羅城門の機能が解禁されてから2回目のダンジョンダイブが無事に終わり、広場のエントランスにペッと吐き出された俺たち2人は先程までリーナが持っていた皮袋を片手に換金場へと急いだ。
クリスタルは新鮮さが命と言っても過言ではないくらいに鮮度が落ちる速度は早く、一分単位、いや一秒単位で価値が下がっていくクソ仕様なのだ。
そのため、その重要性を理解していない死に戻り系の平和面を晒す同級生らの合間を縫って足を進める。
購買部脇に設置された換金用レジへと向かう列にいち早く並び、革袋の中身を換金して銭カードへと移す。
その後、電子学生手帳のアプリで銭カードの中身を太志と頭割りした額を送金する。
二人で割っているためか5万銭を超える額が入金され、一ヵ月一万銭生活を強いられる環境から脱する事ができて一安心した。
「いやはや、比較的空いていて良かったですな」
「まぁ、今の内だけだろうな。クソ仕様が知れ渡り始めたらごった返すだろうし」
「はたしてそうですかな。拙としては、このまま変わらない様に思えますが」
「と、言うと?」
「単純に量の問題ですな。生存しやすい様に閉門する時間に近くダイブすると言う者たちも居る様で、兄のノートには堅実であるが冒険感が無いと風情の無さを嘆く一文がありましたゆえ。その場合、得られるクリスタルも雀の涙ですからなぁ、二束三文以下ならあえて拾わない者も居ましょう」
「集めて千銭にすら満たなかったらやる気失せるもんな」
「そう言う事です」
そもそもの話、死に戻りするとそのダイブで得た経験値はボッシュートされる仕様なので、振り返り反省する記憶すらも失っているのでゾンビアタックになりやすいのだとか。
なので、最初は生き残る事を主軸に経験値を貯めるのがダンジョン組に向いている新入生の傾向にある。
……そのため、新入生かつこうして換金場に来ている上で、それなりの成果を出している奴が居たらそれはもう注目を浴びる事になる。
一年生の時にこの学園の洗礼を受け、二年生になりダンジョン組とエンジョイ組に明確に分けられてしまう風潮も相まって、有望な新入生探しは必要不可欠と言える。
特に倶楽部活動をしている先輩方は今後の評価のためにも青田買いを始めるようで、件の幼馴染に会いに向かった太志と別れた直後を狙われたのだった。
「ねぇ、君倶楽部活動に興味無いかな。ダンジョン活動に力を入れてる『小熊園』って言うんだけど」
「おいおい、そっちの弱小倶楽部は黙ってな。俺らのとこに来いよ、『狼餓風々』なら良い思いさせてやるぜ新入生」
「エンジョイに片足突っ込んでるてめぇのところじゃ勿体ないぜ『太陽信仰』ってんだ、お前を歓迎するぜ」
などなど、革袋の中身でがっつり生存している新入生と目を付けたのだろう、来るわ来るわ先輩方が。
さて、どうしたものか。
さっさとこの場から逃げ出したい心地であるが、悪質な粘着をされても面倒なので穏便に済ませたい。
……いや、逃げる以外の選択肢は無いな、どう見ても地雷原にしか見えないよ此処。
「あっ」
必殺あそこにUFOが作戦を決行し、意味ありげに声を漏らして気になる物を用意してみれば釣られて彼らも其方へ視線を向けた。
……あ、やっべ、うちのクラスのシリアルキラー君じゃん、擦り付ける相手間違えたな。
と、後悔している間に『簒奪』で得た『逃走上手』を発動させ、その場を脱する。
文字通り逃走を手助けしてくれるスキルであり、逃げ足が速くなると言うシンプルだが使いやすいものだ。
すたこらさっさと先程並んだ換金の列を縫って出て、倶楽部勧誘の魔の手から脱する。
後ろからまったく付いて来てなかったのは何故だろうか、シリアルキラー君を見てSAN値チェックに失敗したのだろうか。
食堂に向かい早めの夕飯を取ってから黒鵜寮の自室へと戻る。
鍵は閉まっていたので太志はまだ戻って来てないようだ、鍵を回してノックせずにドアを開けた。
「ん゛ーっ、んん˝-っ!!」
「……駄目、逃がさない。嘘つきは駄目、許さない」
縄で雁字搦めにされた太志が地雷系ツインテールをした容姿の良い女子生徒に乗っかられ、精を絞られていると言うとんでもない光景を目にした。
華族時代の知り合いだからてっきり華組の人かと思えば見慣れたブレザー制服であり、スカートに隠れたばちゅばちゅと粘着質な接合音からして太志に対しての好意はそのままである様に伺えた。
ドアを開き、此方を視認した太志が天からの恵とばかりに助けを求めるが、俺はそれに応えず地雷ガールの方を見て口を開いた。
「感動の再会だろうし、席を外すがどれくらい掛かる?」
「ん、話が分かるリーダー。そしたら、だいたい2時間くらい」
「了解、ではシーユーアゲイン、ハバナイスディ」
「ん゛ん゛ーっ!!!」
薄情者ぉーと縄の口枷越しに聞こえてくるが、聞こえないなー。
ハンズアップを返され、太志との騎乗位に専念し始めたのを一瞥し外に出てドアに寄り掛かる。
万が一他の先輩方に見つかると面倒なので見張り番をしようという事だ。
……まぁ、既に太志が『悪代官』の第二発現スキル『偽装工作』も発動させているあたり、さっきのは茶番だったんだろうな。
『隠蔽工作』の補強と言える『偽装工作』のスキルは対象に対して発動するスキルで、誤認効果を付与すると言うこれまたテクニカルなスキルだ。
今回はドアに仕掛けられていたので、実際に中を覗くまで感動の再会イチャラブックス現場だと全く持って気付く事が出来なかった。
本来ならば暗器に用いるスキルであり、『隠蔽工作』によって隠された暗器に『偽装工作』を付与する事で、間合いの分からない謎の暗器Xを作り出せる訳だ。
握っているのは小剣なのにダガーくらいの刀身のサイズと誤認したり、そもそも握られている事すらも誤認する大分小賢しいタイプの便利スキルと言えた。
真っ当じゃない『商人』系の規格外クラス『悪代官』の本領発揮と言えよう。
太志の元々持っていた剣のセンスも相まって、真正面から不意打つ暗殺スタイルが確立し始めているな。
今日の隣は静かな様子でシリアルキラー君は女を連れ込んでいるどころか、そもそも居ない様だ。
先程、エスケープの出汁にしたので何か言われるかもしれないと身構えていたが、来ないもんだな死神。
それからきっかり二時間の感動の再会に甘酸っぱい栗の華を咲かせたらしい内側から、ノックで終了を言い渡されたので中へ入る。
……前に、窓を開けてドアを開閉して空気の入れ替えを行なった。
大分絞られたらしい太志がベッドの上でアスキーアート宜しく昇天しており、対して搾り取った側の地雷ガールは艶々とした表情を浮かべていた。
「隷属とかしてる感じ?」
「ん、私、太志にぞっこん、最初から堕ちてる」
「あら~、愛されてるねぇ太志」
「に、二桁は流石に死ねるでござるよ錫花……」
「んふ、とっても良かった。前より成長、感じられる」
……本当に口約束の婚約者だったでござるかぁー?
だなんて内なる佐々木小次郎が疑惑を呈したが、華族って貴族だし、まぁなんやかんやあったんだろう。
何となくだが地雷ガールこと錫花さんの悩み事か何かを解決しちゃってそのまま依存先にされたのかな。
話を聞いてみれば華族はこの学園に入る前にも別口の小さなダンジョンを持っているそうで、そこで幼少期から地道にレベルを上げてから此処に入学して俺TUEEEするのが一般的らしく、その時のペアが錫花さんだったらしい。
当然ながらレベルアップすればムラつくので、錫花さんが前衛だった事もありこうしてぐちょぐちょの関係になっていたのだとか、羨まけしからん奴め。
会話のために口枷を取られただけの太志はしわしわ顔で痙攣しつつ、お掃除口淫と言いつつもしっかりと絞られた後に、漸く会話へ入る程度に回復したのだった。
「ふ、ふぅ……、生きた心地がしませんでしたぞ……。精神的に錫花が拙に惚れていてくれなければえぐいレベルで隷属していたに違いませぬ……」
「まぁ、責任はしっかりとな。その様子だと錫花さんもファーストダイブでは生き延びてるんだろ?」
「うん、あの程度、よゆーよゆー、ぶい」
「なら太志とパートナー組んでからで良いからパーティに合流してくれるか?」
「ん、問題無い、既にした。バッジの受け取り、明日行く」
「初耳なのですがぁ!? 確かあの制度、男性側からの申し込みが必須だった筈では!?」
「……んふふ」
「まさかたまに記憶が飛んでたのは……、『傀儡操り』で勝手に拙を動かしましたな錫花!?」
錫花さんは『職人』系の規格外第二段階クラス『絡繰り師』であるらしく、見えぬ魔力糸を使った人形を操るクラスなのだとか。
この人形と言うのが、あるるかんみたいなものだと良いなと少し興奮していたのだが、モンスターカードを取り出して見せてきたそれはずらっと並ぶゴブリンのカード、使い潰しても安心ね、ってか。
それを見て、素直にひぇっとなった。
『職人』に『文官』が複合されたクラスらしく、操るのはモンスター。
試しに具象化して貰ったゴブリンの瞳に生気は無く、シテ、コロシテ、と小声で呟いている様な状態だった。
……なんでこう、闇の深い規格外クラスが集まってくるんですかね、前世でヒトラーでもやってた?
戦闘では最大五体までの操り人形と化したゴブリンを操って戦うそうで、こんな汚い東方のアリス見とうなかったわ。
モンスターカード化しても死なない限りは記憶が残るそうなので、ある意味大切に使われた結果がこれだよ、お労しい。
最初の頃、幼少期の頃に修行していた頃は正しくあるるかん的な戦闘人形を使っていたそうだが、太志の華族脱退と施設行きに伴い精神を病んでしまい、代わりに宛がわれた太志追放の原因になった親の子供を人形として使っていたそうな。
時間の最後まで使い潰し、最後に自殺させ記憶をリセットさせて繰り返し使っていたとかなんとか。
しれっと大事な跡継ぎを台無しにした挙句、消耗品の如く使い潰しているのでお家断絶間違い無しと胸を張っていた、怖いわ。
「……愛だな」
「何故そこで愛!? いやまぁ、そこまで想われていたのは素直に嬉しいのですが、闇負荷が過ぎませぬか?」
「流石リーダー、愛、分かってる。貴方の人形も、喜んでる」
「訂正、こいつマジでやっべぇわ。俺そこまで人間性捨ててないから、リーナとは純愛貫いてるから」
「むぅ、心外……、関係性を見るに、やばいのは貴方だと思う」
いやまぁ、首輪付けて主従関係してたらやばい関係性ではあるけども、流石に言い返せず黙り込む。
取り敢えずまぁ荷物持ちに使える人材が来てくれた事は喜ばしい限りだろう。
その後の話し合いにより、ベッドとベッドの間に防音の効いたカーテンを設置してプライバシーの保護に乗り出した。
太志の兄ノート曰く、大体の男子寮では女子を連れ込むとヤリ部屋にしようと先輩たちが群がってくる上に、その寮のルールとして決められたりしていると逆らい辛い空気になるのだとか。
まぁ、数あるランクで最下層の奴らが住まう寮であるので、寮監をしている先輩もエンジョイ組の上澄みが精々なので太志の『隠蔽工作』&『偽装工作』コンボで何とかなりそうではある。
ぶっちゃけ、仮に嗅ぎ付けられ見つかっても、俺の場合はカードに戻せば良いし、錫花さんの『傀儡操り』によって丁重にお帰り頂ければ証拠隠滅は可能だ。
何故なら魂魄結晶を持っている俺らはダンジョン外でもスキルを使えるが、持っていない大半の先輩方及び同級生は使えないので既に格付けは終わっている訳だ。
「と、言う事で一先ずこの部屋を拠点とするのが宜しいでしょうな。錫花は拙の『隠蔽工作』で隠せば出入りもバレないでしょうし」
「一応ベッドの足元に耐震マットとかぐにっとしたアレ付けとくか。流石に物理的なのは対策しないとだし」
「……ふふっ、既にもうしてある。こんなことも、あろうかと。オタクはこう言うの、好きって聞いた」
「あ、ほんとだ。俺のもやってくれたのかありがとう。費用は御幾ら?」
「持ち込み、だから大丈夫。私としては太志との関係を許してくれる方が助かる」
太志関連だとぶつ切りする口調を止めて早口詠唱するの可愛いかよこいつ、愛されてんな太志ぃ。
錫花さんがこうも俺に心を許しているのは、偏にこの学園の男子の性質が発情猿だからだそうで。
黙ってやる代わりにチョメチョメ、気に入ったからチョメチョメ、ヒャァ辛抱堪らねぇとチョメチョメ。
脳と下半身が直接繋がってるのか、はたまた金玉に小さい脳が移植されたのか、色欲に狂ってる奴らばかりなんだそう。
それは華族の子供たちも変わらないようで、しっかりと躾けられてきた上澄みならまだしも、その金魚の糞めいた奴らだと女中や愛人を飼う趣味を持っていたりと大分下賤な輩が多いとの事で。
華族の華組と言えどもピンキリなのだと、話は終わったから太志と寝直すね、と意味深な言葉を吐いた錫花さんは再び跨った。
俺は無言で防音カーテンを設営し、部屋の鍵を閉めて、何時の間にか増設されていた鋼鉄の閂を下ろしてベッドに戻ったのだった。
太志、お前は良い奴だったよ。だがな、それはそれとして彼女持ちはギルティだ、腹上死するが良い。
こっそりとリーナを具象化し、しくしくと泣き付きながらその無い胸に顔を埋めて就寝する事にした。
リーナとの初体験をこんなムードのアレな状況で致したくないからね、仕方が無いね。
まぁ、ポリネシアンセックス宜しく愛撫だけのオーラルはして、俺の規格外サイズが入る様に解してやらないとなぁ、そのまま挿入したら絶対に裂けるし。
部屋に正反対の嬌声が深夜まで静かに響く事になり、結局寝るのは遅くなったのは言うまでもない。
補修レイドは……
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オリジナルレイド
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轟天石榴山