※この作品はR-18です。

モンスターファックアンドスラッシュ   作:不落八十八

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#47

 さて、ゲート前に居座るゲートキーパーを魔物知識判定(いつもの)で見抜いた太志からの情報であるが。

 『超重鎧犀(ヘヴィアーマードライノセラス)』、レベル45、『噴射』『硬化』『赤熱』と言う感じであった。

 その外殻の重量から走る事を辞めた防御に徹した個体と思われる鎧犀が二足歩行を実現していた。

 前足には巨大な外皮の大盾が装着されており、もはや重騎士と呼べる様な有り様であった。

 特徴的な額の角は日本刀の様な切っ先めいており、スキルの内容からして超重量を『噴射』によって動かして、『硬化』で生身を守りつつ『赤熱』で止めを刺すと言った感じのスタイルだろうか。

 

「さて、どうしますかな。竜胆殿が大怪獣バトルと洒落込みますかな?」

「前半と後半に分けて経験値を分けるか。ポケモンのレベリングみてぇにダメージを与えて交代する感じで」

「もしくは全員で囲んで殴ってダウンを取る感じですかな」

「……全員でダウンを取る方が分配良さそうだな、そっちで行くか」

「承知しましたぞ」

 

 基本的にうちのパーティの方針は最大火力の俺と頭の回る太志との話し合いで決まる訳だが、他の面々がこれに素直に従ってくれるのは男尊女卑と言う訳ではなく単純に効率的だからだ。

 前衛である俺らが戦いの流れを掴んだ方が後衛である彼女らは楽が出来る訳で、そうなるとダメージヘイトを受ける面々で話し合った方が早いのである。

 第一陣は俺とモン娘3人と使役モンスターズとなり、準備のためにブレザーの上を脱いでワイシャツの袖を捲った。

 『形態変化』により両腕が竜騎士の篭手を嵌めた様な有り様となり、満子が丹精込めて書き上げた超重量チェインハンマーを握り締める。

 

「きゃははっ、行くよ!」

「わはー!」

「きひひ……」

 

 それぞれの親衛隊が展開され、続いて全てのメンバーにバフが掛けられ、『工作』スキルにより不意打ち判定となるデバフが『超重鎧犀』へと掛けられた。

 それにより此方の存在を視認した10メートルはあろう巨体が迎撃態勢に入り、若干腰を落として両腕の大盾を左右に構えた。

 そして、『噴射』によって背中側の外殻の隙間から噴き出した蒸気が跳躍した巨体を押し、『超重鎧犀』はあろう事か上空に飛び上がり両盾を振り下ろさんと殺意を向けたのだった。

 超重量チェインハンマー改の総重量は500㎏であり、先端の棘付き鉄球の重さは300㎏となっているが『龗人』の膂力はそれを遥かに凌駕しており、易々とチェインを振り回し遠心力を持ってして迎撃の一撃を放った。

 上空でぶつかり合う超重量級の一撃は甲高い凄まじい轟音を玄室に臓腑が揺れる程に引き起こした。

 

「……ちっ」

 

 威力が競り負けたっぽいな、繋がっているとはいえ投擲物だしな、然もありなん。

 体勢を崩しながらも此方へと真っ直ぐに落ちてくる『超重鎧犀』を迎撃し直すにチェインハンマーは使えない。

 大盾を構え直して赤熱化させた角で此方に狙いを付けているあたり非常に殺意が高いなこいつ。

 格上殺しと言うよりかは初見殺しで自身の得意を押し付けるバトルスタイルの様だ、実に闘い甲斐があるモンスターである、燃えて来たぜ。

 親指を握らぬ様に握り拳を作り、迫りくる『超重鎧犀』へと対空技で迎撃する。

 しっかりと両脚を地面に付け、アッパーの形で固定した右腕を落ちて来た赤熱した角へと向ける、地面に刺さった鉄骨と等しい今の俺を真正面から圧し折れるか?

 インパクトの瞬間に力を込めて撥ね返す、その硬過ぎる手応えに兜めいた顔の外皮から覗く一対の瞳が驚愕で揺れたのを見抜く。

 鈍くも甲高い音が玄室へ響き渡り、根本から圧し折れた『超重鎧犀』の角が虚空を飛んでいく。

 

「テメェの自慢のチョキ、俺のグーには勝てなかったみてぇだなぁっ!」

 

 脳震盪でも起こしたのか『噴射』して体勢を立て直しながら踏鞴を踏んだ『超重鎧犀』に接近し、『怪力』によって増幅された筋力と愛娘たちのバフにより極まった状態で、踏ん張る左膝へと回し蹴りを放ち曲がらぬ方向へと圧し折った。

 クリティカルに入った一撃により、左膝を粉砕骨折された『超重鎧犀』はその自重を保つ事が出来ずにそのまま片膝をつく事となる。

 正直このまま止めを刺すフィニッシュムーヴに入っても良いが、折角の経験値の塊を独り占めするのは勿体無い。

 ……と言うか、今の俺ではこいつの経験値をあんまり受け取れないだろうしな、後ろに下がるか。

 

「ショータイムってなぁ! やっちまえ!」

「承知、此れぞ隠遁の極意『錯死』っ!」

「絡繰りは、手元だけで、終わらない『傀儡悪戯』っ!」

 

 両腕を振り回して太志の接近を阻止せんとした『超重鎧犀』であったが、錫花さんの手元から放たれた傀儡糸により両腕の制御を奪われ、ドラミングする様に胸元に自らパンチをする羽目となり動きを止めざるを得なかった。

 その一瞬の隙に瞬間移動するかのような速度と隠遁により首元へと迫った太志が、不意打ち攻撃に加えて奇襲性のあるクリティカルな刺突を行ない、外皮と外皮の隙間を見抜き両肩を貫いて繋がる筋を絶った。

 

「今です、『落書き』開始!」

「よわよわ、ざぁこ!」

「当たらなければ云々キャンセルっ!」

 

 『文官』の基礎スキルの1つである『落書き』は、あらゆる場所に禁則性を込めた文字を書く事のできるスキルである。

 学園の愚かなエンジョイ組はこれで淫猥な文字や絵を描いて女性を弄ぶために使っているようだが、これの本来の使い方はマップ機能が充実するまでの間に壁や床に行ってはならないなどの禁止事項を描くためのスキルだろう。

 恐らくは炭鉱めいた古いダンジョンで行き止まりなどを後続に教えるための便利なチョーク扱いであり、新人の命を守るための規制線だったが、マッピング技術の現代化により不要となり、文字通りただの『落書き』と化したのだろう。

 書いた者よりもレベルが低ければ禁則を破る事は出来ず、当時では安全第一なダンジョン探索作業を従事させる立派な役目だったに違いない。

 一二三姉妹はパスの繋がった『ゴブリンサーヴァント』を通じて、その指先にSPを集中させ『超重鎧犀』の胸元の外皮に禁則事項を同じ場所に重ね書きした。

 格上に対して強制力を持たせられない『落書き』であるが、俺とパスの繋がっている一二三姉妹であれば俺のレベルを参照した事にして『落書き』の効果を最大限に発揮させられる。

 全弾必中、と書かれた『超重鎧犀』の腹部にマーキングが行われ、外してはならない、という禁則事項が書きこまれた。

 これにより俺よりもレベルの低い者は此処へ必ず当たる様になる、必中バフめいたマーキングが完成する。

 これを『超重鎧犀』が自力で破るためには、代理の行使者となる俺よりも強くならないといけない、しかし瘴気濃度の関係でこれ以上強くなれないが故にこれを破る事は実質不可能に近い。

 戦闘に向かない『文官』であるが故に、FPSめいた誘導ビーコンからの誘導ミサイルコンボは決まれば強い。

 本体が弱いなら強い使役モンスターを使えば良いのだ、当然の結論である、では遠距離攻撃の集中砲火だ、死ぬが良い。

 

「行きますよぉ! 暗黒魔法(ブラックマジック)、『呪魂裂傷(ソウルペイン)』!」

「練習の成果、魅せてあげるわ! 五指『狐火』!」

 

 相手の魂に直接ダメージを与える悍ましい暗黒の秘儀たる怨霊弾がゆらゆらと避け辛い弾道を描きながら胸元へと吸い込まれる様に着弾し、呪怨裂傷状態と化した『超重鎧犀』の身体のあちこちから裂傷が引き起こされ、不治の傷となり半永久的な出血ダメージに苛まれる事となる。

 そんな『超重鎧犀』へと泣きっ面に蜂とばかりに五指の先から放たれた五連発の『狐火』が胸元へと着弾し、外皮を吹っ飛ばした挙句に生身の柔らかい肉に致命的な火傷を与えた。

 無理矢理に片膝でも身体を起こそうと背中の『噴射』により体勢を立て直すその一瞬の隙、噴き出すための空気の吸引の予兆を観察眼に優れた満子は外さなかった。

 

「逃がさないわよ、『幻想実体(フィクション)』!」

 

 スケッチブックに『落書き師』によって描かれた絵、それはビルを搔き分け空中を飛ぶ鮫であった。

 有り得ない生物として現実へと実体化された鮫は水中に居るかの様な速度で空中を泳ぎ、鋭利な牙を露わにして『超重鎧犀』の剥き出しの胸元に食らい付き、デスロール染みた回転で内皮を噛み千切る。

 『噴射』によって浮かび上がろうとしていた『超重鎧犀』が再び崩れ落ちる。

 

「これで、〆よ! 『幻想抹消(ノンフィクション)』!」

 

 内包したSPを用いて空飛ぶ鮫は自爆し、小規模な爆発を引き起こして『超重鎧犀』の噛み千切った先に致命傷を与えた。

 『幻想実体』で作る事の出来る生物は現実に存在しない事を条件としており、見事その絵にはB級映画の鮫が抜擢されたのであった。

 ……うん、鮫映画の創作鮫って割とマジでやるとえぐいんだよな、飛んでる時点でぶっちゃけ無法であるし。

 B級映画のお約束なお馬鹿な忖度一切無しのガチンコ空飛ぶ鮫であるため、その殺意は非常にえぐい。

 ただ、弊害として空を飛んでいる事が分かる様にビルや家などの小物を描かないといけないし、何よりも一度使うと絵に戻す事が出来ずに必ず消滅させないといけないデメリットが存在する。

 もっとも、満子はその分書く練習になるじゃない、と実に頼もしい事を言っていたっけな。

 と、言う事で見事満子がラストアタックを決めて『超重鎧犀』戦は完了したのだった。

 ドロップアイテムはお馴染みのカードに、折れた立派な角と両腕の外皮大盾が1つ、そしてにゅっと出た宝箱だ。

 宝箱の装飾は石造りであり、ちょっとレアな感じがする造形だな、普通にセンスが良いのでインテリアに使えそうだ素材も大理石っぽいし。

 

「工作はばっちりですぞ、ささ、此度のラストアタックの満子殿が開けると良いですぞ」

「え、良いの?」

「良いぞ、存分に開けろ」

「よぉし、えいっ」

 

 後方腕組みトレハンは良いぞおじさんとなりながら見守ると、満子は大理石の宝箱の中から何かを取り出そうとしたものの重量に負けて持ち上げられない様子であった。

 後ろに回り中を覗けば樽みたいな大きさの金槌部分に1tとでかでかと書かれた巨大なハンマーが入っていた。

 

「こ、これはまさか……ガチの1tハンマーでござるか!? 中が空洞になっている訳では無く、マジの重さでござるなこれ……」

「この大きさで1tとかナニ使ってんだろうな、これ。地味に気になるわっと」

 

 気合いを入れればギリ持ち上げる事の出来た1tハンマーを肩に担いで見せれば、冷や汗をたらりと垂らす太志たちの姿があった。

 

「いぇーい、オタクくん見てる~? 俺は今、1tハンマーを担いでまーす、人間離れ甚だしいなおい」

「いや、普通に人外レベルでござるよ。……あぁ、魔力を込めると軽くなる銘器の様ですな。普段から軽くしないと持ち歩けない、と言うコンセプトの産廃武器……の筈なんですがな」

「おぉー、すっげぇ、ピコピコハンマーくらいに軽くなるじゃん」

「軽さの余りに手放さないでくだされよ」

「これならスマブラごっこもできるぞ太志」

 

 まぁ、なんだ『蛮鬼剣』の時に知ってるんだ、軽い状態から重くすると手首がやられるってのは。

 なので、基本的に軽くせずにそのまま超重量武器として扱うのが正解だな、アイデンティティがお釈迦になった瞬間である、泣いて良いぞ産廃武器くん。

 邪魔なので涼しい顔で『収納袋』に仕舞ったが、推定1tを持ち上げられる筋力って何だよ、自分の事ながらドン引きだわ。

 大丈夫かこれ、第四段階になっても人型保ってられるのか、あんまり逸脱すると人間味が薄れるぞ俺。

 大いなる力には大いなる責任が伴う、だなんて名言が浮かんでくるが、こんな危険物どう取り扱えってんだ、資格が必要か?

 

「危険物取扱者試験とか受けた方が良さげか?」

「その場合拙らが取得しないとですかな……。実に頼もしいですな」

「めっちゃくちゃ棒読みで草。取り敢えず陸階層に進んで更新してからゆっくりするか」

 

 ――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――

 ――第『陸』階層、『既知外』領域――

 

 陸階層へのゲートを潜るも見慣れた光景だな……。

 さて、この階層のエネミーは……面白いのが多いな、と電子生徒手帳を見ながら思わず笑みが溢れた。

 『ジャックランタン』『サラマンダー』『スノウウルフ』『クレイマン』など個性豊かなラインナップだ。

 ただまぁコンセプトは分かる、多分魔法主体のモンスターたちだなこれ。

 第伍階層が物理主体だった事もあり、打って変わって魔法主体のモンスターで固めて来た訳だ。

 南瓜の頭にマントと手袋しか無いジャックランタンが、ふわふわと浮かびながら後衛に向けて火の玉をジャグリングしながら投げ付けて来ている、害悪行動止めろや。

 イラっと来たので1tハンマーこと『軽量鎚』を叩き込んで壁の染みにしてやり、軽くしてから天井近くで浮いてる糞南瓜野郎に投げ付けた。

 それを払う素振りを見せたジャックランタンだが悪手である、それは回避すべき超重量武器だ。

 払おうとした事で直撃コースへ自ら入る事になり、慌てて押し退けようとしても1tの重量がそれを許さない。

 そのまま抱き抱えるようにして重力に従い重量に押し潰され、ミンチよりひでぇや、と言う感じに頭が破砕された。

 スノウウルフは群れを成しており、冷気を纏い素早く移動する事で相手を凍えさせ、身動きを取れなくなった所を狩る狩猟スタイルだった。

 が、こちとら玄室を三分の一埋める人数である、走り回るスペースなんて無いので普通に真正面から攻略された。

 冷気の込められた吐息が地味に厄介だったが、竜尾から発射した血液により一瞬で真冬から常夏と化し、暑さで悶えた所をタコ殴りした。

 

「……竜胆殿?」

「口、両手、竜尾から発射すると俺の血液はマグマ以上の温度を引き起こす燃焼剤になるっぽい」

「……あぁ、一二三姉妹のゴブリンへの脅しって」

「燃えると言うか溶解の域だからなぁ、相当苦しんで死ぬだろうな」

 

 自意識を取り戻すくらいに支配力を下げた『ハイグレートゴブリンサーヴァント』たちは、一二三姉妹への叛逆ではなく、俺への丁寧な土下座めいた崇拝の姿勢を見せた。

 ……そもそも名前にサーヴァントがある時点で隷属してる可能性は普通にあったな、と思いつつ良きに計らえと指示しておいた。

 すると一二三姉妹の護衛として自負がある様で、彼女たちの前に片膝ついて一礼し、そのままかしづいたのだった。

 一二三姉妹が頑張ってねと頭を撫でると、褒美を受け取ったかの様に喜んでいる様子だった。

 傍から見たら凄い絵面だが、うちのパーティの特色みたいなもんだなと苦笑が漏れた。

補修レイドは……

  • オリジナルレイド
  • 轟天石榴山
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