか、親戚の様な感じがしたのは何故だろうな。
ただ、なーんか違う気もするんだよな、似ているけども重なっているというか、双子なのに本人みたいな感じだ。
この第六感めいた感覚にまだ慣れていないからか具体的な言葉が出ない、非常にもどかしいばかりだ。
海燕荘の前に既に集まっている太志たちの姿を見て何処かホッとしつつ、『鮮血薔薇』の面々もちゃんと18名居る事を遠目で確認してから近付いていく。
「おーっす、未来のチャンピオン」
「拙よりも竜胆殿の方がポケモンマスター味あるのでは?」
「一理ある」
「して、本日はどうしましょうかな?」
「んー、正直温いんでソロでも良いんだが、そっちから『文官』1人抜くと大変だろ?」
「そうですな。今磨具奈に錫花の巨大傀儡を作る様に頼んでおりますので、それが終わるまでは居て欲しいですな」
「はぁん、速攻系……だと身長足りないか、となると鈍重系か」
「おうよ、武蔵坊弁慶みてぇなどっしりしたもんを作ろうと思ってる。親方、鎧犀の素材余ってんだろ、くれるかい」
「めっちゃくちゃありますよ、78スタックくらいあるんですけど足ります?」
「……御釣りがくらぁ。というかそんだけありゃ完成まで漕ぎ付けるが」
確認のため太志を見やれば頷いたので、一度『火具土』の倉庫に放り込むべく俺と磨具奈さんだけで部活棟のある方へと向かう。
向かうまでの間に俺も巨大武器を1つ拵えて欲しいとお願いをすると、あっさりと1つ返事で応えてくれた。
『職人』ではあるが『巨匠』の肩書に資質が偏っているので、普通に作って貰うよりも気合が入るそうな。
素材として、『フルメタルエント』の鋼鉄原木と『蛮鬼剣』に鎧犀の外殻革を提供し、鈍重で巨大で頑丈なツルハシを作って貰う事にした。
「おいおい、こいつはこの後使うんじゃねぇのかい」
「ぶっちゃけ、素手で殴った方が強いんですよね、今」
「……そうかい、ふっ、坊も良い奴を相棒にしたもんだ。任せな、良い物作ってやるぜ」
「宜しくお願いしますね」
部室の奥の方から甲高い中性的な嬌声が聞こえてくる、……明らかに砥蘭さんっぽいので、中に入らず鍛冶場の縁側に素材を置いてそそくさと戻った俺は太志たちと合流し、何も聞かなかったし見なかったとダンジョンへと足を進めた。
無駄に聴覚も良くなっているから聞こえてしまった弊害である、多分普通の耳じゃ聞こえないくらいの音量なので見つかる事は早々無いだろうなと遠い目を浮かべる。
――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――
――第『伍』階層、『既知外』領域――
さて、久方振りに『ハイグレートスレイヴゴブリン』を10体『隷属具象化』し、『ハイグレートスレイヴブラックドック』と『ハイグレートスレイヴグレイウルフ』をお供に付ける。
リーナたちは親衛隊を召喚する事はせずにバフ掛けだけを頼んだが、ぶっちゃけなくても勝てるんだよなぁ。
実際、太志たちが苦戦したのは鎧犀の突進だけであり、鎧犀自体は別に苦戦する相手では無いのでサクサクと始末できる。
仕込み杖からしゃらりと抜刀し、『隠蔽工作』により隠遁した状態で『欺瞞工作』により常時自分に対して隙を作り、『偽装工作』により距離を騙して首元にゆるりと近付いてその首を一刀のもと切り捨てた。
第三段階の肉体強度に嘘偽り無し、とばかりに五右衛門めいたスマートさで始末したのを安心して見られていた。
グレイウルフの群れが接近すれば、一二三姉妹の『ハイゴブリンサーヴァント』が満子の作ったピッチフォークめいた三又の槍を構えて牽制しながら足止めし、真奈美の『黒弾』と宮子の『狐火』で仕留めた。
エントが擬態していれば満子が『実体化』したチェーンソーを取り付けた槍と言う何処のデッドライジングだよと突っ込みたくなる様な合体武器を使って伐採していた。
マタンゴはそもそも見かける事すら稀だからな、今回は見つからなかった。
3時間程度伍階層を練り歩いた事で漸くゲートを見つけられたのは僥倖だった。
「一二三姉妹を先にレベリングして、サブクラスを取得させる方が先だったかもなぁ」
「あぁ、その手がありましたな。折角『文官』クラスが3人も居るのですから活用すべきでしたな」
「レベル、そろそろです」
「ゴブくんたちが意外と」
「経験値を持って行ったのでした、まる」
「ゴブリンたちもハイグレートにしても良いかもな。ぶっちゃけ、暴走して野生化しようが俺が居て逆らうとは思わん」
「それはそう。いっそ、今の内に縛りを解いて自我を与えて教育するのも手ですな」
「それがあったか。ちょっと世間に出すにはヤバすぎる切り札を得たからそれで脅すか」
「……初耳なのですが?」
「そりゃ午前中に検証したやつだからな『龗人』のスキルだしな」
名前を付けてないが、何となくスキルとして運用が出来るのは何でだろうな。
あくまで身体の延長線上にあるからコントロール出来ているだけなんだろうか。
スキルのサンプルを取れなくないんだがそれを実証と言うか言語化できる人が居ねぇんだよなぁ。
こればっかりは華族のアウトローめいた太志たちには期待できない事なので、考古学者的な立ち位置の人が欲しいもんだな。
それか学園側で色々と機密を知っている様な人だな、……教師とかを丸め込むか?
何でも学園の先生たちは性に関するSSRクラスに就いている人が多く、学園OGである可能性が高いんだよな。
だが、その扱いからして一般生徒からの叩き上げの可能性もあるので期待はできないか、無しだな。
補修レイドは……
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オリジナルレイド
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轟天石榴山