さて、週末にゴールデンウィークが待ち受ける月曜日であるが普段と変わらぬ朝を迎えた。
海燕荘の宿直室での乱痴気騒ぎも肉体が仕上がって来た事で熟れてきた感じがする。
左腕を抱え込んですやすやと寝ている三美の姿を見て二度見した、気合で起き上がって抱き着いて来たんだろうか、根性あるなぁ……。
ダンジョン内でのご褒美ックスの時の事を思い出し、せめて俺の隣にいる間は安寧を得て欲しいと気持ちを込めて頭を撫でてから『形態変化』で左腕を細くして引き抜いた。
代わりに俺に掛かっていた毛布を掛けてやるとお気に入りの毛布に包まるかの様に抱き込んだのを見て微笑みが浮かぶ。
庇護欲と言う感情が込み上げており、俺と言う人間擬きを頭とする信奉者の少女たちに報いたい想いでいっぱいだった。
汝は神子、神の子である、と指摘されてからかどうにも思考が超越した全能感を伴う。
ズレていたピントが合う様に、見えなくても良い物も見える様になってしまった、そんな感じだった。
と言っても自意識は普段の俺と変わらず、この娘たちに対しての愛しさが爆発しているだけとも言う。
「……開店日だし、しゃっきりするか」
普段通りに食堂でグレイウルフ君の恨みがましい視線を無視しながら朝食を取り、長期の休みが近付いている事で活気づく通学路を歩んで教室へと辿り着く。
どうやら勇者くんチームが活発化している様で、それに触発されて他のグループも意気込んでいるらしい、お可愛らしい事である。
ゲーム脳染みた考えを持つ俺からすれば毎日ダンジョンに潜らない奴らの怠惰が理解できない。
こんな肉体が資本な環境でレベリングはマストの行動だろうに、何故性欲にかまけて性行為に没頭できるのか、これが分からない。
……そう言う意味では羅城門の死に戻り機能は邪魔だったな、これのせいで緊張感を無くしている。
せめてウィザードリィ式であれば、灰になり、消失する恐怖が根底にあれば、もう少し気合入れて冒険者もとい学園生を全うするだろうに。
やはりこの世界の根幹はエロゲーか何かの原作があるんじゃなかろうか、だなんて勘ぐってしまうのも無理は無いだろう。
炭酸の抜けたコーラの様な日々を送っている彼らはきっと大きなイベントでは生き残れないだろうな。
学園からすればそれでも良いのだろう、そうでなければ此処まで腐った環境にならない筈だ。
「……もしくは既に侵略工作が成っていて終わる秒読みか、なんてな」
本来守護の陣営として成り立つべき学園の上層部が悪しき何某により陥落済みで、ダンジョンに纏わる厄ネタな組織やらが表舞台を侵略せんと蠢いていたら如何だろうか。
経年劣化ではなく意図的な腐食と圧力で起こされているのであれば事故ではなく事件だ。
薄っすらと感じる悪意が焦燥感を掻き立てるあたりこの外付け愛国心と言うか護国の精神は正しく作用している様に思えてくる。
……来る日のために俺を作った、だなんて妄想に至るのも無理は無いだろう。
何せ、推定首謀者たる親父殿の役割は種蒔きだけだ、後々この護国精神が育つのであれば成長は適当でも良い訳だからな。
これの何が腹が立つって説明が一切無い事だ、私がお前の父親だ、嘘だぁあ、とでもやれと言うのか暗黒面に堕ちてやろうか。
そして、一番の盛り上がりの時に隣から殴り付けてご破産にしてやる、クソがよ。
「おや、今日は一段とピリついておりますな」
「暗黒面堕ちからの光御供爆弾と化してやろうかと」
「闇トラマン案件ですかな……。いつでも相談に乗りますぞ」
「あぁ、うん、最期は黒幕に抱き付いてウルトラダイナマイトしてやる的な感じだから安心してくれ」
「一欠片も安心できないんですがそれは」
先程思い至った仮説を伝えると、思わずげんなり顔をしていたので太志的にも有り得るシナリオと感じた様だった。
浸透侵略工作とも言える平和ボケ殺しな内容に、幾つか思い至る事がちらほらあるらしい。
と、言うのも羅城門程しっかりしたシステムでは無いが、似た様なでかいダンジョンは世界各地にある様で、安定した霊地を持つ日本は羨ましく思われているとか何とか。
「え゛、つまりマブラヴ案件って事? 指向性タンパク質的な?」
「あー……、そう言う可能性もあるのでござるか……」
「他国からの侵略案件以外にも懸念事項があるのかよ……」
細志ノート曰く、科学ではなく魔法で発展した様なファンタジー世界らしき場所と繋がった一例もあるらしく、レイドクエストの世界は本当に異世界に繋がっているかも知れない、と言う疑問が浮かんだのだとか。
5つのレイド区分に分類されない様なイレギュラーレイドがあった、と言うのはぞっとしない話である。
俺はこの世界を地球の現実世界と認識しているが、数ある世界のほんの1つに過ぎない可能性があると言う事だ。
つまり、太志は他の世界からの工作により学園上層部が腐敗しているのでは、と考えていたようだった。
と、言うのも日本の羅城門は他の国よりも遥かに安定しているため第四段階に昇格できる可能性が高い事で戦力的に上澄みであるらしい、そのため他の国からの工作の線は薄いと考えていたようだった。
第四段階に至った者は上澄みであるためそんなやばいのと戦える戦力があるか、と考えると確かに他国の工作は薄い様に思える。
日本政府が、では無く学園上層部が、と言う点が焦点であるからだ。
「まぁ、確かに変な政策をしている訳じゃなかったしなぁ。この学園の事やらを隠してはいたが、実情知れば当然の措置な訳だしな」
「そう言う事でござる。故に、拙はこの世界と似たような在り方をするレイド世界と密かに交流しているのでは、と思うのでござるよ。それならば対等の戦力が故に工作を仕掛ける事で優劣を決めようと考えるのも頷ける訳ですな」
言うなればFGOの剪定事象の異聞帯が確立している上で乱立している可能性がある、と言う事だ。
それこそダンジョン内でレイドゲートみたいな感じに出くわして、未発見レイドと見せかけてマジモンの別世界へのゲートだった、みたいなハプニングが待ち受けているかもしれない。
羅城門でレイドを固定する技術があるならば、秘密裏に内偵して同盟を結んだ異世界だなんてもんがあっても可笑しくはないだろう。
……この学園の性風紀的に、年若い女子を相手側に人身売買的な感じで奉げてたりしないだろうか。
わざとカーストの低い女子生徒を集めているのも、極論であるがホームレスなら死んでも誰も困らないだろうみたいな非人道的な理由ならば納得できてしまう。
男子は……経験値袋みたいな感じで死に戻りを利用したり、とか?
もしくは、精液で女子生徒を最低限育てるための無自覚な飼育者として集めてたり?
静恵からの情報だが、性行為だけしかしてなかったのにクラスチェンジができた一例もあるらしく、専門施設でそれを利用した実験と称した養殖計画も進んでいるとかなんとか。
ダンジョンでレベルの上がった男子の隷属力が上がる様に、育った肉体強度によって精液に含まれるアストラル量も増えると言った感じなのだろうか。
……あぁ、成程、だから学園はこの性風紀を改める事をしないのか。
経験値を貯め込んだ女子生徒を養殖して出荷するために一般生徒枠を取っており、死ぬ事の無い華族の華組及び自分たちへ還元するために作り上げたのがこの学び舎の皮を被った牧場な訳だ。
詰まる所この場所は、一般学科は人間牧場な訳だ、倫理感GL期のランスかよ。
と、言う一説を太志に伝えてみれば何処か腑に落ちた顔をしていた、どうやら思い至る様な材料があったらしい。
「……まさか、そこまで落ちていたとは。人畜外道と言うしかありませぬな」
「あくまで憶測だぞ?」
「恐らくはそれに近いでしょうな。はぁー……、道理で兄が飛び込んだ訳でござる。そう言うの大嫌いな人でしたから」
朝のホームルーム前にする会話じゃねぇなぁと思いつつ、そのままテンションががくっと下がった状態で午前中の座学を過ごしたのだった。
やはりこの学園一度滅ぼした方が良いのではなかろうか、と内なる大怪獣が咆哮を上げたがまだ早いステイと押し留めて真奈美たちを拾いに行った。
今は雌伏の時、第四段階へとクラスチェンジを果たすまでは明確な敵対を示さない方が良いだろう。
もっとも、前人未到の第五段階への昇格をしてから万全な状態で向かい討った方が良いまであるかもだが。
取り敢えず学園の上層部の奴らは碌な死に方をしない事だけは確定した、震えて眠れ、月夜ばかりと思うなよ。
そんなこんなで部室へと集まり、再びミーティングを行なう事にした。
「えー、本日より我らが『鮮血望鏡』がオープンする訳だが、客の入りは薄いと思っているので変な気負いはしない様に。ノルマとかも無いし、気楽にバイトする様にしてください。ぶっちゃけゴブリンくらいしか売ってないカードショップだからな、一人二人来店したら良いなくらいで良いぞ」
「ぶっちゃけ過ぎないっすか?」
「だってなぁ……、先ずは導線を引かないとブームにもならんしな。エンジョイ組の間引きを本格的にしてからじゃないと流行らんだろうし」
「……そうね、それこそ申組の男子が提案してきたみたいに都合の良い性処理奴隷みたいなパートナー管理されてる可能性もあるのよね」
「いや、それまだ真正面から来てるだけマシだぞ。多分先輩方はダンジョンで拉致って部室で回して隷属からのパートナーコースだろうからなぁ。正直全員を救えるとは思ってないし、むしろ本番は来年からってのもあるな」
学園の上層部潰してからじゃないと本格的な浄化は無理だろうと思うし、とは伝えはしない。
……げぇっ、三美、またお前思考盗聴しやがったな、変なタイミングで頷いてるんじゃないよバレバレだぞ。
てへぺろして許して貰おうってか、可愛いから許すが悪意を持って使うんじゃないぞそれ。
いやまぁ、信用できる人物に話が通ってるのは良い事なのだろう、……危ない事に手出すなよ、振りじゃねぇからな。
こくりと頷いたのを見て小さく溜息を吐いてお気持ち表明しつつ、部室に備え付けたノートパソコンの前に陣取る。
13時に合わせ、予め用意しておいたオークションサイトに商品を放出し、ノーマル及びスキル持ちのゴブリンカードの価格を底値に下落させる。
数十万で売り出されている中で一際目立つ5万銭の表示に度肝を抜かれた奴も多いのではなかろうか。
出品数も初手で100枚用意しているので買い占めたとしてもお代わりを放出するだけで、転売対策もばっちりだ。
出品者の名前をカードショップ『鮮血望鏡』で統一しているので、良い感じの開店を決められたんじゃなかろうか。
「うっわぁ……、裏BBSも凄い事になってるわね。一気に知名度上がったわよ」
「ゴブリンカードだけってのがミソですね……」
「じわじわと真綿でキュッとね」
「気が付いた時には市場の仲間入りですね」
「おーほっほっほ! 流石はオーナー様ですわ! やる事が大胆ですわね」
やんややんやと持ち上げられつつ、売り子として玲子を椅子に座らせている訳だがだーれも来やしない。
そりゃそうだ、現段階で来る様な奴が居たら奇特なまでのゴブリンマニアか無限収集系のゴブリンコレクターのどちらかだっつーの、普通にポチるだけで手に入るオークション使うだろうよ。
開店初日だからと言って経過を見ようと考えた俺が馬鹿だった、今からでもダンジョンに行くか。
「あ、そういや第漆階層に辿り着いたぞ」
「……ゲートが見つかった、ではなく?」
「いや、うん、ぶっちゃけ俺だけで余裕に突破できちまってなぁ。どうしよ」
「う、うーむ……、もういっそ三美殿を固定して『文官』を1人置いた状態でそのままカッとんで貰う方が良いのかもしれませんなぁ」
「そっちの戦力は足りてるのか?」
「磨具奈に作って貰った戦闘傀儡の目途が立ちましてな、錫花の慣らしを終えれば抜けた穴を埋める事は可能でしょう」
「……と、言うよりも、私たちの弱さが、問題」
「うん?」
『龗人』になってから右肩上がり急上昇な俺以外の成長率が横這い気味であり、おんぶに抱っこ状態となっている事が問題なのだと言う。
……いやまぁ、確かに太志の工作スキルでアンブッシュ決めて来た浅い階層と比べて、今はもう真正面から近付いてストレート決めた方が早いからと脳筋気味ではあった。
「……入学してから一ヵ月くらいで最低でも第二段階に進んでるパーティだぞ? 焦る必要があるのか?」
「あぁ……、そう言えばそうだったっすね。なんか月の後半から一日が伸びてる様な心地だったっすからすっかり忘れてたっすねぇ」
「竜胆君が規格外過ぎてすっかりと常識が汚染されていたわね」
「汚染て」
「実際、二年の私から見てもこのパーティは異常よ。今までの傾向からして二年になってから第二段階にクラスチェンジするのが平均よ」
俺らほぼ毎日ダンジョンに行っていたからな、週に1回のエンジョイ勢相手なら6倍差かつクラスチェンジによる効率加速で更に倍率ドンと言ったところか。
言われてみれば、と朗らかに笑う面々であるが、『鮮血薔薇』の面々も既に第二段階に手を掛けている子たちも居るので年次のトップ層と言っても過言ではない。
……もしや俺ら一年生のトップグループ入りしてないだろうか、個々の戦闘力ならば叶馬君のところには負けるだろうけども。
あんまり目立つと杭を打たんとするアホが湧くからなぁ、今の所既知外領域を走っている事もあり隠蔽が効いているが、何かしらの拍子に露見する可能性は高いよなぁ。
「……拾階層までRTAすべきか?」
「何をもってその発想に至ったのですかな?」
「伍階層あたりから拾階層までゲートキーパー狩りをしてレアドロ掘りしようかなって。んで、手に入った装備で自衛する装備を整えて貰おうかなぁ、と」
「……いや、それをするぐらいなら拾階層に籠ってレベリングをした方が良いでしょうな。そこまで御膳立てされてしまうと拙らの立場が無いですぞ」
「駄目か、ちょっとダンジョンでハクスラしたかったんだが……」
「素手で戦った方が強いでしょうに……」
それはまぁそうなんだが、だってダンジョンだぜダンジョン、潜りたくなるだろ。
分からんでも無いと言った様子の太志の呆れ顔であるが、言うまでも無く初心を忘れているとでも思っているのだろう。
魂魄結晶を失わないためにも死なないようにするべきであり、慎重かつ丁寧に進んで行くのがベストなのは言うまでもない。
そのためのパーティであり団体行動であるのに、個人行動して突っ走る俺はやはりリーダーには向いていない。
東映版スパイダーマンのレオパルドンの様な存在であるべきなのだ、出せば勝つ、そんな存在に成るべきだ。
レアドロの装備をガチガチに装備厳選してダンジョンハクスラしてぇな、だなんて思ってないのだ。
……ぶっちゃけ、リーナたちを展開すれば一大勢力になる訳だし、玄室よりも広いフィールドらしい拾階層にさっさと行きたいんだよな。
『隷属具象化』の最大数とかも検証したいし、やりてぇ事が沢山あるんだわ。
こっそり近付いて来た三美が、何処までもお供します貴方様、だなんて可愛い囁きをしてきたのでやる気が満々になってしまったしダンジョン行くか。
プロット無しでつらつら思い付きのまま書いてるのに、後書きで決め打ちみたいな事を書いて自分で展開を狭めて首を絞めてたので一旦掃除しました。
原作読み終わってないのに書いてた部分もあったのでこの機会に以前の後書きの内容は忘れてください。
ぶっちゃけ、後から読んでくれる人のノイズになるしね、定期的に後書き部分は掃除する事にします。
オリジナルレイドは……?
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『王権』
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『付喪』
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『根源』
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『伝承』