オイルを手に取り、手の平で温めてから、さかおつさんの背中に両手でゆっくり広げる。
指先で軽く押しながら彼の凝りを探る。
肩、背中、腰……どこもかなり凝ってる。
バレエをやっていたときも、その後フィットネスのインストラクターを始めてからも、ボディケアは必須だったので、お客さんの凝り具合もあるていど分かる。
セラピストといってもアルバイトが多いから身体の知識を身につけてるセラピストは多くないらしい。
そういう意味で私の仕事はメリットになった。
それにしても、なんでこう、バキバキに凝ったまま放置しているの。
日本人ってこういう感じなのかしら? なんて、日本でしかセラピストやったことない私が言うのもなんだけど。
でも、そういうお客さんの体に触れて、緊張や疲れが溶けていくのを感じるのが好き。
さかおつさんの体は、見た目よりしっかりした筋肉があって、ほぐすのが楽しい。
彼の吐息が少しずつ深くなり、リラックスしてるのが伝わる。
ふふ、いい反応。
時折、指先を軽く滑らせ、フェザータッチでくすぐる。
彼の背中がピクッと反応するたび、内心で微笑む。
気持ちいいよね、さかおつさん?
背中から両脚へ移り、ふくらはぎを力強く揉む。
さかおつさんの反応がいいから、つい楽しくなってきて、いつもより丁寧にマッサージしちゃう。
太ももの裏を滑る指先、時々内ももに近づくと、彼の体がまた小さく反応する。
「サカオツ……サン、オーケー?」
と尋ねてみるけど、彼の答えは分からない。
でもこのやりとりで知りたいのは彼の表情。
良い感じにリラックスしてくれてるみたいで、嬉しい。
「サカオツ……サン、ネクスト」
と、カタコトの英語で仰向けになるよう促す。
身振りで体を反らすポーズを見せる。
「こう?」
さかおつさんは言いながら身体をひねろうとするので、私は彼の横に座って、彼の腰に手を添えてフォローする。
と、さかおつさんは、上体をひねったところでバランスを崩した。
私のほうへ倒れる感じになったので、彼はとっさに手を伸ばした。
伸ばした手が私の乳房に押し付けられる。
突然のことにびっくりしたんだけど、それと同時に甘い快感が走った。
さかおつさんは、何か言って私の名前も呼ぶと、慌てた様子で手を離した。
凝りのひどいお客さんをマッサージすると、身体全体が弛緩してるので、凝ってたときと同じ力の入れ方で身体を動かそうとして、バランスを崩すことがけっこうある。
さかおつさんが意図的じゃないのは分かってる。
それよりも、突然おっぱいを触られて感じちゃってる自分に驚いて、「なんてことっ」とつい漏らしてしまう。
マッサージでお客さんを気持ちよくする施術の中で、実は自分もエッチな気分を高めていたんだって気づかされた。
頬が熱くなって、お腹の下の方がキュンとする。
私は顔を上げると、さかおつさんの慌てた表情があって、彼は私と目が合うと改めて頭を下げてくれる。
誠実な人だ。
なのに私ときたら、ちょっと欲情しちゃってるのが後ろめたくなって、少し冷静になれた。
私はさかおつさんの肩に手を添える。
「オーケー、サカオツ……サン、コレ」
言って仰向けになってもらう。
「全然……大丈夫だから」
と無意識に呟いて、内心ハッとする。
おっぱい触られるのが大丈夫ってこと? そういうことなの私?
私がグルグル考えていると、さかおつさんが頭を下げる仕草で何か言っているので、慌てて笑顔を返した。
ちょっと冷静にならなきゃ。